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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第四章
125
:
崇月院なゆた
◆POYO/UwNZg
:2019/05/23(木) 13:22:44
>ついでに、今後の方針も決めちまおう。俺は、バロールの依頼を受けるべきだと思う。
このまま王宮でお茶しばいてても事態はなんも好転しない。動ける時に動くべきだ。
俺たちが現状、ニブルヘイムに勝ってるのは……人手の多さだけだからな
明神が提案する。
他のメンバーも、バロールの依頼したアコライト外郭クエストに乗り出すことに肯定的な意見を述べる。
もちろん、なゆたもそれに異論はない。むしろ、すでに気持ちはアコライトへ向かっている。
現在、アコライト外郭はニヴルヘイムの勢力に包囲され、補給さえ侭ならない状況なのだという。
事態は一刻を争う。早く救出に向かわなければ、せっかく召喚された『異邦の魔物使い(ブレイブ)』が死んでしまう。
侵食を食い止め、打ち破るためには、それは絶対に避けなくてはならない。
エンバースのことは取り敢えず脇に置いておき、なゆたは仲間たちの前でぽん、と手を打った。
「よし! じゃあ、決まりね!
わたしたちはアコライト外郭へ向かい、そこにいる『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を救出する!
ついでにニヴルヘイムの連中を撃退できればよりベター! って感じね!」
「ああ、よかった! 感謝するよみんな。
もし、ヤダ! 力なんて貸してやるもんか! とか言われたらどうしようってハラハラしてたんだ!」
……あ、そうそう。さっき君たちに私の召喚した『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の名簿をあげると言ったけれど」
バロールが虹色の瞳でエンバースを見る。
「名簿はあくまで参考程度……としてもらえるかな。申し訳ない。
ひょっとしたら、世界には私の把握していない『異邦の魔物使い(ブレイブ)』がいるかもしれない。
なぜかって言うと、ジョン君は確かに私の召喚した『異邦の魔物使い(ブレイブ)』だけれど――
エンバース君。君は私の記憶にはないからだ」
この世界に召喚された『異邦の魔物使い(ブレイブ)』は、召喚主の魔力を帯びる。
それが識別信号となり、バロールは『異邦の魔物使い(ブレイブ)』をアルフヘイム側かニヴルヘイム側か判別できる。
真一も、メルトも、明神も、みのりも、ジョンも、そしてなゆたも――確かにバロールが召喚した『異邦の魔物使い(ブレイブ)』である。
しかし、唯一。エンバースだけはその識別信号を確認することができなかった。
「君がいったい誰に召喚されて、どこにいて、何故そうなったのか――私の魔眼をもってしても見通せない。
エンバース君……君はいったい何者なんだ?」
「じゃあ……」
なゆたはハッとしてエンバースを見た。
アルフヘイムで『異邦の魔物使い(ブレイブ)』召喚ができるのはバロールだけ。
そのバロールが自分ではないと言っているのなら、その導き出す結論はひとつしかない。
『エンバースはニヴルヘイムに召喚された『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の可能性がある』――。
そういうことなら、何もかも腑に落ちる。いや、そもそも『異邦の魔物使い(ブレイブ)』でさえないかもしれない。
何しろ『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の証であるスマホはないし、第一人間でさえない。
一旦疑い出すとキリがない。元々のエンバース嫌い度も相俟って、なゆたの中でエンバースへの不信感が増大していく。
「ま、それはいいさ。君たちがエンバース君を仲間と信じるのなら、私もそうしよう。
名簿は参考程度にしてほしいと言ったのはそういうことさ。私も万能じゃない、取りこぼしがあるかもしれない。
もし、そういうはぐれ『異邦の魔物使い(ブレイブ)』を見つけたら、彼らも確保してもらいたい」
うん、とバロールは頷いた。そして後から言葉を付け足す。
「おっと、でも当座は心配しなくてもいいよ。少なくとも、アコライト外郭の『異邦の魔物使い(ブレイブ)』はこちら側だ。
でなければ、ニヴルヘイムの連中だって攻め落とそうとは考えないしね。だから、心おきなく救出に向かってほしい!」
それは間違いない、と元魔王は請け合った。
今のところは、明神たちはアコライト外郭救出に全力を出していいということらしい。
みのりが精神的な疲労から椅子にくずおれ、それをジョンが受けとめるといった椿事はあったが、今後の方針は決まった。
アコライト外郭の位置なら、ゲームと変わりないので認識は容易だ。キングヒルから徒歩で10日ほどの距離である。
魔法機関車などの乗り物を使えば、もっと早く到着できるだろう。
とりあえず今日は各々用意された部屋へ戻り、休養することが最優先となる。ジョンもお風呂に入れる。
汚れた衣服はアルフヘイムらしい服装に着替えることも、汚れた自前の衣服をメイドに洗濯させることもできる。
みのりとバロール、エンバースとなゆたの一触即発の事態はあったものの、なんとか話はまとまった――
かに、見えた。
しかし、真の波乱は本当はこのすぐ後に控えていたのだった。
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