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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第四章
108
:
明神
◆9EasXbvg42
:2019/05/12(日) 23:19:14
>「それを説明するには、かつてこの世界に起こったこと。そして――君たちの世界に起こったことを説明しなければいけない」
そこからバロールの語った内容は、もう完全に俺の理解を越えていた。
本当に、マジで理解を超越してたので、奴の語るところを把握出来てたか自信がない。
それでも、述懐をかいつまむとこうだ。
この世界は、一巡している。
いや、この世界だけじゃない。アルフヘイムも、ニブルヘイムも、俺たちの世界も、一度滅びを迎えている。
"魔王"バロールを倒し果せても、世界は救われなかった。
世界を虚無に飲み込む侵食は停止することなく、やがてアルフヘイムさえも消滅することになる。
追い詰められた人々は、逃げ場を別の世界に求めた。
アルフヘイムでも、ニブルヘイムでもない、第三の世界――俺たちの世界に。
アルフヘイムはニブルヘイムを滅ぼしたあと、今度は地球を相手に戦争をおっぱじめたのだ。
防衛ではなく……移住するための、侵略戦争を。
>「アルフヘイムの人間が、地球に攻め込んだ!? そんなことあるわけない!
もしそれが事実だとしたら、どうしてわたしたちにはその記憶がないの!?
事実を受け入れられないなゆたちゃんがかぶりを振って叫ぶ。
俺だっておんなじ気持ちだった。頭を抱えたくなった。ていうか抱えた。
こいつは一体いつの話をしてるんだ。そんなもんニュースでだって聞いたことねえぞ。
>「究極の魔法、機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)とは、時間遡行の魔法だった。
この魔法によって、世界は元に戻った――侵食が発生したころまで時間が巻き戻った。
死した者たちは蘇り、消滅した世界も元に戻った。だけど、なにも事態は好転していない。巻き戻っただけだ」
機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)。
それは、戯曲におけるご都合主義、唐突に現れて事態を全部解決していくスーパーマンを指す言葉だ。
もうどうしようもない窮地に、なんか奇跡が起こっていい感じに物語を終わらせる、創作上の禁忌。
冗句にしたって笑いどころがわかんねえ。
世界が滅びを迎えて、それこそ奇跡が起こった。時間遡行なんていう、超弩級のどんでん返し。
そして、滅んだ3つの世界は、時間を巻き戻して再構成された。
バッドエンドを迎えたシナリオをリセットして、全ては振り出しに戻った……はずだった。
>「機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)は不完全な魔法だった。
極端な話『とにかくある程度まで時間を元に戻せさえすれば、小さいことは知ったことじゃない』な代物だったんだ。
時間は元に戻ったものの、その副産物として様々な歪みが――君たち風に言うとバグが生まれてしまった。
私やイブリースがそうだ。本来『一巡目』の記憶は失われるはずが、それを持ったまま蘇生した」
だが、時間遡行は仕様通りに動作しなかった。
ソースコード……呪文だか魔法陣だかに、予期しないバグが混入してたんだろう。
俺もソフト開発の会社に勤めてたからよく分かる。弊社のプログラマ達の阿鼻叫喚が聞こえるようだ。
あるいは。その不完全な記憶消去すら、魔法の仕様内だったのかもしれない。
デウスエクスマキナが誤作動し、本来巻き戻るはずの記憶を維持して蘇った連中がいた。
記憶を持って、問題の根本的な解決にあたろうとする者たちがいた。
それがバロールであり、イブリースであり、おそらくは――
「――真ちゃんやしめじちゃんの見たっつう、白昼夢。アレもそういうことなのか」
タイラントと対峙した時、真ちゃんは直感的にあれを敵だと認識した。
しめじちゃんもまた一度死んだ折に、リバティウムの過去と結末を幻視していた。
いつだったか、旅の途中で真ちゃんから聞いたことがある。
あいつの見た白昼夢の内容。俺たちの世界に出現したタイラントと、それに蹂躙される街並み。
自衛隊の戦闘機や攻撃機が何機も飛び交って、核が落ちて――それきりの、絶望的な夢。
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