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【伝奇】東京ブリーチャーズ・玖【TRPG】

312那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2021/01/23(土) 02:31:49
地上160メートル、南展望室の屋上にあるヘリポート。
そこで、最終決戦の相手は東京ブリーチャーズを待ち構えていた。

「――来たか」

トーガ状の長衣を纏い、頭上に光輪を頂き。白く輝く四対の翼を持った、この世界の新たなる神。
“終世主”アンテクリスト。
橘音に天魔アスタロトの業を背負わせ、尾弐に千年の苦患を味わわせ。
ノエルの運命を狂わせ、ポチにつがいを喪う絶望を幾度も体験させた、仇。
すべての因縁の黒幕。

「この私の。神の与えた福音を跳ね除け、反創世の障害たらんと抗う者どもよ。
 愛を。夢を。希望を標榜する者どもよ――」

ゆる、とアンテクリストが両手を広げる。その全身から放たれる膨大な神力が、東京ブリーチャーズ全員に強い圧を掛ける。
ただそこに居るだけで、魂が砕け散ってしまいそうなほどの恐るべき力。神の威光。

「汝らは無価値である。汝らは無意味である。
 汝らの蒔いた種は何物をも芽吹かせず、成し得るすべての行為は徒労に終わるであろう。
 己が行動の無為を知りつつもなお、神への従属と帰服を拒むと言うのなら。
 善い――格別の慈悲を以て、汝らに裁きを与えよう。
 この終世主、みずからの手で」

アンテクリストの表情からは、怒りも。焦燥も。憎しみも。何も読み取れない。
神となったことで、まっとうな生物の持つ感情というものを根こそぎ切り離してしまったということなのだろうか。

「もう、すっかり神であることが板についたって感じですね……」

圧倒的な神気に晒されながら、尾弐の隣で橘音が呟く。
先刻はアンテクリストの姿を見るなり戦意喪失してしまっていたが、今度は苦しげではあっても何とか対峙できている。

「アンテクリスト……いいえ、ベリアル!
 幾ら強がりを言おうと、あなたはもうおしまいですわ!
 お父様のご降臨でブリガドーン空間の制御は取り戻しました、そして龍脈の流れも元に戻った!
 あなたを神たらしめていた力は、既にあなたの手の中には何ひとつ存在しない……!
 神妙に縛に付き、刑に服しなさい!」

レディベアが右手を突き出し、そう高らかに告げる。
だが、そんな降伏勧告などを受け容れるアンテクリストではない。

「ならば取り戻そう、汝らを裁いた後で、緩々と。
 ブリガドーン空間と龍脈の力を欠くとも、まだ我が身の内には世界を三度焼き尽くせるだけの神力が宿っている。
 それを、これより見せよう」

すい、と終世主が右手の人差し指を天空へと翳す。
その途端、ゴゴゴゴ……と都庁が震動を始めた。否、都庁周辺の大地そのものが、そして空気が振動しているのだ。
黄金色の空が、ふたたび極彩色に侵食されてゆく。俄かに不吉な黒雲がかき曇り、稲光が轟く。

「――いでよ。鼎の三神獣――」

荘重に告げる。その言霊に応じ、虚空が激しくうねり、のたうつ。

「これは……どうしたことだ……?」

東京ブリーチャーズとアンテクリストのいるヘリポートの遥か下方、
地上で最後の大火球を迎え撃とうとしていた安倍晴朧たち陰陽師が、空を見上げる。
七ツの大火球のうち、自分たちが受け持とうとしていた最後の火球が、手を下す前に突然ひび割れ始めたのである。
だが、ただ自壊しているのではない。それはあたかも、孵化直前の卵のような。
中から何者かが出現する、そんな予兆だった。

「ピギョオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

やがて大火球の中から姿を現したのは、紅蓮の炎に包まれた巨鳥。
ワシやタカなど猛禽類を思わせるフォルムだが、その体躯はすべて燃え盛る炎で出来ている。
翼長は30メートルはあろうか。伝説のロック鳥や不死鳥フェニックスを思い起こさせる、荘厳ささえ感じさせる神の鳥。

「――『天空を統べる者、其は大いなる翼(ジズ・ザ・アルティメット・ワン)』――」

アンテクリストがその名を囁く。鼎の三神獣が一、神の翼ジズ。
更に地面が震動する。一帯の地下に埋設されている水道管が次々と破裂し、マンホールが膨大な水に押し上げられて吹き飛ぶ。
都庁周辺に存在する水という水が、一箇所に。アンテクリストの許へと集まってゆく。
そうして出現したのは、100メートル以上の長大な蛇体と無数の鰭を持った、水で出来た海竜。

「キュワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

「――『蒼海を覇する者、其は煌々たる鱗(レビヤタン・ザ・インヴィンシブル・ワン)』――」

レビヤタン。
旧約聖書、ヨブ記にしるされた、海を統べる獣。巨大なるもの、神の鱗。
そして三度地表が鳴動すると、今度は悪魔たちの襲撃によって倒壊した家屋やビル、
壊れ打ち捨てられた自家用車やバスなどの残骸がメチャクチャに寄り集まり、何かの形を作ってゆく。
頭部に巨大な一対の角を有した、巨大な四足獣の姿を。

「ギュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!」

「――『大地を束ねる者、其は蹂躙する獣(ベヘモット・ザ・アブソリュート・ワン)』――」

ベヘモット――ベヒーモス、バハムートとも呼ばれる、天地開闢の獣。神の牡牛。
それぞれが空、海、陸を示す、其れらはまさに神の働きそのもの。
炯々と双眸を輝かせながら、神の背後に神獣たちが控えた。


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