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【伝奇】東京ブリーチャーズ・玖【TRPG】

275ポチ ◆CDuTShoToA:2020/12/13(日) 04:30:29
「……ゴオオオオッ!!!」

咆哮。ポチの存在がこの世から消える。
次の瞬間、ポチの背を刺した悪魔が二体、互いの頭部を打ち付けられて絶命した。
ポチは更に暴れ狂う。悪魔どもを引き裂き、握り潰し、噛み砕く。
そして――繰り出した手数の何倍もの傷を、全身に受け続けた。

取り乱し、つがいも倒れ、無防備になった背中を刺された。
怒りに呑まれ、大振りになった爪撃を掻い潜られ、腹を切り裂かれた。
たかが一匹の悪魔を噛み殺した代わりに、捨て身の反撃によって左目を潰された。

それでもポチは止まらない。
『獣』の右目とにおいを頼りに悪魔どもへと襲いかかり――不意に、がくりと膝を突いた。
血を流しすぎた。悪魔どもはただ、ポチが疲弊するのを待つだけで良かった。
そんな事にさえ気づけなかった。

体勢を崩したポチの全身を、悪魔どもの刃が突き刺す。斬り裂く。打ち付ける。

「……グ……ルル……」

ポチは、先ほどの咆哮とは比べ物にならないほど微かな唸り声を零した。
直後、その姿が再びこの世から消える。
今度は、ポチはすぐには現れなかった。
数秒の間をおいて――ポチはシロの傍で姿を現した。

「……シロ」

『獣』の右目さえ潰されて、においだけを頼りに、ポチはシロにすり寄る。
そして――斃れた。もう、立っていられるだけの力も残っていなかった。
シロのにおいは、彼女と自分自身の血のにおいによって、うっすらとしか嗅ぎ取れなかった。

「シロ……だめだ……死んじゃ、だめだ……」

ケ枯れによって獣の姿に戻ったポチは、うわ言のように呟いた。
空っぽの眼窩から、涙のように血が溢れ続けている。
覚悟は決めたつもりだった。もし駄目だったとしても、最期まで一緒だと。
だが――刻一刻と濃くなっていく血のにおいと、それに塗り潰されていくシロのにおい。
自分のすぐ傍で、最愛のつがいが死のうとしている。
その絶望を、ポチは正しく想像出来てはいなかった。

「いやだ……シロ……死なないで……ねえ……返事をしてよ……」

ポチは力を振り絞る。体を起こして、よろめきながら一歩前へと踏み出す。
シロのすぐ隣へ。

「……………………シロ」

今もなおシロを治療すべく手を尽くす巫女の一人、その首に牙が届く場所へ。
自分達は、妖怪だ。
人間の命を奪い、その血を啜れば――噴き出す鮮血がシロの口に降り注げば、まだ傷は癒せるかもしれない。
間違っていると分かっている。してはいけないと分かっている。

だが――何も出来ないままシロが死ぬなど、受け入れられない。
自分達を必死に助けようとしている人間の首を噛み砕く。
いっそ、そんな狂気に身を委ねてしまいたくなるほどに――ポチは恐怖していた。絶望していた。

ポチがふるふると震えながら、あぎとを開く。そして――





「…………助けて」

そう、零した。


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