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【伝奇】東京ブリーチャーズ・壱【TRPG】

1 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:30:44
201X年、人類は科学文明の爛熟期を迎えた。
宇宙開発を推進し、深海を調査し。
すべての妖怪やオカルトは科学で解き明かされたかのように見えた。

――だが、妖怪は死滅していなかった!



都内、歌舞伎町。
不夜城を彩る煌びやかなネオンの光さえ当たらない、雑居ビルの僅かな隙間で、一組の男女がもつれ合っている。
若い女が仰向けに横たわる男に馬乗りになり、激しく息を喘がせている。
……しかし、それは人目を憚って繰り広げられる逢瀬などではない。
『喰って』いる。
女は耳まで裂けた口を大きく開くと、ノコギリのようなギザギザの歯で男の腹に噛み付き、はらわたを抉り出す。
まだ体温の残る肉を引き裂き、両手で臓腑を掴んでは貪り喰らう。
すでに絶息している男の身体が、グチャグチャという女の咀嚼に反応するかのように時折ビクンと痙攣する。
この世のものならぬ、酸鼻を極める食事の光景。
女は、人間ではなかった。

柔らかな臓物を、滴る血を存分に味わい、喉元をどす黒く染めた女が大きく仰け反って恍惚に目を細める。
だが、まだ喰い足りない。女は男の頭を両手で掴むと、頭蓋に収納された脳髄を味わおうと更に口を開いた。

――しかし。

ジャリ……という靴裏のこすれる音に、女は咄嗟に振り返った。
雑居ビルの間の細い路地裏、その出口に、数人の人影が立っている。
性別も年代もバラバラに見える、正体不明の一団。

「いやァ――お食事中のところスミマセンね。ちょォーッといいですか?」

一団の中央に佇む、古風な学生服にマントを羽織った――大正時代の学徒か何かのような姿の人影が、口を開く。
が、顔は見えない。その面貌は白い狐面に覆われており、中世的な声も相俟って少年か少女なのかも判然としない。
女は低く身構えた。食事を目撃した者は、すべて消さねばならない。
唇の端から鋭い牙が覗き、両手の爪が音を立てて伸びてゆく。その姿は明らかに人外の化生である。
だというのに、一団は一向に怖じる様子がない。依然として、女の逃げ道を塞ぐように佇立するのみ。

「こんな東京のド真ん中で、そうやって好き勝手絶頂に食べ物を喰い散らかされちゃ困るんですよねえ。美観を損ねる」
「2020年の東京オリンピック。ご存知ですか?それまでに、ボクたちはこの東京をすっかり綺麗にしなくちゃいけないんです」
「インフラ整備に、施設の建設。世界中から人々を迎えるために、この東京はやらなくちゃいけないことがゴマンとある」
「まぁ……その辺は人間のお偉いさんにやって頂くとして。人間じゃできないことは、ボクらの出番ってワケです」
「アナタたちのような《妖壊》を残らず葬り去る――ま、いわゆる害虫駆除ってヤツですか」

女が聞くと聞かざるとに拘らず、ぺらぺらと饒舌に狐面が喋る。
その全身から、蒼白い妖気が立ち昇る。他の者たちの姿が歪み、人ならぬ何かへと変貌してゆく――。
甲高い咆哮をあげ、女が一気に跳躍し襲い掛かってくる。

「東京オリンピック開催までの間に《妖壊》を殲滅し、この帝都東京をすっかり『漂白』する……」

狐面の背後にいる者たちが、女を迎え撃つ。

「そう。ボクらは――」

炎が、雷撃がビルとビルの隙間の袋小路で迸り、女の姿をした化生を一瞬で葬り去る。
狐面は白手袋を嵌めた右手を伸ばすと、消し炭となって爆散した女の残骸をひとつ抓んだ。
残骸をぐっと握り潰し、そして言う。

「――東京ブリーチャーズ」

2 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:32:04
ジャンル:現代伝奇ファンタジー
コンセプト:妖怪・神話・フォークロアごちゃ混ぜ質雑可TRPG
期間(目安):特になし
GM:あり
決定リール:他参加者様の行動を制限しない程度に可
○日ルール:4日程度(延長可)
版権・越境:なし
敵役参加:なし(敵はGMが担当します)
質雑投下:あり
避難所の有無:なし



名前:(※国産妖怪に限る)
外見年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
長所:
短所:
趣味:
能力:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:

3 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:32:24
名前:那須野橘音(なすの きつね)
外見年齢:17歳
性別:?
身長:165cm
体重:53kg
スリーサイズ:?
種族:妖狐(三尾)
職業:高校生/探偵
性格:慇懃無礼、飄然としており掴みどころがない
長所:洞察力、観察力、知覚力に長ける
短所:秘密主義、敵も味方もからかわずにはいられない
趣味:読書、入浴
能力:狐火、変化術
容姿の特徴・風貌:
すらりとした華奢な体型、腰までの黒い長髪
学帽、学ラン、マントの古い学徒姿に狐面をかぶっている

簡単なキャラ解説:
学業の傍ら、私立探偵として多国籍な住人のいる胡散臭い雑居ビルの半地下に事務所を構える通称『孤面探偵』。
勝手に事件を嗅ぎ付けては首を突っ込んでくるため、警察からは疎まれている。
その正体は妖狐一族の中間管理職、三尾の狐。
一族の長『御前』から2020年の東京オリンピックまでに都内の《妖壊》を根絶やしにしろとの命を受け、
『東京ブリーチャーズ』を結成。学生と探偵と御使いの三足の草鞋を履きつつ任務をこなす日々。

4那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:33:03
事務所のデスクの上で、黒電話がけたたましく鳴る。
ソファでひっくり返って仮眠をとっていた橘音は、その音に驚いて飛び起きた。
ずれていた狐面をかぶり直し、スリッパをつっかけてデスクへ向かう。

「ハイハイ、そんなにがならなくたって聞こえてますよ……っと。もしもしー?こちら那須野探偵事務所ー」
「……あぁ、御前。お疲れさまですー。御用は何ですか?」

どうやら、電話の相手は御前という者らしい。
御前。正式な名を白面金毛九尾の狐、玉藻前と言う。日本の狐一族を統べる大妖怪である。
が、橘音はそんな超大物を相手にまるで畏まる気配がない。近所のオバサンと世間話でもするように笑っている。

「ええ、わかってますよ。ちゃーんと仕事はしてますって!最近はボクら化生にとっても生き辛い世の中ですからねぇ」
「みんな、世の中の変化に応じて外見を変え、仕事を変え……人間社会に馴染まざるを得なくなっちゃって」
「ご存知ですか?化け草履は靴屋勤務。小袖の手はファッションデザイナー。泥田坊はコメ農家ですって。みんな人間に化けて」
「かくいうボクも御前の命で、こうして学生なんかやってるワケですがね……いやまあ、楽しいからいいですけど」
「どうです?御前も人間社会に溶け込んでみては?昔は宮中に潜り込んだりして、ブイブイ言わせてたんでしょ?」
「もう飽きた?……はぁ、そうですか……。面白いのに」

ひとしきり近況報告や噂話をしていると、電話の向こうの御前が話柄を変えてくる。

「それで……あぁ、今度の仕事ですか。ええ、わかりました。まぁ、チャッチャと片付けますよ」
「人間社会に溶け込むことをよしとせず、化生の本能のままに生きるモノ――」
「環境破壊や自然破壊により住処を追われたモノ。長い時を経て理性が蒸発してしまったモノ。心が壊れてしまったモノ」
「壊れた妖怪、それが《妖壊》――。それを東京から一匹残らず駆逐するのが、ボクら『東京ブリーチャーズ』の役目ですから」
「そううまく行くかな、ですって?失礼しちゃうなぁ、御前。これでもボクらはその道のプロですよ?お茶の子さいさいですって!」
「まず資料を見ろ?……わかりました。じゃあFAXしておいてください、キツネだけに……FOX、なんちゃって」
「……あ、今、スゴく呆れた顔しましたよね?電話越しでも分かりましたからね。今」

御前との通話を切ると、程なくして事務所の片隅に置いてある複合機へ資料が送られてくる。
今回『漂白』すべき化生の資料だ。それを手に取りしげしげと眺めると、橘音は思わず苦笑し、

「……ははぁ。なるほど、こりゃ手強い」

と、言った。
となれば、さっそく援軍を呼ぶ必要がある。橘音は再度黒電話の受話器を取り上げた。
東京を漂白するにあたって、橘音が適任と判断しスカウトした《妖壊》退治のプロフェッショナル。
それが『東京ブリーチャーズ』である。
橘音は他のメンバーにターゲットを伝え、作戦を考えるブレーンであり、実際の荒事は他のメンバーが行う。
資料をデスクに起き、電話の傍らのアドレス帳を見て、メンバーへと順番に電話をかけてゆく。
電話に出た者にターゲットの名前を伝え、仕事を請け負うか否かを訊く。
果たして、今回の仕事に喰いついてくるメンバーは誰だろう?
デスクに無造作に置かれた、御前からの資料。
その一番上には、こう書かれていた。




『八尺様』――と。

5夏 ◇qTStDTR5kc:2018/04/09(月) 08:34:33
敵役として参加します。よろしくお願いします。

名前:八尺夏(やさし なつ)
外見年齢:??歳
性別:女
身長:246cm
体重:125kg
スリーサイズ:150/96/144
種族:妖怪
職業:八尺様
性格:寂しがりで淫乱である
長所:でかい、目立たない、声が綺麗
短所:ポポポという謎の音が出てしまう、性欲強い
趣味:こっくりさん、男漁り、男攫い
能力:催淫術、格闘能力
容姿の特徴・風貌:ステルスではないかという程目立たない、縁のついた帽子を被っている、
白いワンピース姿、とにかく色々でかい、腰までの黒い長髪、稀に「ぽぽぽ」という音、声(?)を出す
目は普段は細く美人を髣髴とさせるが、獲物を見つけると大きく見開く

簡単なキャラ解説:
ある村に封印されていた、正体不明の女の姿をした妖怪「八尺様」の一人。
気に入った男に付き纏い、魅入った男を数日のうちに淫乱の宴に誘い、精を吸収し廃人にしてしまう。
成人前の若い男性、特に少年が狙われやすいとされ、相手を誘い出すために身内の声を出すこともある。
「八尺様」の出現頻度はそれほど多くはなく、田舎に多い事例だが、夏の場合は
都市部にも現れ、現在被害者を多数出しているという。

6創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:35:52
節子、このスレは敵役参加無しやで!

7創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:36:11
>>5
おう
味方として出てくれや

8那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:36:48
名前:髪さま
外見年齢:?
性別:?
身長:30cm
体重:100g
スリーサイズ:?
種族:麻桶の毛
職業:居候
性格:横柄
長所:ごくたまに含蓄のあることを言う(が、大して役には立たない)
短所:いかにもすごい力を持っていそうではあるが、その実役に立たない
趣味:シャンプー
能力:他人をハゲにする力があるとかないとか
容姿の特徴・風貌:茶色い毛の塊に一つの目玉
簡単なキャラ解説:
麻桶の毛(まゆのけ、まゆげ)と言われる人間の頭髪の化生。絡み合った毛髪の中に単眼が輝いている。
那須野探偵事務所で生活しているが、東京ブリーチャーズの一員ではなくあくまで居候。
おまけコーナーで橘音の相方を務める。

9那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:37:16
橘音「はいっ!始まりました『那須野橘音のミッドナイト・ブリーチャー』!パーソナリティはボク、那須野橘音と!」
髪さま「毛髪界のアイドル、髪さまがお送りするゾナ」
橘音「……毛髪界って何ですか……?」
髪さま「一から説明すると512KBオーバーすること間違いなしゾナが、説明するゾナ?」
橘音「いりません。さ、記念すべき第一回放送、行ってみましょう!」

>>5
橘音「一発目に参加名乗りを上げてくださったのは……う、うぇぇ!?八尺様!?」
髪さま「よもや仲間より先に敵が乗り込んでくるとは、お釈迦さまでもわからん事態ゾナ……まさに機先を制されたゾナ」
橘音「い、いえ、この程度の事態、全然大したことありませんよ。全然リカバー可能ですよ、慌ててませんよ、えぇ」
髪さま(……めっちゃ動揺してるゾナ……)
橘音「一応>>2にも書きましたし、>>6さんも指摘して下さっていますが、このスレは敵役参加はナシなんですよぉ……」
髪さま「どうしてナシなんだゾナ?」
橘音「いやまぁ、一応GMとして大まかなシナリオも用意してましたし、敵はみんなで倒せたらなぁ、な〜んて……」
髪さま「おまえの都合など知らんゾナ。せっかく参加してくれるというのに、門前払いするなど失礼ゾナ」
橘音「で……ですよねぇ〜……。ま、まぁ、そういうことなら参加OKとしましょう!……ただし……」
髪さま「ただし?ゾナ?」
橘音「>>7さんの仰る通り、ゆくゆく味方になって頂けるのなら!ということではどうです?それなら、そのように誘導しますし」
髪さま「>>5、そういうことではどうゾナ?ここはワシに免じてOKしてほしいところゾナ」
橘音「とりあえず、29日辺りまでブリーチャーズのメンバーを募集して、その後こちらから話を投稿する予定です」
髪さま「>>5はその間、自分のイントロダクションなど自由に書いてくれればいいゾナ」
橘音「袖振り合うも多生の縁、ということでひとつ!よろしくお願いします!」

>>6
橘音「ご指摘ありがとうございます!こういうことは他の方々に言って頂いた方が、角が立たなくていいんですよね」
髪さま「こっちが言うとどうしても、なんかキツい感じに受け取られてしまうものゾナ」
橘音「名無しの皆さんの介入も歓迎しますよ。その場合は、こうしておまけコーナーで返答させて頂く形になると思います」
髪さま「ワシなんかこのおまけコーナーしか出番がないゾナゆえ、おまけコーナーを増やすことが至上命題ゾナ」
橘音「いや、これはあくまでもおまけコーナーで、本編より増えるようじゃ困るんですが……」
髪さま「いずれはおまけコーナーが本編を凌駕し!ワシが主役となってスレを乗っ取るゾナ!モシャシャシャ!(註:笑い声)」
橘音「八尺様の前に髪さま漂白した方がいいんじゃないだろうか……」

>>7
橘音「今のうち宣言しておきますが、ボクは荒事がからっきしできません」
髪さま「ふんぞり返って言うことではないゾナ」
橘音「適材適所と言ってほしいですね。荒っぽいことは他のメンバーの仕事!ボクは仕事の受注と手配その他の雑用係ですから」
髪さま「ちょっと待つゾナ、ということは?もし、ブリーチャーズが誰も来なかったらどうなるゾナ?」
橘音「あ、160パーセント八尺様に負けます」
髪さま「即ゲームオーバーとか洒落にもならんゾナっ!?」
橘音「だから仲間を募集してるんでしょうが!もう昨日からずっと電話かけっぱなしですからね、ボク!」
髪さま「友達少ないゾナから、仕方ないゾナね。陰キャはこれだから……ゾナ」
橘音「いやいやいや!風評被害ですよそれーっ!?」
髪さま「ということで、我と思う妖怪諸氏には是非ふるって参加してほしいと思うゾナ」
橘音「29日あたりまで待つと言いましたが、それ以降も随時参加者募集中ですから!では、今夜はこれでっ!」
髪さま「参加希望者には漏れなくワシのシャンプーをする権利を与えるゾナ」
橘音「洗濯機に放り込まれたくなかったら黙っててください」

10創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:37:46
妖怪とか探偵とか現代とか東京だとか
ときめく単語が散りばめられた良さげなスレだなと思いました

11創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:38:01
うわっ、何だあんた狐のお面なんかつけて!漫画のキャラかよ!
個性的な探偵もいたものだなぁ

しかしその出で立ち、なんか見覚えがあるような気が…

12ノエル ◇4fQkd8JTfc:2018/04/09(月) 08:38:59
名前:御幸 乃恵瑠(みゆき のえる)
外見年齢: 20代前半ぐらい
性別: 男性型雪女
身長: 172
体重: 54ぐらい
スリーサイズ: 細身
種族: 雪女(雪男に非ず)
職業: かき氷屋らしいが冬は実質無職
性格: 天然 勘違いクール なんだかんだでお人よし
長所: 夏に近くにいると涼しい
短所: 冬に近くにいると寒い
趣味: アイスを食べること
能力: 雪・氷の生成、冷気を操る
容姿の特徴・風貌: 色白の肌、普段は黒目にセミショートの黒髪
白基調の和パンク調の服に青いストール
簡単なキャラ解説:何故か男性形の雪女。雪男と言われると怒る。
オスの三毛猫のようなものか男装女子のようなものかは謎。まあ妖怪だし。
真の姿を現しても普段とあまり変化はないが、普段から白い肌が更に白くなり瞳が氷のようなブルー、髪は雪のような銀髪になる。


妖怪退治は定番ネタだけど味方側も退治する側も全員妖怪って新しいな〜と思いつつ
おまけコーナーの遊び心が決め手でうっかり参上

>「ちょっと待つゾナ、ということは?もし、ブリーチャーズが誰も来なかったらどうなるゾナ?」
>「あ、160パーセント八尺様に負けます」

「無茶しやがって……。べっ、べつにお前のために参加…登録してあるんじゃないんだからな!」

>他人をハゲにする力があるとかないとか
「……さらっと書いてあるけどその能力滅茶苦茶怖くね!?」

13創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:39:28
>>12
お前荒らしかよォ…

14◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:39:56
>>13
荒らしちゃうわ!……って八尺様、八尺様じゃないかァーッ!
きつねさんも誘ってくれたことだし一緒にやりましょ!

15那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:40:39
橘音「皆さんこんにちは!『那須野橘音のサンデー・ブリーチャー』!パーソナリティはボク、那須野橘音と!」
髪さま「髪は長い友達、髪さまがお送りするゾナ」
橘音「すでに本編よりおまけコーナーの方が目立ってるっていうね……う〜ん」
髪さま「……おま……毛?」
橘音「ホントそういうノリやめてください」

>>10
橘音「ですよね〜?ときめきますよね〜?とりあえず、ボクがときめくワードを沢山ちりばめてみたんですけど」
髪さま「共感してもらえて有難いゾナ。スレ立てしたはいいけど誰も来なかったらと、戦々恐々だったゾナ」
橘音「これは気合を入れなくちゃいけませんね、髪さま!」
髪さま「ワシはおまけにしか出ないから、気合とか入れる必要ないゾナ。がんばれゾナ〜(ぐてー)」
橘音「(性根が)腐ってやがる……早すぎたんだ……!」
髪さま「髪さまを本編に出してください!の嘆願書をみんなで送ろう!ゾナ」
橘音「送られてきたって出しませんよ」

>>11
橘音「ふっふっふ……!そうでしょう?ビックリするでしょう?大!成!功!」
橘音「何を隠そう、このボクこそが!帝都東京にその人ありと謳われた狐面探偵!那須野橘音その人なのですっ!」
髪さま「誰も知らんゾナ」
橘音「……えっ?ご存じない?このボクを?おっかしーなァ……いわゆる迷宮入り事件とか、結構解決してるんですけど」
髪さま「警察が自分のアホさをわざわざ外部に触れ回るようなことをするはずがないゾナ」
橘音「そうですかぁ……確かに最近は《妖壊》関係の仕事にかかりっきりですし、名前が売れないのは仕方ないのかも」
髪さま「売れたところでTwitterやらFacebookに「コスプレ探偵見かけたwww」とか写真上げられるのが落ちゾナ」
橘音「コ、コスプレ!?がーんっ!……やっぱり、見覚えがあるっていうのもそういう関係なんでしょうか……」
髪さま「まぁ、むしろワシが率先して画像アップしてるんゾナが」
橘音「洗濯機一名様ごあんなーい!」

>>12>>14 ノエルさん
橘音「このままじゃ280パーセント敗北必至のボクに援軍がっ!?やったー!」
髪さま「ゴボボ……約束どおりワシの髪をシャ……ゴボゴボ……シャンプーする権利を与えるゾゾゾナナナナ……」
橘音「洗濯されながら喋るのやめてもらえますか?」
髪さま「ゼエゼエ……と、ともかくブリーチャーズが来てくれたのはめでたいゾナ、コンゴトモヨロシク……ゾナ」
橘音「これで痛いこととか疲れることは全部ノエルさんにおっかぶせて、ボクは高見の見物ですね!」
髪さま「ぶん殴られたいゾナ?」
橘音「い、いやまぁ、それは妖狐流ジョークとして、ともかく歓迎しますよ!仲間が増えるのは嬉しいことです!」
髪さま「八尺様が仲間になると仮定して、あともう一人くらい欲しいところゾナ」
橘音「そうですね!まだ募集中ということで!」
髪さま「こちらは29日に話を投下する予定なので、それまでにイントロダクション等あれば投下を頼むゾナ」
橘音「追加設定やボクとの関係等々、自由に考えて頂いて構いませんので!やったもん勝ちです!」
髪さま「今回の仕事内容、ターゲットの八尺様を漂白するということは伝達済みということでゾナ」
橘音「よろしくお願いしまーす!」
髪さま「ワシの意に沿わない場合は漏れなく髪の毛をハゲ散らかしてやるゆえ、肝に銘じておくゾナ……モジャジャジャ!」
橘音「ワンモア洗濯機入りまーす!」

>>13 八尺様
橘音「めっちゃ負のオーラ的なものを放っていらっしゃるーっ!?」
髪さま「う……うろたえるんじゃあないッ!日本妖怪はうろたえないッ!ゾナ!」
橘音「ま……まあまあ、八尺様!ここはひとつ穏便に……。負のオーラは本編で思う存分発揮して頂く感じで!」
髪さま「雪男女が自分の好みのタイプ(成人前の若い男性、少年)じゃないから怒っているに違いないゾナ」
橘音「それってつまりボクが(貞操的な意味で)ヤバイってことですか?」
髪さま「このままだと薄い本みたいな展開不可避ゾナね」
橘音「い、いえ、このスレ一応全年齢対象ですから、そういうのはちょっと……せめて婉曲的表現で……」
髪さま「今年の冬コミはこれで決まりゾナ、捗るゾナ」
橘音「何がですか……。あ、そうそう、ちなみにこのコーナーはあくまで打ち合わせや雑談用の場所ですので――」
髪さま「ここでの会話や情報は、基本的に本編には反映されないということでお願いするゾナ」
橘音「では今回はこの辺で!ごきげんよう!」

16ノエル ◇4fQkd8JTfc:2018/04/09(月) 08:41:24
「Snow White」――雑居ビルの通りに面した1階にその店はあった。
雑居ビルの中にあってこの店名では一見怪しい店に見えてしまうが、なんのことはない、喫茶店風のかき氷屋である。
かき氷しか出さないにも関わらず、粉雪のような氷のクオリティが半端ないということで知る人ぞ知る隠れた人気店だ。
製法は門外不出……というか出すに出せない。
ちなみに売上の何割かは北極のシロクマさんのために地球環境保護団体に寄付されるそうな……。

「ねぇねぇ、八尺様って知ってる〜? 最近噂になってるんだよね〜」
「そうそう、うちのクラスの男子がもう1週間来てなくってさ〜」
「まっさかー、ズル休みでしょー。あんなの作り話に決まってるじゃ〜ん、ねえ店主さん?」

「そうだよ、お化けや妖怪なんてこの世に存在しないんだよあんなのは全部ネットのデマさハハハ」

客の世間話に引きつった笑顔で答える店主の青年の正体は、日本古来の妖怪、雪女である。
雪女、というだけあって基本的に女性だけの種族であるが、オスの三毛猫程度の割合でごくたまに男性型も存在する。
女の集団の中に男がいるとパシリにされるのがありがちな展開であり、雪女の業界もその例に漏れなかった。
彼もまた近年の急速な地球温暖化を憂いた“雪の女王”と呼ばれる一族の王の命により、諜報員として派遣されたうちの一人だった。
するとたまたま同じビルにきつねの探偵事務所が入っており、いつの間にか東京漂白計画に巻き込まれていた。
本当にたまたまなのだろうか、という疑問はとりあえず置いておく。
今回のターゲットは「八尺様」。きつねをして手強いと言わしめるほどの妖壊であるが、
君はストライクゾーン外れてるから大丈夫とか何とか言いくるめられて参加と相成った。
しかしターゲットの性質上おびき出すには囮が必要になりそうだが、メンバーに丁度いい感じの少年型妖怪はいただろうか。

「……はっ、まさかきつねが……!?」

人間(妖怪)心理として、仮面で隠されると物凄い美少年か美少女ではないかと勝手な想像を巡らせるもので、囮としては適任かもしれない。
しかし彼(女)は戦闘能力皆無だ。雌狐だったらまだしも雄狐だったらそこからいけない事態にハッテンしかねない。
そこで客の小学生男子を見て名(迷)案を思いついた。

「そうだ、ランドセルを背負えば誰でも少年に変身できるぞ!」

そう、ランドセルとは背負うだけで誰しも小学生になれてしまう究極の記号的表現なのである。
「ちょっと借りるね」と言ってランドセルを背負って鏡を見た。クールな顔をした変態がそこにいた。

17創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:42:04
探偵さんこの辺りじゃ名の通った人だったのか
帝都の有名人と言えば、あいつかな…怪人65535面相とかって
名前からしてユニークな犯罪者かね
最近名を聞いてないが、あんた何か知ってるかい

18創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:42:15
>>17
そりゃあ、八尺様じゃないかい?

19多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:42:44
名前:多甫 祈(たぼ いのり)
外見年齢:14(実年齢も14)
性別:女
身長:152cm
体重:45kg
スリーサイズ:不明
種族:ターボババア(ターボばあさんなど表記ゆれあり)
職業:中学生
性格:ワルに成りきれない不良、単純
長所:速い、強い、頑丈、意外に優しい
短所:思慮に欠ける、口が悪い、ガサツ
趣味:テレビ(特撮系、バラエティ)、食事
能力:時速140キロ程度まで瞬時に加速し走れる。また、それに耐えうる頑強な肉体となる等
容姿の特徴・風貌:目つきが悪く、細身。ぼさついた長い黒髪。黒のセーラー服、
            あるいは私服のショートパンツにパーカー。素足に運動靴、時にサンダル

簡単なキャラ解説:
都市伝説妖怪ターボババア、の孫。妖怪だが人間の血も混じっており、普段は人間として生活している。
両親とは幼い頃に死別し、元祖ターボババアと質素な二人暮らしを送る。苦しい家計を助ける為、バイトとして東京ブリーチャーズに所属。
両親がいない故の寂しさから多少ひねくれていたり、ガサツで口が悪いなどの嫌いはあるが、
年下や弱いものに対しては優しい一面や、正義を愛する心を持っており、素直でないだけで心根までは腐っていない少女。
都市伝説妖怪なので古参妖怪ほどの恐るべき能力はないが、頑強な肉体と持ち前のスピードを活かし《妖壊》と対峙する。
学校での成績は中の下。語彙は少ない。

20那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:43:16
橘音「皆さんこんにちは!『那須野橘音のナイト・ブリーチャー』!パーソナリティはボク、那須野橘音と!」
髪さま「トリートメントはしているか?髪さまがお送りするゾナ」

>>17
橘音「な、なななんと!ここでまさか怪人65535面相、またの名をカンスト仮面の名前を聞くなんて……っ!」
髪さま「……誰ゾナ?」
橘音「いやまぁ、ボクにも色々ありまして。>>17さん、アナタさては古参クライアントですね?」
髪さま「古参も何も、前の事務所は1000はおろか200も行く前に消滅したゾナ」
橘音「知ってるなら『誰ゾナ?』とか訊かないでくださいよ……あと、消滅したのは不可抗力でしょ?」
髪さま「いくら妖怪でもあれには手も足も出ないゾナ」
橘音「ま、まぁ、とにかく!ボクのことをご存知の方がいらっしゃるというのは嬉しいことです、これからもご贔屓に!」
髪さま「カンスト仮面もそのうちチャッカリ出てくるかもしれんゾナ」
橘音「お……お楽しみに……?」

>>18
橘音「いや〜、さすがになんでもかんでも八尺様の仕業にしちゃうのは……」
髪さま「郵便ポストが赤いのも、お父さんの給料が安いのも、ワシがイケメンなのも全部八尺様が悪いゾナ」
橘音「全部関係ありません。特に最後」
髪さま「とりあえず、八尺様は敵として暴れてもらって構わないゾナ」
橘音「順番としては、ノエルさんが投下して下さいましたから、次に祈ちゃんのイントロダクションが欲しい所ですね」
橘音「で、祈ちゃんの後でボクが投下して、いよいよ八尺様のお出まし!といければ理想かなと」
髪さま「よろしく頼むゾナ」

>>19 祈ちゃん
橘音「いらっしゃーいっ!ようこそ東京ブリーチャーズへ!歓迎します!」
髪さま「女の子は大歓迎ゾナ、ワシの髪を思う存分シャンプーしていいゾナ、有難がるゾナゾナ」
橘音「はい丸洗い入りまーすっ!」
髪さま「ゴボゴボ……」
橘音「ということで早速祈ちゃんも導入をよろしくお願いしますね。ノエルさんのとき同様、関係等々捏造上等です」
橘音「チャッチャと合流するために、最初の舞台はノエルさんのお店「Snow White」ということにしておきましょうか」
橘音「ではでは、よろしくお願い致します!」
髪さま「両親のいない寂しさは、ワシが紛らわしてやるゾナ!さあ、ワシの胸に飛び込んでくるゾナ!」
橘音「胸どころか身体がないでしょ、髪さま……」
髪さま「いざとなったら髪で胴体を構成するゾナ」
橘音「そんな無駄なことに妖力使うのやめてください。ではまた次回っ!」

21多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:44:02
――とぅるるるる。
多甫家の玄関で電話が鳴る。
アパートであり、音が隣に響くのを気にしているのか、着信音はやや小さめに設定されていた。
コールが2回ほどを過ぎた所で受話器を手に取ったのは、目つきの悪い、パーカーにショートパンツの少女だった。
その少女の名前は多甫祈といった。

「はい、多甫です……って、橘音か」
 最初は固く返答したものの、知った相手と知るや祈は口調を崩した。
橘音とは、祈のバイト先である探偵事務所の所長を務める人物、那須野橘音のことであり、
世間での通称は『狐面探偵』と言った。
その那須野橘音は祈に仕事があると言い、祈が先を促すと、ターゲットの名を告げた。
――『八尺様』。

「あ? 八尺様?」
 思い当たることがあったようで、祈は口元を抑えて一瞬考え込み、問うた。
「……なんだっけそいつ。笛? あ、いやなんかでっけー貞○みてーなやつだっけ? あたしと同じ都市伝説系の……」
 電話越しの相手からは呆れたような、からかうような響きを持った答えが返ってきたようだった。
 祈の耳が赤くなる。
「……う、う”っせーなァ! バカ! あたしは強ェし敵の情報とか知らなくていいから敢えてだよ! 敢えて!!」
 そしてめちゃくちゃに怒鳴ると、それをなだめるような声が電話越しに聞こえたようだった。
「……いいけどな、別に。今回もそいつ見つけてただ蹴りとばしゃいいんだろ? ……は? 違う?」
 祈の表情が怪訝そうなものに変わる。
 祈はばりばりの肉弾戦闘タイプの妖怪であり、その尋常ならざるスピードを活かして戦ったり、
逃走する敵を追ったりしてきたのだが、今回はそうでないという。
自分が戦闘面以外で役に立つ、という姿が想像できず、困惑しているのだった。
 あたし勉強あんまりできないしな、なんか調べものとか難しい事頼まれたらどうしよう、などと考えて曇っていた祈の表情は、
電話の相手の言葉を聞き、その意味を理解することで晴れていく。
「あー、はいはい。囮な! あたしは細いし小さいから学生帽被ってランドセル背負ったら完璧小学生男子ってことな!?
 そんでそれが八尺様の大好物、って――ふざけてんのかてめぇ! 誰が小学生男子のそっくりさんだってんだコラ!?」
 そして晴れを通り越して、雷が落ちる。
受話器を握りつぶさんばかりに怒る祈の様子が電話越しでも面白いのか、
電話越しには笑い声が響いたようだった。そして何事か聞こえたかと思うと、逃げるように電話はぷつりと切れた。

「……詳しい話は「Snow White」で、とか、やってくれないと御幸が小学生になってしまうかも、とか。
意味わかんねーことテキトー言って逃げやがって。ま、行くけどな」
 祈はぶつくさ呟き、受話器を置くと、戸締りやガス、室内の電球の消灯等を一通り確認した後、
玄関に戻ってきて運動靴を履いた。そして玄関の扉を開けて外へ出ると一度振り返り、
「じゃ、行ってきます」
 と一人呟く。扉を閉め、鍵を掛けて、歩き出す。向かうは「Snow White」。
祈が所属する東京ブリーチャーズのメンバー、御幸乃恵瑠が経営するかき氷屋であった。
そこで詳しい話は語られるとのことだが、果たして小学生男子になりきれるメンバーが他にもいて、祈や御幸は囮の役目を免れるのか?
それとも本当に祈や御幸は小学生を演じることになってしまうのか。はたまたこの作戦自体がボツになってしまうのだろうか?
それがわかるのはまだ先の話である。

22多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:44:27
八尺様はここ数年の間に突然メジャーになった妖怪である。
元々は東京とは縁もゆかりもない僻村に祀られていた祟り神だったが、ネットの普及と共に知名度を上げた。
本来は一部地域でのみひっそりと語り継がれていた存在が、インターネットにより爆発的に有名になる――
ここ十年程度の間に、妖怪の中ではそうして力を増す妖怪たちが大勢出現した。
八尺様だけではない。クネクネ。コトリバコ。姦姦蛇螺。その他枚挙にいとまがない。
フォークロアブームに起因する、いわゆる都市伝説系妖怪の台頭である。
とはいえ、それ自体は別に珍しいことではない。都市伝説ブームはある一定の周期で必ず訪れる。
古くは怪人赤マント、人面犬、口裂け女。
特に、口裂け女は当時の警察当局が口裂け女に注意と勧告したほど社会現象を巻き起こした妖怪である。
インターネットのない時代、人々の噂だけでもそれほどの騒動となったのだ。
ネット社会の現在、広まる噂のスピードと範囲たるや、もはや全世界規模と言っても差し支えあるまい。
すっかり人間に主導権を握られてしまった妖怪達にとって、知名度が増すこと自体は歓迎すべきことである。
だが、そんな『急速にメジャーになった妖怪』は、大抵の場合ひとつの問題を抱える。

それは『ご近所付き合いができない』ということだ。

妖怪と言っても、なんでも好き勝手にやってよいということではない。
妖怪には妖怪のコミュニティがあり、妖怪なりの社会性をもって生きてゆかねばならないのだ。
まして、今は人間の世。かつてのように妖怪と人間が互いのテリトリーを尊重していた時代ではない。
妖怪が生きていくためには、人間社会の影でルールを遵守し、身を寄せ合っていくしかない。

しかし、最近まで隔絶された地域(大抵の場合ド田舎)で存在してきた都市伝説系妖怪にはそれが理解できない。
よって、メジャーになって行動範囲が拡大した後でも、旧来同様自分のやりたいことだけをしようとする。
東京以外ならまだしも、それを都内でされた日には、予想される被害たるや相当なものになるだろう。
従って、そういった『都会のマナーを守れない妖怪』には、マナーを教え込む必要がある。
もしくは都内から退去して頂く。または滅びて頂く。

>……なんだっけそいつ。笛? あ、いやなんかでっけー貞○みてーなやつだっけ? あたしと同じ都市伝説系の……

黒電話でブリーチャーズのメンバーに連絡する。幸い、目星をつけた少女は自宅にいた。
ぶっきらぼうながらも可愛い声が聞こえてくる。今回の仕事内容を伝えるも、少女――祈はピンときていないようだった。
おやおや、と肩を竦める。

「ご存じないんですか?勉強不足ですねぇ。学校の勉強だけじゃなく、妖怪の勉強もお粗末じゃ先が思いやられますよ?」

>……う、う”っせーなァ! バカ! あたしは強ェし敵の情報とか知らなくていいから敢えてだよ! 敢えて!!

「アハハ、そうですか。確かに祈ちゃんは強いですからね、事前情報なんて不要でしたか。いや、それは失敬!」

受話器越しにも感じられる怒気を笑って受け流す。こんな遣り取りはいつものことだ。
素直でからかい甲斐があるので、ついついちょっかいを出してしまう。
ひとしきり祈をからかい尽くすと、橘音は『Snow White』へ来るように――と締めくくって通話を切った。
今回はこの三人で当たることになるだろう。他のメンバー二、三人にも声をかけたが、反応は薄かった。
東京ブリーチャーズは強制ではない。メンバーのうち、そのとき手の空いている人員が漂白を担当する。

「――さて、と」

橘音は面をかぶり直し、長い髪とマントを翻して踵を返すと、事務所を出た。

23那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:44:56
薄暗い半地下にある事務所を出、やや傾斜の急な階段をのぼって、一階へ行く。
カララン、というドアベルの軽快な音を聞きながら、かき氷店『Snow White』へ入ると、洒落た店内と喧騒とが橘音を迎えた。
客の数は多い。そして、そのほとんどは若い女性のように見える。
いかにも女性の好みそうな、シャレオツな店だ。自己主張しすぎないインテリアや店内BGMが落ち着いた空間を演出している。
店の雰囲気だけでなく、肝心のかき氷の味の方も申し分ない。飲食店評価サイトでも星四つの評価を叩き出しているという。
原宿やら表参道やらに出店すればさだめし評判となるだろう――と、橘音はいつも思う。
が、それは不可能であろうということも理解している。
なぜなら――

「ノエルさん……。人様の嗜好に口出しはしませんが、そういう趣味はせめてバックヤードでやった方がいいと思いますよ?」

姿見の前でランドセルを背負っている店長の青年に、同情を多分に含んだ忠告をする。
この人は小学生に回帰願望があったのだろうか?などと思うものの、そもそも妖怪はごく一部を除いて学校へ行かない。
オバケにゃ学校も、試験もなんにもない。ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲー、である。

「何やってるんですかもう。何もノエルさんを囮にしようなんて考えてませんよ、それとも囮になりたいんですか?」
「それはそれとして。さっき祈ちゃんにも召集をかけておきました、今回はこの三人でやりましょう」
「……あ、宇治金イチゴミルクひとつ。あと熱いお茶をお願いします」

カウンター席に座り、注文をする。橘音もここのかき氷のファンである。
ほどなくかき氷が運ばれてくると、さっそく柄の長いスプーンですくって一口。
なお、狐面は口許の開いた半狐面のため食事に支障をきたさない。

「んん〜……おいしいっ!やっぱり、ノエルさんの作るかき氷は絶品ですね!このなめらかな口溶け!」
「一気に食べてもアイスクリーム頭痛にならない!そしてこの練乳とイチゴと餡と抹茶のハーモニーがぁぁ……!」

狐面をかぶったマント姿の学生が女性客に混じってかき氷を食べている姿は異様だったが、本人は気にしない。
瞬く間に平らげ、冷えた身体を熱いお茶で温めながら祈の到着を待つ。

「あ、祈ちゃーん!こっち!こっちですよー!」
「祈ちゃんも何か食べるでしょう?何がいいですか?あぁ、ここはボクがおごりますよ。仕事の前金代わりってことで」

祈が店にやってくると、そう言って彼女の分を注文する。
客足が一段落し、ノエルの手が空くのを待ってから、橘音はマントの内側から10インチタブレットを取り出した。
そして、おもむろにふたりへ膝を詰めて切り出す。

「じゃ、おいしいかき氷も食べたことですし、そろそろ本題に入りましょうか」
「今回のターゲット、八尺様に関しては、正直情報が『ほとんどない』です」
「わかっていることは男性――未成年、特に小学生くらいの少年に強い執着を見せるということ」
「強力な呪詛の力を持つということ。そして、とても執念深いということくらいです。世間で流布されている話の通りですね」
「歴史のある土着系妖怪なら、使う妖術から弱点に至るまで把握しているんですが、相手は新興の都市伝説系妖怪ですから」
「つまり、今回ボクたちは『相手のことを学習しながら、臨機応変に対処しなければならない』……ということですね」
「……行き当たりばったりでGO!とも言いますが」
「え?そんなのいつものことだろって?いやぁ〜、これは手厳しい!」

早い話がノープランということだ。橘音はアハハ、と誤魔化すように笑った。

24那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:46:08
「八尺様は昔の習性の名残か、強い縄張り意識を持ちます」
「自分の縄張りを作り、回遊魚のように縄張り内を周回して、自分好みの獲物を探し、捕食する」
「現在までの、八尺様の仕業と思われる失踪事件の現場をピックアップしました。ここと、ここと、ここ――」

タブレットをカウンターの上に置き、ノエルと祈に見えるように地図を表示する。
ある一定の区域に事件現場が集中している。まるで円を描くように、彼女の『縄張り』が浮かび上がってくる。

「出没時間はだいたい夕暮れ。逢魔が時――ですね。怪異の出現にはお誂えですが、単に子供の帰宅時間ってだけでしょう」
「とすると、今度『彼女』が現れるのは、だいたいこの辺り……ということになります」

タブレット上の八尺様の縄張りの中で、まだ完全な円を構築していない箇所をトントンと指先で叩く。

「で、作戦なんですが。祈ちゃんは電話でも言った通り、囮として男子小学生の格好をしてください」
「そして、ここにある公園まで八尺様を誘導してもらいたいんです。この役目はキミ以外にはできません」

キッパリと言い放つ。――が、その声には祈をからかうようなおどけた抑揚はない。本気で言っている。

「ボクやノエルさんが変装して、それがうまく行ったとしても、ボクたちは『彼女から逃げられない』。まず確実に捕まります」
「縄張りとは、つまるところ結界。結界の中では、その主は自由に行動することができる――」
「恐らく、八尺様は縄張り内であればどこでも一瞬で移動できるはず。限定瞬間転移、というヤツですね」

妖怪の中には、一瞬で遠距離を移動する妖術を使う者がいる。
ホラー映画等に見られる、鈍足の殺人鬼を引き離したと思ったらいつのまにか先回りされている――という現象はこれである。
人間より遥かに優れた身体能力を持つとはいえ、橘音やノエルでは八尺様の追跡からは逃れられない。
八尺様の追跡を振り切り、公園まで誘導するには、祈の超脚力が必要不可欠なのだ。
とはいえ、それさえ完璧とは言えない。何せ相手は未知の祟り神である。

「祈ちゃんが八尺様を公園まで誘導したら、次はボクたちの出番……というかノエルさんの出番です」
「公園をボクの妖力で結界化しておきます。ボクの結界内では、八尺様も存分に力を発揮できないでしょう」
「あとはノエルさんの冷気で氷漬けにするなり、祈ちゃんの変身ヒーローばりの飛び蹴りで倒すなりすればいい、と」
「まぁ、ザックリした作戦で恐縮なんですが、なんせわからない部分が多すぎますんでね……そこはご容赦ください」

そこまで一気に説明すると、橘音は一息ついてお茶を口に含んだ。

――まぁ、八尺様が実力未知数ってこと以外にも、まだ不安要素はあるんですがね……。
――それは別に話さなくてもいいでしょう。ボクの取り越し苦労かもしれませんし……。

仮面越しにノエルと祈の顔を見遣り、そんなことを考える。
いずれにしても、あとは当たって砕けろ。八尺様漂白作戦の開始である。


時刻は16時。この季節は日没が早く、もう周囲は薄闇に包まれている。怪異の出現にはうってつけのシチュエーションだ。

「祈ちゃん、うまくやってくださいよ?八尺様と遭遇しても、決して戦わないこと。いいですね」

結界を張った公園の自販機前に佇み、携帯電話で祈に念を押す。
祈は八尺様出没予想ポイントで待機。八尺様に見つかりやすいよう、無防備な姿を晒す。

「ノエルさんも準備をしておいてください。きっと、ここへ来る頃には八尺様はだいぶヒートアップしていると思いますから」
「冷気で頭を冷やしてあげましょう。あとは、会話が通じるかどうか――ま、試してみるしかないですね」

自販機でホットとアイスのコーヒーをひとつずつ買い、アイスコーヒーをノエルに差し出す。
ふたりのいる公園は八尺様の縄張りにギリギリ隣接した場所にあり、面積もなかなか広い。
もし荒事になったとしても、近隣への被害は出づらい。まさに今回の作戦向きの場所である。
まずは、祈が首尾よく八尺様を連れてくること――それにつきる。

「では。――東京ブリーチャーズ、ミッションスタート」

ホットコーヒーを一口飲んで、公園の時計に目を向ける。
児童の帰宅を促す『遠き山に日は落ちて』の放送が、暮れなずむ公園に物寂しく響いた。

25創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:46:38
>>24
ピックアップがヒップアタックに見えた

26創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:47:06
設定やらが俺好みで凄く参加したいのにPCが壊れている悲しみ
髪さまの力で何とかならないかな

27多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:47:37
 野球帽を被り、首にはマフラー。
 長い髪はざっくりまとめて野球帽の中に収め、余った髪もパーカーの内側にしまい、
それが一見して分からないようマフラーで首元を覆う。
更に下をショートパンツから男子用のハーフパンツに履き替えたことで体のラインは一層隠れることになり、
極め付けに黒いランドセルを背負えば、立派な高学年の男子小学生が完成、と言ったところである。
「Snow White」に置かれた姿見で祈自身も確認したのだが、なかなかそれらしく出来上がっていると感心したものだ。
 だが、祈はそれがなんとなく悔しい。
普段から意識している訳ではないが、髪も伸ばしているし少なくとも自分は女だという気持ちが祈の中にはあったのに、
こんなに男の格好が似合ってしまうなんて、と。何らかの辱めを受けているような思いであった。
 それにここ、橘音の指示した八尺様の出現予想ポイントにくるまでの間に一体何人の人とすれ違っただろうか?
帽子を目深に被っていてわからなかったが、もしすれ違った中に知り合いが混じっていて、
自分だとバレていたらと思うと気が気でない。
しかし前金代わりとしてかき氷を食べてしまった以上、途中で断ることもできず、なし崩しにここまで来てしまったのである。
表通りから少し離れた、裏通りとも言うべき場所。
街灯は少なく、ビルが丁度夕暮れ時の西日を遮っていて道に影を落とし、一足先に夜が来たようなこの場所に。
 祈はため息をつき、ビルの壁にもたれ掛かりながら、思う。

――それもこれも、御幸の出すかき氷がおいしいのがいけない。

 あの氷がふわふわなのが悪い。いちごみるくが舌の上であまりに甘くとろけるものだから、
どうしても抗えず注文してしまったのだ。
だとすればこんな事態になったのは、あのおいしいかき氷を作る御幸の所為であり、
戻ったら文句の一つでも言ってやらねばなるまい。
 美味しかったと。
 前金代わりだと言われてかき氷を出され、疑問に思うどころか喜んで食べてしまう自分のうっかり加減を棚に上げて、
祈が意味不明な決意を静かに固めていると、ハーフパンツのポケットに入れた携帯(橘音からの借り物)が鳴った。
ポケットから取り出して通話ボタンを押し、耳に当てる。橘音の声が聞こえた。
「祈ちゃん、うまくやってくださいよ?八尺様と遭遇しても、決して戦わないこと。いいですね」
 前置きはなく用件のみ、作戦前の最終確認、と言ったところである。
「わーってるって。やり合うなら公園の中で、だろ」
 それを理解して、祈も短く適当に返す。
いくら男子小学生に変装をしても、声までは男子小学生になれない。
あまり長話をしていては声で八尺様にバレてしまうかもしれないと思い、手短に一言、二言言って通話を切る。
そしてポケットに携帯をしまうと、残ったのは耳が痛くなるような静寂だった。

 最初は、橘音の声を聞いてしまったからだと祈は思った。
今いる場所が暗く人気のない裏通りだから、人の声を聞いた後だと尚更寂しく感じ、
こんなにも静寂が耳に刺さるような思いがするのだと。
 だが、違和感。
確かにここは裏通りだが、コインパーキングなどもあり、
先程だって車が一台、駐車にやってきたりしていたのだ。人が全く通らないと言う訳ではなかったし、
表通りの遠い音だって、微かにだがここまで届いていた。
それがどうしたことだ。今では動くもの一つなく、何も聞こえないのだ。
 空気が明らかに変わっていると祈は直感する。
体に緊張が走り、この位置から300メートル程の場所にある公園の位置が瞬時に思い出される。冷や汗が背中を伝った。
そして。

――ぽ、ぽ……ぽぽぽ。

その泡が弾けるような不気味な声が、確かに聞こえた気がした。

28那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:48:01
橘音「パソコンの前の皆さんこんばんは!スマホの前の皆さんもこんばんは!ガラケーは……えーっとぉ……」
髪さま「那須野橘音のナイト・ブリーチャー、始まるゾナ」

>>25
橘音「えぇ〜……それ、わざわざ指摘するようなことですかぁ〜?せっかくシリアスにやってるのにぃ」
髪さま「ヒップアタックだけに、尻ass……なんちゃってゾナ」
橘音「くだらなすぎて怒りも込み上げてきません」
髪さま「別に本編もそんなにシリアスって訳じゃないし、気にしないゾナ」
橘音「いやいや……一応伝奇とか怪奇とか、オカルトとかを取り扱ってるんですからそこは……ねぇ」
髪さま「世の中、なるようにしかならんゾナ。おまえがシリアスにしたいと思ってもみんなが従うとは限らんゾナ」
橘音「そこはなんとかこう、伏して!伏してお頼み申し上げますぅぅ〜!このとーりっ!」
髪さま「実際問題、シリアス一辺倒でも肩が凝るゾナ、適度にギャグも入れるのがいいゾナ」
橘音「ま、まぁ、一理ありますね……。そこはブリーチャーズの皆さんの裁量にお任せしましょう!」
髪さま「なんとなればおまけコーナーをやってもらっても構わんゾナ、ワシのことも自由に使ってくれていいゾナ」
橘音「誰も使わないでしょ、髪さまなんて……」
髪さま「ゾナッ!?東京ブリーチャーズのマスコットキャラであるワシを使わんとは何事ゾナ!」
橘音「マスコットキャラだったんですか!?可愛げゼロですよ!?」
髪さま「何を抜かすゾナ。いずれは目玉のファーザー(オブラート的表現)に匹敵する知名度を獲得する予定ゾナ」
橘音「なんたる畏れ多さ……!(ブルブル)」

>>26
髪さま「ワシは全知全能の髪さまゾナ。出来んことなどないゾナ」
橘音「ほほう!それではさっそく>>26さんのパソコンを修復しちゃってください!もーピカピカに!」
髪さま「嫌ゾナ。人様(髪だけど)に何かして貰いたかったら、それなりの態度というものがあるゾナ?」
橘音「がめついなぁ……」
髪さま「カミが貢ぎ物を求めるのは当然ゾナ。貢ぎ物を確認したら、ワシの神通力を披露してやってもいいゾナ」
橘音「だそうです、>>26さん……すいませんね、横柄な髪さまで……」
髪さま「カミとは横柄なものゾナ。貢ぎ物さえあればワシの神通力で>>26のパソコンに毛をモッサモサ生やしてやるゾナ」
橘音「ほう。毛が生えるとパソコンが直るんですか?」
髪さま「ハァ?直るわけないゾナ。おまえはなーにを訳の分からんことを言ってるゾナ?常識で考えるゾナ」
橘音「……えっ?でも、パソコンが壊れてるから何とかしてって……」
髪さま「ワシは毛にまつわることしか出来んゾナ。当たり前のことを訊くなゾナ」
橘音「さっき全知全能って言ったクセに……」
髪さま「全知全能(※ただし毛に限る)ゾナ」
橘音「(ガチャ)おぉーっと!ジュース零しちゃったー!すぐに拭かなくちゃー!(棒)」
髪さま「イダダダ!ワシで拭くなゾナ!雑巾じゃないゾナ!」


橘音「えー、祈ちゃんが投下してくださいましたので、次は八尺様にお願いしたいと思いますがいかがでしょう?」
橘音「その後ノエルさん、ボク、また祈ちゃんというローテーションで行ければと。では今日はこれにて!」

29多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:48:31
祈「…………。あっ、もう始まってんのか。おいーす。ゲストパーソナリティの多甫祈と」
髪さま「キューティクルがビューティフル、髪さまゾナ」
祈「っつー訳で、許可も降りてたことだしオマケコーナーのそのオマケ、『那須野橘音のナイト・ブリーチャー(?)』始めんぞ。
  橘音と髪サマのコンビ程上手くできねーだろうけど、頑張るから。あと、なんか間違えてたらごめんな?」
髪さま「初々しいゾナ。祈ちゃん、先輩であるワシがリードするから安心してついてくるゾナ」

>>20
祈「まずは、歓迎してくれてあんがと。これからよろしくな。髪サマも」
髪さま「よろしく頼むゾナ。ではさっそく新人にワシのシャンプーという大役を頼みたいがゾナ」
祈「いいよ」
髪さま「いいゾナ!?」
祈「いつも橘音がやってるみたいにやればいいんだろ? 洗濯機回してぼちゃんって」
髪さま「あ、あれは悪い例だゾナ。真似しちゃいか」
祈「でも洗濯機に入って丸洗いって面白そうだよなー! 小さい時やってみたいと思ってたんだよね。
  ばーちゃんに怒られそうだから結局しなかったけど。で、実際どんな感じ? 楽しいのかやっぱり!」
髪さま(……全然楽しくないどころかきっついゾナが、ワクワクした少女の瞳を裏切れんゾナ)
髪さま「た、楽しいゾナよ! 回るプールみたいなもんゾナ!」
祈「マジかー! じゃあこれ終わったらやってやるからな!」
髪さま「た……楽しみにしてるゾナ」

>>26
祈「髪サマでも直せねぇんだってよ。ごめんなー」
髪さま「直せん訳ではないゾナ。本気を出してないだけゾナ」
祈「あたしも機械疎いからさー。あっ」
髪さま「どうしたゾナ?」
祈「やー、今は参加できなくても、今後参加できる可能性があるなら、
  今のうちに参加させたい妖怪のプロフィールとか纏めて投下しておけるんじゃねーのって」
髪さま「なるほどゾナ。そうすれば少なくとも、考えてた妖怪の種族を敵役やらで出されて
    『ああ!この妖怪ワシが出したかったのにゾナー!!』ってなることもないかもしれんゾナ」
祈「そーそ。キープしとく感じかな」
髪さま「橘音が許したらそういうのも考えておくといいんじゃないかゾナ」
祈「パソコン、早く直ったらいいな」

>>28
祈「もしかしたら八尺夏ってのも何か書きたいことあんじゃねーかなーって思ってハンパなところで止まっちったんだけど、
  それ伝え忘れててさ。橘音が仕切ってくれて助かったよ。さんきゅー」
髪さま「報連相は社会人の常識ゾナ。祈ちゃんもバイトとして社会に出てるんだから
     報告や連絡、相談はきちんとしなきゃいかんゾナ」
祈「悪かったよ。かといって勝手にオマケみたいなのやんのもはばかれ、はばかられ?てさ。
  どう伝えたもんかって悩んでたから、髪サマとオマケコーナー解禁は助かったよ。
  ……伝えると言えば、橘音とか御幸のやつとか八尺とか、これから一緒にやる奴らに言わなきゃなんねーことあんな」
髪さま「なんゾナ?」
祈「あたしの事はある程度好きに動かしたり、なんなら喋らせたりしていいし、
  橘音みたいに関係を捏造したりしてもいいよ。ってさ」
髪さま「ほう……その心はゾナ?」
祈「心は、とか聞かれても……なんつーか。『決定リール:他参加者様の行動を制限しない程度に可』って書いてるとは言え、
  こういうのってちゃんと言っとかないと、みんな遠慮すんじゃねーかなって思ったんだよ。
  これから八尺様だって出て来る訳で、したい演出とかやりたいこととかあるだろ? そこであたしに遠慮してたら
  何もできなくなんねーかなって心配でさ。あたし楽しいのが好きだし、その……遠慮せず楽しく一緒にあそべたら、っつーか。
  ま、こういうのが橘音やみんなの不都合にならなけりゃだけど」
髪さま「そういうことかゾナ。これも橘音次第ゾナが、ワシもみんなで楽しく遊べるのは嬉しいことだとは思うゾナ。
     ちなみにこのワシ、髪さまもオマケコーナー限定で登場フリーみたいゾナ!
     だからみんなもワシをガンガン登場させて、動かしていいんだゾナ? オマケコーナーで髪さまと握手! ゾナ!」
祈「握手って……髪サマの手ってどこにあんだよ。この辺か?」
髪さま「そこは目ゾナァーッ!?」

祈「んじゃ、言いたいことは言ったし、八尺様の続きを楽しみにしつつ、今日はあたしもこれで!
  よっしゃ髪サマ、洗濯機行くぞー!」
髪さま「あ……忘れてたゾナ……」

30創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:48:57
年頃の女の子に小学生の格好させるなんて、デリカシーのないやつだな橘音は
祈ちゃん、おじさんと女の子の服買いに行こう(ゲス顔)

31ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:49:22
ノエル「うおお、麻桶の毛すげー! 山賊を軽く締め上げる、そこに痺れる憧れるゥ!」
髪さま「さっきから何を読んでるゾナ? “日本妖怪大全”……?」
ノエル「日本古来の伝統妖怪を網羅してて参考資料に最適。境港妖怪検定中級の公式テキストにもなってるんだ」
髪さま「堺港…何ゾナその思いっきり目玉のファーザー(オブラート的表現)の息がかかってそうな検定」
ノエル「というわけでナイト・ブリーチャーもどきのはじまりはじまり〜」

ノエル「失踪事件の現場で犯人と遭遇してヒップアタック、お尻とお尻でお知り合い」
髪さま「昨日の敵は今日の友、一件落着ゾナ……って何も落着してないゾナ!?
……あれ? ワシがツッコミに回ってるゾナ? 尻ass分が足りんゾナ」
ノエル「でも今の都市伝説妖怪(八尺様くねくね世代)はガチでシリアスに怖いけど
前のブームの時の都市伝説妖怪(口裂け女人面犬世代)ってどこかコミカルな感じがするのはなんでだろう」
髪さま「傾向として今のは無口で一世代前はお喋りなのが原因かもしれないゾナ。
お前も黙ってれば名実共にクールなイケメン……の可能性がワンチャンある……ゾナ(小声)」
ノエル「いや、この業界敢えて残念な人からスタートするのが最強だと思うんだ(キリッ」
髪さま「その心はゾナ?」
ノエル「残念な人なら残念な言動をしたり残念設定が追加されても元の人物像を尊重していることになるし
逆に残念な人が格好いい言動をしたり格好いい設定が追加された日には……」
髪さま「……はっ、ギャップ萌え発動!? なるほど……残念な人最強ゾナ!」
ノエル「というわけで僕も決定リールどこまでも可、いっそ決定リール通り越して動かしてもOKな勢いで!
いやあ、第一印象で2枚目のイケメンとして入ってしまったら常にキャラ崩壊の恐怖が付きまとうところだった……危ない危ない」
髪さま「お前の場合そんな心配は要らんゾナ」

>>30
ノエル「年頃の女の子を知らないおじさんが連れて行くのは犯罪フラグ……!
そうだ、僕も一緒に行こう!」
髪さま「止めるんじゃないんだゾナ」
ノエル「あれ? これ可愛くね?」(スチャッ―― さりげない自然な動作で猫耳バンドを装着した)
髪さま「お廻りさんこちらですゾナ――というツッコミ待ちかもしれぬがそもそも女性服売り場にも猫耳バンドは無いゾナ」

32創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:49:37
既に八尺夏は動き出している…!

33創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:50:10
だといいなあ
やっぱ敵は別PLのほうがパンチ効くもんね

34那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:50:34
橘音「なんだかもう既に本編よりおまけコーナーの比率の方が多いですよォ―――ッ!!?」
髪さま「モジャジャジャ!(註:笑い声)だから言ったゾナ、いずれはおまけがスレを乗っ取ると……!」
橘音「やらせはせん!やらせはせんぞぉ!……ということで那須野橘音のナイト・ブリーチャー、始まります!」

>>29 祈ちゃん
橘音「それにしても、祈ちゃんもノエルさんもやりますねえ。まったく違和感ありません」
髪さま「ワシのキャラが立っているからだゾナ、もっとワシを褒めろゾナ」
橘音「自分で言ってりゃ世話ないですね。ともかくおふたりとも、ありがとうございます」
髪さま「今後も何かあればワシを召喚するゾナ。本来ワシはとても多忙な身ゾナが、特別に相手をしてやるから有難く思えゾナ」
橘音「あーはいはい。すぐ増長するんだから……」
髪さま「そしていずれはスレタイも『神さまのナイト・ブリーチャー』に変更していく心意気ゾナ……モジャジャジャ!」
橘音「身の丈に合わない野望は破滅を招きますよ?」
髪さま「それはさておき、ワシは祈ちゃんのところで言いたいことを全部言ったので、ここで改めて言うことはないゾナ」
橘音「あぁ、洗濯機で丸洗いされるの楽しい!大好き!ってヤツですよね?」
髪さま「そこはどっちかというと忘れてほしい部分ゾナ!?」
橘音「むしろそこが大事でしょ。……『やりたい妖怪をキープしておきたい』っていう話ですよね、いいと思います」
髪さま「東京ブリーチャーズにはまだまだメンバーがいるはずゾナ。そういう面子は予めキープしておくといいゾナ」
橘音「それは全然構わないんですが、ひとつだけ注意点が」
髪さま「ゾナ?」
橘音「キャラを投下して頂く限りは、参加をして頂きたいのです。『投下=参加の意志あり』とみなしますよ、ということですね」
髪さま「参加の意思がないのにただキャラだけ作るというのはイカンゾナ、ということゾナ」
橘音「NPC扱いを期待しての投下も、ご遠慮いただければ。折角作ったのに、やられ役で敵にワンターンキルされるとか嫌でしょ?」
髪さま「それだけ守ってもらえるなら、もちろんキープは歓迎するゾナ」
橘音「まだ見ぬブリーチャーズの皆さんのご参加をお待ちしています!」
髪さま「早くパソコンを早く修理して参加するゾナ!Just do it!!」

>>30
橘音「妖怪が声掛け事案にひっかかるなんて、洒落にもなりませんよ……」
髪さま「祈ちゃんなら軽く駆け足しただけでも人間風情ブッチギリで引き離せるゾナ、心配ないゾナ」
橘音「な〜んて言ってる間に、ノエルさんと一緒にどこかへ行ってしまいました」
髪さま「腹が減ったら帰ってくるはずゾナ、ほっとくゾナ」
橘音「放し飼いの猫じゃないんですから……」
髪さま「というか、保護者にあのババアがいる限り祈ちゃんは大丈夫だと思うゾナ」
橘音「あー……祈ちゃんのオババ。確かにあのオババは怖い……。ここだけの話、戦力的にはオババの方が頼りになるんですが」
髪さま「あのババアをブリーチャーズに加えるのは反対ゾナぁぁぁぁぁ!?」
橘音「髪さま、オババにトラウマでもあるんですか?」
髪さま「ずっと昔の話ゾナが、ババアの娘の尻を触ったらババアに全力で蹴り飛ばされたゾナ」
橘音「自業自得でしょ。さぞかしよく飛んだでしょうね」
髪さま「確か、オレゴン州とかいうところまで飛ばされたゾナ。帰りが大変だったゾナ」
橘音「あちゃー……太平洋越えちゃったかー……」

35那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:51:59
>>31 ノエルさん
橘音「ノエルさんほど『残念なイケメン』という言葉が似合う人もいません」
髪さま「しかし、計算で残念さを演出しているとしたらなかなかの策士ゾナ。あざといと言わざるを得ないゾナ」
橘音「計算で残念さを演出していると見せかけて素、というパターンではないかと」
髪さま「いずれにせよおいしいポジションゾナね、ワシとかぶり気味ゾナが」
橘音「お言葉ですが1ミリもかぶっていませんので、安心してください」
髪さま「ゾナ!?毛髪界の月亭方正と呼ばれたワシが……!」
橘音「それバカにされてますよ多分。……まあ、そんなことはどうでもいいんですが、決定リールについてお話ししましょう」
髪さま「ノエルも祈ちゃんもガンガンOK!と言っているゾナ」
橘音「じゃ、そういうことで」
髪さま「即決ゾナ!?まぁせっかく集まったんだし、みんなで楽しく自由に好きなことしようゾナ!ということゾナね」
橘音「口幅ったいことを言いますが、もちろん自由というのは好き勝手ということではなく、そこはお互いへの配慮第一ということで」
髪さま「その上で好きなこと、やりたいことをしてくれれば、こちらもそれに合わせるゾナ」
橘音「あ、ボクに関してもおふたりと同じくリールOKということで。皆さんと一緒にお話しを作っていければ、それが一番ですから」
髪さま「まだ始まったばかりで、どこまで続くかもわからんゾナが、始めたからには完結させるゾナ!」
橘音「どうか、皆さんも最後までお付き合いください。って感じですね!」

>>32
橘音「ほう!それは実に頼もしい!いや、ボクも正直ワクワクしてるんですよね。どんな八尺様が現れるのか?って」
髪さま「こちらが当初考えていた八尺様を上回るようなインパクトを期待するゾナ」
橘音「なんてなことをあんまり言っちゃうと、ハードルが上がって動きづらくなっちゃいますから、この位にしておきますか」
髪さま「橘音が次は八尺様と言ったのが木曜だったゾナから、ルールに則って月曜(5日)まで八尺様のターンとするゾナ」
橘音「その後ノエルさん、ボク、祈ちゃんの順番ですね。楽しみにしていましょう!」
髪さま「もしブリーチャーズが八尺様に負けたら、エロゲー的展開が待ってるゾナ?」
橘音「現状ブリーチャーズに八尺様の好みに合う妖怪がひとりもいないんですが、それは……」
髪さま「しょうがないゾナ、ここはワシが!ワシが尊い犠牲に!!」
橘音「人型ですらない」

>>33
髪さま「ということゾナが?やっぱり敵もPL参加OKにするゾナ?」
橘音「いやぁ、>>33さんの仰ることにも百里あるんですが、ここはどうかボクのワガママを聞いてください、と……」
髪さま「おまえ(GM)が敵を出して、おまえ(橘音)が倒してちゃマッチポンプゾナ」
橘音「ボクは倒しませんよ?というか言ったでしょ、ボクは戦闘はからっきしだって。正直な話、人間と喧嘩しても負けますよ」
髪さま「役に立たん奴ゾナ……」
橘音「ボクは言うなれば狂言回し。あくまで主役はブリーチャーズ、八尺様にノエルさん、祈ちゃんだと思っています」
髪さま「まぁ、おまえは主役って感じではないゾナね。敵か味方かわからない胡散臭い脇役Aって感じゾナ」
橘音「どうせボクは不審者ですよ、そんな言葉は言われ慣れてますしーっ!……というか……」
髪さま「というか?ゾナ?」
橘音「ぶっちゃけ、ボクが敵役をやりたいっていうね、アハハ!ラスボスも考えちゃいましたし!」
髪さま「気が早いにも程があるゾナ!?」
橘音「そういうことで、改めて皆さんお付き合いのほどを!では今日はこの辺で!」

36ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:52:30
>「ノエルさん……。人様の嗜好に口出しはしませんが、そういう趣味はせめてバックヤードでやった方がいいと思いますよ?」

ナイスタイミングで橘音がご入店。
他人をからかうのが好きな橘音も憐れむこの惨状。これはアカン――重症である。

「ランドセルを背負えば……誰しも小学生になれるんだ!(※なれません)
いや、待てよ? 何も小学生じゃなくても成人前でよければ少し若作りすればいけるのか……?」

ちなみに客達はというと、店主の奇行も狐面の探偵が入ってきたことも完全スルー。
色々ひっくるめて日常茶飯事として慣れているようだ。
店内で度々繰り広げられる作戦会議については、まさか妖怪退治の打合せとは思わず
少し変わった探偵稼業を手伝っている、程度に思っているようである。

>「何やってるんですかもう。何もノエルさんを囮にしようなんて考えてませんよ、それとも囮になりたいんですか?」
>「それはそれとして。さっき祈ちゃんにも召集をかけておきました、今回はこの三人でやりましょう」

多甫 祈――この業界、雪女の男もいればババアの少女もいる。
ちなみに妖怪業界では常識のロリババアではなくリアル少女である。
というのも、彼女はおそらくクオーター(もう片方の親が普通の人間と仮定すれば)なのだ。

>「んん〜……おいしいっ!やっぱり、ノエルさんの作るかき氷は絶品ですね!このなめらかな口溶け!」
>「一気に食べてもアイスクリーム頭痛にならない!そしてこの練乳とイチゴと餡と抹茶のハーモニーがぁぁ……!」

「多めにラブ注入しといたからなっ!」

いつのネタやねん!とツッコミが入りそうなことを言いつつ橘音が食べているのをどことなく楽しげに見ている。
雪女の能力は、本来は全てを凍てつかせる恐るべき破滅の能力。
熟練して絶妙なコントロールを習得すると、あら不思議、美味しいかき氷が作れるようになります。
往々にして何事も平和的利用の方が難易度が高いのだ。

>「あ、祈ちゃーん!こっち!こっちですよー!」

37ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:53:03
やがて祈もやってきた。橘音が前金代わりのかき氷をおごり、いよいよ作戦会議が始まる。
橘音は刑事ドラマの連続殺人事件的手法で次の誘拐地点を割り出し、祈に囮になるように言い渡した。
八尺様のストライクゾーンは、ズバリ小学生らしい。
ということは、ノエルはもちろん橘音も微妙に趣味ド真ん中からは外れていることになる。
というかどちらにしろ、主に能力的な意味で囮は祈にしか務まらないようだ。
しかし性別不詳の橘音と違って祈は紛う事無き女子。そんなに上手く化けられるだろうか……
という懸念は杞憂に終わった。

「うん、なかなかの完成度じゃないか。流石祈ちゃん。
そういえば宝塚の男役スターって普段は普通にすごい美人なんだよな」

これはもしや本人がなんとなく不本意なオーラを出しているのに気付いているのか。
いや、本人も深く考えて無さそうな天然の性別迷子のコイツのこと、そんな機微が分かるはずもない。
多分深い意味も無くなんとなく言っただけである。
(というか妖怪は下手すりゃ人型ですら無かったりするしむしろ性別不詳の場合の方が多いぐらいなんじゃなかろうか)

゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。゚+。*゚+。。+゚*゚+。。+゚*。+゚

少しばかり時間は流れ、午後四時。子ども達の下校時刻。
公園にはすでに橘音によって結界が張られている。それも、こちらの足枷にはならずに妖壊のみを弱体化させる結界だ。
こんな結界が張れる橘音はやはり只者ではない。
すでに八尺様をおびき出しに向かった祈に、橘音が最終確認の電話をかける。

>「ノエルさんも準備をしておいてください。きっと、ここへ来る頃には八尺様はだいぶヒートアップしていると思いますから」
>「冷気で頭を冷やしてあげましょう。あとは、会話が通じるかどうか――ま、試してみるしかないですね」

橘音に手渡されたアイスコーヒーを一口飲む。
ちなみに妖怪というのは(種族にもよるが)基本飲み食いしなくても生きていけるが気が向いたらしてもいいらしい。
なんとも都合のいい人達である。

「まずは動きを封じて話し合いに持ち込むところからだな」

一度妖壊化した妖怪はそう簡単には元には戻らないが、説得に成功して改心味方化した前例も無くは無い。
八尺様は多少でかいとはいえ元からほぼ人型であることを考えると
本人さえその気になれば人間界に溶け込むことに向いている方と言えるだろう。

>「では。――東京ブリーチャーズ、ミッションスタート」

祈なら何事もなければ300メートルぐらい比喩ではなく文字通りあっと言う間であろうが、待っている方は要らんことを考えてしまうものである。
万が一捕まったらよくも騙したなとキレるのか、はたまたボーイッシュ美少女もアリじゃね!?と新たな扉が開かれてしまうのか――!?
……どっちにしてもアカン気がする。

゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。゚+。*゚+。。+゚*゚+。。+゚*。+゚

ノエル「一応4日経ったので投下したけど」
髪さま「今のところシーンが別で大きな影響はないと思うので八尺様ももし執筆中だったら出来次第投下ゾナ」

38創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 08:53:24
八尺様がキャラキープしたまま音信不通だと止まってしまうので、
もし進展が無いようなら第二、第三の(NPC)八尺様に動いてもらうってのも良いかもね

39那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:53:55
ついに始まったミッション、八尺様漂白作戦。
壊れた妖怪――《妖壊》と化した祟り神八尺様を相手に、はたしてブリーチャーズはどう戦うのか?
熾烈な追撃をかわし、祈ちゃんは公園まで八尺様を誘導できるのか?
ノエルさんの冷気は八尺様の怒りの炎を凍てつかせることができるのか?
そして、そもそもボクは何かの役に立つのか?

何もかもが不確定な中、薄闇の中から姿を現す白いワンピース姿の怪異。
八尺様の双眸が、まるで獲物を見つけた猛禽のように祈ちゃんを見て――。


次回、東京ブリーチャーズ

『Chaser&Fugitive』

お楽しみに!

40那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:54:19
結界を張った公園の中で、ノエルとふたり祈がやってくるのを待つ。
結界は橘音が許可した者以外は入れない構造になっており、一般人が誤って足を踏み入れることを防いでいる。
また、一度中に入った者は橘音の許可なしには外へ出られず、無理矢理出ようとするなら橘音を殺すしかない。
つまり、八尺様漂白作戦が完了するまでは、何者にも邪魔されないというわけだ。
祈のいる場所と公園の入口までの距離は、たったの300メートル。祈の全力疾走なら数秒の距離である。
しかし、全力疾走ではいけない。
祈は『八尺様が追跡でき』、『しかしながら決して捕まえられない』速度を調整し、八尺様を誘導しなければならないのだ。
さらに、公園は隣接しているとはいえギリギリ八尺様の縄張りの外にある。
八尺様が祈の捕縛を優先し、自らの縄張りを一瞬でも忘れるようにしむけるのは、大変な危険を伴うだろう。
いつものように逃走する者を追跡したり、暴れる妖壊に蹴りを見舞うのとはまるで違う、精密動作だ。
しかしながら、ここは祈に期待するしかない。橘音はそっと半狐面に手を添えた。

「確認ですが――」

ホットコーヒーを一口飲み、橘音が口を開く。
吐いた息が白い。棚引くそれがゆっくりと、十二月の澄んだ空気に溶け消えてゆく。

「妖怪とは『人の想いから生まれた』モノ、普通の生物とは違います。わかりやすく言えば『殺せない』――不死身の存在」
「オバケは死なない、病気もなんにもない……ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲー、ってやつです」

川の氾濫や雷、地震など、自然の猛威への畏れ。
夜の闇への恐怖。飢饉や疫病といった、形なきものに対する怯え。
死者や死後の世界など、未知のモノへの想像――

そんな人間の豊かな空想力が、喜怒哀楽の感情が生み出すエネルギーが、妖怪を創造した。
妖怪の原動力とは、人々の想いそのもの。人々が空想することを、想いを馳せることをやめない限り、妖怪は死なない。
刀剣や銃器、打撃武器など物理的な手段で妖怪を殺そうとしても意味がない。
仮に武器を用い、その場では殺せたように見えたとしても、時間が経つとまた復活してしまう。
一時的に妖怪を退けることはできるだろうが、それでは根本的な解決にはならないのである。

「ですから――今回もいつも通りの手法で行きます」

そう言って、ノエルの方を見る。
説得して改心、味方にするという手法だ。まずこれを試み、説得に応じなければ封印というのがセオリーである。
ただし、説得するには説得に応じるよう下地を作る必要がある。
下地というのは相手を説得交渉のテーブルにつかせるということであり、その為には相手を大人しくさせる必要がある。
そこで、暴れる妖壊を疲弊させる荒事担当のメンバーが必要になってくる。
八尺様が結界に入った後は、八尺様を存分に暴れさせ、その力を使い果たさせなければならない。
その役目を担うのがノエル、というわけだ。

ただし、今回は少々いつもとは勝手が異なる。
いつもなら漂白対象がどんな妖術を使い、何が弱点であるのか等々事前にある程度調べがついている。
しかし今回に限っては、相手の能力に未知の部分が多すぎる。
橘音としてもネットの都市伝説程度しか持ちうる情報がない。
総体、前例のない相手との戦いである。分の悪い戦いと言わざるを得ない。

「ま……そんなのはいつものことですが、ね」

アハハ、といつもの調子で笑い飛ばすと、橘音は飲み干したコーヒーの空き缶を自販機脇のゴミ箱に捨てた。

「……そろそろですね。祈ちゃん、お願いしますよ……」

もう一度白い息を吐き、スラックスのポケットに白手袋を嵌めた両手を突っ込んで。
橘音は祈るように呟いた。

41那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:54:39
――ぽ……ぽっ、ぽ、ぽぽぽ……

どこからか声が聞こえる。
それは、泡の弾けるような。口笛のような。ごくごく淡い声。
しかし確かに、祈の待っていたモノの来訪を告げる声。

――ぽ、ぽぽ、ぽ……ぽぽぽ……

見れば、誰もいなかったはずの路地にいつの間にかひとつの影が現れている。
真っ白い鍔広の帽子を目深にかぶり、師走だというのにノースリーブの白いワンピースを着た、妙齢の女性。
一見して寒そうな外見以外は普通と言ってもよかったが、しかしその身長が常軌を逸している。
近くにあるコンクリートブロックの壁よりも、頭ひとつ以上大きい。
少なく見積もっても、その身長は240センチ以上はあろう。
240センチ、つまり――八尺。
帽子の鍔のお陰で、祈からその表情までは見えない。
が。
祈にはハッキリと感じられただろう。
その白いワンピース姿の女が、確実に祈を見ていることを。そして――

祈に対して、うっすらと笑みを浮かべたことも。

――ぽぽ……ぽ、ぽぽ……ぽ、ぽ……

声が近くなる。
気付けば、50メートルほど離れていたはずの女性――八尺様が、10メートル程まで距離を詰めている。
瞬きするほどの、ほんの一瞬の出来事だ。瞬間転移の妖術だろう。
八尺様が祈へと右手を伸ばす。

祈が駆け出すと、みるみるうちに八尺様との距離が開いてゆく。
あれほど巨大に見えた八尺様が、あっという間に米粒ほどの大きさにまで遠ざかってゆく。

……しかし。

祈が瞬きをするたび、その前方に八尺様が現れる。ふと目を離すと、その視界の及ばない角度からぬっと手が伸びてくる。
そして。
祈がどれだけ走ろうとも、それが絶え間なく繰り返される。
『もう、とっくに300メートル走りきっているというのに』。

本当なら既に公園まで到達していなければおかしい距離を、祈は走っている。
だというのに、一向に公園に辿り着く気配がない。
思えば、同じ路地をグルグルと回っているような気さえする。これが八尺様の縄張り――結界、ということなのだろうか?

橘音は最初に八尺様を結界内におびき寄せ、暴れるだけ暴れさせて疲弊させ、その後対話することを目論んでいた。
しかし、もし、『八尺様も橘音と同じことを考えていたとしたら』?
結界内に入ってきた獲物を好きなだけ逃げさせ、疲れさせてから、ゆっくりと捕食する――。

となれば。
ここは、祈の独力で八尺様の結界から脱出する以外にない。

――ぽ、ぽぽっ、ぽっぽっ……

八尺様の声が、祈の耳のすぐ傍から聞こえてくる。
声のみならず、今にも吐息さえ感じられそうなほどの距離に、八尺様がいる。
祈をあどけない少年だと思い込んで、その手を伸ばしてくる。
八尺様の巣と言ってもいい縄張り、その中にいるのは、祈ひとりだけ。



助けは、ない。

42那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:54:55
橘音「はいはいっ!那須野橘音のナイト・ブリーチャー、始まりますよ!司会はボク、那須野橘音と!」
髪さま「全世界9兆5千億人の薄毛の希望の星、髪さまでお送りするゾナ」
橘音「それ明らかに人外も込みの数ですよね……」
髪さま「コミコミゾナ」

>>38
橘音「ご心配なく、既にそのように調整していますので!何も問題ありません!」
髪さま「せめて、八尺様は遅れるなりなんなり一言欲しかったゾナが……」
橘音「まぁ、いろいろ都合もあるんでしょう。ということで、次は祈ちゃんお願いしますね」
髪さま「八尺様はまだ参加の意思があるなら、どこにでも突っ込んでしまっていいゾナ」
橘音「今出ている八尺様が自分だということでも、別人だということでも、どちらでも構いませんよ!」
髪さま「現在の『八尺様編(仮称)』が終わるまでは、いつでも八尺様の参加を受け付けるゾナ」
橘音「ただし、最後までお姿をお見せにならなかった場合は、残念ながら参加の意思なしと見做し、漂白します」
髪さま「その辺はキッチリやっておくのが大事だと思うゾナ、よろしくご理解のほどをゾナ」
橘音「まぁ、まだ始まったばかりですし。少なくとも今年いっぱいくらいは猶予がありますから!」
髪さま「八尺様以外にも飛び入り参加メンバーは随時募集中ゾナ、ふるって参加ゾナ」
橘音「あなたも東京ブリーチャーズで妖壊をバッタバッタと薙ぎ倒してみませんか?」
髪さま「服装、髪型自由!交通費全額支給!昇給、ボーナスあり!アットホームな職場ですゾナ!」
橘音「それブラック企業の常套句ですよ」

43尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 08:55:41
名前:尾弐 黒雄(オニ クロオ)
外見年齢:28歳
性別:男
身長:192cm
体重:91kg
スリーサイズ:?
種族:鬼
職業:葬儀屋
性格:自堕落
長所:特になし
短所:腰痛持ち、だらしない
趣味:料理
能力:怪力、頑強
容姿の特徴・風貌:
黒髪をオールバックで纏めている。長身で分厚い鎧の様な筋肉を持つ。
服装は常に黒服に黒ネクタイ。つまり喪服。
仕事着も喪服。普段着も喪服。ただし、普段着用はヨレヨレ。

簡単なキャラ解説:
東京の一角で葬儀屋を営む男。
彼の葬儀屋は訳有りの遺体の葬儀を専門に執り行い、警察や役所からの依頼も頻繁に受けている。
とある事情の元、仕事上で知り得た《妖壊》由来と思われる遺体の情報を『東京ブリーチャーズ』へ流している。
尚、彼自身も『東京ブリーチャーズ』の一員ではあるが、どうも微妙に胡散臭い行動をチラホラ取っている様だ。

正体は『鬼』。
生粋の鬼では無く、人が憎悪や怨嗟で変化した型の鬼であり、元人間である。
変化を解くと、角が生え皮膚が黒く硬質化する。



こうですかわかりますん
導入は製作中。書き終え次第タイミング見て投下させて欲しいです

44多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:56:07
 混乱の中、八尺様に追われて路地を疾走しながら、祈は状況を整理する。
(やっぱりここ、結界の中だ……!)
 同じ電柱をもう三度も見た。
 似たような路地を走り回ったせいで方向感覚はとっくに狂っていて、
どこを走っているのかなどさっぱりわからなくなっている。だがそれでも同じ電柱だと気付けたのは、
電柱にT・Bというイニシャルめいた落書きが青のスプレーで描かれているのを祈が覚えていたからだ。
 四度角を曲がった訳でもないのにその電柱に出くわすことや、
そう遠くないはずの公園にいくら走っても辿り着かないことからも、疑いようがない。
この通りの周辺が八尺様の結界によって無限回廊のように変えられてしまっており、
その中に祈は閉じ込められているのだ。
(……これ、割とピンチか?)
 八尺様が背後から伸ばした左腕を身をよじって躱しながら、祈は考える。
額からは、焦りから汗が伝った。
 この結界からどうにか抜け出して公園にまで八尺様を誘き出さねばならないが、
その方法が、祈には皆目見当もつかないのだった。
だが結界に閉じ込められている以上、外の橘音や御幸をアテにはできない。
確認してみたが、当然のように携帯は圏外だ。
この状況を自分の力だけで乗り越えなければならないのは、頭痛がする思いだった。
 真後ろでは八尺様の笑い声が聞こえていた。

 八尺様についての話は、祈も橘音から多少聞かされている。
それはかいつまんで言えば、八尺様に魅入られた少年が様々な恐怖体験をしながらもなんとか逃げおおせたと言う話であり、
その話の中では八尺様の生み出す結界のことなど一言も触れられていなかったし、
ましてやその脱出方法など出てくるはずもない。
 つまりこの結界は、都市伝説上では語られることのない隠された八尺様の能力だと考えられた。
(そこまでは分かった。でも……分かったからってどうしろってんだ?)
 妖怪の中には結界を張るものがそこそこいる。
そして大方は、ある条件を満たしたり、手順を踏むことでその結界を解除させたり、というようなことが可能なのだが、
八尺様の結界という全く未知の結界が相手では、その条件や手順を見つけることは至難だと言っていい。
しかもこんな風に追われていては、周囲を細かに観察することもできない。
今祈にできるのは、足と頭を動かし続けることだけだ。
 幸い、都市伝説で語られているように時速20キロ程度が八尺様の限界なのか、
それとも結界に捕らえた獲物を追い回し嬲るのをただ楽しんでいるのか、八尺様が追ってくる速度自体は大したことはない。
時折瞬間移動して祈の真後ろにぴたりと付いてきているが、
ターボババアの孫である祈ならば逃げ続けることも、その追撃の手を躱し続けることも、
決して難しい事ではないように思う。
 だが、それもきっと長くは続かないだろう。
 この状況で何よりも困るのは、『八尺様がいつでも逃げられること』だった。
 今はまだ八尺様が祈のことを小学生男子だと認識しているようで、
この追いかけっこが終わる様子はない。だがいつ気付くだろう。いつ飽きるだろう。
 獲物を狩ろうと走る肉食獣だって、捕食不可能だと知るや早々に諦め、追うのを止めてしまう。
それと同じようなことが八尺様に起こらないと何故言えようか。
 八尺様が祈への興味を失えば、恐らく結界は解除される。
だが同時にそれは、『八尺様が出現したときと同じように、また消え失せて姿を眩ましてしまう可能性をも意味する』のだった。
 そうなれば祈には追跡する手立てはない。
妖気を察知するのに長けたブリーチャーズがいてその手を借りられればいいが、
借りられなければまんまと逃げられることになり、任務は失敗。被害者も増えるかもしれないのだ。
それだけは避けなければならなかった。
だからこそ橘音は自身の張った結界に八尺様を捕らえ、逃げられないようにしようと画策していたのであるし。

45多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:56:28
(かといって……)
 薙ぐように右から振るわれた八尺様の長い腕を、くぐるように躱しながら道の角を左に曲がった。また同じ電柱。
 かといって、祈は攻撃することもできない。
 攻撃を加えて倒してしまうなり、八尺様の意識を刈り取る、なんてことができればいいが、
それは一撃で倒せればの話だ。
もし攻撃を加えても倒せなかった場合、手痛い反撃を受けた八尺様はやはり捕食を諦めてどこぞへと消えてしまうだろう。
確実性に欠けるのだ。
また、結界の中では妖怪の力は増すことが多い。その点でも戦闘を挑むのは愚策だと言えた。
橘音が口酸っぱく、戦うなと言っていたのが祈の脳裏によみがえる。

(――じゃあ、どうすればいい!?)
 逃げ続けては駄目、攻撃しても駄目。
 結界の解除は即ち八尺様が祈への興味を失ったことを意味し、それは八尺様の逃走にも繋がる。
なのに祈は八尺様の結界を解除し、尚且つ逃げられないよう公園にまで追い込まねばならないのだ。
進退維谷まるとはこのことだった。祈が苛立ちから下唇をきつく噛むと、血が僅かに滲んだ。
口内に広がる血の味は、少なくとも顔をしかめる程度には美味しくない。
 捕食などと言うが、八尺様は人間の、とりわけ小学生男子の血や肉のどこが美味しいと言うのだろう?
男子小学生なんてものは、そこまで女子小学生とも大差ないだろうに。
女子と比べて肉が多いのだろうか? 
だが実際に男子小学生として狙われている祈は細身の部類で、食いでがある訳でもないのだ。
太めの男子を狙っているという情報がある訳でもなく、だとすれば男子小学生に拘る理由がどこにあるのだろうか?
その疑問に行き当たった時、祈の混迷し塞がっていた視界が開けた。
 もし――。

 その時、祈の肩を掴もうとしているのか、それとも抱きしめようとしているのか、
八尺様の両手が振り降ろされる。
が、祈がそれを避ける様子は見られない。それどころか走るスピードを緩めてしまっている。
思考するのに没頭しすぎたのだろうか。八尺様の手はついに祈の肩に掛かった。
 瞬間。祈は屈んで前方に体を倒し、つんのめって転んだような体勢になる。
今度こそ捕まえたと確信していたような八尺様の手が空を切る。
更に祈は僅かに妖怪としての力を解放し、アスファルトを強めに蹴った。八尺様との距離が数メートル一気に開く。
 背の高い八尺様は、己の身長の半分程しかない祈を目視し、捕まえようとしていた。
必然その視線はほぼ真下へ向いており、視界は狭まっている。故に八尺様には祈の姿が消えたように見えたことだろう。
 その八尺様の数メートル先で、立ち止まり振返った祈の双眸が、
獲物を見失い、呆気に取られたように動きを止めた八尺様を捉える。
そして、祈は言う。
「ねえ、お姉さん」
 精一杯男っぽさを出そうとカッコ付けてはいるが、少し上ずった声。
八尺様の視線が、消えた獲物、祈を再度捉えた。祈は続ける。
「お姉さんって走るの早いし、そ、それに背ぇ高くて、かっこいいね」

――ぽ?
 八尺様の、呆けたような声が無音の通りに響く。
 動き出される前にと、祈は更に言葉を紡ぐ。
「この先にさ。広くていい雰囲気の公園があるんだ。そこで一緒にコーヒーでも飲まない?」
 声変わりのしていない少年の声音に聞こえなくもないその声が、畳みかける。
 それは、少年からのお誘いだった。
――もし。八尺様が食事としての意味合いで少年を好む猟奇的な妖怪ではなく、
ただのショタコンの誘拐犯的な妖怪であるとするなら。そう考えれば、この嬲るような追いかけっこも、
祈のような食いでのない、細身の男子小学生を狙っていることも辻褄が合う。
 今まで恋する対象に恐怖の目線を向けられたことや、悲鳴を上げて逃げられたことはあっても、
好意の眼差しで見られたことも。外見を褒められたことも。こうして誘われることもなかっただろう。
それがどうだ。この先の公園でなら、ショタにリードされながら話ができる。
追いかけて注意など引かなくても、隣に並べるのだ。ショタコンならば垂涎のシチュエーションではないか。
 これならば結界を自主的に解除させた上で、更に八尺様を公園に誘き寄せられるのだと、祈は考えたのだった。
名付けて、引いて駄目なら押してみろ作戦。

「お姉さんのこと、聞かせてよ」
 ダメ押しに、にっと笑って、手を伸ばしてみたりして。

46多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 08:56:44
祈   「おーし、投稿も終わったし! 遅れたけど今日もオマケのオマケ、那須野橘音のナイト・ブリーチャー(?)始めるぞ!
     お相手はゲストパーソナリティの多甫祈と!」
髪さま「毛髪界の貴公子、髪さまゾナ」
祈   「沢山異名あんなー髪サマ。新人も来たみたいだし張り切って行くかんな!」
髪さま「視聴者諸君も、気合入れてついてくるゾナ」

>>30
祈   「だよなー。乙女心ってのをわかっちゃいないんだよ、橘音はさー」
祈   「悪い奴じゃないんだけど……って、服買ってくれんの!?」
祈   「おじさんいい奴! うちの事務所に依頼しにくる人がみんなおじさんみたいな人ならいいのにな!」
祈   「あ! そうだ、お茶淹れてきてやるよ! ちょっと高いやつ!」
祈   「あたし最近お茶淹れんの上手くなってきたんだよね。ちょっと待ってて!」
髪さま「祈りちゃん大喜びゾナ……。まぁ祈ちゃんは強いからワシも敢えて止めないゾナが、変なことは考えるんじゃないゾナ」
髪さま「もし変な事したらこのワシがお前の髪を……こう、ツルッ、ゾナ?」

>>31
祈   「とか言ってたらいつのまにか御幸の奴までついてきちゃったな」
祈   「そんでソッコーであたしらから離れてパーティグッズコーナーの猫耳漁りだしたんだけど」
髪さま「しかも何の躊躇いもなく装着したゾナ」
祈   「……何気に似合うのが腹立つよな」
祈   「でも抵抗ないのかな。男がああいうの付けるのってさ」
髪さま「抵抗ないんじゃないかゾナ。あやつ、雪女の一族に生まれてる珍しい男子だからなゾナ。
     女物の服を着せられて育ったとか、周囲の雪女や姉妹に着せ替え人形代わりにされてたとか普通にありそうゾナ」
祈   「あー、女ばかりの家の末っ子みたいなもんか」
髪さま「そうゾナ。男にしてはお洒落にやたら興味があるのも、女性向けの衣装やらに抵抗がないのもその弊害みたいなもんだろうゾナ」
祈   「ふーん……かき氷が美味くて>>37の文章の区切り?とか綺麗だし、なんかやたら女子力たけーよなあいつ」
祈   「でもさ。いくら女子力高くてもアレは止めた方が良いよな?
     季節的にクリスマスシーズンだからだと思うけど、今度は女子用のサンタ服持ってなんか悩んでるみたい」
髪さま「……体を張る奴ゾナ。やれやれ、そろそろ突っ込んで止めてやるかゾナ」


祈   「ちょっと遅れたな。あたしの続きもこないんじゃないかって不安にさせてたらごめんね」
祈   「次は……橘音の番かな。もしかしたら御幸のやつかもしんないけど。誰が書くんであれ、楽しみにしてるかんね。
     展開的にちょっとやり辛かったりしないかなってのはちょっと不安だけど」
髪さま「はてさて八尺様は、祈ちゃんの誘いに乗ってくれるゾナ? それとも……。とにもかくにも待て次回、ゾナ!」
祈   「そんじゃ、今日はこの辺で。最後になるけど新しく来た尾弐 黒雄っておじさんもよろしくね!」
髪さま「グッナイゾナ!」

47那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 08:57:10
橘音「祈ちゃんお疲れさま、バトンタッチですね。……あ、髪さまはそのままで。那須野橘音のサタデー・ブリーチャー放送しますよ」
髪さま「まったく人使いが荒いゾナ、一服くらいさせろゾナ」
橘音「口もないのにどうやって一服するんです?」
髪さま「口がないのに喋ってる時点でその疑問は野暮ゾナ」

>>43 クロオさん
橘音「ようこそ東京ブリーチャーズへ!歓迎しますよ!」
髪さま「重量級妖怪ゾナね。まるでワシの若いころを見ているようゾナ」
橘音「髪さまは昔から毛しかないでしょ……」
髪さま「逞しい毛だったゾナ。最近は昔に比べると髪質が細くなって……ゾナナナ……」
橘音「悲しいなあ……。いやまあ髪さまの毛のことはさておき、クロオさんも導入ができ次第投下して下さって結構ですので!」
髪さま「順番は特に気にしなくていいゾナ、投下した場所が自分の順番になるゾナ」
橘音「そこからはローテーションで行って頂ければ。クロオさんのご活躍に期待しています!」
髪さま「例によってワシらのことは自由に使ってくれて構わんゾナ、でもシャンプーはしてくれなくていいゾナ」
橘音「珍しいですね?髪さまがシャンプーを拒否するなんて」
髪さま「怪力属性の鬼にシャンプーなんてされたら死んでしまうゾナ!それでなくとも最近は髪質が……」
橘音「悲しいなあ……」

>>46 祈ちゃん
橘音「大丈夫ですよ、祈ちゃん。期間内に投下して下さったのでまったく問題ありません」
髪さま「たったひとりで苦境ゾナが、なんとか頑張って欲しいゾナ。イザとなったらワシが助けに行くゾナ!」
橘音「そうやってムリヤリ出番をねじ込もうとするのやめてくださいよ、もう……」
髪さま「チッ……ゾナ」
橘音「では、ボクが投下して祈ちゃんも投下して下さったので、次はノエルさんお願いしますね」
髪さま「基本は橘音→祈ちゃん→ノエルで、尾弐がその中のどこかに入るというローテゾナ」
橘音「今回の祈ちゃんに対する八尺様の反応も、やって頂いて結構です。果たして祈ちゃんの運命は!?すべてはノエルさんの胸三寸!」
髪さま「ハードル上げるゾナねぇ……」

48ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:57:37
あろうことか八尺様に手を指し延べる祈。言うまでもなく危険な賭けだ。
八尺様はその手を掴み……祈を異空間に引き込む……
とかいうこともなく、そのまま素直にリードされて歩きはじめた。
見事に作戦大成功か、それとも罠と気付きつつ敢えて乗ったのか……!?

゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。゚+。*゚+。。+゚*゚+。。+゚*。+゚ 

>「妖怪とは『人の想いから生まれた』モノ、普通の生物とは違います。わかりやすく言えば『殺せない』――不死身の存在」
>「ですから――今回もいつも通りの手法で行きます」

「分かってる、僕にはむしろ普通の生物の方が謎だらけだ」

妖狐の橘音なら、あるいは遥か昔に普通の狐だった時代があるのかもしれない。
ノエルには、自分がいつ生まれたのか、最初から今の姿だったのか、正確なことは何も分からない。
気がついたらいつの間にか存在していた、としか言いようがない。

「来たみたいだね……!」

とんでもない妖気が近づいて来るのを感じた。
まだ変化を解くまでではないが、吐く息が白くなくなり、その身に尋常では無い冷気を纏う。
残っていたコーヒーを一気に飲み干そうとして……盛大に吹き出した。
なんと祈と八尺様らしき女性が手を取り合って恋人同士のように歩いてくるではないか。ドウシテコウナッターー!
まさか八尺様が行う小学生男子の捕食とは冗談じゃなくマジでそっち系の意味だったというのか!?

「これはこれは、ようこそおいでくださいました!美少年だらけの青空茶会へようこそ!」

戦闘モードに入りかけていたのを急遽交渉モードに変更。
若干トウが立っているうえに性別迷子と性別不詳の約二名を、ここは美少年で押し切ることとする。

ーーぽぽぽっ♪

なんと八尺様、ストライクゾーンと違うと怒ることもなく乗り気である。
大きめの遊具の上で、自販機のコーヒーでのお茶会が何故か始まってしまった。
返す返すもドウシテコウナッターー!
しかし交渉は一向に進まない。会話の内容以前の問題で、八尺様は「ぽ」しか言ってくれないのである。
人語は解しても喋れないだけなのかもしれない。そう思ったノエルは……

「お姉さんってラインとかするの?」

スマホを取り出し、ついでに橘音と祈にメッセージを送る。
相手が目の前にいながら内緒話をするときの常套手段である。

【一説には催淫術で相手を虜にする能力があるらしい!罠かもしれないきをつけろ】

それが本当だとしたらこの状況は危険、時間が経つほど相手の術中にはまる確率が上がってくる。
自分の邪魔をしようとする者達がいることを悟って敢えて祈の誘いに乗り、
一網打尽にしようとしている可能性が否定できないのだ。

「えっ、スマホ持ってない?あ、そうなんだ」

こんな感じで話は進展せず、皆が当初の予定通り強行手段に移ろうと思いはじめた頃……
いつの間にやらノエルの様子がおかしくなっていた。息は荒く、目はうつろ。

49ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:58:20
「どうしたんだろう、僕……何か、変だ……」

これはアカンーー注意喚起をした張本人が真っ先にその術中にはまる黄金パターンである。

「このままだと溶けてしまいそうだ……この熱を鎮めてくれ、八尺様……!」

八尺様は優しくノエルを抱き、その瞬間浮かべたのはーー獲物を捕らえた捕食者の笑みだった。
そのまままさかの本編で薄い本的展開に突入してしまうと思われた矢先ーー

ーーぽ!?

八尺様は短い悲鳴のような声をあげて、ノエルを放り投げた。
氷のような青い瞳に雪のような銀の髪ーー正体を現したノエルは氷粒の煌めきをまといながら着地。
静かな声で告げる。

「油断しきった密着状態で最大強度の冷気を叩き込んだ……一瞬とはいえ相当なダメージだったはずだ。
無駄な抵抗はやめるんだ」

対する八尺様は激しい怒りを滲ませながらガチのファイティングポーズで戦意を表明。
見た目に似合わず戦闘スタイルは巨体を生かした格闘系のようだ。

「やれやれ、一撃で戦意喪失までもっていければと思って頑張って演技したんだけどな……」

そう言いつつ軽く手を振るうと、手の中に鋭い氷の刃、言うなれば氷の刀のようなものが顕れる。

「来るよ、祈ちゃん!」

その声と同時に八尺様は跳躍し、戦いの火蓋は切って落とされた。

50ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 08:58:36
髪さま「いやはや、全年齢版的にどうなることかと思ったゾナ」
八尺様「キーー!この私の催淫術が効かない男がいるなんて…!さては貴様雄んなの子かオネエかっ!?」
ノエル「さあ。ところで知ってる?オスの三毛猫って本当はオスじゃないんだよ。別にいいけど君ここでは喋るんだ」
八尺様「……ポ!?ついうっかりポ! ということで午前3時ブリーチャー……ポ」

>>43
ノエル「鬼とは王道……!よろしくね!」
髪さま「ブリーチャーズはヒョロヒョロの集団かと思いきやマッチョもちゃんといたゾナ」

>>46
ノエル「文章の区切りは雪のイメージなんだ」
髪さま「なるほど、例えば祈ちゃんだったらどんなのがいいゾナ?」
ノエル「ダッシュしてる系の一行AAかな?」
髪さま「なるほど……。ところでバブルの時代じゃあるまいし何三角帽子を買い込んでるゾナ!
ノエル「実際はバブルどころではない年寄りだけどねっ」
髪さま「……そうだったゾナ。この業界はジジイババア性別不詳ばっかりゾナ。つくづく祈ちゃんは貴重な存在ゾナ」

>>47
ノエル「お言葉に甘えて戦闘開始までいってしまいますた」
髪さま「イってしまいました……ゾナ!?」
ノエル「そこ、無意味に意味深な変換すな!」
八尺様「本当はガチで術にかかってて寸でのところで正気に戻って
演技だったことにした可能性が微粒子レベルで存在する……ポ!」
ノエル「存在しねーよ!?(必死)もう駄目だ、深夜テンション収集付かない!」
髪さま「いい加減寝るゾナ」
八尺様「ポポポ」

51尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 08:59:08
曇天。
遍くを照らす陽光は無く、然りとて地を濡らす雨も無い。
或いは、それは夕暮れ時にも似た狭間の情景の中。
黒白の鯨幕で覆われた部屋の中から、男は立ち去って行く一つの家族を見送る。

父親と母親
祖父と祖母

涙を流しながら、励まし合いながら、並んで男から遠ざかって行く四人の家族。
本来は、五人であった家族。
だが、その中に一週間前まで居た少年の姿は今はもうない。


死んだからだ。


原因不明の衰弱死。
それが、元気に遊び駆け回り、人懐っこく、子供たちの中心であった少年の死因であった。

そして……その少年の死に顔は、苦悶と苦痛、何より恐怖によって彩られていた。
異常とも言える、年若い子供に相応しくないその形相。
そんな物を誰にも見せたくなかった為に、少年の家族は身内だけでの葬儀を執り行った。
そして、つい今しがた火葬と告別式を終え、離別の悲しみを抱えたまま帰路に付いたという訳である。

「……全く、やるせないねぇ」

そんな家族を見送る男……喪服を着こみ、髪をオールバックで纏めた大男。
彼は、首元を手で押さえながら小さな声でそう漏らす。

警察は、病死だと言っていた。
病院は、原因不明の奇病だと言っていた。

だが、男は……少年の葬儀を執り行った、尾弐 黒雄 は知っている。
少年は、死んだのではない。殺されたのだと。

人に仇名す人外のモノ――――『妖壊』に憑り殺されたのだと。
不可解な死に方と、少年の死に顔、何より……遺体に纏わりつく、特有の気配が。
尾弐 黒尾がこの仕事を始めてから何度も感じてきた、悍ましい『この世ならざる』気配が、それを伝えていた。

「……おっと、浸ってる場合じゃねぇか。式場の片付けと葬儀代の回収しねぇとな」

けれども、その真実を知っても尾弐が動く事は無い。
感情に任せて動く事が出来る程に尾弐は若くなく、或いは……心自体が時間の経過と共に腐り果てているのだろう。
そのまま欠伸を一つして事務所まで戻った尾弐であったが、ふと壁に貼られたカレンダーに付けられた赤丸を見て思い出す。

「ああ……そういや今日は例の『八尺様』をどうにかする日だったか」

脳裏に浮かぶのは、計画を立ち上げた者達の姿。
正体不詳の狐面に、雪女の雄、都市伝説の混じり者の少女

「bleachers……“ヒョウハクする者達”か。全く、意地の悪い言葉遊びな事で」

皮肉気な笑みを浮かべながら呟き、尾弐黒雄は事務所の椅子に腰かける。

「ま、集合時間まで暫くある事だし……一杯引っかけてから向かうとするかね」

そうして取り出したのは、日本酒の瓶。
先の葬儀の際に、死んだ少年の祖父が「お礼に」と渡してきた高価な日本酒であった。
――――――――――

52尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 08:59:27
黄昏時とは、誰ぞ彼……眼前のモノが、この世の者かそうでない者かの区別が付かなくなる時の事。
幽世と現世の境が曖昧になる時の事。

そんな、人ならざる者達の蠢き出す時の中。
都内に在るとある公園で、人外共の狂乱が始まっていた。

「ぽ……ぽぽぽ……」

沈みかけた太陽の残光の中で動き回る、複数の人影。
その中で真っ先に目に入るのは、身の丈八尺はあろうかという大女の姿だろう。
白のワンピースと、幅広の帽子を身に着けた女。

人間では在り得ない長身を有するその女こそは、『八尺様』。
インターネットを媒介として、その恐怖と共に近年急速に世に広がった化生。ネットロアの権化。
正体不明……一部では、祟り神の一種ではと噂される『八尺様』は、現在、この公園でその化物としての属性を露わにしていた。

「ぽぽ……ぽぽぽっ……」

眼前の獲物……先程、八尺様へ不意打ちを行った青年、雪女の類であるノエルに対し彼女が振るうのは、その身長に比例して長い手足。
疾走する自動車にさえ追いつく膂力を持つ八尺様の鞭の如き打撃は、音を置き去りにして触れる物を破砕する。

シーソーは砕け、ブランコの支柱は飴の様に曲げ折られ、埋まったタイヤは地面から掘り返される。

明らかに肉体が繰り出せる威力の上限を超えた破壊であり、物理的に考えれば
どう考えても異常な現象だが……現代日本において有数の知名度を誇る妖物である八尺様であれば、この程度は当たり前にやってのけられる。
それは、人間の感情が彼女に力を与えている故。

人間の持つ感情、特に信仰や恐怖と言ったものは、化物の餌となり、化物を強くする。
八尺様程の知名度になれば、その餌の量は膨大……それこそ、狐面を被った妖狐である那須野が張った結界に囚われ、
尚且つ並みの化物では身動き出来なくなる程の威力を持つノエルの一撃を受けても、未だ暴れ回れる程の力を得る事が出来るのだ。

そしてその猛威は現在……というよりも、この公園に八尺様が囚われてからずっと、ノエルにのみ向けられていた。
他の面々の攻撃に対しては、払いのけ、避けたりはするものの、具体的に反撃するまでには及んでいない。
それは、ノエルが八尺様に不意打ちの一撃を入れたという事もあるだろうが、何よりも……

「ぽぽぽぽぽ……」

彼女が、好みの『獲物』である男装をしている少女、多甫祈と、那須野を、『今は』傷付けない様にと考えている事が大きい。
逆に言えば、八尺様がそう思っている間は、ノエルが存命な限り二人の安全は保障されているのだが……

「…………ぽ?」

ふと、八尺様がノエルに対する猛攻の手を止めた。そして、首を九十度横に折り曲げ、祈の方へと向き直る。
その目……化物らしい負の感情が堆積した昏い目は、見てしまったのだ。
八尺様の攻撃により舞い起きた風で、祈の被った野球帽がほんの少し持ち上った……その中の顔を。

「ぽっぽっぽっ……」

自分が見たものを確かめる様に、八尺様はその長い腕を祈へと伸ばし……

53尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 08:59:42
「――――ぼっ!?」

直後、長身の八尺様が『く』の字に曲がり吹き飛んだ。

見れば、八尺様が先程まで立っていた場所に、先程までは居なかった新たな人影が一つ。
黒ネクタイと黒スーツ……所謂喪服を着こんだ、身の丈190cmを超える、筋骨隆々の大男。
右拳を前に突き出した姿勢で佇む、その男の名は……尾弐 黒雄

「……」

まるで子供向けのヒーローの様に颯爽と現れた尾弐は、那須野達の方へと向き直ると


「…………お、おえええぇェェ……!!」

そのまましゃがみ込み、盛大にゲロった。

「……くそっ、あのジーさんよりにもよって鬼殺しなんか渡しやがって……うぷっ……」

どうやら、酒を飲んで遅刻した挙句に、その銘柄が体質に合わなかったらしい。
色々と台無しである。そうして、暫くの間マーライオン状態になっていた尾弐であったが、
胃の中が空になった辺りで少し落ち着いたのだろう。
ポケットティッシュで口元を拭い立ち上がると、那須野の方へと向き直る。

「あー……吐いたらちっと楽になったぜ……で、遅刻しといてなんだが、コレどういう状況だよ那須野。
 色男と……新入りっぽい坊主まで呼んだにしちゃあ、随分厄介な事になってるみてぇだがよ」

そうして視線を動かし、ノエルと男装した祈を眺め見た後、最期に八尺様が吹き飛んで行った方へと視線を向ける。

「ぽっぽっぽっ……」

「……おいおい、あれでまだ元気なのかよ。マジで相当厄介な事になってんな。いざとなったら俺、戦略的撤退していいか?」

尾弐の向けた視線の先に居たのは、未だ健在な八尺様の姿。
どうやら……一筋縄では行かなそうだ。

54尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 08:59:58
髪さま「……」
尾弐「……」
髪さま「……」
尾弐「……」

髪さま「……おーい、始めないゾナか?」
尾弐「……あ?何を?」

髪さま「何を?じゃないゾナ!オマケコーナーゾナ!『尾弐黒雄のナイト・ブリーチャー!』とか何とかさっさと始めるゾナ!」
尾弐「いや、なんでいい年したオッサンがンなもん初めなきゃならねぇんだよ。つか、今腰に湿布貼ってんだからちょっと静かにしてくれ」

髪さま「わざわざこのワシを出しておいておまけコーナーで湿布貼り始めるとかどういう了見ぞな!?」
尾弐「うるせぇなぁ、集中させてくれって。湿布が皺になったらどうしてくれんだよ。以外と不愉快なんだぞアレ」

髪さま「知らんゾナ!……ええい!もうこうなったらワシが開始の音頭を取るゾナ!」

髪さま「『尾弐黒雄のナイト・ブリーチャーもどき!』始まるゾナ!司会は亜麻色の髪の貴公子、髪さまと!」
尾弐「あ、やべ。ちょっと湿布の端の方が皺になったから伸ばしてくれねぇか?」

髪さま「本編でゲロ吐いておまけで湿布貼り続けるとか、自由なのも大概にするゾナ!?」


>>46
尾弐「おう、宜しく頼むわ。嬢ちゃん」
髪さま「……んん?そういえば、尾弐は本編で祈の事を坊主って呼んでたのに、なんで普通に宜しくしてるゾナ?」
尾弐「あん?そりゃあ、知り合いが変装をしてる時は見て見ぬふりをするのがマナーだからだよ。空気を読む社会人のスキルって奴だ」
髪さま「とかいいつつ、実は気付いていなかったりするゾナ?」
尾弐「おいおい、これでも俺は葬儀屋だぜ? 男と女の違いくらい一発で見抜けるっての。骨格とかで」
髪さま「割と気持ち悪い見抜き方ゾナね」

>>47
尾弐「ん?ああ、おう。宜しく頼むぜ……つか、八尺様を微妙に動かしちまって悪いな。ああでもしないと捻じ込めそうになかったんだわ」
髪さま「やれやれ、これだから応用力の無い奴は駄目ゾナね。どんな状況も泰然と切り抜けるワシを見習うゾナ」
尾弐「……あ。そういや、新人の仕事ってお前さんの洗髪なんだってな。薬用石鹸しかねぇけど洗ってやるからちょっとこっち来いよ」
髪さま「嫌ゾナあああ!昭和初期の人間並に髪のコンディションとか気にしてないオッサンに洗われたくないゾナアアア!!」

>>50
尾弐「マッチョねぇ……まあ、筋肉質なのは確かだな。つか、色男とか那須野が細いってだけな気もするけどよ」
髪さま「まあ、どいつもこいつもワシの若い頃に比べればまだまだゾナ!」
尾弐「いや……そもそも髪を鍛えるってどうやんだよ。早く育つように引っ張ったりすんのか?」
髪さま「故事成語の由来みたいな恐ろしい事を言うなゾナ!」

55那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:01:51
正直な話、祈が役目を果たせるかどうか自信はなかった。
妖怪には歴史、逸話、知名度――それらによって厳然たる位(ランク)が存在し、頂点はいわゆる魔王、神、と呼ばれる。
極端な話、一般に仏だとか、西洋で天使だ悪魔だと言われている者も、すべては妖怪の一種である。
それらの存在もすべて、人間の豊かな想像力によって生まれたのだから。

そんな妖怪のランクの中でも、神の名を冠するだけあって祟り神は相当な上位に位置する。
人間の感情の中で最も激しく、最も強いもの。それは『恨み』である。
菅原道真や崇徳上皇の例がある通り、人間は自らをも焼き焦がすほどの恨みによってしばしば祟り神に変じる。
恨みとは無限のパワー。対象が滅びるまで、その力が衰えることは決してない。

いくら祈が身体能力において他の追随を許さないとは言っても、正面切って八尺様に勝つことは不可能に近い。
攻撃されるほど、時間が経つほど、八尺様の恨みは激しく、強くなる。
持久戦は不利、といって一瞬で勝負を決められるほどヤワな相手でもない。
恨みつらみを原動力とする八尺様に対して祈に優位な点があるとしたら、人間の血を引くゆえの柔軟な発想力だろう。
『夜にしか姿を現さない』『相撲を挑まれると断れない』等々、妖怪は自らのルーツにまつわる習性に固執する。
八尺様にも『縄張りを周回する』『子供(少年)しか狙わない』という習性がある。
古来より、自らの習性に執着するあまり自滅する妖怪の逸話が数多くあるように。
祈に勝算があるとすれば、そんな妖怪の持つ掟を衝くより他にないのだ。

……そして。

>来たみたいだね……!

「そのようで。……って……あ、あれ?」

どれほど待っただろうか、足許から忍び寄る夜の冷気が少々つらくなってきたころ、祈と八尺様が公園にやってくる。
祈は見事に自分の役目を果たしたらしい。ほっと胸を撫で下ろしながら、橘音は身構えてマントの内側に左手を入れた。
が、何か想像と違う。
てっきり追いつ追われつしてくるとばかり思っていた祈と八尺様が、仲良く手なんて繋いでいる。
ノエルと同じく戦闘モードになっていた橘音もまた、慌てて頭を切り替えた。

>お姉さんってラインとかするの?

コミュ力のあるノエルが八尺様にフレンドリーな対応をする。
ノエルからの密かなメッセージを受け取り、こちらも『OK』とデフォルメされた狐が前足でマルを作っているスタンプを送る。
尤も、五感に訴える術の類は橘音には通用しない。かぶっている半狐面の効果だ。
ともあれそうして話していると、突然ノエルが体調不良を訴え始めた。
さっそく催淫術の効果が表れ始めたというのだろうか?

バギュッ!!

八尺様がノエルの身体に両腕を回そうとした瞬間、両者が弾かれたように離れる。
ふたりの間に雪華が散る。真冬ではあるが、ここは東京。本日降雪の予報はない。
ノエルの放った冷気が、束の間周囲の空気を凍てつかせる。
凄まじい凍気だ。並の妖怪なら一溜りもあるまい。――が、直撃を喰らったはずの八尺様は平然としている。
八尺様がアップライトスタイルで構える。どうやら、自分が嵌められたということに気付いたらしい。

「ノエルさん、そこは服を脱ぐくらいのサービスはしてあげなきゃ!」

ノエルの演技が功を奏さなかったことに対して、どうでもいい茶々を入れつつ。
橘音もまた身構え、マントの内側に改めて左手を突っ込んだ。

56那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:02:08
>来るよ、祈ちゃん!

注意を促すノエルの声を合図とするように、八尺様が一気に突っかけてくる。

ドッ!ドウッ!ドズッ!

あっという間に距離を詰めてきた八尺様の拳の連撃が、ノエルを襲う。
驚異的に長いリーチから放たれる、迫撃砲のような重い打撃だ。防御をしてもなお衝撃が身体に響く。
それを、八尺様は矢継ぎ早に繰り出してくる。一打一打に憎悪のこもった、致死の拳撃。
八尺様のラッシュを凌げるのは、ノエルが見た目の優男ぶりに反して手練の漂白者であるからと言うしかない。
怒涛の攻勢の隙を衝き、ノエルもまた氷で作った刀を振りかざす。氷華が舞い散り、足許に霜が生まれては消えてゆく。
人外の身体能力を惜しげもなく使った、異能同士の戦闘。

「……いやはや、いつもながら目まぐるしい」

ふたりの熾烈な戦いを少し離れた場所で見守りながら、橘音が呟く。
それから、祈の方をちらりと見る。

「祈ちゃんもノエルさんに加勢を。ノエルさんの盾になるイメージで、積極的に八尺様の前へ出てください」
「八尺様は祈ちゃんには手出しできない。卑怯と思われるかもしれませんが……そこはご容赦願いますよ」

祈に対してそう要請する。八尺様の習性を利用しての戦術だ。
橘音は直接戦いには加わらない。ただ戦闘を傍観しているだけである。
橘音は荒事がまるでできない。跳躍力や瞬発力などは並の妖怪レベルにあるが、腕力は人間と大差ない。
元々頭脳労働者という位置づけだ。自然、離れた場所で戦闘を分析するのが仕事になる。

――ふむ。

八尺様の能力を、半狐面を通して解析する。
一見リーチと長身から来る単純な拳打のように見えるが、決してそれだけではない。
人外の膂力と速度。そこから発生する衝撃波が、触れることなく周囲のものを破壊してゆく。
まるで意志を持った嵐だ。祟り神と相対するのは初めてではないが、この力は脅威以外の何物でもない。
そして、祟り神の恨みの力は時間が経てば経つほど増大していくのだ。
持久戦はこちらに不利と言うしかない。このままでは、いずれジリ貧で敗れるのはこちらの方だろう。
だが、そんなことはさせない。
仲間が力尽きる前に敵の弱点を看破し、攻略法を伝える。それが自分の役目なのだ。

――それにしても。

二対一の戦闘であっても、八尺様が怯む様子はほとんどない。むしろ、初期よりその攻撃の威力と速度は上がっている。
げに恐るべきは恨みの力――ということだろうか。
直接戦闘メンバーは二人もいればよかろう、と思っていたが、見込みが甘かったかもしれない。
自らの計算違いに、橘音は内心舌打ちした。
何かに気付いたらしい八尺様が、祈へと手を伸ばす。

――バレた……か?

まずい。ここで祈が少年でないということが露見すれば、八尺様は益々怒り狂うだろう。
ふたりがかりでも若干劣勢気味なのだ。さらに八尺様が恨みを増加させれば、漂白どころの騒ぎではない。
橘音はマントの内側の左手に何かを掴んだ。そして、それをマントの外へと出そうとした。
が、その瞬間。

バギィッ!!!

八尺様の長身がまるでトラックにでも撥ねられたかのように大きく後方へと吹き飛ぶのを、橘音は見た。

57那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:02:50
「……あ、あなたは……!」

思わず頓狂な声を出してしまう。仮面の奥で、橘音は目を瞬かせた。
今しがたまで八尺様がいた場所には、代わりに黒ずくめの大男が佇立している。
もちろん、その姿には見覚えがある。東京ブリーチャーズのひとり、尾弐黒雄。

「クロオさ―――んっ!来てくれたんです……ね……?」

>…………お、おえええぇェェ……!!

予想外の援軍に橘音は満面喜色を湛えたが、すぐにその口許がひきつる。
この上なくかっこいい登場の直後に、この上なくかっこ悪い嘔吐。バンジージャンプ並に高低差が激しい。
若干引き気味に見守っていたが、黒雄が復活し、

>で、遅刻しといてなんだが、コレどういう状況だよ那須野。

と訊ねてくると、はっと気を取り直して一度咳払いした。

「今日は葬式があるから行けるかわからん、期待するなって言ってきたのはクロオさんでしょ?だから先にやってたんですよ」
「いやあ……相手は祟り神とは言え、バックボーンのない都市伝説系。三人でも何とかなるかな、と思ったんですが……」
「やっぱり、腐っても祟り神。ちょっと荷が重いと考え直してたところだったんですよねぇ。グッドタイミング!」

そんなことを、後頭部をポリポリ掻きながらあっけらかんと言う。
戦力が足りないと思っていたのは事実だ。しかし、これでぐっとこちらの勝機が増した。
ノエルの凍気。祈のスピード。そして黒雄のパワー。
三者三様のこの強さがあれば、怒り狂う八尺様とて漂白することは充分可能、と算段する。
あとは――

ぽっ、ぽぽっ、ぽっぽぽぽ……

はるか遠くまで吹き飛ばされたはずの八尺様が、暗闇の中でぼんやりと佇んでいる。
今までの戦闘で少なからずダメージを受けている筈なのに弱っているそぶりがないのは、汲めども尽きぬ恨みの力によるものか。
その周囲の地面から、八尺様の肌の色と同じ蒼白い色の『腕』が無数に生え、化生たちを捕えようとおぞましく蠢く。
禍々しい怒りと恨みの波動が伝播し、離れたところにいる四人の産毛をピリピリと刺激する。

>いざとなったら俺、戦略的撤退していいか?

「いいですよ、ただしボクが逃げた後でよろしく!」

黒雄の軽口に軽口を返す。こんな遣り取りはいつものことだ。

「ノエルさん、祈ちゃん、クロオさん。もう少しだけ彼女のお相手をお願いします。ボクに時間を下さい」
「そう。八尺様をどうにかする方法を考える時間を――」

ぽぽっ、ぽぽぽ、ぽぽ……

八尺様が悠然と歩を進める。息苦しいほどの憎悪の力が公園内に満ち、地面に生えた腕の群れがノエルたち三人へと伸びる。
戦いは、まだ続く。

58那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:03:09
八尺様とは本来、ワンピースを着た女性型怪異のことを指す単語では『ない』。

八尺様の起源は古く、室町時代にまで遡る。
中世の日本ではしばしば大規模な飢饉が発生し、人々は貧困と飢餓にあえいだ。
そういった自然相手の天災が発生した場合、人々の取る方策とはひとつしかない。『神頼み』である。
人々は自らの境遇を神の怒りによるものと考え、状況を打破するため神に祈りを捧げた。雨乞いなどその最たるものであろう。
しかし神とは狭量なもので、無手の祈りには耳を傾けない。願いの対価には供物が必要である。
人々は願いを叶えて貰うため、なけなしの食べ物や酒を神前に興じた。
そして、そんな供物の中で最も価値があるとされたのは、人間の命であった。

川の氾濫を食い止めるため、水神へ生娘を嫁に出す。豊作を祈願し、山神に屈強な若者を捧げる。
そんな人身御供の逸話は、枚挙に暇がない。
飢饉のときにも、人々は日照り神への供物に人間の命を捧げた。
一番多く捧げられたのは年若い子供、少年の命である。
育ち盛りの少年は漲る命そのものであるし、第一よく食べる。
神に捧げる供物としては、これほど適した者もない。口減らしにもなって一石二鳥である。
生贄に選ばれた少年は死ぬことで神の許へ遣いにゆき、地上の人々の窮状を訴える使者とされ、『橋役様』と呼ばれた。
神と人間のあいだを取り持つ橋渡し役。ゆえに『橋役様』――
『八尺様』とは、その『橋役様』が転訛したものである。

『橋役様』は村の中から適任とされる少年が無作為に選ばれたが、選ばれた方は堪らない。
特に反対したのは『橋役様』に選定された少年の母親である。
腹を痛めて生んだ子を、村のため生贄にして殺すといきなり言われるのだ。しかし、拒絶することなど許されない。
結果、底知れぬ恨みと憎悪を抱いて子を手放すことになる。
それで首尾よく飢饉が終わるなり、雨が降るなりすればまだ救いはあろう。だが、そうならなかった場合はなお悲惨である。
実子を奪われたうえ、あの子は役目を果たせなんだ、役立たずだと陰口を叩かれる羽目になる。

そうして子を奪われた多くの母親たちの怒り、嘆き、憎悪や恨みはやがて形を成し、女怪の姿を取った。
本来八尺様が年端もゆかない少年を愛でるのは、性欲ゆえではない。
八尺様は求めているのだ。
理不尽な理由によって奪われた子供を。その命を。
もう一度、愛する我が子をこの手に抱きたいと。そう願っているだけなのだ。
八尺様が少年を犯し、精を搾り取って殺すというのは、最近のネットロアによって付与された属性に過ぎない。
なぜなら、妖怪とは人々の想いによって生まれるもの。
人々が「そうあれかし」と思えば、それはそうなるしかないのだ。――例え、事実とはまるで異なる話であっても。
いつしか供物の少年を指す言葉『橋役様』が『八尺様』となり、その名も祟り神と化した女怪を指すものとなった。
八尺様の背が高いのも、名前から来るイメージが外見に影響されたもの。
『背が高いから八尺様と呼ばれた』のではない。『八尺様と呼ばれるようになって背が伸びた』のである。
従って。

八尺様の怒りと恨みを和らげるには、その根本的な問題を解決してやるしかない。

「じゃっじゃーん!狐面探偵七つ道具の壱!『召怪銘板(しょうかいタブレット)』〜!」

どこかの猫型ロボットのような口調で、橘音はマントの内側からこれ見よがしにタブレットを取り出した。
一見すると単なる10インチタブレットだが、フレームに髑髏など禍々しいレリーフが施されている。
もちろん、このタブレットは単なる市販の電化製品ではない。
日本妖怪の双璧、山本五郎座衛門と神野悪五郎。
『稲生物怪録』にあって魔王と呼ばれる二体の超大物妖怪の妖力が、このタブレットには宿っている。
魔王傘下の妖怪を一瞬で召喚し、その能力を行使できる妖具――それが『召怪銘板』。
音声認識機能付きでフリック入力の手間も省けるスグレモノである。
さっそく、橘音はタブレットへと一体の妖怪の名を告げた。

……ひたり。
ひたり、ひたり。ひたり……。

戦闘の続く公園内に、新たな何者かの足音が響く。
八尺様がそちらを見る。
真っ黒いシルエットの、しかし少年のような輪郭のそれ。
それを目の当たりにして、八尺様の攻撃の手が束の間緩んだ。

59多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:03:29
「……おっかぁ?」
 橘音が呼び出した真っ黒なシルエットが、不安げな子供の声で言う。
そのまま暗闇に溶け込んでしまいそうな影のようなそのシルエットは、
よくよく目を凝らせば人間の少年のものであることが分かる。痩せた体に、この時代にそぐわない粗末な着物。
足は裸足だろうか。
 だが顔は分からない。輪郭もぼやけて曖昧だ。
それはこの黒い少年が、己の顔すらも忘れてしまっていることを意味していた。
 意志の弱い幽霊や力の弱い妖怪には時折あることだが、
長い時を経るなどすると彼らのことを誰もが忘れてしまう。というよりも覚えている者がこの世から消えてしまうのだが、
そうなると現世との結び付きが薄弱になり、己の姿を保てなくなっていくのである。
 有名な妖怪ならばいい。噂や伝説などで語り継がれることができる。
それによって力を保ち、あるいは増し、今生にも存在を残すことができる。
 だが全てに忘れ去られた力の弱い妖怪はそうではない。
今はかろうじて人の形を保っているが、やがては不定形の影となり、
己がなぜ現世に執着しているのか、なぜ妖怪なのか、なぜこの世を彷徨っているのかすらも忘れて
ただただ、世を揺蕩うだけの存在になるのだ。
 そんな存在になる一歩手前のそれ。黒い少年の声を受けて、今度こそ八尺様の動きが止まる。
再び攻撃しようと振り上げた長い腕を脱力したようにだらりと落とし、
今しがたまで戦闘していたノエルをも忘れてしまったように黒い少年に向き直り、ただ一心に見つめている。
 黒い少年もまた八尺様を見つめて、八尺様へ向かって歩いていく。
 恐る恐る、というような歩調。何かを確かめるような、危なげな足取り。
そしてひと時だけ少年が動きを止める。何かに気付いたような気配があった。
「せぇ、でっかくなってるけど、やっぱりおっかぁだ! おっかぁ!」
 八尺様へと近づく少年の足が早足になる。
顔はないが、その弾むような声音や動きで、少年が喜びに満ちているのが分かった。
 その声を聴き、姿を見た八尺様の姿に変化が生じた。

60多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:03:43
――自分の息子をかわいがる隣家の女を見ると涙が滲んだ。
 私にはあの子がいないのに、どうしてお前だけ。私にもあんなかわいらしい笑顔を向ける子がいたはずだったのに。
すがる思いで神に手を合わせたが、息子は帰ってこなかった。
 雨が降らないからと、生贄に捧げた息子を役立たずだと罵った男を殺してやった。
 私に我が子を差し出させておきながら、己の娘だけは守ってのうのうと暮らす村長を鎌で刺したが、殺すことはできなかった。
 村の男衆に捕まり、気狂いだとして閉じ込められ、殺された。首を絞められた。
 あらぬ限りの力で叫んだ。返せ。
 どうして。お前たちの所為じゃないか。
 返せ。
 お前たちの所為だ、お前たちの所為だ。我が子を返せ。もう会えない。
祟ってやる呪ってやる、殺してやる。我が子を返せ、もう一度会わせて。会いたい。
 どこにいるの。殺してやる。私の子は。どこに。
「おっかぁ?」
「――あ……あぁ……あぁあああああ……!!」
 おっかぁ。
 己をそう呼ぶ姿は、見間違うことがない。山に森に、川に、谷底に。
どこにいるのかと、どこかにいるのではないかと、ずっと探し求めていた姿。
供物として捧げられた、救ってやれなかった我が子。生贄にされてしまった可哀想な我が子。
もう会えないと思っていた愛しいものが、駆け寄ってくるのを感じる。
 ああ、こんな背の高さではあの子を抱きしめてあげられない。
どうして己はこんな姿になっているのだろう?
 前の姿に戻って、我が子を安心させてあげなくては。

 悲鳴を上げた八尺様の姿が、見る見るうちに縮んでいく。
その背丈は一五〇センチもないかもしれなかった。
また、着ているものはワンピースなどではなく、少年と似たような粗末な着物であるように見え、
先程のような若い女の雰囲気は微塵も感じられなくなっていた。
その輪郭はまるで陽炎のようにぼやけて、幾重もの、何人もの影が重なっているように見えた。
 陽炎のような姿になった八尺様は、膝をついて諸手を広げ、走ってくる影のような少年を抱きとめた。
そして強く胸に抱きよせる。
「あいたかった。もうずっとあえないかとおもったよ、おっかぁ……」
 その陽炎の腕の中で、安らいだような声を上げる、影の子供。
「太一かい?」
「次郎?」
「ぎん」
「一、一だ。あぁ……」
「六助……?」
 陽炎の女が口々に、子どもの名を口にする。陽炎が一層揺らいで、複数の女の姿がブレて見えた。
 八尺様。その元になった『橋役様』とは、
愛しい我が子を生贄に取られた母親達の怨念や魂が祟り神と化したものだ。
故にその存在にある想いや魂は一人のものではない。何人もの母が、その存在に囚われていたのだ。
 母親が呼びかけると、少年の影から一人、また一人と、
顔の判別できる少年が剥がれるように出て来て、返事をした。
母の記憶が、少年たちにかつての姿を取り戻させていく。
 橘音が呼び出した黒い少年もまた、『橋役様』として選ばれた少年たちの魂だった。
その無念や寂しさ、痛み。母を求めるその声が、やがて名も形も知られぬ妖怪として一塊になった姿だったのだ。
彷徨い歩いていた両者。母を見つけた子と、子を見つけた母は、
強く抱き合ってはやがて、天に昇るように消えていく。

61多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:03:58
 その光景を見て状況を理解できないのは、橘音以外のブリーチャーズ全員だっただろう。
ノエル、尾弐、そして祈の3人は、事態の推移を見守りながら、橘音の傍らへとやってきた。
「どういうことだよ、あれ」
 先に口を開いたのは祈だった。あれ、と顎でしゃくって、八尺様たちを示す。
 先程まで激しく戦っていたかと思えば、
橘音がいつもの妖怪時計もとい便利妖怪召喚タブレットによって黒いシルエットを呼び出し、
それが八尺様に語り掛けると、どうやら八尺様は満足してその黒いシルエットと共に成仏していくようである。
 打ち合わせでは、自分達が戦闘で八尺様を叩きのめし、会話でなんとか納められれば良し、
できなければ封印等で漂白ということであったのに、話と違うではないか。納得できる説明を求む。
 そう言いたげな不満そうな顔で、パーカーのポケットに両手を突っ込んでいる。
すっかり戦闘状態が解除されたと見ているようだった。
尾弐も似たようなもので、あくびなどしている。
 八尺様と真正面から戦っていたノエルはその点冷静で、微かな冷気を体に纏わせたままであった。
 祈の質問に答えず、橘音は人差し指を立てて仮面の口の前に持ってきた。
「説明は後です。まだ最後の戦闘が残ってますから」
 そう言って、仮面の口の前に持ってきた指を、八尺様へと向ける。
その先には、一人の女が残されていた。

 全てが成仏した訳ではなかった。
黒い少年達も、陽炎のようになった女達も消え去った後で、残されているモノがある。
 陽炎の女たち、祟り神『橋役様』が居た場所に残されているその女は、
白のワンピースを着た、若い女だった。
それは八尺様の姿。
だが八尺という程に大きなものではなく、身長は180センチ前後と言った所か。
「――うふっ、ふふっ」
 女から笑い声が聞こえる。
女はそれを恥じているのか、両手で己の口元を塞いだ。
「うふ、うぷぷ、……ぽっぽぽ」
 口を両手で塞いでなお、堪えきれない笑いが、泡が弾けるような奇妙な破裂音を生んだ。
男か女かも判別つかぬ、不気味な笑い声となる。
 この女こそが。橋役様が八尺様という都市伝説へと転ずる元凶となった者であった。

62多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:04:16
 ある田舎の村で男児を狙った陰惨な事件が起きた。
犯人はなかなかに長身の女で、犯行時白いワンピースを着ていたことがわかっている。

 女は、男児への歪んだ性愛を抑えることができなかった。
公園で見知らぬ男児に声を掛けるというだけでも充分に異常な行動だが、
女はある時は2mを超える塀をよじ登ってでも男児の姿を眺めている、というような常軌を逸した行動に出ることがあった。
 男児たちはその女の視線に気が付いて言うのだ。
「とても大きな女の人が塀から顔を出して、じっとぼくを見ていた」と。
 塀を超すほど背丈の大きな女が子供を見つめていると言う噂は、実しやかに囁かれ、村中を駆け巡った。
 ある時誰かが言った。それはもしや『八尺様』ではないか、と。
 当時その村では、既に橋役様の名前は訛りはじめて、八尺様という名で定着しつつあった。
八尺様と言う言葉の響きから八尺にもなる大柄の女というイメージが独り歩きしており、
それは塀を越して男児を見る女の姿に合致していたのである。
そして八尺様は生贄として我が子を捧げているとも伝わっていた為、
八尺様は男児たちに失った我が子の姿を重ねて見ているのでは、という話になってしまった。
 こうしてその異常な性愛を持った女と、
八尺様へと名を変えた橋役様のイメージは奇妙に結びついていくことになる。
 念の為、異常者かも知れないという事で自治会などから児童や保護者らに注意喚起がなされたが、
身長が2mを超えるという話や、秋でもワンピースを着ているという特徴、
ぽぽぽという奇妙な笑い声がするという話はどうしても噂話や子どもの怪談の域を出ない。
注意喚起も虚しく、それは八尺様と言う怪談話として面白おかしく伝播していくことになったのだった。

 しかし女はやがて、男児を攫い、犯した後に惨たらしく殺すという事件を起こした。
 これで女が捕まればまだよかっただろう。
八尺様などいなかった、背がそこそこ高い異常者がいただけだと、
犯人は捕まりもう脅威は去ったのだと、村の住民は安心することができたし、八尺様の噂も消えただろう。
 だが女は決して捕まることはなかった。それがいつまでも住民を恐怖に陥れることになった。
 実際には女は警察を恐れて山に入り、誤って谷底へと転落して死んでしまったのだが、
それが誰にも知られなかった為に、まるで妖怪のように、本物の八尺様が出たかのように、
住民たちを心のどこかで怯えさせ続けてしまった。
 それがこの八尺様を生み出した。
人々の恐怖は、死した女を八尺様として蘇らせ、そして女は完全に八尺様に成り代わってしまった。
八尺様とは『生贄として男児を奪われた母親の無念の集合体であり、祟り神』……ではなく、
『八尺ほどの背が高い女の妖怪で、気に入った男児を攫い、犯し、取り殺すもの』の意味となり、
その元となる橋役様の噂も、橋役様という祟り神となった女たちの強力な力をも自らに取り込んで、
主導権を握り、八尺様は暴れまわるようになる。
 そして暴れた形跡の一部が、ネットで拡散される今の八尺様の都市伝説を形作ることへと繋がるのだ。

 この女こそ。もう一つの八尺様。
 祟り神・橋役様を取り込み、その力で勝手気ままに子供を攫い殺していた悪鬼。
異常性愛者にして、子供を犯して殺して回る快楽殺人者の妖怪。
「うぷっ……ぽぽっ、ひはははは!!」
 もう一つの八尺様は哄笑する。そして大きく見開いた眼で、4人を見る。
楽しみを邪魔した者を許さない、そんな怒りの籠った眼。
 それを向けられて尚、動じることなく橘音は淡々と言った。
「祟り神としての力は削ぎました。アレは八尺様の抜け殻とも言うべき、大したことのない妖怪となったはずです」
 一拍置いて、続ける。
「お三方なら大丈夫だとは思いますが、気を付けてくださいよ?」

63多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:04:30
祈   「多甫 祈の! えーと、オマケ……にすらならないコーナーだッ!」
祈   「もうあたしのターンかなと思って続きを書いちゃったけど、
     もし>>58が途中で、橘音が残った2日ぐらいで続き書こうとしてたらどうしようって今更思ってさ」
祈   「そんでちょっとだけこう、書いてんだけど……」
祈   「もしそうだったら、ご、ごめんな? その時はあたしの方は無視しちゃっていいから!」
祈   「てことで、その。ごめんっ! そんだけ! じゃーねっ!」

64那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:04:50
橘音「皆さんおはようございます。毎度おなじみ流浪のコーナー、那須野橘音のモーニング・ブリーチャーのお時間です」
髪さま「もう少し節操を持てゾナ」

>>63 祈ちゃん
橘音「何も問題ありません!というか、祈ちゃんにはボクの目論見をことごとく看破されてしまいました……」
髪さま「もう、チームのブレーン交代した方がいいんじゃないかゾナ?」
橘音「そしたらボクはお茶くみだけしてればいいですか?……それはともかく、いい流れだと思います」
髪さま「橘音が当初想定していたシナリオよりよっぽど面白いゾナ」
橘音「ぐうの音も出ません……」
髪さま「じゃあ、あれがブリーチャーズが本当に漂白するべき《妖壊》ということゾナね。後はノエルと尾弐に任せるゾナ」
橘音「遠慮なくやっつけちゃってください!ではまた次回!」

65ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:05:19
ノエルは端から見ると八尺様とほぼ互角の戦いを繰り広げながらも、内心かなり焦っていた。
でかいし速いしリーチは長い。何より特筆すべきはその怨念の強さ。
凌いでも尚腹の底に響く、物理的な意味だけではない生気を抉り取るような衝撃。まともに食らえば一撃KOだろう。
もはや一体の妖怪を相手にしているとは思えない……複数の存在の集合体だろうか。
最初こそ「純粋な乙女心を弄んでサーセーン!」とか「顔は勘弁してね!」とか軽口も出ていたものだが、その余裕すらなくなってきた。
その様子を察してか、橘音が祈に加勢に入るように要請する。
どうやら八尺様は、自分好みの美少年の振りをしている祈には攻撃できないようだ。
しかしそれなら、微妙にストライクゾーンを外れている橘音が狙われないのは何故か。
そう、まるで自分だけが狙われているような……。何故だろう、胸の奥がざわざわする。
何時もなら強烈な憎悪も完全スルー出来るのに、責められている気がして罪悪感に苛まれる。
まさか……以前どこかで因縁があるのか――!? そう思ってはみるも、特に思い当たることはない。
その心の迷いが微妙な反応の遅れに繋がり、次第におされていく。

「がァっ!!」

かわし損ねた拳撃の余波をくらい、吹っ飛ばされる。
とどめを刺しに来るかと思いきや、八尺様が手を伸ばしたのは前にいた祈。
自分は純正の妖怪だから最悪どうなっても死にはしないが、人間分の多い祈はどうなるか分からない。

「祈ちゃん! 逃げ……」

>「――――ぼっ!?」

突然強烈な拳打を受け、吹っ飛ぶ八尺様。

>「……あ、あなたは……!」

心底喜んでいるような声音。仮面を被って普段はミステリアスキャラで通している橘音が、不意に垣間見せる素。
絶体絶命のピンチに颯爽と登場したのは、ブリーチャーズのパワー系マッチョ枠、尾弐 黒雄。
氷属性クール(※体温的な意味で)枠としてはこういう時はあからさまに喜びを表現せずに
余裕だった振りをしてクールな台詞で出迎えるのが様式美である。
立ちあがって服の埃を払いつつ言う。

「――遅かったじゃないか。危うく僕だけで倒してしまうところ……ってえぇえええええええええ!?
クロちゃん大丈夫!? 誰か背中さすってあげて!」

予想外のゲロのため、クールな台詞を言い終わることすらかなわなかった。
尚、現在変化解除中で超低体温のため、自分で背中をさすっては更に大変なことになってしまうのだ。

66ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:05:33
「……げぇ! 何あれ、マドハンド!?」

安心したのも束の間、八尺様の周囲の地面から無数の腕が生えていた。
少しでも気を抜けば飲み込まれてしまいそうな禍々しい瘴気。

>「ノエルさん、祈ちゃん、クロオさん。もう少しだけ彼女のお相手をお願いします。ボクに時間を下さい」
>「そう。八尺様をどうにかする方法を考える時間を――」

いつもなら一瞬にして対処法を弾きだす橘音が、時間をくれと言う。それだけ厄介な相手なのだ。
おまけに本当に聞こえているのか、幻聴なのか分からない声が聞こえてくる。

(まだ分からぬか? 自分が何故恨まれているのか)

「来るんじゃない……!」

地面から生えた腕を一気に凍らせ、砕け散らせて粉々にする。しかし次から次へと無尽蔵に生えてくる。

(所詮どんなに取り繕っても人に仇なす化け物よ……!)

「違う……」

(お前が正義面して除霊の真似事やってるなんざお笑い草だ。私の息子を奪ったお 前 が な!)

「―――――ッ!!」

ノエルは糸が切れた操り人形のように膝から崩れ落ちた。
妖怪は、永遠の時を生きる存在。
妖怪が皆が皆崇高な精神性を持っていれば何も問題はないのだが、見ての通りそうではない。
長い年月の間に負の感情を澱のように堆積させ、妖壊化する者も少なくないのだ。
永遠という名の毒に蝕まれぬために、ある者は尾弐のように心を動かさなくなっていき、またある者はノエルのように忘却という手段を取る。
忘却――大昔のこと、特に都合の悪いことから優先的に忘れ、リアルに「記憶にございません」状態になる、前都知事もびっくりの便利機能である。
しかしこれには致命的な欠点がある。
運悪く当時の当事者と出くわして真実を突きつけられた時、公正中立な第三者に検証してもらうまでもなく、全てを思い出してしまうのである。
もともとそれ程精神が強靭ではないから忘却という手段を取っているわけで、不意に思い出してしまった時の動揺たるや半端ない。

67ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:05:51
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遥か昔――ノエルがノエルという名前と今の姿を得るずっと前。
雪ん娘と呼ばれるまだ子どもの雪女だった時の話。
まだ発生してからそれ程時が経っていない、雪山に住まう雪の精のような存在だったころ。
唯一無二の親友がいた。それは人間ではなく、かといって妖怪でもなかった。
ふわふわの毛皮にもふもふの尻尾の暖かい生き物。
一緒に雪の中を駆け回って、冷たいのも嫌がらずに抱き枕になって眠ってくれた。
しかし永遠を生きる妖怪たるもの、刹那で死んでしまう普通の生き物と馴れ合ってはいけないというのがその当時の掟で
案の定と言うべきか大事件が起きてしまった。
ある日親友が死んだ……人間に殺されたのだ。
そこまでであれば「残念だけどよくある話」で済むのだが、その先がまずかった。
まだ不安定な存在だったその雪の精は、怒りと哀しみのあまり力の制御が出来なくなってしまったのだ。
現在で言うところの妖壊化――というやつかもしれない。
討伐隊でも来て適当に怒りをぶつければ収まるかもしれない、いっそのこと滅されてもいいとも思ったものだが、そんなものは来なかった。
ふもとの村は大寒波と冷害と季節外れの降雪に見舞われた。行きつく先は当然飢饉である。
そんなある日、雪の中に置き去りにされている少年を発見した。
少年はすでに事切れる寸前で、それにも拘わらずその雪の精が厄災の原因だと直感的に気付き
息も絶え絶えに人間達の窮状を訴え、どうか怒りを鎮めてほしいと懇願した。
こんなに綺麗な神様に看取られて幸せだ、残された母親のことだけが心配だとも。
雪の精は問い詰めた。自分がお前を死に追いやったのに、どうして罵らないのか、憎くないのかと。
少年はこう答えた。

「名誉ある『橋役様』に選ばれたんだから、立派に役目を果たさなきゃ」

゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。+゚ ゚+。*゚+。。+゚*。゚+。*゚+。。+゚*゚+。。+゚*。+゚

気が付くとどうやら数秒間気絶していたようで、祈と黒雄に助けられていた。

「……。ごめん、ちょっと貧血で……。そんなことより……分かったかもしれない、アイツの正体!」

確かにいつも血色は悪いが、そもそも妖怪は貧血にならない。
言い訳にすらなっていない言い訳をしつつ、橘音の方に向き直る。早く告げなければ、重要な手掛かりを。

「橘音君! 八尺様は……橋役様で……えーと、つまり……」

そもそも音が似ているから一緒になったのであって、文字で見ればまだ分かるが、言葉で伝えるのはなかなか難しい。
逡巡している間に、橘音は秘密道具を取り出した。

>「じゃっじゃーん!狐面探偵七つ道具の壱!『召怪銘板(しょうかいタブレット)』〜!」

>「どういうことだよ、あれ」

訳が分からないという風に橘音に問いかける祈。
目の前で繰り広げられる光景を見てほぼ察しがついたノエルは、必死で何の事だか分からない振りをする。
――いや、でも姿変わってるし大丈夫か?
そんなことを考えているうちに、最後の一人の影の子どもがノエルの方に向き直る。
紛う事無きあの日の少年。

68ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:06:05
「あれ? “いめちぇん”した? 前の美少女も良かったけどそれはそれでいいな!」

益々何のことだか分からなくなる祈達と、動揺しまくるノエル。
この際人違いで押し通してやりたいと思うが、それは無理な話である。
妖怪たるもの、姿が変わることは稀によくあるが、妖力の形質のようなものはおいそれと変わらない。
純粋な子どもには、変装(?)している知人を気付かない振りをするという高度な気遣いは無かった!
ついに観念したノエルは土下座する。

「ごめん……! 僕は神様なんかじゃない……。
どうしようもなく弱かったから人に仇成す化け物になったんだ!」

「妖怪は人々がそうだと思えばそうなる……君が何と言おうとオラにとっては神様だ。
……せめて立派に役目を果たせたと思わせてくれたっていいだろ?
橋役様から神様に一つお願いだ。おっかぁ達を利用した悪い奴をやっつけてくれ――!」

そして彼もまた、母親の魂と抱き合って消えていく。
そこに残されたのは――

>「説明は後です。まだ最後の戦闘が残ってますから」

白いワンピースの女、元祖「八尺様」。全ての元凶――!
ノエルはその八尺様をびしっと指差し……

「お前に一つ言っておくことがある……。
YESショタコンNOタッチ! 美少年とは触れずに愛でるものとみつけたり!
なのに手を出しあまつさえ捕食するとは言語道断! てめぇのパンツは何色だぁ!」

一連の何やかんやを何とか誤魔化そうと、怒涛の勢いで意味不明なことをまくしたてる。

「というわけで、新たな扉を開いてショタコンを卒業しよう! さあ!」

なにが「というわけで」なのかは知らないが、両腕を開いて八尺様を迎え入れるポーズを取るノエル。
雪女には死の抱擁というオーソドックスな必殺技があるため、満更ふざけているわけでもないのだが、流石に素直に乗ってくるわけはない。
流石の異常性愛者の八尺様もこの手の変態紳士の対処は管轄外のようで若干引きつつも、普通に大上段からチョップをかましてきた。

「隙ありッ!」

ノエルは一気に姿勢を落とし、八尺様の足の間をスライディングの要領で潜り抜ける。
ちなみにこれ、業界的にはちょっとしたお呪い的意味がある行動で、人間の足の間をくぐって呪い殺す妖怪なんかもいる。
別に小学生男子的発想でパンツの色を見るためではない。多分、いや、断じて。
その証拠に八尺様は怒り狂いながら振り返ろうとするが……一歩も動けない。
いつの間にか両足が足元の地面ごと凍り付いて固定されていた。またとないチャンスだ。

「今だ―――!!」

69品岡 ◇VO3bAk5naQ:2018/04/09(月) 09:06:39
名前:品岡ムジナ(しなおか - )
外見年齢:24
性別:男
身長:175
体重:60
スリーサイズ:中肉中背
種族:元のっぺらぼう現式神
職業:暴力団構成員
性格:お調子者・チンピラ・似非関西弁
長所:義理堅い
短所:強い者には媚びへつらい弱い者には横柄な小物メンタル
趣味:夜遊び
能力:顔以外の肉体と触れた物体の形状変化
容姿の特徴・風貌:ウルフカット、柄シャツに色眼鏡の人相悪い男

簡単なキャラ解説:
広域指定暴力団『山里組』の組員、つまりヤクザ。
山里組はいわゆる極道とは色合いの異なる資金集めの為の下請組織であり品岡は更にその下っ端。
歌舞伎町を拠点に地域の飲食店や風俗店などへのみかじめの集金を担当している。

その正体は江戸時代から関東地方を荒らし回っていた"化かし系"の妖怪、のっぺらぼう。
旅人を化かしては食糧や金銭を奪っていたところ、幕府属託の陰陽師によって化け物退治に遭い、
のっぺらぼうの能力である変幻自在な『顔』を封印され、陰陽師の式神となる。

契約により七代後まで陰陽師の一族の式神となって働かされており、
現在の当主であるヤクザの組長のもとで下っ端としてこき使われている。

『顔』を封印されている為に人相は固定されており、代わりに顔以外の肉体と触れた物体の形状変化妖術を持つ。
チャカやドスの他釘バットやスレッジハンマー等を形状変化で小さく纏めて体内に収納している人間武器庫。
もちろんこの能力を銃器や薬物の密輸に使ったりもしているわりと真面目に凶悪犯罪者。

"化かし系"の本家である『御前』とは親戚関係にあり、妖狐一族と繋がりのある陰陽師組長の命令で
東京ブリーチャーズの非正規メンバーとして必要な時に呼ばれてはやはりこき使われている。

ブリーチャーズが最後に漂白すべきは多分こいつとその飼主。


【今の話が終わったら参加したいです、ヨロシャス】

70那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:07:05
橘音「こんばんは、那須野橘音のナイト・ブリーチャーのお時間です。司会はボク、那須野橘音と」
髪さま「今年の漢字一文字は『毛』これで決まりゾナね。髪さまでお送りするゾナ」
橘音「いえ、今年の漢字一文字は『金』で決まっちゃいましたし」
髪さま「ゾナ!?誰の許しを得てゾナ!?」
橘音「少なくとも髪さまの許可が必要ないことだけは確かです」

>>69 ムジナさん
髪さま「また男かゾナ!ワシは乳のでかい美女を希望してるというのにゾナ!」
橘音「高女あたりですか?」
髪さま「乳はでかいかもしれんが、乳に比例して背も高いゾナ……確実に」
橘音「髪さまの要望はともかく、歓迎しますよ!ようこそ東京ブリーチャーズへ!」
髪さま「では、今の八尺様編が終了したら次の話から参加ということで、もう少し待っててほしいゾナ」
橘音「ノエルさんがいいパスを出して下さいましたので、ここはクロオさん!ひとつビシッと八尺様に引導を!」
髪さま「で、あと1ローテくらい全員分の〆をやってから、八尺様編終了と行きたいゾナ」
橘音「ということで、ムジナさんも参加希望されましたし、少し早いんですが>>5さんはここでタイムアップとさせて頂きます」
髪さま「ついでに、ここで一旦ブリーチャーズの参加者募集も締め切らせてもらうゾナ」
橘音「いやぁ、こんなにも集まって頂いて本当にありがたい限り。心からお礼を言わせて頂きます、ふかぶか」
髪さま「気付けばむっさい男ばっかりのチームになってしまったゾナねぇ……」
橘音「祈ちゃんにしばかれますよ?」
髪さま「ヒィ!?い、今のはオフレコで頼むゾナ。祈ちゃんとこのババアに蹴り飛ばされて太平洋横断は懲り懲りゾナ」
橘音「今度はユーラシア大陸横断かもしれませんよ」
髪さま「三蔵法師もビックリゾナねぇ……」
橘音「ともかくムジナさん、丁度いいスキルをもって来てくださいました。これでボクのネタが捗ります、むふふ」
髪さま「ま〜たロクでもないこと企んでるゾナ?」
橘音「ムジナさんにピッタリの案件を、御前が用意して下さるそうです。次の妖怪もね……お楽しみに!」
髪さま「ロクな相手じゃないということだけは理解したゾナ。ではまた次回ゾナ」

71創る名無しに見る名無し:2018/04/09(月) 09:07:18
男ばかりで強そうなチームにはなったよね

72尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 09:07:42
>「いいですよ、ただしボクが逃げた後でよろしく!」

「上司の帰宅まで帰れないたぁ、化物業界も人間じみてきたもんだぜ」

いつも通りの軽口を叩きあう、尾弐と那須野。
だが、垂れ流す言葉こそ弛緩しているものの、尾弐は一瞬たりとも八尺様から視線を外す事はしない。
それは、眼前で繰り広げられている光景が危険なものである事を察知しているが故。


「ぽぽ……ぽぽぽぽぽ」

まるで地に埋められた死者が助けを請うている様に、
異形の怪物たる八尺様の周囲の地面から這い出て来たのは、数多の腕。

血が通わぬ、青白い死人の腕。

呪詛の塊とも呼べるそれらは、八尺様の負の感情が具象化した物であり……故に、その行動目的は決まっている。
八尺様にとっての敵対者……尾弐達を捕獲し、壊す事だ。

>「……げぇ! 何あれ、マドハンド!?」

「ありゃ、舟幽霊とかその類だろ……那須野、俺とノエルで時間作ってやるから、仕込みは任せたぜ」

圧力さえも感じる程に膨れ上がった怨念を纏った『腕』は、暫くの間その場で蠢いていたが、
やがて獲物を捕獲する時の蛇の様に伸び――――尾弐達に襲い掛かってきた。

・・・


「……ちっ」

尾弐の体に纏わりつく、無数の腕、腕、腕、腕、腕。
青白い亡者の如き腕はその数を加速度的に増やし、もはや総数で百を超えようとしていた。
腕は一本一本が人外の膂力を有しており……それらの全てが、尾弐の肉体を捻じ切り、或いは叩き壊そうと試みる。
個を集団が蹂躙せしめるその様は、果たして蜘蛛の糸に群がる地獄の亡者の群れの様であり
群がられているのが一般人であれば、とうの昔に赤黒い挽肉と化していた事だろう。

けれども――――此処に居るのは尾弐黒雄。
剛力と堅牢を有する鬼の眷属である。

「……ああ、面倒臭ぇ。縋るな、祈るな、纏わりつくな」

尾弐が蠅でも払うかの様に雑に腕を振るうと、群がっていた腕は一斉に『弾き飛ばされた』。
更には、その腕の内の数本は半ばから千切れ、黒い霧と化し霧散していく。

退魔師の様に術を用いている訳では無い。
ノエルの様に、権能を用いている訳でもない。

単純な、暴力。
この国において悪と暴力の化身とされる種族の、理不尽なまでの只の力技である。

恐らくは、この『腕』との潰し合いで尾弐が果てる事は無い。
それは、数如きでは覆らぬ程に腕と尾弐とでは性能差が有るからだ。
本気で尾弐を滅したいのであれば、八尺様本体が対峙する以外に可能性は無いだろう。だが……

「ったく、次から次へとキリがねぇなオイ」

負けないという事は、勝てるという事と同義ではない。
無数の腕は、潰した端から増えていく。そして、その腕を効果的に『殲滅』する為の手段が尾弐には欠けていた。

73尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 09:07:57
(ノエルの奴ならどうにか出来そうなんだが……どうにもさっきから妙な調子みてぇだしな)

種族としての雪女であるノエル。雪を繰り氷を統べる彼の権能は、広域殲滅戦において非常に有効なモノである。
本来であれば、尾弐が攻撃を引き受けノエルが随時腕を氷殺し続ける事で、腕との戦いは優位に進められた筈なのだが

>「違う……」

そのノエルは、先ほどから腕と戦ってはいるものの、その動きは尾弐が知る本調子とは程遠い。
まるで病魔に憑かれた人間の様に、常の精彩は見る影も無く……

> 「―――――ッ!!」
「なっ!?」

そしてとうとう、膝から崩れ落ちてしまった。
その光景を目撃した尾弐は、群がる腕を打ち払いながら急いでノエルの元へ走り寄る。
幸い、その人外の俊足を以って先に駆けつけた祈がカバーに入った事で腕による蹂躙は避けられていたが

(クソ……不味ぃな。ここでノエルが使い物にならなくなったら、あの『腕』を止められる奴がいねぇ……)

状況は、確実に悪化した。殲滅をこなせるノエルが戦線を離脱してしまえば、腕は増えるのみ。
尾弐と祈では、戦闘力はともかく面制圧の能力が不足している。

(那須野は間に合うか分からねぇ…………どうする。ヤる、か?)

戦況を分析していた尾弐は、暫くのあいだ何事かを逡巡していたが――――直後。

>「……。ごめん、ちょっと貧血で……。そんなことより……分かったかもしれない、アイツの正体!」
>「橘音君! 八尺様は……橋役様で……えーと、つまり……」

僅かの間意識を失っていたノエルが目を覚まし、『八尺様の正体が判った』と。そんな事を言って見せたのである。
未だ意識が朦朧としているのか、或いは伝えるべき言葉を見失っているのか、その言葉は単語を繋いだだけで不明瞭なものであったのだが

>「じゃっじゃーん!狐面探偵七つ道具の壱!『召怪銘板(しょうかいタブレット)』〜!」

けれども、那須野橘音。探偵としての姿を持ち、智謀で知られる稲荷の眷属たるその者にとっては、
その僅かな『切欠』があれば、真実に至る道を開くのに、十分であったらしい。

(ありゃ確か……妖怪を呼び出す呪具だったよな? けど、この場面で一体何を呼ぶってんだ?)

那須野が取り出した禍々しいタブレットの様な何かは、尾弐も以前にも見た事が有る。
妖怪を呼び出す。召怪銘板その為に用いる媒介であるが……果たして、この場面で使う道具であるとは尾弐には思えなかった。
位階の高い妖怪を呼び出すには時間もコストも掛かる上に、お手軽に呼び出せる程度の妖怪ではあの腕の群をどうにかする事は出来ないからだ。
不可解に思いながら様子を伺う尾弐であったが……その直後に、呼び出された怪異と八尺様の反応を見て、大いに納得させられる事となった。

「――――八尺……橋役……ああ、成程、そういう事かよ。確かに、『それ』程度なら直ぐに呼び出せるわな」

74尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 09:08:11
那須野によって呼び出されたのは、亡霊。それも、魑魅魍魎じみた力のない脆弱な霊体である。
だが、その力のない霊こそが、『八尺様』にとってはこの上なく有効な『手段』であった。
現に、その亡霊……小さな子供と思わしき、薄い影の様な亡霊を認識した瞬間、腕も、八尺様事態もその動きを止めてしまっている。
……そう。八尺様と対峙するにあたり、那須野が考え出した手段は、力による封殺ではない。


『鎮魂』であったのだ。


――――古来より、災厄を齎す荒ぶる神を鎮める。荒魂(あらみたま)を和魂(にぎみたま)へと変える手段は幾つか存在する。
人柱を立てて封ずる事。神として奉る事で、荒ぶる神としての属性自体を変化させる事。

そして……供物として、神が望む物を捧げる事。

荒ぶる神は、己の怒りや恨みの原因を取り除かれる事で、或いは望む物を手にすることで、その怒りを収める。
ならば、八尺様……否。橋役様が欲するモノとはなんぞや。

>「せぇ、でっかくなってるけど、やっぱりおっかぁだ! おっかぁ!」

その答えは、子供。
己がかつて失った、子供である。

>「どういうことだよ、あれ」

「あー……要は、腹減って暴れてた犬に餌を……じゃねぇ。喉かわいてた奴に水やったみてぇなもんだろ。多分。
 ま、俺もそこらへん辺の詳細はさっぱりだから、那須野に聞いてやってくれや」

祈りの呟きに答える尾弐の眼前では、八尺様を構成していた橋役様(ははおやたち)が、橋役様(いとしごたち)と
共に昇華していく光景が繰り広げられている。
薄く光を放つ、その美しい情景に対し尾弐は……興が削げたとでも言う様に脱力し、つまらなそうに大きな欠伸を一つして見せた。


そうして、橋役様達は立ち去り……あとに残ったのは、たった一つの『悪意』。


・・・・

>「説明は後です。まだ最後の戦闘が残ってますから」

「……みてぇだな」

先程まで子供の橋役様に頭を下げていたノエルの言葉に従い、視線を向ければ、そこに居たのは一人の女の霊。
180という、女性にしては大柄な白いワンピースを着込んだ『悪霊』の姿。

>「うぷっ……ぽぽっ、ひはははは!!」

祟り神としての八尺様。その中核を成していた存在。
けたけたと唾を撒き散らしながら血走った瞳をギョロリと巡らせるその姿は、祟り神であった時よりも醜悪なものある。

>「祟り神としての力は削ぎました。アレは八尺様の抜け殻とも言うべき、大したことのない妖怪となったはずです」
 一拍置いて、続ける。
>「お三方なら大丈夫だとは思いますが、気を付けてくださいよ?」

「あいよ、大将。つっても、三人がかりなんて必要ねぇよ。アレなら色男と俺だけで十分だ。
 いの……新入りのボウズは、オジサンに任せて目ぇ瞑ってそこで休んでな」

そう言い残すと、尾弐は準備運動の様に肩を一度ぐるりと回し、女の霊へと歩んでいく。

75尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 09:08:27
>「お前に一つ言っておくことがある……。
>YESショタコンNOタッチ! 美少年とは触れずに愛でるものとみつけたり!
>なのに手を出しあまつさえ捕食するとは言語道断! てめぇのパンツは何色だぁ!」

向かった先では、既にノエルが八尺様の残滓との戦闘を始めていた。
おどけた様子で挑発をし、或いは油断を誘いつつ……尚且つ相手の攻撃を適切に裁き、おまけに罠にまで嵌めて見せる。
その動きは、先の戦闘とは打って変わって艶やかなものとなっており、ノエルの本来の戦闘能力の高さを物語っていた。
現にそのノエルの戦略にまんまと掛かった女の霊は、足元を氷で固められ、動く事が出来なくなっている。

>「今だ―――!!」

そして、その身動きできない女の霊の前に、とうとう鬼がたどり着いた。

・・・・・

「ぽぽっ、はは、ぴゃひゃはは!!!!」

荒れ狂う女の霊。彼女は、眼前に立った長身の己よりも更に大きい尾弐に対して、渾身の拳を叩き付ける。
何度も、何度も、何度も、何度も。
彼女が放つ、先程は公園の地形を変えるまでに至った荒れ狂う嵐の様な連撃は、その全てが尾弐に命中している。
だが、それでも女の霊が拳を止める事は無い。
それは、己が獲物を『捕食』する事を邪魔し、尚且つ、先程己に手を上げた相手に対する怒り故だろう。

徹底的に破壊せんと拳を浴びせ続け……だがその最中、女の霊はふと疑問を覚えた。


―――――果たして、目の前の男はここまで『大きかった』だろうか?と


つい先ごろまでは拳一つ分程しかなかった身長差が、心なしか広がっている様に感じ……

「……ぽっ!?」

否。確かに、男との身長差が開いている。今では男は見上げる程の巨躯と化し、己を見下ろしている。
これはどうした事かと思い周囲を見渡せば、眼前の男以外の人物も全て見上げなければ顔が見れない程に巨大化しているではないか。

「ひゃ、ぽっ!?」

混乱に襲われながら周囲を見渡す女の霊。そこでようやく、眼前の男。
先程まで拳を浴びせていた、今や巨人の様に大きく見える男が口を開く。

「その様子じゃ勘違いしてるみてぇだから教えてやるがな……俺が大きくなったんじゃねぇ。お前が縮んでるんだよ」

76尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 09:08:41
「ぽぽっ!?」

驚愕の声を挙げる女の霊。そんな筈は無いと、男の腹を殴ろうとし……そこで、今や己の身長が男の膝丈程でしかない事に気付く。
挙動不審に手足を振り回す女の霊であったが、直後にその体が宙へと浮き上がる。
男……尾弐が、女の霊の首を掴み、足元の氷を無理矢理引きはがして持ち上げたのだ。

「なあ……お前さん、いつまで自分が神サマだと勘違いしてんだ?」

その尾弐の手を引っ掻き、なんとか逃れようとする女の霊に対し、尾弐は全く感情のこもっていない平坦な声で言葉を投げつける。

「橋役を失った今のアンタは、都市伝説に謳われる怪異でもなければ、荒ぶる祟り神でもねぇ。単なる十把一絡げの悪霊なんだぜ?」
「妖怪でもないただの悪霊なら……吹けば消える。妖怪に襲われでもすりゃあ消滅するって事、理解出来るか?」

公園の外套の光で逆光となり、尾弐の表情は全く見えない。

「ぽ、ぽ……」

だがその見えない表情こそが、狂った悪霊である女にとうの昔、人間だった頃に持ち合わせていた筈の感情を思い出させる。
それは即ち――――『恐怖』

「ああ、お前さんの体が縮んでるのは、人間の魂ってのがその心で姿を変えるからだ
 ――――恐怖と『ケ枯れ』で縮んだ小さく惨めな姿こそ、アンタの本当の姿って訳だな」

その言葉を聞いた瞬間、女の霊。ただの悪霊は、怯え狂ったように暴れ出す。
だが、もはや子供よりも小さくなったその身体では、尾弐の手から逃れようもない。
そんな女に対し、尾弐は一度ため息を吐くと、何処までも淡々と最後の言葉を告げる。

「さて、それじゃあ後腐れなくお別れといくか。妖怪じゃねぇアンタは蘇えれねぇだろうから
 ……地獄ってのに他の鬼がいたら、まあ宜しく言っといてくれや」

そうして、今や8センチ程の虫の様な大きさとなってしまった女の悪霊を、尾弐は中空へと放り投げ、
そのまま叩き潰すようにして拳を放つ―――――。

77尾弐 黒雄 ◇pNqNUIlvYE:2018/04/09(月) 09:08:54
尾弐「それじゃあ、ナイト・ブリーチャー番外編はじめるぞー」
髪さま「ん?今日は随分素直に始めるゾナね。ははん、さてはワシの凄さを知って心服したゾナ!」
尾弐「司会は俺、進行も俺でお送りするからなー」
髪さま「さらっとワシの存在を無い事にするなゾナ!」

>>69
尾弐「おう、宜しく頼むわ」
髪さま「……ヤの付く自由業相手に随分落ち着いてるゾナね」
尾弐「まあ、仕事柄ヤクマル印の奴の葬式はよくやってるからな」
髪さま「黒い繋がりって奴ゾナ?」
尾弐「いや、仕事以外じゃ繋がってねぇよ。ショバ代とかも払った事ねぇぞ」

>>70
尾弐「あいよ、了解だ大将。とりあえず地獄行きの切符を購入してもらったぜ」
髪さま「……」
尾弐「あん?何だよ髪さん」
髪さま「いや、普通にドン引きしてたゾナ。何もあそこまでやらなくても良かった気がするゾナ」
尾弐「そうか?あー……まあ、やり過ぎなら誰か止めるだろ。多分。おそらく。きっと」
髪さま「それは流石に他人任せ過ぎると思うゾナ!?」

78那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:09:13
橘音が召怪銘板の音声認識機能に告げた妖怪の名は『ミサキ』だった。
ミサキには山ミサキ、川ミサキ、七人ミサキ等々の種類があるが、すべてに共通した要素がある。
それは『不慮の死を遂げた霊魂の集合体』という点だ。

>橘音君! 八尺様は……橋役様で……えーと、つまり……

ノエルの言葉が橘音に福音を与えた。それだけ聞けば、現状を打開する要素としては充分に過ぎる。
祟り神を力でねじ伏せることは不可能だ。強い力は八尺様の怒りと憎しみに油を注ぐ結果にしかならない。
……ならば。
八尺様の求めるものを与えればいい。

>どういうことだよ、あれ

数百年ぶりの再会を果たした母と子が、抱擁しながら天へと昇ってゆく。
そんな様子を見ながら、納得できないという様子で祈が説明を求めてくる。
が、橘音としても当初からこんな状況を想定していた訳ではない。全てはアドリブ、臨機応変な対処の結果である。
少々スムーズに行きすぎて拍子抜けした感はあるが、失敗よりは遥かにマシだ。
かといって、これで一件落着かと言われるとそうでもない。まだ、すべての元凶が残っている。

「説明は後です。まだ最後の戦闘が残ってますから」

ブリーチャーズの視線の先に佇む、長身の女。
いつの間にか八尺様の伝説に紛れ込み、八尺様の名前と力を利用し、八尺様の想いを穢し続けた元凶。
祟り神としての力を剥ぎ取られた、名もない異常者の成れの果て。

>うぷっ……ぽぽっ、ひはははは!!

八尺様であった者が嗤う。おぞましくも哀しげであった本物のそれとは違う、ただただ嫌悪感を催すばかりの嗤い。
その姿からはもはや、先刻ほどの妖気は微塵も感じられない。
相手の妖力を測ることのできる妖怪ならば、それはすぐに感じ取れることだろう。
つい今しがた戦っていた八尺様に比べれば、今目の前にいる者は残り滓のようなものだと。
そう。妖怪や神霊の持つ『妖気』『神気』『霊気』等々の『気』。それを根こそぎ失い、枯れ果てた姿――

『ケ(気)枯れ』である。

「祟り神としての力は削ぎました。アレは八尺様の抜け殻とも言うべき、大したことのない妖怪となったはずです」
「お三方なら大丈夫だとは思いますが、気を付けてくださいよ?」

>あいよ、大将。つっても、三人がかりなんて必要ねぇよ。アレなら色男と俺だけで十分だ。

一応注意を促すものの、この三人がよもや遅れを取るなどということは考えてもいない。
ブリーチャーズのメンバーは橘音が東京漂白計画を立ち上げるにあたり、熟慮に熟慮を重ねて厳選した化生ばかりだ。
特に、ノエルと尾弐のふたりは橘音の知る化生の中でもトップクラスの強さを持つ。この程度の悪霊ごとき敵ではあるまい。
現に尾弐がすぐに頼もしい返事をしてくれた。ならば、あとはふたりに任せるのが一番だろう。
橘音は戦闘前と同じく自販機へ向かうと、五百円硬貨を入れておしるこのボタンを押した。
そして祈の方を振り返ってから、

「あ、祈ちゃんも何か飲みます?」

と、明るい調子で言った。

79那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:09:31
>YESショタコンNOタッチ! 美少年とは触れずに愛でるものとみつけたり!
>というわけで、新たな扉を開いてショタコンを卒業しよう! さあ!

「……ノエルさん、ノリノリだなぁ……」

ノエルと八尺様の残骸の繰り広げる戦いを眺めながら、小さく笑う。
一見ふざけているようにしか見えないが、あれがノエルの戦術だということを橘音は知っている。
ノエルが軽口を叩いている、それはつまり絶好調だということだ。
先程はなぜか調子が悪かったようで少々ひやっとしたが、この様子ならそれも完全に復調していると見ていいだろう。
妖怪にはつるべ火、野火、じゃんじゃん火、火車など『火』にまつわる者が圧倒的に多い。
仮に火属性でなくとも、氷雪の力は脅威だ。つまり大抵の化生に対してアドバンテージを得られる、ということである。
性格に多少首を傾げるときこそあるものの、橘音がノエルの強さを疑うことはない。

>今だ―――!!

ノエルの巧みな戦法により、八尺様であった者の足許が凍結し、地面に縫い付けられる。
そして、ノエルと入れ替わるように尾弐が悪霊の許へと到達する。

>ぽぽっ、はは、ぴゃひゃはは!!!!

悪霊の拳が尾弐に炸裂する。それを尾弐は避けるどころか、防御姿勢を取ることさえしないで受け止める。
先程までの八尺様の力が乗った拳ならば、いかにタフネスを売りにする尾弐といえど無傷では済まなかっただろう。
……しかし、現在尾弐に拳を見舞っている者はもう八尺様ではない。
八尺様の力と名を借り、我欲を満たそうとする邪な悪霊に過ぎないのだ。

>なあ……お前さん、いつまで自分が神サマだと勘違いしてんだ?

尾弐の無情な言葉。それには八尺様であった者に対する慈悲や憐憫はまったくない。

>――――恐怖と『ケ枯れ』で縮んだ小さく惨めな姿こそ、アンタの本当の姿って訳だな

淡々と述べられる事実。いつしか八尺様であった者の顔からは笑みが消え、代わりに恐怖がその面貌を引き攣らせてゆく。
縮んだ悪霊は尾弐につまみ上げられたままジタバタと暴れたが、それは滑稽な悪足掻きでしかない。

>……地獄ってのに他の鬼がいたら、まあ宜しく言っといてくれや

そう言ってから、尾弐はひょいと無造作に悪霊を宙に放り投げた。
が、それは見逃してやったとか、トドメをさすのをやめたという意味ではない。

ゴウッ!!!

尾弐が宙の悪霊へ向けて拳を繰り出す。
それは純粋なパワー。万物を破壊する、シンプルなエネルギー。
ちっぽけな悪霊など、塵も残さず消滅させてしまうほどの――。

「アギギギ……ッ、ギ……ギィィィィィヤアアアアアアアアアアア―――――――――ッ!!!!!」

避けることなど、守ることなど、出来るはずもない。
悪霊の喉から絶叫が迸る。力を持つ者の余裕ぶった笑みではない、今まで幾多の少年たちを辱めてきた歓喜の笑いでもない。
それは、心底からの恐怖の悲鳴。
尾弐の拳の直撃を受け、耳障りな断末魔をあげて、八尺様を騙った異常性愛者にして快楽殺人者の悪霊は消滅した。

80那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:09:43
「――八尺様、漂白完了。ミッションコンプリートですね」

尾弐が悪霊を殴り消滅させたのを見届けると、橘音は飲み干したおしるこの空き缶を捨てて言った。

「これで、八尺様が東京に出現することはなくなりました。……少なくとも、しばらくの間は……ね」

そう、ブリーチャーズがたった今八尺様を漂白したというのは紛れもない事実だ。
しかし、だからといって八尺様が本当に根絶されたのかと言えば、それは違う。
ブリーチャーズは八尺様の起源を漂白した。八尺様と呼ばれる存在が出現するに至った原因を浄化し、鎮魂し、消滅させた。
が、八尺様の伝説そのものを消滅させたわけではない。
これからも人々の口に、書籍に、インターネットの書き込みに八尺様の伝説がのぼる限り。
八尺様はなくならない。そして遠い未来、どこかでまた新たな八尺様が誕生するかもしれない。
哀しい人身御供の過去から生まれた祟り神としてではない、純粋なネットロアの、噂の産物としての八尺様が――。

「さてっ!じゃあ、お仕事も無事に終わりましたし!皆さん、オナカ減りません?」
「これから打ち上げかねて、お寿司でもどうです?あぁ、もちろんボクがオゴらせて頂きますから」
「……回るヤツね!!」

仕事が終われば、ここにいる必要はない。橘音はタブレットの液晶画面をなぞると、結界を解除した。
辺りはすっかり暗くなっているが、まだ宵の口だ。妖怪にとっては、これからが本来の活動時間と言える。
……とはいえ、心身ともに中学生の祈を無断で引っ張り回すのは気が引ける。
橘音はマントの内側から普段使いのスマートフォンを取り出した。祈の保護者、ターボババアに一言連絡しようとしている。

「オババにはボクから言っておきますから、祈ちゃんとノエルさんとクロオさんは先に行ってて頂けますか?」
「ボクもすぐ追い付きますから!じゃ、駅前のお寿司屋さんで。ボクの席も取っといて下さい」
「……回るとこですよ!?」

妙なところでケチである。三人を公園の外へ出し、自分は残る。
ひとりきりになった公園の中でスマートフォンを握ったまま、橘音はとある一箇所へと歩いていく。
それは先程まで八尺様の残骸であった悪霊が立っていた場所。ノエルが足止めのため凍り付かせた地点。
まだうっすらと氷の残っている地面に、橘音は凝然と目を落とす。
そこには、一枚の紙片が落ちていた。
六センチ四方の小さな紙片だ。表も裏も真っ黒だが、ただ中央に巨大な眼がひとつ描かれている。
まるで、暗闇の中で見開かれた眼のような。禍々しいデザインのそれから、微かな妖気を感じる。
それを拾い上げると、橘音は徐にスマートフォンの液晶パネルを操作した。

「――お疲れさまです御前。八尺様の漂白、完了しました」
「早い?アハハ、そうでしょうとも。言ったでしょう?チャッチャと片付けると。ボクらはプロですよ?プロ」
「……ええ。そうです。はい。また……『アレ』が糸を引いていたようです。ええ、間違いありません」
「まだ、情報が少なすぎますから。もう少し泳がせてからということですね……はい。はい、もちろん」
「そうですね……では、そのように……。ご心配なく、仕事はキッチリやり遂げますから。そのための彼らです」
「その代わり――御前も例の件、どうぞよしなに……」

通話を切ると、橘音は改めて紙片を値踏みするように見つめた。
自分たちの持つ妖気とよく似た、しかしどこか異なる力。
やがて紙片は橘音の手の中で静かに灰と化し、消えた。

「……ふむ」

一度鼻を鳴らすと、橘音は白手袋を嵌めた手に付着した灰をパッパッと払い、仲間の後を追って公園を後にした。

81那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:09:59
ブリーチャーズが戦っていた公園とは異なるどこか。
帝都を俯瞰する眺望の高層ホテル、その上層階にあるプレミアムスイートに四つの人影がある。

「八尺様とやらが敗れましたわ」

はじめに口を開いたのは、中学生程度の背格好をした少女だ。腰までの黒髪をツインテールに纏めた、勝気そうな面差しの娘である。
愛らしい相貌だが前髪で顔のほぼ右半分が隠れており、強膜(白目)が黄色く瞳が真紅の左眼が強い妖気を放っている。
半袖ミニスカワンピースにロンググローブ、サイハイソックスにショートブーツ。その姿は頭のてっぺんから爪先まで総体黒い。
少女は広大なリビングルームのほぼ中央に陣取り、胸の下で緩く腕組みしてひとつ息をついた。

「ふゥン……連中もなかなかやるじゃない。ま、八尺様なんてアタシなら指二本もあれば余裕で倒せるけど〜ぉ!」

少女の報告を聞き、ロングソファに半ば寝そべるようにして座る女が笑う。
見た目は二十歳を少し過ぎた程度か。グラマラスな肢体をダウンジャケットにホットパンツ、ブーツという出で立ちで包んでいる。
ただし、その色味は少女と違ってすべて白い。透き通るような白とはこのことだろうか。
女が長い髪の毛先を指先で弄るたび、そこから白いものがキラキラと剥離する。――霜だ。

「カッ!だァから言ったんだぜ。ゴミに任せて様子見なんてまだるっこしい、オレ様が最初から出向くってなァ!」

そう銅鑼声でがなったのは、部屋の一角を占めるホームバーでしきりにグラスを呷っていた五十絡みの壮年の男である。
身長は二メートル以上あるだろうか。グレーのスーツをラフに着込んだ、筋骨隆々といった具合の大男だ。
仕立てのいいダブルのスーツの上からでも、筋肉の隆起がよくわかる。男はぐいっとグラスの酒を飲み干すと、盛大にげっぷをした。
少女と女とが同時に顔を顰める。

「おい、もう我慢しきれんぜ。そろそろ暴れさせろよ、満月も近いんだ。血が騒いで仕方ねえ」
「ダメですわ。お父さま……もといあの御方の許可が出ておりません。もう暫くは土着の者どもを使います」

少女が男の言葉をにべもなく突っぱねる。男はチッと舌打ちすると、短く刈り込んだ灰色の顎鬚を撫でた。

「あの御方も悠長ねェ……。アタシたちが直接出向けば、この国の妖怪たちなんてあっという間に殲滅できるってのに」
「まだ、あの御方は本調子ではないのです。それに、あの御方の望みは殲滅でなく支配。それをお忘れなく、もし忘れたなら――」
「わーかってる、わかってるってばァ!あの御方に楯突くワケないでしょ?ったく、可愛くないわねアンタ」
「わかればいいのです」

ヒラヒラと右手を振って降参する女の態度に満足したらしく、少女が腰に両手を当てて豊かでない胸を反らせる。

「そりゃわかったがよ。じゃあ、次は何を差し向けるんだ?」

男が訊ねる。その問いに対して少女が口を開こうとしたそのとき、

「もう、我輩が仕込みをさせてもらったヨ」

部屋の隅に静かに佇んでいた四人目が、不意にゆらりと動いた。真紅のマントで全身をすっぽりと包んだ、長身痩躯の怪人である。
シルクハットをかぶり、顔には某ハッカー集団でおなじみガイ・フォークスの仮面をつけた姿は異様と言うしかない。

「勝算は?」

少女が腕組みして怪人を見やる。怪人は仮面の奥で引き攣れた声で嗤った。

「バカ言っちゃァいけない、我輩の仕事だよ?ま……細工は流々、仕上げを御覧じろ……ってねエ」

それだけ言うと、怪人はすう……と溶けるように部屋から姿を消した。

「気味の悪い野郎だぜ」

男が吐き捨てるように言う。しかし、もう次の作戦が発動しているのなら手間が省けた。少女は右手を顎先に沿えると、

「では――お手並み拝見と行きましょうか」

そう言って、炯々と輝く左眼を細めながら笑った。

82那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:10:13
橘音「メリークリスマス!那須野橘音のホーリーナイト・ブリーチャーのお時間です!司会はボク、那須野橘音と!」
髪さま「赤鼻の髪さまでお送りするゾナ」
橘音「鼻ないでしょ」

>>71
橘音「いや〜、これはギャフンですね!確かに強そうではありますが」
髪さま「おっぱいの大きなギャルにシャンプーしてもらうワシの夢が……ゾナナナ……」
橘音「そういう妖怪をブリーチャーズに加えることにメリットを見出せません」
髪さま「これは男のロマンゾナ!ノエルと尾弐なら共感するに違いないゾナ!特に尾弐」
橘音「どうかなぁ……クロオさんは結構硬派だし……。あ、そうそう、話は変わりますが今日はクリスマスイヴでしょ?」
髪さま「リア充爆発しろゾナ」
橘音「まぁまぁ。プレゼントを用意しましたので、どうぞお納めください。まず、これが祈ちゃんの分」
髪さま「中身は何ゾナ?」
橘音「キックボードです。いいでしょ、むふふ」
髪さま「明らかに走った方が速いゾナ……。尾弐の分は?」
橘音「お酒を嗜まれるクロオさんには、日本酒を用意しました。大吟醸美○年!」
髪さま「含みのあるチョイスゾナね……。じゃあ、ノエルは何ゾナ?」
橘音「和パンクがお好きということで、和柄の小物入れなんかを。なおボクのお手製ですから実質お金はかかってません」
髪さま「安上がりゾナね。ムジナにはやらんのかゾナ?」
橘音「まだ出番前ですからね〜。申し訳ない!あ、これ髪さまの分です」
髪さま「ワシにもくれるのかゾナ?いい心がけゾナ、開けてもいいゾナ?」
橘音「どうぞどうぞ」
髪さま「……これは何ゾナ?」
橘音「ブラジリアンワックスですけど?」
髪さま「おまえワシを何だと思ってるゾナ!?」


橘音「では、あと祈ちゃん、ノエルさん、クロオさんでそれぞれ〆て頂いて、八尺様編終了とさせて頂きますね」
髪さま「ムダに風呂敷広げとるが、ついてきてほしいゾナ」
橘音「なんのなんの、まだまだですよ!それではよい聖夜を、また次回っ!」

83多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:10:32
 尾弐、ノエル、祈の三人は、半ば橘音に追い出されるような形で公園を後にした。
話すことも特になく、僅かな間黙りこくって公園の入り口に佇んでいた三人だが、やがて誰からともなく歩き出す。
 橘音は駅前の回転寿司屋だと言っていた為、
とりあえず駅の方へと向かえばその寿司屋の名や場所がわからなくとも辿り着けるのであるし、
三人の中にはその寿司屋について心当たりがある者がいるのかもしれなかった。
「しかし大将も妙なところでケチくせぇよな。タダ飯は有難いけどよ」
 歩きながら、尾弐がそう切り出した。
 尾弐は葬儀屋という職業柄、葬儀や通夜の席などで寿司を食べる機会がそれなりにあると思われたが、
だがそれでも貴重なタダ飯、ご馳走であることに違いはないのだろう。
加えて彼は先程嘔吐したばかりで胃の中が空である。さぞ腹の虫が騒いでいるのではないだろうか。
 一言、二言。尾弐の切り出した上司の愚痴という、“いかにも人間らしい世間話”にノエルが応じるのだが、
祈は終始無言で二人の後をついてくるだけだ。
 何か様子がおかしい。それを気にかけてか、なんにせよ、と尾弐は付け加える。
「新入りのボウズの歓迎会も兼ねてんだろうしな? 早く行こうじゃねぇか」
 からかうような笑みを浮かべ、少年に扮した祈の頭を帽子越しにぐしゃぐしゃと撫でる尾弐。
「だ、だれが坊主だ!」
 祈はそれを両手で掴んで跳ね除けた。更に、右手で目深に被っていた帽子を外し、
左手を首の後ろに回して、パーカーの中に仕舞っていた、腰に届きそうなほどに長い髪を外へと追い出す。
軽く被りを振ると、長い髪が風になびいた。
 祈はきりとした目で尾弐をねめつけ、不機嫌そうに唇を尖らせている。
「なんだ、祈の嬢ちゃんだったのか。おじさん全然気付かなかったわ」
 降参だとでも言うように大袈裟に両手をあげて、嘯く尾弐。
「わざとらしいんだよ。大体尾弐のおっさん、さっき祈って言いかけてたじゃんか!」
 尾弐が八尺様を滅する直前、祈、と言いかけていたのを祈は覚えているのだった。
その指摘に尾弐は「おー、そうだっけか?」などと言いながら顎に手をやり、恍けて見せる。
「ま、変装してる時は気付いてても気付かない振りをしてやるのが大人のマナーって奴だからな」
「やっぱ気付いてんじゃねーか! ていうかなんだその雑なマナー! 女を坊主扱いする方がよっぽどマナー違反だろ!」
 祈が怒鳴りながら拳を振り上げると、
「……祈ちゃんだったのか!?」
 ノエルがそこに絡んでくる。正真正銘今気付きましたと言わんばかりの真顔で言うものだからタチが悪い。
祈の振り上げた拳は、ぽすりと天然男ノエルへと向かって脱力するように放たれた。
「御幸はあたしが変装する段階でいたんだから知らない訳ないだろ! ばか! 力抜けるだろ!」
「それを忘れるほど華麗な変装だったってことだよ? いや、似合ってたよね!」
 今度は軽く脛を蹴られたノエルは、その場にしゃがみ込んで、整った顔をわずかに歪ませた。
尾弐が微かに笑う。
 しゃがみ込んだまま、褒めたのに納得いかないという顔を作ってみせるノエルを見て、
祈はため息を吐き、立ち止まった。

84多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:10:44
「……そう言えば、さっきなんか調子悪そうにしてたけど大丈夫なの? 貧血って言ってたけど」
 しゃがみ込むノエルの姿に、八尺様の繰り出す無数の腕に囲まれ、膝から崩れ落ちた先程の姿が重なり、
ふと祈が問うた。体調がすぐれないのだとしたら蹴ったりして悪かったかな、なんてことを思いながら。
 するとノエルの表情が固まる。
「実は……」
 ノエルの顔が曇り、俯く。「実は?」と続きを促しノエルの次の言葉を待ちながらも、
祈は何か聞いちゃいけない事を聞いてしまったような気まずさを感じていたのだが、
ノエルは顔を上げると、深刻そうな顔でこう言うのだった。
「実は、最近パンツを見てなかったからさ。どうにも血流の巡りが悪くて調子がでなく、でっ――」
 今度は、先程蹴られた方とは逆側の脛に祈のつま先がめり込んだ。悶絶するノエル。
 ノエルは己の過去を、今は話すべきではないと思ったのかもしれないし、
ただ話したくないのかもしれなかった。
「あ”ーっ! 聞いて損した! 心配して損したァ!」
 そう言って顔を真っ赤にして憤慨して、祈は肩をいからせて尾弐の方へと向き直る。
 すると、こちらの話に興味がなかったのか、それとも空腹が限界で急いでいるのか。
はたまた二人が付いてきていないことに気付いていないのか。
気が付けば、だいぶ尾弐との距離は離れてしまっている。
 ゆっくり遠ざかっていく尾弐の背を見ながら、祈は動き出せないでいた。
「……あっれー、クロちゃん足早いなぁ。早く行かないと置いてかれちゃうよ、祈ちゃん」
 いつの間にやら回復したノエルが祈の横に立っており、ぽんと祈の肩を叩く。
雪女の妖怪であるノエルは、患部を直接に冷やすことで怪我や痛みを誤魔化すことができるのやもしれなかった。
 尾弐に追いつかねばと一歩踏み出そうとするノエルだが、その足が空中で止まる。
何かに服を引っ張られているような違和感を覚えたのだった。
 違和感の元へと振り向けば、祈がノエルの服の裾をつまんでいる。
服の裾を離そうとせず、かといって黙ったまま動こうともしない祈に、
「祈ちゃん?」
 仕方なくノエルは足を元の場所に降ろし、訊ねる。
「……聞き損ついでに、もういっこ聞きたいんだけど」
 祈が口を開いた。
 ノエルを視界に捉えない伏せがちのその瞳は、どこか思い詰めた色を帯びていた。
「なに?」
 ノエルがいつも通りの調子で返す。祈は逡巡した後、意を決したように言った。
「八尺様のこと、あれでよかったのかな……?」
 不安そうな祈の瞳が、ノエルの目と合う。
 祈は、八尺様が尾弐に追い詰められ、憐れなまでに生きようと?く姿を見、断末魔の声を聴いた。
そして思ってしまった。やりすぎだったのではないか、と。
 八尺様が橋役様の転じたものであるなどの真相についてはさておき、
祈は八尺様がどのような悪行を成した《妖壊》かは知っている。
少年を攫って食べると言う凶悪な事件を起こしていたことや、それによって死者すら出したことも橘音から聞かされていた。
故にその罪を償わせる為にも、被害に遭い命を奪われた少年達への手向けの為にも、
彼女になんらかの罰を与えることは必要であると思われた。
 だが、八尺様と呼ばれた存在が恐怖の形相を浮かべ、八尺どころか8センチほどにまで縮みあがり、
狂おしいほど必死に足掻くその様を見て、可哀想ではないかと思ってしまった。
 同情してしまったのだ。
 そして考え始めれば泥沼だ。
 もっと良い別の道があったのではないか。例えば消滅させるのではなく、成仏させるような。
では尾弐を止めるべきだったのではないか。自分の足なら空中に放られた八尺様を攫うことだってできたはずだ。
自分は選択を誤ったのではないだろうか。そんな取り止めのない考えが、祈の心を埋め尽くすのだった。
 平たく言えば、心身ともに中学生の祈には先程の光景はショックが強すぎて、
それを上手く己の中で消化できず、消化するための言葉を探している、と言った所であろうか。
 ノエルがどのような言葉を掛けるにせよ、祈はその言葉に何かを見出し、恐らくは納得するだろう。
 祈はじっと、ノエルの言葉を待っていた。

85多甫 祈 ◇MJjxToab/g:2018/04/09(月) 09:11:04
祈   「てことで、那須野橘音のナイトブリーチャー(?)! お相手はゲストパーソナリティの多甫祈と!」
髪さま「抱かれたい髪さまNo.1! 髪さまでお送りするゾナ!」
祈   「一人しかいないランキング、ずっこいなー……」
髪さま「儂は元々特別なオンリーワン、並ぶものなどないから仕方ないことゾナ。ところで祈ちゃん、今日は制服ゾナ。珍しいゾナ」
祈   「……」
髪さま「どうしたゾナ?」
祈   「>>70で髪サマが、むさい男ばかりのチームだって言うから……少しでも女っぽく見えればと思って」
髪さま「ゾナーッ!? 予想外のいじけた反応! ちちち違うんだゾナ! 祈ちゃんはちゃんと女の子らしいゾナ! ね!? あー制服姿眩しいゾナァ!」
髪さま「と、とりあえず先にお返事からしちゃおうかゾナ! 祈ちゃん!?」
祈   「……うん」

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>>64 橘音
祈   「何も問題なくてよかったー。ちょっと不安になってたけど、翌日すぐ返事くれて安心したよ。ありがとね!」

>>69 品岡のおじさん
祈   「……よ、ろ、し、く、な。品岡のおじさん」ドンッ
髪さま「お茶持ってきておきながら、すっごい睨んでるゾナ」
祈   「だってヤクザだし。悪い奴じゃん。ブリーチャーズ仲間だからお茶ぐらいは淹れてやるけどさ」
祈   「あたしらは正義の味方なんだからな。そこんとこ覚えといてよね」
髪さま「……やれやれ、一悶着ありそうな対応ゾナね」

>>71
祈   「だよなー。尾弐のおっさんは怪力でタフ! 倒れる姿なんてまず想像できないし」
髪さま「尾弐はブリーチャーズ一の肉体派ゾナ。……どうせなら虎柄ビキニを着けた鬼娘が良かったゾナ」
祈   「御幸だっていつもとぼけてる癖に、戦闘では何気に八尺様と互角だったり」
髪さま「尾弐程のパワーはないようゾナが、凍てつかせて敵の動きを封じたり、他のブリーチャーズにはない強力な能力を備えているゾナね。
     ……雪女とくれば美女というのが漫画では鉄板だった筈なのにゾナ」
祈   「品岡のおじさんは……色々重火器隠し持ってるらしいし、強そうだよな!」
髪さま「顔以外という制限付きゾナが、形状変化というトリッキーな能力を備えているのも魅力ゾナ。
     色んな場所での活躍が見込めるゾナね。潜入とかいけそうゾナ? ……見た目だけでもギャルに……無理かゾナ」
祈   「髪サマ……」
髪さま「す、すまんゾナ。欲望がちょっとダダ漏れだったゾナ」

>>82 橘音
祈   「キックボード!? ありがとう!」
髪さま「おや、予想外に喜んでるゾナ」
祈   「うち貧乏だったからこういうの買えなくて。友達が持ってたの羨ましかったんだ。インラインスケートとかキックボードとか自転車とか」
祈   「だから今日は夢が一つ叶っちゃったな」
髪さま「良かったゾナね!」
祈   「そんで、これはあたしからのクリスマスプレゼントね! ケーキ買ってきたんだ、ホールのやつ!」
髪さま「ほほう!」
祈   「っていっても、あたしの少ないお小遣いからだからそんなに高いのじゃないけど。良かったらみんなで食べない?」
髪さま「どれ、儂が皿やらフォークやら持ってきてやるかゾナ」

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祈   「えっと……今回は、見て分かる通りみんな喋ったり動いたりしてるよ」
髪さま「お、恐れ多い事をしたゾナね祈ちゃん」
祈   「なるべく遠慮しながら、この状況を消化しつつみんなで仲良くお寿司屋さんに行くにはどうしたらいいんだーって悩みながら
     書いたつもりだけど、気に入らなかったらあたしの書いたのはずばーっとなかったことにして続けていいからね!
     言ってくれたらあたしも次から気を付けるし」
髪さま「祈ちゃんの見切り発車力が高すぎないかゾナ」
祈   「という訳で、またね! 多分あたしの今年の書き込みはこれで最後かな。良いお年を!」
髪さま「儂はまだ活躍するかもしれんゾナが、良いお年をゾナ!」

86ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:11:24
「もしも今度生まれ変われたら――触らず愛でる真人間になれますように」

ノエルは八尺様だった悪霊が消滅した虚空を少しだけ複雑な表情で見つめながら呟いた。
ちょっといい事を言ってる風だが、それは多分真人間ではなく変態紳士もしくは変態淑女である。

>「――八尺様、漂白完了。ミッションコンプリートですね」
>「これで、八尺様が東京に出現することはなくなりました。……少なくとも、しばらくの間は……ね」

橘音が勤務時間終了を告げると、人間の姿に変化し直しながら(大して変わらないけど)、橘音の方に振り向く。

「たたたたーんたーたーたったたーん♪ 橘音くん、僕の活躍見ててくれた!?」

分かる人にしか分からない謎のフレーズ(勝利のファンファーレで検索してみよう)を口ずさみながら橘音とハイタッチ。それは一体何の儀式だ。
しかもお前、肝心のところで気絶して守ってもらってほぼ勝負が付いてからしゃしゃり出てきただけちゃうんか――!?

「いやあ、衝撃の新事実が発覚してしまったよ。僕は――美少女だったんだ!」

そして無駄に爽やかな笑顔で妄言(※少なくとも端から見れば)を繰り出した。
――うん、そろそろ病院に行こう。いや、コイツを通院させるのは不可能、むしろ病院が来い。来てくださいお願いします。
黄色い救急車(都市伝説上に存在する頭がおかしくなった人を搬送する救急車)がマッハで飛んで来そうなレベルの妄言をああそうですか、という感じで軽く受け流す橘音。
どうやらコイツ、いつも冷静沈着で底が知れない橘音すら時々引かせてしまうある意味逸材のようなので
常日頃から口を開けば妄言迷言珍発言を垂れ流しているに違いない。
尚、にわかには信じがたいことにこんなんでも橘音の見立てによると強者揃いのブリーチャーズの中でも黒雄と双璧を成す強妖怪らしい。
ちなみに本人は厳選されたとは夢にも思っておらず、「丁度同じ雑居ビルにいるしとりあえず声掛けとこ」的なノリで誘われたと思っている。

>「さてっ!じゃあ、お仕事も無事に終わりましたし!皆さん、オナカ減りません?」
>「これから打ち上げかねて、お寿司でもどうです?あぁ、もちろんボクがオゴらせて頂きますから」
>「……回るヤツね!!」

橘音の願ってもない申し出――こう見えて、あれやこれやでかなり妖力(超分かりやすく言うとHP兼MPのようなものか?)を消耗していた。
放っておいてもそのうち元に戻るが、美味しい物を食べると早く戻るという都合の良いシステムになっている。(少なくともコイツの場合)

87ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:11:37
「いよっ大将、待ってました! 祈ちゃん、皿5枚入れたらはじまるやつ、当たったらあげるね。あ、祈ちゃん、もう目開けていいよ!」

事が終わるまで目を閉じておくように、と黒雄に言い聞かされていた祈に声をかけ。
橘音から何故か半ば追い出されるように公園を出されたが、その理由を特に深く考えたりはせずに素直に寿司屋に向かう。

>「しかし大将も妙なところでケチくせぇよな。タダ飯は有難いけどよ」

「あははっ! でも回るやつも好きだよ、アイスあるしね〜」

などと言っていると、祈と黒雄が坊主呼ばわりを巡って一悶着を始めた。
坊主とはすなわちハゲのことであってあんな長くて綺麗な髪なのにハゲ呼ばわりはない。
雪女(イケメン)を雪男(毛むくじゃらの白いサル)と呼んだら怒るのと一緒である。
と微妙にずれた解釈の元に祈のフォローに入り、そして蹴られた。

「僕は仮に美女って言われても嬉しいけどなあ……」

などと脛を冷やしながら呟いている。
生粋の精霊系妖怪であるノエルは性別の概念がチリ紙のごとく薄いため、祈が怒った理由が理解できないのであった。
衝撃の新事実!とか言いながら公開している時点でそれ自体は本人にとっては大して衝撃ではないのである。
人間の混血妖怪や元人間とか元動物はともかくその辺から湧いてきた生え抜きの妖怪は結局姿がどっちに見えるか、というだけの話なのだろう。

>「……そう言えば、さっきなんか調子悪そうにしてたけど大丈夫なの? 貧血って言ってたけど」

ここにきていきなり核心に切り込んでくる祈。
橘音や黒雄はノエルと同じく見た目より遥かに長い時を生きている妖怪。大昔に多少やらかしてようが何も気にすることは無い。
しかし祈は業界では珍しいリアル中学生。たったの14歳。
永遠を生きる者から見れば生まれたばかりに等しいその魂はまだあまりにも無垢で――
実も蓋も無く言ってしまえば、嫌われるのが怖かっただけかもしれない。
出てきたのは、苦し紛れの言い訳。

「実は、最近パンツを見てなかったからさ。どうにも血流の巡りが悪くて調子がでなく、でっ――」

>「あ”ーっ! 聞いて損した! 心配して損したァ!」

怒った祈からまた蹴りが飛んできた。悶絶しながらも、貧血で押し通せた事に胸をなでおろす。
もしも相手が祈ではなく生粋の妖怪だったら話にならなかっただろう。
パンツが好きな変態に思われてしまったが、まあ今更どうってことはない。
ほっとして黒雄の後を追おうとするノエルを祈が止める。まだ聞きたいことがあるらしい。

88ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:11:50
>「八尺様のこと、あれでよかったのかな……?」

その言葉に、ノエルははっとして祈の顔を見る。

「祈ちゃん……見てたんだね」

黒雄に目を瞑っておくように言い聞かされていたが、見てしまったようだ。そりゃそうだ。
見るなのタブー、とはよく言ったもので神話の時代から人間見てはいけないと言われたら見てしまうし
禁断の扉は開けてしまうし、開けてはいけない箱は開けてしまうのである。
ノエルは思う、妖怪の血が混ざっているとはいえ4分の3は人間の中学生をこんな危険な事に巻き込んでいいのかと。
(メンバーが実は厳選されていることや混血であるが故の柔軟性等の深い意図があることを彼は知らない)
ここで敢えて救いのない答えを返したら、彼女は嫌気が差して身を引くだろうか――
いや、彼女が望んでここに身を置いているのなら、そんな余計なお世話はとんでもない傲慢というものだ。
自分は都合の悪い記憶に蓋をして無駄に長く生きているだけで、現にさっき彼女がいなかったら危なかった。
だから、自分の信じる世界観を正直に伝えることにした。
この世から消滅した魂がどこにいくのかとか、実は妖怪業界でも未だに統一見解に至っていない。
それは各々が心の中に秘めているもので、人に押し付けるものでもないから、普段は表に出さない。
でも、それが目の前の少女の救いになるのなら――

「あのね、これは僕の考えだから……」

そう前置きした上で。

「クロちゃんはああ言ってたけど地獄なんていかないから大丈夫」

「じゃあどこに行くのさ」と聞き返す祈にむかって。

「朝起きたときに窓から差す光、とか……街路樹の葉を揺らすそよ風とか」
「小川の水のせせらぎとか……野山に咲く花、とか……空から降ってくる雪とか」
「本当は魂に善も悪も無い――全ては一つなんだ」

途切れ途切れに断片的な言葉を紡ぐ。
ふざけた発言は湯水のごとく出てくるくせに、真剣な想いを伝えるのは苦手らしい。
なんとなく感じ取れるその世界観は優しく、この国の人間には割と一般受けするありがちなもので
黒雄に聞かれたら甘いと一喝されそうで、でも幸い目の前の少女を癒すにはもってこいのものだった。

「だからいつかまた人間に生まれ変われる日がくるかもしれない。その日のために、祈ってあげて。
本当の愛を知る事ができますようにってさ。
大丈夫、君にはその力がある。名前っていうのは強力なおまじないなんだ。君の名前は“祈”だろ?」

人間との混血である彼女の名は、生粋の妖怪にありがちな人間界に潜り込むために宛がわれた駄洒落のようなものではなく、きっと本当の親の願いが込められたものだ。
そして何を思ったか、祈の背に両腕を回して抱きしめ、耳元で囁くような声で言う。

「今日は守ってくれてありがとう――今度は僕が祈ちゃんのこと、絶対守るからね。
だから橘音くんのこと信じて、安心して続けて……」

89ノエル ◇4fQkd8JTf:2018/04/09(月) 09:12:08
一見ロマンチックな絵面だが……コイツに恋愛感情なんてものは多分存在しない。
純粋な仲間意識でやっているのであろう。どこまでも天然なのである。
まあただでさえ黄色い救急車で搬送されかねない人の上に祈目線ではパンツが好きな変態なので
いくら見た目がいいとはいえよもや祈がときめいてしまうなんてことはないであろう。
それどころか場合によっては「いきなり何すんだよ変態!」とド突き飛ばされたかもしれないぞ!

「さ、行こう!」

そう言って何事もなかったかのように祈を伴って駆けだしたかと思うと、あっという間に祈は遥か前方にいた。
彼女はターボババアの孫なので当然である。

「えっ、そんなのアリ!? ちょっと待ってよ――――――――!!」

情けない叫び声を響かせながら追いかけていくのであった。
ところでこいつ、第一話にして「開けるな危険」と書いてある禁断の扉をマッハでぶち破ってしまった気がするのは気のせいだろうか。
ぶち破ってしまったから「やっぱ無かったことにしよ」と閉めるに閉められないし。
まさしくドウシテコウナッタ――! という状況である。
ただ一つ確かなのはどう見ても裏で怪しい事を企んだりはしない(というかその知能もない)分っかりやすい味方キャラということでそこは安心していいだろう。

「やっと追いついた……! 今日こそ決着をつけてやる――!」

そんなナレーターの人の心配を余所に、やっとの思いで黒雄に追いつき、一方的に大食い対決の挑戦状をたたきつけたりしている。
他人のおごりで大食い対決すな。

「ああ、それと……今日は借りが出来たな。いつか倍返しにして叩き返してやる!
でもクロちゃんがピンチになることなんてなかなかないからさ――それまでいなくならないでねっ」

表現こそ違えど意味合いは先ほど祈に言った言葉とほぼ一緒である。
しかし祈の時よりも心なしか「いなくならないでね」の部分に力が入っているのは気のせいだろうか。
GMスレなのでまさか敵化はないとは思うが(←メタ発言自重)かといってこの業界ノエルのように分っかりやすい味方キャラばかりとも限らないのである。
黒雄の微妙な胡散臭さに本人も無意識のうちに勘付いているのかもしれないし、特に深い意味はないのかもしれなかった。

【すっかり遅くなったのでおまけコーナーはまた明日(今日)!】


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