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【伝奇】東京ブリーチャーズ・壱【TRPG】

56那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2018/04/09(月) 09:02:08
>来るよ、祈ちゃん!

注意を促すノエルの声を合図とするように、八尺様が一気に突っかけてくる。

ドッ!ドウッ!ドズッ!

あっという間に距離を詰めてきた八尺様の拳の連撃が、ノエルを襲う。
驚異的に長いリーチから放たれる、迫撃砲のような重い打撃だ。防御をしてもなお衝撃が身体に響く。
それを、八尺様は矢継ぎ早に繰り出してくる。一打一打に憎悪のこもった、致死の拳撃。
八尺様のラッシュを凌げるのは、ノエルが見た目の優男ぶりに反して手練の漂白者であるからと言うしかない。
怒涛の攻勢の隙を衝き、ノエルもまた氷で作った刀を振りかざす。氷華が舞い散り、足許に霜が生まれては消えてゆく。
人外の身体能力を惜しげもなく使った、異能同士の戦闘。

「……いやはや、いつもながら目まぐるしい」

ふたりの熾烈な戦いを少し離れた場所で見守りながら、橘音が呟く。
それから、祈の方をちらりと見る。

「祈ちゃんもノエルさんに加勢を。ノエルさんの盾になるイメージで、積極的に八尺様の前へ出てください」
「八尺様は祈ちゃんには手出しできない。卑怯と思われるかもしれませんが……そこはご容赦願いますよ」

祈に対してそう要請する。八尺様の習性を利用しての戦術だ。
橘音は直接戦いには加わらない。ただ戦闘を傍観しているだけである。
橘音は荒事がまるでできない。跳躍力や瞬発力などは並の妖怪レベルにあるが、腕力は人間と大差ない。
元々頭脳労働者という位置づけだ。自然、離れた場所で戦闘を分析するのが仕事になる。

――ふむ。

八尺様の能力を、半狐面を通して解析する。
一見リーチと長身から来る単純な拳打のように見えるが、決してそれだけではない。
人外の膂力と速度。そこから発生する衝撃波が、触れることなく周囲のものを破壊してゆく。
まるで意志を持った嵐だ。祟り神と相対するのは初めてではないが、この力は脅威以外の何物でもない。
そして、祟り神の恨みの力は時間が経てば経つほど増大していくのだ。
持久戦はこちらに不利と言うしかない。このままでは、いずれジリ貧で敗れるのはこちらの方だろう。
だが、そんなことはさせない。
仲間が力尽きる前に敵の弱点を看破し、攻略法を伝える。それが自分の役目なのだ。

――それにしても。

二対一の戦闘であっても、八尺様が怯む様子はほとんどない。むしろ、初期よりその攻撃の威力と速度は上がっている。
げに恐るべきは恨みの力――ということだろうか。
直接戦闘メンバーは二人もいればよかろう、と思っていたが、見込みが甘かったかもしれない。
自らの計算違いに、橘音は内心舌打ちした。
何かに気付いたらしい八尺様が、祈へと手を伸ばす。

――バレた……か?

まずい。ここで祈が少年でないということが露見すれば、八尺様は益々怒り狂うだろう。
ふたりがかりでも若干劣勢気味なのだ。さらに八尺様が恨みを増加させれば、漂白どころの騒ぎではない。
橘音はマントの内側の左手に何かを掴んだ。そして、それをマントの外へと出そうとした。
が、その瞬間。

バギィッ!!!

八尺様の長身がまるでトラックにでも撥ねられたかのように大きく後方へと吹き飛ぶのを、橘音は見た。


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