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【伝奇】東京ブリーチャーズ・肆【TRPG】

207那須野橘音 ◆TIr/ZhnrYI:2017/12/17(日) 18:20:09
どれほど倒しても、倒しても、巨頭がその数を減らすことはない。
いや、むしろ増えている。相手が強大ならば強大なだけ、その戦闘力を圧倒的物量で押し潰そうとしているかのようである。

《オッ!オッ!オッオッオッオッ!》

巨大な頭を左右に振り、口の端から泡を吹きながら、巨頭が迫る。
ぐねぐねと人間ではありえない方向に関節を動かしながら、くねくねがゆっくり坂道をのぼってくる。
大岩のある坂の頂上はそう広くはない。祈たちが斃す妖壊たちの死体によって、立ち回れる場所も徐々に狭くなってゆく。
このままでは、全滅は必至であろう。

しかし。

>桃には邪気を払う力があるって言われてんだってな
>うん。とりあえずオヤツをくれてやる戦法だ!

祈とノエルが駅前の無人販売所から持ってきた果物と野菜を投げると、それはすぐさま覿面な効果を発揮した。
祈の投げた桃を見た途端、巨頭たちは我先にと桃へ群がった。
今まで執拗に東京ブリーチャーズを狙っていたのは何だったのかと思えるほど、巨頭たちは一心不乱に桃を奪い合う。
また、ノエルの投擲したブドウは瞬時に蔓を伸ばして巨頭とくねくねの身体に絡みつき、その自由を奪い――
タケノコは地面に落ちるや否や成長し、無数の強靭な青竹となって壁を作り妖壊たちの進路を塞いだ。

無人販売所にあった三種の農作物は、いずれもイザナギの冥界譚にてイザナギの命を救った由緒正しい神果である。
尾弐の言う黄泉戸喫の逸話の通り、迂闊に食べればどうなっていたかはわからないが、アイテムとしてはこの上なく有用である。
竹の障壁によって、大岩を退かすのに多少時間ができた。
が、だからといって安心はしていられない。

《テン……ソウ……メツ……テン……ソウ……メツ……》

ずっと聞こえている、不気味な声。それが近付いている。
そして、“それ”はやがて闇の中からゆっくりとその姿を現してきた。

大きさは、さほどでもない。巨頭やくねくねと同じく、人間大の背丈と言えばよいか。
ただ、その姿は奇怪と表現するしかない。
その存在には、首がなかった。
生白い色の肌をした、首のない人間。――いや、脚も一本しかないので人間のシルエットとも違う。
首のないカカシのような姿の何か。その胸元に、老人のような皺くちゃの顔面が貼りついている。
総体、かつて岩手の迷い家で見た一本ダタラのような姿だが、愛嬌のある造作だった一本ダタラよりもずっとずっと禍々しい。
何か人知を超えた悪意だとか、おぞましい悪夢を煮詰めたような、見るだけでも怖気を揮う姿である。
そんな不気味な何かが、皺だらけの顔にニタニタといやらしい笑みを浮かべながら、両手をメチャクチャに振り回してやってくる。

穢れた邪悪な山神――『ヤマノケ』。
この妖壊が、祭りの主。巨頭やくねくねたちの首魁なのだろう。
巨頭とくねくねだけでは不充分と、自らがブリーチャーズを仕留めに出座したということだろうか。

《テン……ソウ……メツ……テン……ソウ……メツ……テン……ソウ……メツ……テン……ソウ……メツ……》

>掘れた!けど……そのやり方だけじゃ駄目だ、ソイツだけは!

ポチが叫ぶ。
巨頭たちが先を争って喰い合っている桃も、身を絡めとるブドウの蔓も、他とは神格を異にするヤマノケには効果がない。
巨頭とくねくねが道を開け、ヤマノケが竹の障壁を掴む。強固な青竹がミシミシと軋む。
このままでは、青竹の障壁も破壊されてしまうだろう。

《テン……ソウ……メツ……テン……ソウ……メツ……》

声が近い。距離はまだ離れているはずなのに、まるで耳元で囁かれているような感覚をおぼえる。

>ガタガタうるせぇ有象無象――――こいつらに手ぇ出すなら、地獄にすら逝けると思うなッッッ!!!!!!!!

勝ち誇ったようにも聞こえるヤマノケの声に対して、尾弐が怒号で応える。
それはまさに鬼神を彷彿とさせるような、すべての邪怪を撃滅せんとする咆哮。
その声量に気圧されたのか、妖壊たちは束の間怯んだ。


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