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GO「オレは神様なんかじゃねえよ」

1名無し君:2018/12/29(土) 15:41:08 ID:vpWRBTls
一ヶ月と三日前、恋人がエイズで死んだ。彼の遺言は「スバル、ぼくが病気になる前みたいに生きてください」だった。

2名無し君:2018/12/29(土) 16:11:34 ID:vpWRBTls
生きるもなし、死ぬもなしにひねもすブラブラしていた日のことだった。
下北沢駅前
「はあ、宗教、ですか」
「そんな目で俺を見るなっての。おまえ一体何様よ?ちなみに俺は神様!なんてな!ギャハ!」
神々しさの欠片もない男が言う。
「俺の宗教に入ればよ、毎日がきっと楽しくなるぜ。お前の顔もお天道様に照らされたみてーに明るくなる」
「宗教とか言ってるけどさ、信者が一人もいないじゃないか」
「これから増やすんだよ。お前が信者第一号だ」
「そんなこと言われても…困るよ」
「じゃ、こうすれば入る気になるかな?」

3名無し君:2018/12/31(月) 22:48:44 ID:CtVdUiQI
1です
書き切れそうにねぇんで落としてくださいおなしゃす

4名無し君:2019/01/01(火) 12:59:59 ID:15TFHn4w
>>1じゃないけど気が向いたら勝手に続きかいていい?

5名無し君:2019/01/01(火) 16:15:00 ID:KAAD1TLs
あぁ、いいよ(マジメ君)

6名無し君:2019/01/01(火) 23:02:19 ID:15TFHn4w
 男が指を鳴らすと、そこには死んだはずのケンが立っていた。
マジメ君「ケン、お前、死んだはずじゃ」
GO「ははは! いいねぇ、そのリアクション!」
 ケンは半透明の状態で驚いた顔をしている。
OKD「……俺、昴が心配で死んだ後もずっと後ろに憑いてたんだ。でもまさか昴の方も俺が見えるようになるなんて……」
GO「どう? オレが神様だって信じる気になった?」
マジメ君「もちろんだよ、信者にだってなんだってなってやるよ! えっと……」
GO「GOだよ、桜井豪」
マジメ君「GO、ありがとう!」
 俺は幽霊のケンとの再会を喜び合った。
GO「あ、そいつの姿はお前以外には見えないから気をつけろよ。身体さわったりとかも出来ないからな」
マジメ君「おぅ、わかった」
 せっかく蘇った恋人だ。ふれ合えない事なんていまさらなんの障害にもならない。
GO「いやぁ、人助けすると気持ちがいいねー。またな、信者一号。お布施は気が向いた時でいいからよ!」
 こうして俺とケンの新しい生活が始まった。

7名無し君:2019/01/01(火) 23:03:43 ID:15TFHn4w
OKD「昴、俺と並んで歩くの不便じゃない?」
マジメ君「別に普段と変わらないよ。こうやって携帯電話を耳に当ててればケンと話しながら歩いてても別に変じゃないし」
 その日、俺はケンとのデートを楽しむつもりでいた。
OKD「ねぇ昴、バイトはどうしたの?」
マジメ君「いいよ、ケンと過ごす時間の方が大事だよ。ここに、新しくできた洋食屋、あんのよね」
 俺は二人で店に入る。
店員まひろ「いらっしゃいませ、注文はお決まりでしょうか?」
マジメ君「えーと、この特製スパゲッティを二つ」
店員まひろ「ふたつ……? か、かしこまりました」
 料理が届くまで、俺たちは電話を掛けるふりをしながら会話を楽しんだ。
マジメ君「ところでケン。お前死んだ後ずっと俺に憑いてたって言ってたけど、俺が風呂とかトイレに入ってるのも見てたのか?」
OKD「うん、まぁ……仕方ないじゃん。取り憑いてる昴のそばを離れられなかったし、それに昴がウンコしてる姿なんて真面目すぎて音MADの素材くらいにしかならないよ」
マジメ君「ハハァ……」
 そんな話をしているとスパゲティが湯気を立てて運ばれてくる。
マジメ君「……うまいなこれ。あ、ところでケンはミートソース大丈夫だっけ?」
OKD「うん、平気。生前は薬の飲み合わせや食事の制限もあって食べられなかったけど」
マジメ君「そっか……」
 俺たちが話していると店員が口を挟んでくる。
店員まひろ「……お客様、お食事の際は携帯電話の使用はご遠慮ください」
マジメ君「あ、わ、わかりました。すみません」
 俺は頭を下げて目の前の皿の中身を完食する。
マジメ君「……はー、うまかった。ごちそうさま。……ん? ケン、全然食ってないじゃないか」
OKD「当たり前でしょ。俺はもう死んでるんだから」
 そこへ厨房からコックがやってくる。
コックじゅんぺい「……お客様。当店の料理が食べられないという事でしょうか? 二人分の料理を注文されたくせにお残しをされるのなら、今後ペナルティとして対応させていただきますので……」
マジメ君「わ、わかった! いまからぜんぶ食べるよ!」
 俺は慌ててケンの分の料理も食べた。
マジメ君「……ゲップ。ふー、やっぱり二皿も食べるとキツいな……。ん……?」
 膨れた腹をさすっていると妙な目線を感じる。店内を見回すと、黒いコートを着た男が飲みかけのコーヒーを片手にこちらを睨みつけていた。
平野源五郎「……ちょっと、あれは地縛霊じゃないかね? けしからん、私が喝を入れてやる」
 男はいきなり俺のそばに近付いてきた。
平野源五郎「俺は、霊媒師だ。世の中の不逞な霊を見逃すわけにはいかねぇんだ。お前には、正義の鉄槌でその妙な幽霊を除霊してやる……こっちへ来い!」
マジメ君「なんだアイツ!?」
店員姉貴「……あ、お客さん! お代、お代!」
 自称霊媒師の怪しい男から逃れるため、俺は走って店から出た。
OKD「……昴、ごめんね。俺のせいで……」
マジメ君「あぁ、いいよ。それよりさ、ここら辺だとあの変な奴に捕まるかもしれないからどっか遠くへ遊びに行こうぜ」
 俺たちは電車に乗って遠出する事にした。通勤ラッシュともかち合わないのんびりした昼間の車内で、俺とケンはゆっくりと並んで座る事が出来た。
マジメ君「交通費が一人分だけで済むのはラッキーだな」
OKD「あはは、言えてる」
 そんな事を言っていると、電車はゆっくりと下北沢駅を発車した。
マジメ君「このまま海にでも行くか。そんで帰りにはGOにお土産でも……ケン?」
 俺が横を向くと、隣に座っていたはずのケンはいつの間にか消えていた。
マジメ君「ケン、ケン!? どこ行ったんだ、ケン!」
 取り乱す俺に他の乗客たちの反応は冷ややかだった。
「ファッ!? 不審者じゃないか」
「やめてくれよ……」
「マァー! ゲームのカードを落とすて、し、しまったのですが!」
「性の悦びを知りやがって」
 でも俺にはそんな事は関係ない。隣の駅で降りてすぐに下北沢駅に引き返すと、駅のホームに佇むケンを見つけた。
マジメ君「ケン! よかった、いきなり消えたから……ハハァ……」
OKD「心配かけてごめんね、昴。……たぶん俺、昴とは下北沢で出会ったし死ぬときも下北沢の病院で息を引き取ったから……だからこの街から離れられないんだよ……」
マジメ君「……そっか……」
 俺はがっかりして肩を落とした。

8名無し君:2019/01/01(火) 23:05:34 ID:15TFHn4w
 数日後、俺は自分のアパートの中でケンと過ごしていた。
マジメ君「……でさ、先輩からもらった、ビデオがあんのよ」
OKD「……………………」
マジメ君「ケン?」
 ただでさえ透明なケンの身体がいつも以上に透けている。
マジメ君「ケン、ケン! しっかりしろ!」
OKD「……あぁ、昴……」
 俺が呼びかけるとケンの身体は徐々にいつものように濃くなっていった。
OKD「……昴。実は俺、そろそろ成仏しようと思うんだ」
マジメ君「え!? そんな事いっ、しちゃあ、ダメだろ!!」
OKD「俺もう現世にいられないんだよ。自分でもわかるんだ、この世界にいちゃいけないって」
マジメ君「なんだよそれ!?」
OKD「前は昴を残して死んでいくのが未練だった。けどいまは、死んだはずの俺が昴を縛り付けてる方が良くないんじゃないかな、って思ってさ……。俺が戻ってから、昴、バイトどころか学校にも行ってないじゃん」
マジメ君「だって俺にはケンがいればなにもいらないんだ」
OKD「だからって死人の俺に執着してたらダメだよ」
 ケンと言い争ううちに、俺はふと思いつく。
マジメ君「……だったら、GOに頼みに行くよ」
OKD「えっ?」
マジメ君「お前が死人だからダメなんだろ? だったらGOに頼んで生き返らせてもらえばいいんだよ」
 そう言って俺はケンを引きずってGOの元を訪れた。

9名無し君:2019/01/01(火) 23:07:55 ID:15TFHn4w
〜GOの借りたマンションの一室〜
MUR「ポッチャマのカッチャマが戻ってきてくれて良かったゾ〜。ポッチャマもうれしいダルォ!?」
ポッチャマ「ポチャ、ポチャ〜♪」
 エンペルトの霊と遊ぶMURとポッチャマ
MNR「オトゥーサン……」
 父親の霊に抱かれて眠りに就くMNR
GO「おぅ信者第一号、久しぶりだな。どうよ、オレの宗教! お前も鼻が高いだろ!」
マジメ君「あれはエンペルトに、それとあの青年の父親か……」
GO「ん? もしかしてお前、ほかの奴に降ろされた霊も視えてるのか。あー、いいねぇ〜」
 俺はGOに詰め寄った。
マジメ君「ケンが、自分は死人だから成仏するとか言ってるんだよ。どうにかしてくれないか? 完全に生き返らせるとか……」
GO「は? 無理に決まってんだろ」
OKD「昴、やっぱり俺は……」
マジメ君「ケンは静かにしてろよ!」
 ケンを黙らせて俺はさらに続けた。
マジメ君「頼む、なんとかしてくれ! 金ならいくらでも用意する。お前、神様なんだろ!?」
GO「オレは神様なんかじゃねえよ。ジタバタすんじゃねぇ!!」
 押し問答をしている俺たちの所へ、さらに新しい訪問者がやってきた。
SNJ「俺も仲間に入れてくれよ〜」
マジメ君・GO「「なんだこのオッサン!?」」
 男は話し始めた。
SNJ「俺もGOの信者になってアンタみたいに死んだ身内を生き返らせてもらったんだが、同じように『自分のいるべき場所はここじゃない』とか言い出して消えちまいやがったんだ」
GO「わかったわかった、あんたが払ったお布施は返すよ」
 だがSNJは異常な目つきでGOを睨みつけた。
SNJ「……金の問題じゃない。俺はアイツを取り戻すんだ。あんたを殺してから、蒼穹に磔て生贄にしますんで……」
マジメ君「あ、あぶないっ!!」
 刃物を振り回すSNJは俺とGOの二人掛かりでも抑えつけられない。
GO「おいっ、MNR! 手伝えっ!!」
MNR「オトゥーサン……」
 SNJ以上に虚ろな瞳をしたMNRという男は、見た目からは想像もできない馬鹿力でSNJを取り押さえた。
MNR「……どうしたの、お父さん? こいつの魂が食べたいの? いいよ、たくさん食べてね」

10名無し君:2019/01/01(火) 23:09:49 ID:15TFHn4w
GO「は? なに言ってんだ?」
マジメ君「な、なんだあれ……!」
 MNRの背後から黒い影が現れてSNJを覆う。するとSNJは取り押さえられているだけなのに悲鳴を上げて苦しみだした。
SNJ「あああ痛あああああい!! ダメダメダメ!! 無理ぃぃぃぃ……! 痛い! 無理! ごめんなさい、ごめんなさい!」
 俺はSNJを助けようと手を伸ばす。が……。
OKD「あぶないっ!!」
 いきなりケンの声がしたかと思うと強風にでも吹かれたような衝撃を感じて俺は後ろに尻餅をついた。目の前ではケンが例の黒い影にまとわりつかれて苦しんでいる。
OKD「くっ、俺の事はいい。昴は早く逃げて!!」
GO「くそっ、すっげぇ事になってんぞ! いったいどうすれば……!」
 手をこまねているGOをよそに、俺はケンを助けるためもう一度黒い影に飛び込もうと身構える。その時だった。
AKYS「オラァッ!!」
 空手着のイカつい男がやってきてMNRを蹴り飛ばした。そして黒い影にも縄が飛んできて縛り上げてしまう。
平野源五郎「気合いはあるか!!」
マジメ君「あ、あなたはこないだの霊媒師の……」
 影から解放されたケンを庇いながら俺は二人の前に出た。霊媒師の二人はMNRを拘束し黒い影もあっという間に回収してしまう。長身の男、AKYSはものすごい剣幕でGOを怒鳴りつけた。
AKYS「テメェ何様だと思ってやがんだ。降霊術なんて高度な術をそこらへんで簡単に使うんじゃねぇ!!」
平野「……まぁ、その辺でやめときなさい。おそらく彼は自分の能力の恐ろしさに気付かないまま良かれと思って降霊を繰り返してしまったんだろう」
GO「……………………」
 GOは頬を膨らませてぶすくれていた。平野さんは倒れたSNJを介抱しながらGOに語りかける。
平野「君さえ良ければ、我々の所でその能力をコントロールする手段を学ばないか? 君も本当は、その能力が使いこなせなくて困っていたのだろう」
GO「……うっす」
AKYS「あ? なんだその口の聞き方は、もう一回言ってみろ」
 そうやって話をまとめているGO達よりも、俺はケンの姿を探していた。
マジメ君「ケン、ケン! お前、どうしたんだよ!!」
OKD「……帰るんだよ、あっちの世界に」
マジメ君「ケン……俺、お前がいなくなったら……どうすれば……」
OKD「ケン、俺が死んだ後もケンは自分の人生をしっかり生きてほしい。じゃないと俺、このままじゃ死ねないよ」
マジメ君「ケン、お前……本気で……言ってるのか……?」
 OKDは俺に向かって優しく微笑みかけた。
OKD「昴……これからも俺のために……生きろ!!」
 そう言い残してケンは消えてしまった。
マジメ君「ケン……そうだよな……お前が本気で俺のためを想ってくれたんだから、俺は、その言葉に、応える……!!」
 ケンだけでなく、MURのエンペルトも成仏しているようだった。AKYSさんは気絶したMNRの身体と小さくなった黒い影を抱えている。
MUR「GO様、もう行っちゃうのかゾ。神様はやめちゃうのかゾ?」
GO「……オレは神様なんかじゃねえよ」
MUR「でもGO様のおかげでポッチャマのカッチャマと最後のお別れができたゾ。うれしかったゾ〜コレ」
GO「…………そっか。ありがとな」
 GOはぼそっとつぶやいて、平野さんたちに連れられいなくなってしまった。

11名無し君:2019/01/01(火) 23:11:29 ID:15TFHn4w
 数日後。俺はまたいつもの生活に戻ったはずだった。だが街を歩けば背後霊や化け物が見え、夜には金縛りにあうようになってしまった。
マジメ君「ハハァ……なんだこれは」
 俺はGOに連絡をとり平野さんのいる館へやってきた。
平野「ご無沙汰しております。私がこの緊縛の、ぴゃかた……オーナーの平野源五郎です」
GO「おっ、信者一号! 元気そうだな!」
AKYS「コラ、なにが信者だ。教祖ヅラしてんじゃねぇ!」
マジメ君「ハハァ……」
 GOは相変わらずだった。俺は自分の身に降りかかっている出来事を三人に説明する。
AKYS「そりゃ、たぶんGOの奴のせいだな……」
平野「GO氏の降ろしてきた霊と長い期間いっしょに居すぎたせいで、第六感に目覚めてしまったのでしょう」
GO「あー、そういや信者一号の時は初めてだったからすっげぇはりきったような気がするわ」
 AKYSさんと平野さんは申し訳なさそうに、GOはあっけらかんと答えた。
マジメ君「やっぱり、俺もGOのようにここで修行するべきなんでしょうか」
AKYS「そうだな。お前と、あと……お前のツレ次第ってところだが……」
マジメ君「え? ツレ?」
 AKYSさんが睨みつけている方を見ると、そこにはケンの幽霊が漂っていた。
マジメ君「け、ケン!? お前、成仏したはずじゃ……!?」
OKD「そのつもりだったけど、でも昴が幽霊や金縛りに苦しめられるようになったんじゃ、やっぱり死んでも死にきれないよ」
AKYS「だからってまたしつこく現世に戻って来やがったのか。幽霊の屑がこの野郎……」
 拳を振り上げようとするAKYSさんを平野さんが止めに入る。
平野「まぁまぁ、いいじゃないか。存在がしっかりしている割には見たところ悪霊化する気配もなさそうだ。おそらくGO氏に降ろされた影響だろう。生者とのつきあいについての分別もついているようだし、他の霊から護ってもらう意味でも昴氏と一緒にさせておいていいんじゃないかね」
AKYS「……チッ。もし生きてる人間に対して妙なマネしやがるようだったら遠慮なく祓ってやるからな」
OKD「はい、ありがとうございます」
 俺はほっと胸をなで下ろす。
GO「おう、良かったな。信者一号と信者二号!」
OKD「……昴はともかく、俺は信者になったつもりはないけど」
マジメ君「俺だってもう信者は辞めたはずなんだけどな……ハハァ……」
GO「まま、そう焦んないで。俺が自分の能力を使いこなせるようになって改めて教祖になったらお前らも信者にしてやっからさ」
AKYS「お前まだそんなアホみたいなこと考えてやがるのか。何様だと思ってんだ、オラァ!!」
 AKYSさんの鉄拳制裁を見て、俺はまた「ハハァ……」と乾いた笑いをこぼした。

12名無し君:2019/01/01(火) 23:16:36 ID:15TFHn4w
書き込み終わってから気付いたけど
>>10の台詞内で昴と表記すべきところがケンになってる部分がありますね
不真面目だなぁ……

13名無し君:2019/01/02(水) 22:25:09 ID:S/FjY2j6
おもしろかった

14名無し君:2019/06/17(月) 10:09:14 ID:NIn82.Lw
とても面白かったです。マジメ君がケンと決別する後編はどこ…?ここ…?(欲張り)

15猫の回:2021/07/25(日) 18:46:36 ID:R8CaRb4w
小ネタっぽい回を思いついたので続きを投下します

マジメ君「……そんでさぁ、先輩から借りたビデオな訳だしさぁ……」
OKDYSNR「あはは、言えてる」
 そんな他愛ない事を言い合いながらマジメ君とOKDYSNRが駅前を歩いている。
 路地を抜けて少しだけ往来の減った通りに、二人の向かう事務所はあった。その事務所の入り口前の道路に一匹の猫が座っている。
猫「にゃ〜、にゃあ〜」
マジメ君「おっ、こいつ人懐っこいな」
 足下で腹を見せて甘える猫をマジメ君は撫でてやる。猫は満足そうに喉を鳴らしたあと、OKDYSNRの方を見つめる。
マジメ君「……あいつ、お前の事が見えるんだな」
OKDYSNR「うん、そうだね。……行こうよ、昴」
 マジメ君と連れ立って事務所に入るOKDYSNRの身体は、足元がうっすらと透けていた。

16猫の回:2021/07/25(日) 18:47:27 ID:R8CaRb4w
 事務所の机の上には贈答品のゼリーが並べられていた。
マジメ君「GO、これ今日のプリント」
GO「おっ、さんきゅな!」
OKDYSNR「プリントだけじゃないよ。授業の代返までしたんだから」
GO「おう、それもあんがとな。感謝してるって、安心しろよ〜」
マジメ君「ハハァ」
OKDYSNR「まったく……」
 脳天気なGOと照れ笑いするマジメ君とは対照的に、OKDYSNRは渋い顔をしている。
OKDYSNR「まさかコイツが昴と同じ学部だったとはね……。昴があれだけコツコツ机に向かってやっと合格した日本の最高学府なのに、なんでこんなギャル男がいるんだよ」
GO「最高学府っつってもなぁ……。大学受験なんて、パパパっとやっておわりっ!」
マジメ君「ハハァ……」
GO「それよりコレ、お前らにもやるよ」
 GOはこともなげに言いつつゼリーを二人に勧める。
マジメ君「これは?」
GO「こないだ俺が除霊してやった依頼人がさ、くれたのよ。もちろん依頼料だってたんまりもらえてさ! 30分で、五万!!」
 GOがヘラヘラ笑っているとすかさずゲンコツが飛んでくる。
AKYS「オラァ!! お前、何様だと思ってんだ!!」
GO「いってぇなぁ……」
AKYS「お前は俺らの仕事にくっついて荷物持ちしただけじゃねぇか」
AKYS「それに俺達は依頼人の経歴、土地の謂われや事件事故について事前にしっかり調査してから除霊を始めるんだ。30分で五万じゃねぇし、そんだけ手っ取り早く稼ぎたいならホモビにでも出てろ!!」
GO「ちぇ〜っ……だからって怒ることねぇじゃん」
AKYS「口答えすんじゃねぇ!!」
 怒るAKYSと拗ねるGO。鉄拳にモノを言わせるAKYSを見てOKDYSNRは耳打ちする。
OKDYSNR「相変わらずめちゃくちゃな人だよね。まぁ、あの人と平野さんの言う通りに盛り塩したりお線香あげたりしてから昴があんまり霊障で困らなくなったから、本物ではあるんだろうけど……」
マジメ君「そうだね。でも、俺が元気でいられるのはケンが俺のこと守ってくれてるおかげでもあると思うよ」
OKDYSNR「うん、ありがとう」
 目配せするマジメ君とOKDYSNR。
マジメ君「じゃ、俺らは帰るよ」
GO「おぅ、またな!」
AKYS「お前らもこのアホがなにかやらかしたらすぐ俺に教えろよ」
マジメ君「……ハハァ」
 事務所を去る二人。

17猫の回:2021/07/25(日) 18:48:06 ID:R8CaRb4w
 外に出ると、路地にはさっきの猫がいた。
マジメ君「あれ、あいつまだいるのか……?」
 そしてさらに、ちょうど事務所に帰ってきた平野源五郎が猫に向かって手を差し出している。
平野「おいで、おいでっ!」
猫「にゃ〜ん?」
平野「にゃんにゃ〜ん、にゃにゃ〜ん!!」
マジメ君・OKDYSNR「……………………」
 猫語でしゃべりだす平野を見てドン引きするマジメ君とOKDYSNR。平野は二人に気付かず猫にちょっかいを出し続ける。
平野「かわいいなぁ、かわいいなネコくんか゛わ゛い゛い゛な゛ぁ゛〜!!」
猫「……フーッ!! シャーッ!!」
平野「あぁ^〜、すごいかわいいなぁ〜! お て ♪!」
 猫パンチを繰り出す猫。それを受け止める平野。そこでようやく平野は二人の目線に気がついて猫語をやめる。
平野「……あっ……」
OKDYSNR「こ、こんにちは……」
マジメ君「ハハァ……」
 気まずい三人。
平野「……わし、動物になかなか好かれなくてなぁ……」
猫「にゃあ〜」
 猫は平野から逃げてマジメ君に寄ってくる。
OKDYSNR「昴もそんなに懐かれる方じゃないと思うんだけど」
マジメ君「珍しいヤツだなぁ」
平野「猫くんかわいいなぁ」

18猫の回:2021/07/25(日) 18:48:41 ID:R8CaRb4w
 その夜、布団の中でうなされるマジメ君。
マジメ君「う、ううぅ……」
???「にゃあ〜、にゃあああ〜…………」
 不気味な猫の鳴き声に囲まれて金縛りになる。
???「にゃ〜、にゃ〜……!!」
OKDYSNR「……昴、すばる……っ!!」
マジメ君「…………はっ…………」
 OKDYSNRに起こされて気がつくマジメ君。
OKDYSNR「良かった、昴……。さっきまでうなされてたから……」
マジメ君「あぁ、ありがとう。……金縛りになるなんて、ずいぶん久しぶりだな」
 額の汗を拭うマジメ君。
OKDYSNR「ごめんね昴、守ってあげられなくて。昴に危害を加えるような、そこら辺の霊みたいな恨めしい感じが全然しなかったから……。だから気付くのが遅れちゃって」
マジメ君「いや、でも助かったよ」
マジメ君「ところで、さっきまで猫の鳴き声がしたよな。ケンはなにか聞こえたか?」
 マジメ君は問いかける。
OKDYSNR「ううん、俺はよく分からなかった。昴が苦しそうにしてたから慌てて起こしたんだよ」
マジメ君「そうか……」
 考え込むマジメ君。
OKDYSNR「ねぇ昴。明日、またAKYSさん達の所へ行って相談してみようよ。今日会った猫と、なにか関係があるかもよ」
マジメ君「あぁ、そうだな」
 そんな会話をする二人の事を、窓の外から不気味な瞳が見つめていた。

19猫の回:2021/07/25(日) 18:49:15 ID:R8CaRb4w
 翌朝マジメ君が玄関を開けると、そこには昨日の猫がぐったり倒れていた。
マジメ君「えっ!?」

 場面転換。事務所では苦しそうな猫を、マジメ君・OKDYSNR・GO・AKYS・平野が囲んでいる。
猫「にゃあ…………」
マジメ君「動物病院ではただの風邪だろうって言われたけど……」
 しかし一同が耳をすませると、猫本来の鳴き声と重なっておぞましい声が聞こえてくる。
???「に゛ゃ゛あ゛〜、に゛ゃ゛〜〜〜…………!!」
AKYS「……厄介だな……」
平野「これは困った……」
 猫の身体には黒い影までまとわりついている。
GO「え? あんたら二人が揃ってて、助けてやれないの?」
 AKYSは首を振る。
AKYS「動物の霊ってのは難しいんだ。言葉が通じねぇ、要求がわからねぇ、だから話し合いの余地がねえ。さらに始末が悪い事に、これは動物が動物にとり憑いてやがる」
平野「払う方か払われる方のどちらかが人間であれば、まだやりようはあったんだがのぅ」
AKYS「除霊が終わるまでにこのちっこいヤツの体力が持つかどうかって所だな」
OKDYSNR「そんな……」
 手を出しあぐねているAKYSと平野。
マジメ君「なにか、有効な手段とかないんですか?」
 食い下がるマジメ君。
平野「そうじゃのう……。例えば人間の霊だったら、そいつの生前の名前を呼ぶ。あるいは出演したほんへのタイトルを言い当てる。これだけで一気に弱体化する奴もいるんじゃが、こんな野良猫に憑いた動物霊に名前があるとは思えんしな……」
 苦しそうな猫を見つめるマジメ君。
マジメ君「……オレ、ちょっと出掛けてきます」
GO「え? どうしたんだよいきなり」
マジメ君「オレにも、なにか出来ることがあるかもしれないから……行ってくる」
OKDYSNR「あっ、昴! 待ってよ!」


 図書館へ出向いたマジメ君。過去の新聞を広げ、ネットニュースもチェックしている。
OKDYSNR「昴、なにか考えはあるの?」
マジメ君「分からない。けど……でも、コツコツ机に向かうのはオレの得意分野だからさ」
 猫が現れる前の日あたりを特に重点的に調べていく。
新聞『商店街近くの空き地で中年男性が倒れていると通報があった。第一発見者は地域猫のエサやりにきた近所の住人。男性は病院で死亡が確認され、警察は自殺とみて男性の身元を調べている』
ネット『うちの会社の課長が自殺したっていうんで警察きたわ。事件性はないみたいですぐ引き上げたけど』
 情報を集めながら、マジメ君は頭の中でAKYSや平野の言葉を思い起こす。
AKYS「俺達は依頼人の経歴、土地の謂われや事件事故について事前に調査してから除霊を始めるんだ」
AKYS「動物の霊ってのは難しい。話し合いの余地がねえ」
平野「せめて出演したほんへのタイトルを言い当てたら……」

20猫の回:2021/07/25(日) 18:50:03 ID:R8CaRb4w
 走って事務所に戻ってきたマジメ君。
猫「…………にゃあ〜…………、にゃあ〜…………」
GO「あ、お前…………」
 息も絶え絶えな猫に向かって、マジメ君は言い放つ。
マジメ君「課長こわれるっ!!」
 すると猫にとり憑いていた黒い影が薄れていく。
AKYS「なにっ!? いきなりなんだコイツ!!」
平野「これはチャンスじゃぞ!!」
 二人が念じると影は人間(課長)の形を取った後、一気に消え去る。やがて猫は元気そうに起きあがり、目をぱちくりする。
猫「にゃ、にゃあ? にゃあ〜……」
 ほっと胸をなで下ろす一同。
OKDYSNR「よかった……」
GO「いいねぇ〜」
マジメ君「ハハァ……」
 はにかむマジメ君の所へ猫が寄ってきて頭をすりつける。
AKYS「まさか、人間がとり憑いてやがったとはな……」
GO「人間があんな動物みてぇな喘ぎ声出すのかよ? 世界は広いねぇ」
平野「それにしても鴻野氏、よく調べたのぅ」
マジメ君「ハハァ……」
 嬉しそうなマジメ君。
GO「あっ、オレにも抱っこさせてよ!」
猫「ふみゃ〜!!」
 いやがる猫。
OKDYSNR「ほんとに昴以外には懐かないね、コイツ」
GO「猫のくせにけっこう頭いいじゃん、お前」
マジメ君「よしよし」
 はしゃぐ彼らを見て平野は頷く。
平野「もしかしたら、あのねこちゃんは鴻野氏の本質を見抜いて助けを求めたのかもしれないな」
AKYS「そうかもな」
 平野と共に満足げなAKYS。


 別日、街を歩くマジメ君とGOとOKDYSNR。
GO「じゃあさ、ビール買って行こうぜ! はい、よろしくぅ!」
マジメ君「今日はテスト勉強する為に集まったんだから、酒なんか買っちゃあ……ダメだろ!」
OKDYSNR「いいじゃん、勉強が終わってから飲めば」
GO「おっ、話が分かるねぇ〜! そういや事務所にお中元のビールが届いてたし、ちょっと失敬してくか」
 言いながら事務所のそばに行くと、例の猫とAKYSを見つける。
AKYS「……………………」
猫「……………………」
マジメ君「おい、あれって……(ヒソヒソ)」
 見られていることに気付かず、AKYSは猫にそっと指を差し出す。
AKYS「…………おい。こっちこい」
猫「……フーッ!! シャーッ!!」
AKYS「…………チッ」
 機嫌を損ねて猫パンチを繰り出す猫と、舌打ちするAKYS。
マジメ君(エラいもん見ちゃったな……)
 こっそり立ち去ろうとするマジメ君の後ろで『パシャッ!』とカメラの音がする。
AKYS「なっ!? テメェ……!」
GO「あ〜、いいねぇ〜! めっちゃウケるじゃん。平野さんとかぜってーこういうの好きっしょ」
AKYS「はぁ? 平野?」
 GOが携帯を操作する。すると事務所の建物の中から
平野「ふぉーっふぉっふぉっふぉっふぉwwwww」
 と平野のケフカ笑いが聞こえた。
AKYS「お前……ふざけやがって……」(ワナワナ)
GO「まま、そう怒んないでよ」
 ヘラヘラするGO。
AKYS「オラァ!!」
マジメ君「ハハァ……」
 容赦なくぶっ飛ばすAKYS。マジメ君は苦笑いする。
OKDYSNR「相変わらず懲りないなぁ、アイツ。……ね〜、かわいい子猫さん」
 OKDYSNRはそう言ってマジメ君の足元へ微笑みかける。そこでは猫がのんびりした顔をして座っていた。

21猫の回:2021/07/25(日) 18:50:48 ID:R8CaRb4w
参考:https://www.nicovideo.jp/watch/sm32844331

22名無し君:2023/08/12(土) 15:35:06 ID:R5kk.kL2
問う。遊戯王ZEXALは燃えているか。
https://www.tv-tokyo.co.jp/anime/yugioh-zexal/index2.html
https://w.atwiki.jp/kizuna1999/
https://www.nicovideo.jp/watch/so36847474
https://yugioh-wiki.net/


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