[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
401-
501-
601-
701-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
俺「ストライクウィッチーズと洒落込もうか」
1
:
名無しさん
:2013/04/07(日) 02:07:57 ID:qhlpEsaY
ストパンの世界に俺を入れてイチャイチャしようずwwwwwwwwww っていうスレ
∧
/ |
〃 .|
.// | ___ _,. イ
/ | / _ __ / /
( |. /; ; ; ; ; ; ; ;.;.;>、/ / /
ヽ.! /; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; < ̄ ̄
/ V; ; ; ; ; i; ; ; ; ;.;.丶; ; ; ;ヽ
.///; ; ;./; ;/|; ; ; ; ; ;.;.;l; ; ; ; ;.i
|/; ;./ ; ;/; ;/ .l .ト、; ; ; ;.;ト; ; ; ;.;\ _,
ノ ; ; |; ;ノイ/⌒l | | ; ;7⌒| ; ; ! ̄
/!|; ;A ; ; l∧|⌒リ ! ; ;/ ノヘ!. ; ;l
|.!/{ ト、 ト弋シア ノ/弋シア; ;ノ
|.!; ;ヾ; ;\ ,.,.,. ,.,., !イヽ
l; ; ;.| ; ; ト、 rt.、_’ ノ ノ ; ;}
/; ;l ヽ、; ;\>` ー´.ィ /イ /
./; ;/; ; ; ;>ーヽー穴t;. | '´
/; ;/ ; ;/ヽ、 \ /《ム,\⌒≧
/イ; ;/ミ>/!L_>< {ミh,,入_}
//⌒ヽ< ノノ マミhV フト、
./ l \ >= _`マ》Y<>、
/ヘ∧ \V/ / > ⌒\ ヽ
ノ .人 Yヽ / ,)、 /
妄想を垂れ流すのもよし、初SSに挑戦してみるのもよし
そこのお前も書いてみないか?
ミラーwiki ttp://www48.atwiki.jp/vip_sw/
保管庫 ttp://www52.atwiki.jp/oreqsw/
ブログ形式保管庫 ttp://mtssstr.blog.fc2.com/
避難所 ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14336/
まとめWiki運営スレッド5
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14336/1350988509/
雑談スレ オ67ミン C
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14336/1361541718/
前スレ
俺「ストライクウィッチーズ、ブレイクナウ」
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14336/1352033747/
618
:
名無しさん
:2015/04/19(日) 02:35:09 ID:pxHHh2FU0
2,3年ぶりに来てみればまだ投下続いてるのね
お里に戻ってきた感すごくて安心した
619
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 01:35:13 ID:qOebAEAc0
深夜ですが投下させてもらいます
620
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 02:04:53 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
相方「もういいよ!!!」
俺相方「「どうも、ありがとうございました!!」」
上の人たち(((((・・・・・・・・・・・・)))))
俺相方((・・・・・))
上の人「・・・君たちさぁ・・・芸歴何年?」
俺「・・・え?・・・あ、俺達芸歴7年目です」
上の人「どっちも?」
俺「はい」
上の人「テレビに出たことは?」
俺「全国ではないですが地方で2回ほど・・・」
上の人「・・・」
相方「あの・・・」
上の人「厳しいこと言うけど・・・3年後君たちがこの状態だったらね・・・解散した方がいいよ」
俺「・・・え?」
621
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 02:08:17 ID:qOebAEAc0
上の人「ネタが古いし・・・なんかテンポ悪いっていうか・・・君たちさぁ・・・コンビ合ってないんじゃない?」
相方(・・・ッ!!!!)
俺(よせッ!!相方!!)
上の人「まあ芸歴が2ケタじゃないだけマシだね」
上の人「まだ伸び代がありそうなんだけどなぁ・・・芸歴10年以上で売れない人たちってゴロゴロいるから」
俺「はぁ・・・」
上の人「まぁでも三年後・・・こんな感じだったらコンビで話し合った方がいいよ。割と」
上の人「以上です」
俺相方「「・・・ありがとうございました」」
622
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 02:31:56 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺相方((・・・・・・・・・・・・))トボトボ
芸人「ははははは・・・でさぁ〜」スタスタ
ガンッ
相方「イテッ!!」
俺「相方ッ!!」
俺「オイッ!!!」
芸人「それでさぁ〜あいつ肝心のネタを忘れてさぁ〜」スタスタ
俺「・・・」
相方「・・・兄貴ぃ・・・」
俺「・・・飯食いに行こう!」
相方「・・・え?」
俺「腹いっぱいになりゃいいネタ思い出すかもしんねぇだろ?あの芸人をビビらすような・・・」
相方「・・・」
俺「ほら!いくぞ!!」
相方「・・・うん!」
623
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 02:44:23 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
パチッ
俺「・・・」
俺「夢か・・・」
チラッ
相方「グガーーーーーーーー」
俺「・・・フッ」
624
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 03:33:33 ID:qOebAEAc0
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
テクテク
相方「聞いてよ〜兄貴ぃ〜こないだ道具持ってきたのにさぁ・・・お前遅すぎだぁっつって頭殴られてさぁ〜」
俺「あたりまえだ。お前作業の時すっげぇ目立ってんだよ」
相方「え?目立ってる?」
俺「目立ちすぎだよ。なんだよペンチ持って来いって言ったのにベンチ持ってきやがって・・・」
相方「あの後本気でぶん殴られたからな・・・」
俺「お前ネタなのかマジなのかわかんないときあるよな・・・」
相方「いや俺もさ・・・」
625
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 06:13:13 ID:qOebAEAc0
???「ソレデナーサーニャ・・・」
サーニャ「・・・フフ、エイラハ・・・」
相方「ちょちょちょ兄貴・・・」
俺「お、おい相方」
スタスタスタスタスタスタスタ・・・
626
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 07:55:06 ID:qOebAEAc0
相方「・・・行った?」
俺「・・・ああ、行ったよ」
相方「はぁ〜」
俺「おい、相方」
相方「よ〜し!!今日も一日ガンバッゾ!!」
俺「は?」
相方「それじゃ兄貴今日はこれで!!!」
ハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ・・・
俺「・・・」
627
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 08:10:35 ID:qOebAEAc0
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
相方「♪〜♪〜」
チラッ
シーン
相方「あら、誰もいない・・・」
相方「はぁ〜・・・」
俺相方「「あ〜あサーニャちゃんまた来てないのか・・・」」
相方「おわぁっ!!!」
俺「まったくお前は・・・」
相方「脅かさないでよ兄貴ぃ・・・」
俺「別に脅かしてもないけどな・・・」
俺「それで・・・お前惚れてんのか・・・サーニャちゃんに」
相方「べっべつにほれほれほれほれてねぇし!!」
俺「お前嘘つくの下手くそだなぁ〜・・・」
628
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 08:17:06 ID:qOebAEAc0
相方「・・・いつから俺「最初からだよ」
相方「えぇ〜・・・」
俺「気付かないと思ってんのか俺が。てかほかの整備兵もうすうす気づいてるから」
相方「・・・・・」
俺「大体お前はなサーニャちゃんの近くに来るといつもおどおどしてんだよ!!お前オタクか!!」
相方「し、しかたないだろ・・・俺んとこ男子校だったし・・・」
俺「嘘つけお前中卒だろうが・・・」
相方「中学は私立でしたー!」
俺「中学は俺と一緒の公立の共学だろうが・・・」
相方「・・・・・」
俺「なんで平気で嘘つくんだよ」
相方「だって兄貴に反論したくて・・・」
俺「反論するんだったらちゃんとしたの用意して来いよ・・・ウソの情報もってきたら倍返しされるわ」
629
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 08:46:19 ID:qOebAEAc0
相方「・・・・・」
俺「お前も男だろ?だったら決めるとこまで決めてしまえ」
相方「いや、でもあにき・・・」
俺「相方少尉よ、逝ってらっしゃい」ビシッ
相方「ちょっと兄貴!!なんで特攻隊みたいな感じでいかなきゃいけないんだよ!!」
俺「だってここ戦場だし・・・」
相方「いや・・・まあ確かに戦場だけどもさぁ・・・」
630
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 08:56:24 ID:qOebAEAc0
俺「・・・フフッ」
相方「なんだよ兄貴」
俺「いやな・・・お前と会話をしてるとなんだかコンビ組んだ時の頃思い出してな」
俺「あのころの俺たちはタウンダウンさんのようなビッグになる!とか大口叩いてさ・・・何でもできるって思ってたんだけどなぁ・・・」
相方「なんだよ兄貴らしくないなぁ・・・昔話語るなんて兄貴じゃない!後ろを見ずにもっと前へ進むのが兄貴のモットーでしょ!」
俺「フフッそれもそうだな・・・」
631
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 09:03:22 ID:qOebAEAc0
相方「なぁ兄貴・・・」
俺「ん?」
相方「星がきれいだね…」
俺「・・・そうだな」
相方「・・・なあ兄貴」
俺相方「「ここで漫才しよう!!」」
俺 フフン
相方「・・・兄貴ィ・・・」
俺「お前の考えてること丸わかりなんだよ。それに俺もこの場所がちょうどいい舞台だと思ってんだ。」
相方「星綺麗だしな・・・」
俺「ここに来てから漫才の練習してないからな・・・よーし!今からここを俺たちのホームグラウンドとする!!漫才の練習する時は必ずここでやるぞ!!」
相方「うん!!」
俺「よ〜しそれじゃまずはだな・・・」
632
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 09:14:53 ID:qOebAEAc0
-----------------------------------------
--------------------------------------
サーニャ「・・・」ブーン
サーニャ「今日も異常なしかな・・・」
・・・・・ナン・・・・・オトウサ・・・・・・ダレダ・・・・・
サーニャ「・・・?」
サーニャ「ハンガー前に声が聞こえる・・・誰だろう・・・?」
イヤーヤッパサ・・・チチオヤニアイサツスルノッテコワクナイデスカ
エーソウ・・・カー
だからさ僕ここで練習したいなと思うわけですよだからお前お父さん役やって
わかった
おとうさん、娘さんを僕にください
お前に娘はやらん
ガラガラガラなぜですか父さん!!
まだ部屋に入ってなかったのかよ!!
633
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 09:19:13 ID:qOebAEAc0
サーニャ「・・・・・・・・・・・・」
サーニャ「・・・・・・・・・・・・・・・プッ」
おとうさん!!おとうさんをおとうさんでおとうさんしてください!!
もうわけわかんないよ!!
サーニャ「・・・・・・・クックックックック」
もういいわ
どうもありがとうございましたー!!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーー芸人な俺ーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
634
:
芸人な俺
:2015/07/31(金) 09:23:14 ID:qOebAEAc0
以上で投下を終わります・・・
朝まで続いちゃった・・・ごみんね★
・・・いや本当にごめんなさい・・・
635
:
名無しさん
:2015/07/31(金) 23:16:16 ID:Y3mkY0mw0
乙乙
636
:
名無しさん
:2015/08/12(水) 12:51:54 ID:FwMWiC2c0
復興してくり
637
:
名無しさん
:2015/08/15(土) 02:00:20 ID:pkA0YMSQ0
投下するで。あんま書き貯め無いから完結まで時間かかるかも
638
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:04:07 ID:pkA0YMSQ0
まだ16の私にとっては随分昔の話だ。でも,わたしはそれを昨日の様に覚えているし。「その日」は,私と同じ国の生まれなら,誰だって鮮明に思い出せる。いや,焼きついているだろう
確か,弾切れだったか,ストライカーの不調だったか。ああ,そんな事はどうでも良いんだけどね。とにかく,何かの問題が有って後ろに下がろうとした時だった
手持ちのレーション――リベリオンの片手で食えて腹が膨れやすいってだけが取り得のアレね――を,僚機におしつけて,Uターンしたんだよね
ネウロイに背を向けて大丈夫かって?
囲まれてるんだから。前か後ろか右か左かなんて,些細な事だよ
で,背を向けて,一度下を見たんだよね。そしたら,居たの
誰って,一々書く必要も無いでしょう。その人に関しての事書いてんだから
彼は。私と,ネウロイと,空との向こう側に有る何かを睨み付ける様にして,立っていた
彼が何を睨んでいたのか。それは,知らないし知ろうとも思わない
ただ,あの鋼の空が彼の祖の風景になるなら。彼が見た鋼の空に0ですらなく。ほんのちょっと,気付かない程中途半端にしかわたしが映っていないなら。いつか,彼の祖が色硝子の様な青い空に上書きされる時。あいつが,嫌でもわたしを意識しちゃうよう。わたしもド真ん中に映りこんでやろうと思うのだ
PS.完成した物は送らないでください。彼に見られたら死ぬほど恥ずかしいので
639
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:08:50 ID:pkA0YMSQ0
俺「大尉。久しぶりだな。腹が減ったので,この基地に今有る物で,一番旨い物が食いたいのだが」
バルクホルン「少佐。お久しぶりです。その前にミーナ中佐の所へ」
俺「変わらんな」
バルクホルン「貴方は随分変わった」
俺が501の基地に到着した時,最初に出迎えたのはバルクホルン大尉だった
俺とバルクホルンはあの撤退戦で一言二言交わした程度だが,お互いに覚えていた事に,彼は軽く驚いた
俺「覚えていたんだな」
案内すると先導する彼女の背中に声を掛けると,予想しなかった回答が還って来た
バルクホルン「正確にはミーナ中佐が覚えていた形ですね。少佐に関する書類に目を通していた時,ミーナ中佐が」
俺「ふうん」
ミーナ中佐も彼と撤退戦で顔を合わせたが。正直,俺はミーナ中佐が苦手だった
ジョークが通じない上,何でも上手くこなすつまらない人間
それが俺の――少なくとも,今まで――抱いている感情だった
640
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:14:37 ID:pkA0YMSQ0
バルクホルン「どうぞ」
目的地に到着し,バルクホルンが戸を開ける
中に入ると,インクの匂いとコーヒーの匂いが混ざった匂いが俺の鼻の中にこびり付く
俺「俺少佐です。本日付で此方に配属されました……どうぞ,よろしく」
ミーナ「よろしく……少佐……早速で悪いのだけれど……」
ミーナ中佐の言葉を遮る様に書類の山が崩れる
その横では,フソーのサムライみたいな女が,書類の山を前に頭を抱えていた
ヴィジャ板やらタロットやらも積まれていて,観ている分には面白い
俺「大尉。コーヒーを持ってきてくれ」
バルクホルン「……はい」
それは,観ていられない。と言う意味でもあるのだが
書類を撃墜数に数えられたら,彼女はカールスラントでトップ3には入れるウィッチだ
その夜,ミーナ中佐の手伝いをしながらそんな事を考えた
641
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:18:27 ID:pkA0YMSQ0
俺「今ので最後ですかね……?」
ミーナ「ええ。有難うございます。お陰で随分早く終わりました」
冷めたコーヒーを一息に飲んで席を立つ
Mr.コックリとは何者なのだろうか
時計は24時を少し過ぎた所を指している
俺「シャワー。男性職員用のを使えば?」
サカモト「ああ,明日までに俺少佐も使える様にしておくから。今日は男性職員用の物を使ってくれ」
俺「有難う」
俺が部屋を出ると,ドア越しに室内の硬かった雰囲気が柔らかくなるのを感じた
流石に,いきなり男性を迎え入れるのは難しいらしい
男性職員舎に向かう途中,整理した書類を思い出す
先ず,半分は俺絡みの書類だった
カールスラント空軍からの物が多かったが,最高司令部からの物も少なくなかった
残りの半分近くはブリタニアからの物
642
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:26:05 ID:pkA0YMSQ0
補給絡みが大半で,数枚はこの付近の海域への海軍の展開を3ヶ月以内に強化すると言う内容だ
今までのブリタニア本国艦隊に加え
巡洋戦艦2隻,巡洋艦3隻,駆逐艦27隻
それに加え新型と思われる空母3隻
から成る艦隊を追加するらしい
新型空母の内の1隻はブリタニア海軍からの仕様の変更要請で今改修作業中のユニコーンだ
あの書類の日付が2日前なのを考えると,改修作業がもうすぐ終わるらしい
ここに来る前に口頭で伝えられた命令を思い出す
これ自体は「あちら」も気付いているだろう
問題はアタリなら事は更に厄介になる事だった
俺「っと……ここか」
「男性職員舎」とだけ書かれた札の掛かったドアを見つけ,手にかける
俺「……? ああ……引くのか」
643
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:30:01 ID:pkA0YMSQ0
俺が引くタイプのドアと気付いた瞬間,向こう側から勢い良くドアが開かれる
不幸にも俺にぶつかったドアはそこで動きを止め,ドアを開けた向こう側の人間も,またドアとぶつかる事となる
俺「クソ。悪いな。大丈夫か」
半分程度開かれたドアを開いて向こうを確認すると,大柄な男が小柄な男を抱えて倒れていた
それだけでも異様だが,更にそれを異様な光景にしているのは,二人の衣服を濡らす赤い液体だった
状況からして小柄な男が怪我でもしたのだろう
俺「大丈夫かよ……」
大男「悪い……こいつが怪我してな……医務室まで手を貸してくれないか?」
大男が座ったまま此方を見上げ,そんなことを口にした
正直,この状況で俺がどう手伝うかも解らないし,出来れば目立ちたくなかった
しかし,このまま見捨てるのも気が引ける……
まあ,多少目立っても変わらないか――そんな言葉が,口から漏れた
俺「ここで治そう。どんな怪我だ?」
大男「ノコで脚を切った。随分深くて骨も見えてるが……お前,医者なのか?」
俺「医者より早いぞ。確か此処に……」
644
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:35:21 ID:pkA0YMSQ0
大男「コイン? なんで……」
俺「まあ」
俺が遮る様に言い放つと,大男はそれっきりだまってしまった
俺「ノコってこんな切れるのな」
脚を包むタオルを取ってそんな事を口にする
この様子じゃかなり痛そうだ
フソーのショーユってのがこれに入ったらどれだけ痛いだろうか
考えるのも痛いのでやめるが,失神してるのは運が良い
大男「お,おい!」
俺「はいはい」
大男にせかされ,処置を始める
と言っても,右手で金属片を握り,左手を傷口に添えるだけだが
俺「はい」
645
:
鋼な俺
:2015/08/15(土) 02:38:34 ID:pkA0YMSQ0
右手の鉄がすっと軽くなり,傷口がふさがる
俺「終わりだ。まあ,流れた血が元に戻る訳でも無いし,軍医さんに診てもらうと良い」
大男「あ,有難うございます」
大男は頭を下げると,小柄なのを担いで医務室に走って行く
名前位,聞いておけば良かったかもしれないと呟き,俺は男性職員舎のドアを押す
俺「…………」
今回はこれにて
646
:
名無しさん
:2015/08/21(金) 07:54:35 ID:1SSZwX0E0
乙
治癒魔法とは地味なところで来たな
647
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:09:55 ID:LpmSyaQg0
首の太い血管を,切れ味の良いナイフで断ち切る
かなり深く切れたらしい
血は噴水の様に噴出し,床のタイルの隙間に血が通う
嘘の血管を床に張り巡らせ,自分の一部とする事で,この部屋は工房になる
工房はそれ自体が廃れた魔術だ
作れる人間は自分を除くと数人しか居ない
アンナとか言う老婆と,時計塔の名前が長い魔術師。有名なのはそれ位か
時代が我々を見放したか。我々が時代を見放したか。そんな事に興味は無かった
あの,鋼の空を破る為に
首に手をやると,傷はもう塞がっていた
648
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:13:12 ID:LpmSyaQg0
此処は暑い
スオムスで数年戦った人間からすれば,この国は何処に居ようと暖炉の前に居る様な錯覚を覚える
太陽が昇っていない事から,五時は周っていないだろう。ベッドの下に置いてある鞄から代えのシャツを引っ張ると,さっさと部屋を出る
基地内の地図を頭に広げ,外への最短経路を探る
恐らくハンガーが一番近い
ハンガーに爪先を向け,歩き出す。今日はフソー式の風呂に入れるだろうか
俺「Wir fliegen durch silberne Weiten……
Selig dem Himmel gesellt……」
「オイ」
俺「はい?」
唐突に背後から声を掛けられる
ああ,この声は聞き覚えが有る
649
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:16:14 ID:LpmSyaQg0
エイラ「こっち来たのか」
俺「まあね」
そっか。と言ったきり,黙って俺の後ろに付いてくる
エイラとは,スオムスで暫く一緒に戦っていたのだ
俺「珍しいな。早起きなんて。今から走るんだが。一緒にどうだ?」
エイラ「ん」
俺「どうだ? 元気か? 姉さんな。お前のこと心配して――」
エイラ「首」
俺「……」
エイラ「治ってないぞ」
エイラが指した部分に手をやると,確かに切った跡が残っていた
650
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:19:21 ID:LpmSyaQg0
俺「あー……面倒だな……」
エイラはよく知っているが,他人からみたら過去に誰かに切り付けられた様にも見えるのだ
こればかりは直ぐには治せない
気を取り直して格納庫を通り抜け,靴紐を締めなおす
天気は快晴。出来るだけ薄着にしたのは正解だった
地を蹴り,走り出す
最初はこれが嫌でたまらなかったが,慣れてしまえばそう苦でもない
スオムスに比べたら少々暑いが,身体を壊すほどでもない
ここは,きっと良い場所だ
651
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:23:00 ID:LpmSyaQg0
サカモト「おい」
どれくらい走っていただろうか。後ろからサカモト少佐が話しかけてくるまで無心で走り続けていた
足音が二人分しか聴こえないので,エイラはへばったのだろう
俺「ああ,少佐。どうしましたか?」
俺が立ち止まると。走り続けろ。と少佐が手で指示する
サカモト「いや,何処にもお前を見なかったからな。起きた時に外で走っているのを観たから,一応確かめに来たら……な」
少佐が俺の後ろに付いて走る
俺「すいません。ご迷惑お掛けしましたか」
サカモト「いいや。構わないが……ずっと走っていたのか?」
俺「まあ,その程度しか出来ませんから」
サカモト「……朝食も食べていないだろう。あと一週したら行くぞ」
652
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:28:57 ID:LpmSyaQg0
小さい扶桑人「あっ。カールスラントの人!」
サカモトに連れられて食堂に入ると,小さい扶桑人が駆け寄って来た
俺「な,なんだよ」
小さい扶桑人「あ,すいません。あの,私宮藤って言います。えっと……坂本少佐とミーナ中佐からお話は伺っています。朝ごはん出来ているので,食べてください」
俺「あ,ああ。俺少佐だ。よろしくな」
ミヤフジ「はい!」
ミヤフジはそう言ってキッチンに引き返すと,忙しなく皿に料理を盛って行く
カウンター越しに食事を受け取る
にぎやかな食卓から適当に席を探すと,カールスラントのジャケットが目に入った
皿の物は平らげられて,一人で黙って雑誌を読んでいる
行儀は良くないが,隣に座りたくない程ではない
座って良いか? と聴くと,どうぞ。とだけ返される
朝食は扶桑の料理――所謂,和風。と言う物だった
653
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:32:04 ID:LpmSyaQg0
ライスに魚に卵。あと,サラダとネバつく豆。この豆は単品だとどうも苦手だが,ミヤフジが教えてくれた様に,まぜてライスと一緒に食うと旨かった
綺麗に平らげ,お茶を飲んでも。まだ,隣のカールスラントのジャケットは雑誌を読んでいた
俺「なあ」
カールスラントのジャケット「ん?」
俺「久しぶりじゃあないか。いや,それとも始めましてが正しいかな?」
ハルトマン「好きな方で良いよ。お互い,知らないって訳じゃ無いでしょ?」
俺「まあな」
ハルトマン「で,スオムスから来たの?」
ハルトマンが持っていた雑誌の一節を指差す
『スオムスにて奮戦する「カールスラント撤退遅れ部隊」唯一のウィッチ俺大尉インタビュー』
ハルトマン「ここでは大尉らしいけど」
俺「まあな」
ハルトマン「それに陸戦ウィッチらしいし」
俺「上司に言われてやってるんだ。それより,ハルトマンは200超えたんだろ?」
ハルトマン「まあね」
654
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:35:30 ID:LpmSyaQg0
君が聞いた様な事はもう起きないよ。と得意げに胸を張る
君が聞いた様な事とは,初出撃の話だろうか
だとしたら胸を張れる事でも無い気がするが
俺「いや,うん。まあ,頼もしいな。出来れば俺が仕上がるまで頑張って欲しい物だ」
ハルトマン「出来上がる?」
俺「ああ。俺はまだ――」
そこまで言った所で,慌しくドアが開け放たれる
バルクホルン「ハルトマンが居ないんだ! 誰か知らないか!?」
ハルトマン「え? ここに居るけど?」
ハルトマンがひらひらと手を振ると,バルクホルンがその場にへたりこむ
どうやら,かなり急いで探していたらしい
俺「お早う,バルクホルン。どうしたよ?」
バルクホルン「い,いえ。すこし,用事を思い出しただけで。少佐は,お気になさらず」
そう言って言葉を濁すと,軽く苦笑いする
こう言う時は,追求しない方が良い
655
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:39:07 ID:LpmSyaQg0
ハルトマン「あー。そりゃ,いつもは昼近くまで寝てるからね。どこでも寝てないって探してたんでしょ」
他人事みたいに言うと,顔を雑誌の方に戻す
どうやら,バルクホルンは,その事実を隠す為に言葉を濁したらしい
俺にはどうだって良いが,彼女はそれが大切な事だったらしく,怒りを顕わにした
まあ,彼女にも色々有るのだろう
バルクホルン「ハルトマン貴様……」
俺「な,なあ。そんな怒ってどうしたよ……別に仕事さえやれば昼まで寝てても問題なかろう?」
バルクホルン「それだけなら! 百歩譲って! 良いとしても!」
良いのか
バルクホルン「部屋は汚いわだらしないわで! 挙句の果てには少佐にまで……」
知られちゃならん程か
其処まで言われると気になる
656
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:42:14 ID:LpmSyaQg0
俺「なあ,だらしないとかはどうにもできんとして,部屋の片付け位は手伝うぞ? 無論,無理にとは言わんが……」
ハルトマン「良いの?」
俺「ああ。部屋の片付くらい俺とハルトマンでやればすぐだろ?」
ハルトマン「…………」
バルクホルン「…………えっと」
ハルトマン「……そうだね! じゃあ,お願いしても良いかな?」
今の不穏さしか無い沈黙をねじ伏せ,ハルトマンがにこりと笑う
俺「あの,汚いってどの位?」
ハルトマン「そこそこ?」
657
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:45:38 ID:LpmSyaQg0
既にバルクホルンはうつむいて黙りきっている
にぎやかだった食卓も,事のなりゆきを見守る様に,静寂に包まれていた
これはすぐには終わらない気がする……!
俺「ハルトマン」
ハルトマン「んい?」
俺「すぐに始めるぞ」
この時点で,今の俺には不安しか無かった
658
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:51:43 ID:LpmSyaQg0
少佐は,フラウの部屋に入るなり顔色一つ変えずに片付けを始めた
普通驚いたりするものなのだが。と思いつつ,私も参加する
そう言えば,何故フラウは少佐の申し出を受け入れたのだろうか
ハルトマン「知り合いなんだ。昔ウーシュが遊んでもらってて」
俺「まあ,知り合いと言っても顔を知ってる程度だけど」
口に出ていたのか,フラウが私の疑問に答える
まあ,少佐はカールスラント人だから何かの縁で知り合うのも不思議ではないのかもしれない
しかし,あのウルスラが少佐と遊んでもらっていたと言うのは少し以外だった
バルクホルン「少佐はどこでウルスラと知り合ったんですか?」
俺「本屋。ブリタニア語教えて欲しいっていわれてな」
ハルトマン「そうそう。それで教える方もお人よしだけどね」
ああ,そうか。それなら納得できる
確かに,俺少佐はブリタニア人らしい顔立ちをしていた
659
:
鋼な俺
:2015/09/11(金) 03:54:52 ID:LpmSyaQg0
今回は以上で
660
:
名無しさん
:2015/09/12(土) 20:34:28 ID:A8Ah7DAQ0
乙乙
661
:
名無しさん
:2015/12/26(土) 18:37:22 ID:CqmkQtuw0
荒らされて以来久しぶりに来たけど最近は落ち着いたみたい?
来年はブレイブウィッチーズ楽しみですね
662
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:28:51 ID:UhXOn5zA0
おひさしぶりです。時間が開いて申し訳ありません。投下します
663
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:31:54 ID:UhXOn5zA0
眼下には海。それより少し手前に6つ。人間の戦闘機にも似た怪異が編隊を組んで進んでいた
背後からは太陽が昇りつつある
俺「敵機6視認! 10……から12m位の戦闘機にも似た形だ! 速度は400! 高度は5000! 南東から基地の方角に向かっている。いつもの定期便だろう。迎撃する。よろしいな?」
ミーナ『ええ,お願いします。取りこぼしても此方から十分に迎撃可能な範囲ですので無理はしない様お願いします』
俺「了解。そう言う事だ,シャーリー,ルッキーニ。燃料的にも十分余裕は有るが,俺は泳げん。手早く片付けよう。シャーリー。戦闘の指揮は予定通り君が執ってくれ」
シャーリー『了解』
出撃前に打ち合わせで,戦闘時の指揮権をイェーガーに渡すと言った時はシャーリーに猛反対された。だが,戦闘直前にもなると,流石に腹を決めたらしい
ルッキーニ『泳げないの? じゃあ,あれやらされるかな?』
俺「あれ?」
ルッキーニ『知らないの? ストライカーの模型履かされて海に入れってやつ』
そんな拷問めいた事をさせられるなんて知らなかった
俺「……ガランドめ……聴いてないぞそんなの」
シャーリー『まあまあ。みんなやってるしさ。じゃあ,さっきの打ち合わせの通りに』
664
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:35:00 ID:UhXOn5zA0
シャーリー軽く手を振り敵の編隊目掛けて降下する。それに少し遅れてルッキーニが降下を始める
ああ言う形をしたネウロイは一般的に前方への攻撃力が高いとされる為,それに習い初撃は反撃の危険の少ない一番後方に加える
後方上面から降下して一撃,直ぐに上昇,離脱した所に二人目がもう一撃
退屈ではあるが,確実かつこの数の差をひっくり返せる戦術として最も有効な物だった
BARの曳光弾が最後部のネウロイに突き刺さり,装甲を穴だらけにする
続いてルッキーニが止めを刺す
敵の編隊が散開し,追撃しようと上昇する。意外と反応が早かったが,どの敵もそもそもの速度が足りず,射程に収められない様だ
あれなら援護は必要無さそうだ
俺「シャーリー,ルッキーニ。お見事! 敵の反応が少々早いが,あれなら想定範囲内だろう!」
シャーリー『なら良かった。じゃあ予定通り,私が上空待機する』
俺「頼む。ルッキーニ!」
ルッキーニ『了解!』
665
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:38:14 ID:UhXOn5zA0
どうやら敵はロッテとケッテに分かれてカバーしあう積もりらしい。だが,どうしても数の多いケッテは動きが鈍く,数の少ないロッテは捕らえられた時の危険が少ない。ここはケッテで一番後ろに着いている機を狙うのが良いだろう
俺「ルッキーニ。ケッテの最後尾。通り抜ける前に上昇。良いな? 行くぞ!」
返事も聞かずに降下を始める
基本的には敵はまっすぐ進んでいるので距離600辺りから射撃ができる筈だ
同高度での格闘戦では照準からからはみ出るまで近付けと言うが,今の様な一撃離脱でそれをやると射撃時間が極端に短くなってしまう
MG151/20を構え直し,目標を照準内に収める
距離はあと1000もない
少し銃身をずらし,目標の未来位置に合わせる
真後ろから降下したお陰で,偏差はそこまで難しくない
距離は更に近付き,700を切る
息を大きく吸い,引き金を引く
目標が直前に軽く回避行動を取るが,もう遅い
5発に一発の割合で入っている緑の曳光弾が目標に吸い込まれ,装甲を削る
すぐに敵は照準いっぱいまで近付く
666
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:41:35 ID:UhXOn5zA0
射撃を切り上げ,敵の真上を通らない様斜め上に向かい上昇を開始すると,前方に少し距離を置き,ロッテを組んだ敵が向かってくるのが見える。しかし,それもシャーリーが危険と判断すれば攻撃を加えるので,あまり脅威にはならないだろう
後ろを振り向くと先ほど攻撃した目標が白い破片となって散って行くのが見える
撃破したルッキーニはロッテを組んだ敵に捕捉されかけていたが,上空からシャーリーがバラ撒いた弾にビビってすぐに追撃を諦めた様だ
シャーリー『ナイスキル』
俺「よし。このまま行けば……!」
667
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:45:01 ID:UhXOn5zA0
「作戦終了との事です! ネット用意! ラック準備急げ!」
内線を取った整備士がそう声を張り上げるとのんびりしていた整備士は慌しく動き出し,忙しそうにしていた整備士はもっと忙しそうに動き回る
滑走路から格納庫に入って少しの所にネットが張られる
俺はウィッチになってからの殆どの時間を広いアフリカで過ごしていたらしい。なので,501の様な基地での着陸は少々慣れないとの事で,整備士にオーバーラン防止用ネットを頼んだらしい
トゥルーデ「少佐がアフリカに居たなんてな。その前はスオムスに居たらしいし。流石はガランド少将のお気に入りと言う事か」
手に持っていたコーラをトゥルーデが後ろから取り上げ,口を付ける
エーリカ「撤退戦の頃はそんな風に考えられなかったって?」
トゥルーデ「ああ。で,どうだった?」
エーリカ「スオムスの後一週間の空白期間が有って空軍の非ウィッチ航空隊に1ヶ月。その後アフリカに転属して1週間。そして501に着任。あと,元々彼は陸軍の人間だったのに,原隊は空軍管轄の部隊とされている。これ以上はここで調べても解らないと思う。ウルスラに頼む?」
トゥルーデ「いや,良い。本来関係の無い事だ。放って置くのが安全だろう」
そう言って私の横に中身の詰まったコーラの瓶を置く
668
:
鋼な俺
:2016/01/13(水) 02:48:05 ID:UhXOn5zA0
エーリカ「んあ……んッ! でも,少し気になるんだよね。何があって空軍の原隊になっているか。とか,そもそもガランド少将がどうやって彼と知り合ったかとか」
トゥルーデ「歯で開けるなよ……まあ,確かにそうだが。知ってどうする?」
エーリカ「ああ,興味が有るだけだよ」
トゥルーデ「珍しいな。お前が」
エーリカ「そりゃね。だってウルスラを振ったんだよ?」
トゥルーデ「はぁ!?」
669
:
名無しさん
:2016/01/23(土) 02:23:40 ID:PD6re2B60
しえん
670
:
名無しさん
:2016/01/25(月) 22:28:58 ID:6Xw7UFbo0
とりあえず乙でいいのかな
676
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 05:24:14 ID:DBNn8d3A0
(新年)初投下です
夜の帳が引き上げられ、東の空がうっすらと白みがかる頃。
全身を凍り付ける空気が蔓延するウィッチ用宿舎の通路を、女が一人歩いていた。
割り当てられた自室を出てから、一分もかからない距離を歩く智子は白い頬を赤らめ、とある一室の前で立ち止まった。
そわそわと身体を動かす様から彼女の頬に差し込む赤みが、寒さによるものだけではないことが伺える。
黒真珠を思わせる双眸は潤んだ光を帯び、その奥底に宿る光は嬉々とした色を孕んでいた。
熱の篭った吐息を零し、智子は古ぼけた扉に伸ばした手を、不意に胸元へと引き戻す。
そうしてまた、躊躇いながら扉に手を伸ばしては、胸元に戻すといった動作を何度も繰り返す。
視線の先に立つのは、廊下と目の前の部屋とを隔てる古めかしい扉。
その先で、今もまだ寝息を立てている部屋の主は、昨日再会を果たした彼。
昨夜は同じ布団で寝ることを断られたため、消灯時刻が近づいたことを理由に部屋から追い出されたが、今日は違う。
時間が許す限り――それこそ一日中彼の傍にいることも、話をすることも出来る。
そのことが嬉しくて、嬉しくて。
逸る気持ちを抑え切れず、早朝から足を運んだ智子であったが、この後の行動を決めあぐねていた。
677
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 05:28:35 ID:DBNn8d3A0
どんな言葉をかけながら、彼を起こせばいいのだろうか。
どんな笑顔を浮かべると、寝起きの彼には魅力的に映るだろうか。
頭の中に浮かび上がるのは、寝ている彼を起こす自分の姿。
あの日彼を喪った後も、妄想のなかで幾度も繰り返してきた、愛しい男性を起こす場面。
しかしいざ実際にその場面に直面してみると、あれやこれやと考えが浮かび、上手くまとまらない。
それでも悩んでいては何も変わらない。智子は思考を切り替える。
成長した彼の無防備な寝顔はどう変わっているのか。寝起きの癖は変わらないままなのか。相変わらず寒さに弱いのか。
七年以上経った彼の寝顔や、寝起きの姿を早く見たいという気持ちを原動力に。
意を決し、冷気によって冷やされた扉を数回ノックする。
返事はない。物音も、聞こえない。
智子「俺? もう起きてる?」
今度はノックの回数を増やし、声もかけてみる。やはり返事はない。
起床時刻前なのだから寝ていて当然かと思いつつ、智子は恐る恐るドアノブを握り、回してみる。
鍵はかかっていない。
部屋の主を起こさぬよう、音を立てずにドアを開けて室内へと足を踏み入れる。
無用心だと思うよりも先に、弾む気持ちが彼女を突き動かしていた。
678
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 05:31:55 ID:DBNn8d3A0
智子「……は、入るわよぉ?」
暗闇に慣れていくに連れて、徐々に部屋の全体図が明瞭となる。
薄暗い部屋のなか、ベッドの上では部屋の主を寒さから守るかのように、幾重にも折り重なった布団が鎮座していた。
それらに守られ、徐に身体を上下させながら寝息を立てる想い人の影を捉えた途端、智子の頬に差し込む赤みがその色を濃くしていった。
寝ている彼を起こさないよう、後ろ手にドアを閉め、足音殺してベッドに近づく。
一歩進む毎に、胸の高鳴りが激しいものへと変わっていく様を感じながら。
智子「俺? もうすぐ起床時間よ?」
これでは寝顔が見られないではないかと不満を零しつつ、自分に背を向ける部屋の主に柔らかな声音で語りかける。
当然の如く返事は無い。
自身の声に反応して時折、布団に包まれた体躯が布擦れの音を立てて動くだけだ。
智子「ねぇ、俺?」
もう一度呼びかける。今度は布団の上に手を添えて、軽く揺すってみる。
布団越しに彼の身体に触れた瞬間、不意に昨日の記憶が――逞しい成人男性の体躯に成長した彼に抱き留められた記憶が浮かび上がった。
温かく硬い胸板と腕に抱き留められた感触までもが肌の上に蘇り、頬に帯びた熱が際限なく高まっていく。
679
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 05:34:59 ID:DBNn8d3A0
智子「はぁ……」
形の良い桃色の唇から、熱が篭った吐息が零れ落ちる。
願わくは、またあの頃のように彼の胸元に顔を埋めて眠りに就きたい。
彼の腕に包まれ、その温もりを感じながら、まどろんでいたい。
いいや、出来るものなら彼に覆い被さる布団になりたい。
包まれるだけでなく、今度は自分が彼を包みこんで、癒してあげたい。
こんな布切れよりも、自分の身体のほうが彼を温められるはずだ。
いっそのこと布団を引き剥がして抱きついてみようかと、思考が徐々に危険な領域に足を踏み入れた矢先のこと。
「……ん」
智子「……ぁ」
布が擦れる音を立てて、部屋の主が寝返りを打った。
露となったのは、久方ぶりに目にする想い人の寝顔だった。
もう二度と、目にすることが出来ないと思っていた愛しい男の寝顔だった。
その安らかな寝顔から、改めて彼が生きている現実を実感した智子は、目元に込み上げてきた雫を拭い顔を近づける。
これくらい近くから見つめてもいいわよねと、返す相手のいない言葉を零しながら。
680
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 05:38:09 ID:DBNn8d3A0
智子「……おれ」
温もりが感じられる距離まで、顔を近づける。すぐ目の前まで、それこそ唇同士が触れ合う寸前の距離にまで。
寝息が頬をくすぐる。その温もりが智子の全身を、芯から温めていく。
このまま時間が止まれば、いつまでも彼の傍にいられるのに。
叶わぬ願いを抱く智子の目の前で、寝顔を晒す男の瞼が不意に強張った。
ベッドの上で横たわる彼の長躯が、布団の山が、微かに震えた。
智子「……あら?」
その寝顔から離れた智子の目に映ったものは、布団からはみ出した彼の下半身だった。
おそらくは寝返りを打った際に、掛け布団を蹴飛ばしてしまったのだろう。
智子「(身体を壊さないうちに、戻したほうがいいわよね)」
視界の隅で何かが蠢いたのは、皺になった掛け布団を掴んだときのことだ。
形の良い眉を顰め、視線を移す。“それ”を捉えた瞬間、智子の全身が硬直した。
視線の先に佇む彼の下半身――その、ある一点。
ちょうど股座に当たる部分が、異様なまでに盛り上がっているではないか。
あたかもテントを張るが如く、棒状の物体が布地を押し上げる光景を前に、智子の白い喉が音を立てた。
681
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 05:41:33 ID:DBNn8d3A0
智子「あ、わ……わ」
隆起の正体が想い人の盛り上がった男性器だと理解した瞬間、智子は自身の頬がそれまでとは比にならぬほどの灼熱を帯びる様を感じた。
智子「(あ、あああああ、あれよね!? 朝に起こる、生理現象のようなものよね!?)」
初めて目にする、朝勃ちという男性特有の生理現象。
恋慕の念を寄せる相手の逸物は、布地の下からでも形状が分かるほどに雄々しく反り立っていた。
再び智子の喉が、静かに音を立てた。
自然と呼吸が、荒いものへと変わっていく。
視界から外そうにも、目線を逸らすことが出来ない。
それどころか、手が自然と、彼のモノへと伸び始める。
智子「はぁっ……はぁっ……はーっ」
頭のなかに靄のようなものが広がり、それが冷静さと理性を覆い尽くす。
智子の脳裏を駆け巡り、支配していたのは女としての衝動。
妄想のなかで何度も自身の純潔を散らした彼の雄。それが、いま目の前にある。
――どれくらい硬いのだろう。
――どれくらい熱いのだろう。
――触りたい。
――見たい。
――欲しい。
682
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 05:46:56 ID:DBNn8d3A0
肥大する衝動に比例して、激しさを増す心臓の高鳴り。
一秒が永遠にも感じられるなか、遂に智子の白い指先が、それへと触れた。
指の先端に伝わる熱と硬さを感じた瞬間、智子は頭を槌で殴られたかのように、脳が揺れる感覚を抱いた。
布越しだというのに、こんなにも熱いのか。こんなにも硬いものなのか。
もはやこれ以上、正常な思考を働かせることができなかった。
そのまま残る細指を、牡竿に這わせようと動かす寸前、我に返り瞼を閉じて彼の逸物を下半身ごと布団で覆い隠す。
智子「わ、わたし……何てことを……」
薄桜色の唇から漏れ出す声音に満ちていたのは、怯えの感情。
自身に潜む雌が、自分でも気がつかぬ内に膨れ上がっていた。
もしも理性が戻ることなく、あのまま指を這わせていたらどうなるのだろう。
もしもそれで彼が目を覚ましたら、どうなっていただろう。
きっと、寝込みを襲った女と軽蔑されるに違いない。
また会えただけでも、充分に幸せだったというのに。
いつの間にか、次の欲求が――彼だけの女(もの)になりたいという願いが生まれていることに。
その欲求すら抑え込めない、自身の弱さに智子は唇を噛んだ。
智子「ごめんなさい……」
自分だけが独り、抜け駆けをしていることをかつての仲間たちに向かって。
そして、勝手に部屋に入り込んだことを目の前で寝息を立てる彼に向かって。
小さく謝罪の言葉を漏らした智子は、自身の黒髪をかき上げて、静かに男の寝顔に顔を寄せる。
せめて彼が目を覚ますまで、間近で見つめていたい。
あわや再び唇同士が触れ合う寸前の距離まで近づいた瞬間、想い人が唐突に瞼を開けた。
683
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 05:50:09 ID:DBNn8d3A0
普段なら目を覚ましてから、思考が働くまでに数分の時間を要する。
けれども、今回ばかりは状況が異なっていた。
瞼を開けた先の視界を占めるのは、見慣れた天井ではなく、息が止まるほどの美貌。
西欧人のそれとはまた異なる柔肌は、雪のように白く。
目にしただけで手触りの良さを期待させる黒の長髪は、漆を思わせるほどの艶を帯びている。
黒真珠を覆い隠す瞼から伸びる睫は、どこか羞恥に耐えるかのように、小刻みに震えていた。
そして、あと少しで自身のそれに触れる距離まで肉薄していたのは、形良い桜色の唇だった。
自身の視界を独占する美貌の主が、昨日に再会を果たした穴拭智子だと気がついた瞬間、俺は息を呑んだ。
俺「(な、何だ!? なんで智子が俺の部屋に!?)」
何故、智子が自分の部屋に入り込んでいるのだろうか。
何故、智子の唇が自身のそれに近づいているのか。
次々と疑問が脳裏を駆け巡るも、それらは眼前に迫る美貌によって、すぐさま掻き消されてしまう。
静止の声をかけようにも、僅かでも身体を動かせば彼女の唇を奪いかねない。
だというのに、智子になら唇を奪われても構わないと思ってしまっているのは。
彼女の黒髪から発せられる仄かに甘い薫香にばかり意識を向けてしまっているのは、男としての悲しい性なのか。
かといって、このような形で大切な妹分の――智子の初めてを奪うわけにもいくまい。
何とか首だけでも動かして彼女の唇が、自身のそれに触れないよう体勢を変える。
その際に生じた微かな布擦れの音に気がついたのか、智子が瞼を開いた。
お互いの瞳を見つめ合う時間が続き、
684
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 05:54:41 ID:DBNn8d3A0
智子「え? あ、あ……わ……」
俺「よ、よぉ。おはよう……智子」
再会してから、初めて間近で見る彼女の面差しが次第に赤みを増していった。
段々と黒い瞳には透明な雫が滲み出てきた。
そして、感情の高まりを抑え切れなくなったのか。
言葉にならない叫び声が、室内に響き渡った。
智子「ち、違うのよ!? ここここ、これはぁ! ちょっと貴方の髪の毛に埃がついてたから、取ろうと思ってたたたた、だけなのよ!?」
整った美貌を高潮させ、涙まで浮かべて、機銃掃射もかくやの勢いで言い訳を並べ立てる妹分の姿に俺は口元を綻ばせた。
随分と昔にも、こんな風に似たような言い訳を聞かされたことがあったな――と胸裏で独りごちながら。
どれだけ見目麗しく成長しても、あの頃と変わらぬ智子が目の前にいる。
自分が、自分だけが知っている智子が、そこにいる。
そのことに、愛おしさと懐かしさが混じる感慨を抱いた俺は、自然と彼女の頬に手を添えていた。
智子「あっ……」
頬を触れられ、ほんの一瞬だけ身体を強張らせたものの、すぐさま力を抜いて瞼を閉じる。
その手の温もりに、優しさに身を委ねるかのように。
安らぎに満ちた表情が、智子を彩った。
685
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 05:57:53 ID:DBNn8d3A0
俺「俺のこと、起こしに来てくれたんだよな?」
智子「……うん」
瞼を閉じたままの智子が小さく頷いてみせると俺は静かに破顔した。
手の平を満たす倫子の頬の柔らかさを感じながら。
俺「そっかそっか。ありがとうな、智子」
智子「その、迷惑……だった?」
俺「まさか。俺が寒さに弱いの知っているだろう?」
だから気にするなと笑い飛ばすも、彼女に笑みが戻ることはなかった。
おそらく昨晩、寝床を共にしたいという願いを拒否されたことが智子のなかで尾を引いているのだろう。
俺としては大人の女へと成長した妹分を襲わぬための防衛手段だったのだが、自身を兄貴分として慕う智子は、甘えたかったのかもしれない。
再会するまで智子のなかで自分は死んだ人間だったのだ。
そんな自分とまた巡り会えたことを考えると、些か大人気ない対応だったか。
俺「(もう少し構ってやれば良かったか)」
放っておけば朝食まで昨夜のことを引き摺るかもしれない。
俺は考えを巡らせる。
時間にして一分にも満たない短い間黙考を続け、素直に思いの丈を吐露することを決めた。
686
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 06:00:57 ID:DBNn8d3A0
俺「あー……智子?」
智子「……なに?」
俺「その、だな。別にお前と一緒にいるのが、嫌なわけじゃないんだぞ? 俺だって……お前にまた会えて嬉しいんだ」
段々と声音が尻すぼみになっていく。
それはきっと、これから紡ぐ台詞が自分でも気障なものだと自覚しているからだろう。
次第に頬が、耳が熱くなっていく様を実感しながら、俺は尚も言葉を続ける。
俺「……ただ、な。お前が綺麗に成長し過ぎて……傍にいると何というか、凄く落ち着かないだけなんだよ」
告げられた台詞に智子は目を丸くした。
小さく口を開け放ち、こちらを見つめる美貌。
思わず心臓が跳ね上がる感覚を抱くも、俺はすぐさま口を開く。
俺「黒髪も……その、陸軍にいた頃と違って艶があるし」
智子「え……あ。そう、かしら?」
言われて、肩から流れる自身の黒髪に手を遣る智子。
形の良い唇は心なしか綻んでみえた。
俺「肌も、あの頃と同じように……いや。あの頃以上にきめ細かくて」
智子「……あ、あぅ」
俺「体つきだって……その、なんだ。ちゃんと大人のそれになってるからさ」
一瞬だけ、彼女の陸軍服を下から押し上げる二つの膨らみに視線を注ぎ、すぐさま逸らす。
687
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 06:04:43 ID:DBNn8d3A0
智子「そ、それって!!」
弾け飛んだ言葉に続いて智子が身を乗り出した。
俺「う、うん?」
智子「私のことをその、女として……見ているって、ことで……いい、のよね?」
自身のシャツを両の手の指でぎゅっと握り締めながら、真っ直ぐに自分を見つめてくる智子の言葉に俺は首肯した。
途端に智子の頬に朱色が戻る。形の良い唇が更に綻んでいく。
俺「……ぁ」
思わず、声が漏れた。
自分でも、それが声なのだと遅れて気がつくほどの小さな声だった。
智子「そう……なの。っふふ……そう、なんだ」
花が咲いたような笑み――という言葉は、きっと今の智子が浮かべる笑顔を差しているのだろう。
嬉しさと、喜びに満ち溢れた微笑みを前に俺は思う。
この笑顔を、いつまでも見つめていたい。
いつまでも、愛でていたい。
智子「朝からごめんなさい。先に行って待っているから……早く、来てね?」
想い人が自身の笑みに魅了されていることに気づかぬまま、智子は寝台から下りる。
そうするや否や身を翻し、小走りで部屋を出て行った。
688
:
衝撃波
:2016/06/22(水) 06:11:05 ID:DBNn8d3A0
俺「智子……」
部屋を出て行く智子の後姿に、返事すら返せないでいた俺は重々しい音によってようやく我に返った。
頬が熱い。胸の辺りから響く鼓動が、やけに煩く感じる。
俺は口を開いて肺一杯に溜め込んだ空気を、大きく吐き出した。
気恥ずかしさを含めたあらゆる感情と一緒に。
俺「あぁ……まずいな」
寝癖のついた髪に遣った手を乱暴に動かす。
俺「ありゃ反則だろう」
彼女の笑みに、俺は心奪われていた。
微笑み一つで奪われるとは随分と安い心だなと自嘲しつつ、今後について思案に耽る。
妹分である智子を女として意識してしまっている自分は、どう彼女と関わっていけばいいのだろうか。
彼女が慕う兄貴分として振舞えるだろうか。
次に彼女と顔を合わせるとき、この気持ちを封じ込めておけるだろうか。
どちらも、やり遂げる自信がなかった。
更には幹部会も近い内に開かれる。
腹に一物抱えた魑魅魍魎どもに足元を掬われぬよう振舞わなければならない。
表と裏の二つとも多難に満ちている現状に、俺は再び深く溜息を吐いた。
689
:
名無しさん
:2016/06/22(水) 06:14:22 ID:DBNn8d3A0
今日はここまで
それにしても大雨程度で川の堤防が決壊するとは
690
:
名無しさん
:2016/06/23(木) 15:28:28 ID:ot9GkTTk0
なんたるムッツリスケベ (女の方が)
けど、実際智changはもし男ができたら絶対どハマりするよね……
ともあれ乙乙
いらん子は作者がハルキゲニアに旅立ってしまわれたのが残念極まるなぁ
691
:
名無しさん
:2016/06/26(日) 17:28:22 ID:ujCJex8s0
乙乙
692
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:25:34 ID:sB6VQk8Q0
新作です。
19XX年、某日、帝政カールスラント。
初夏の太陽が、南の空へと移りつつある。
穏やかな風が、微かに花の香りを運んでいる。
街の教会から、鐘の音が厳かに響く。
扉が開く。礼装の紳士達、華やかに着飾った乙女らが笑みをかわしながら現れる。
彼らは扉の外に集まり、これから出てくる主役を待ち構えている。そよ風に乗って、楽しげな喧騒が届く。
やがて、一際大きな歓声が上がり、
教会の入り口に眩しいほど真っ白なタキシード、ウェディングドレスに身を包んだ新郎・新婦が現れた。
平和なよき日。怪異、ネウロイとの戦争に勝ち、ようやく手に入れた平穏。
だから、今まで誰にも話したことのない話をしよう。
俺とクルト、そしてミーナの話だ。
693
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:30:33 ID:sB6VQk8Q0
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケとクルト・クラッハフェルト、そして俺の3人は幼なじみだ。
音楽がきっかけで、俺たちは出会った。
1934年、春。
俺がその日、何をしててそこに行き着いたのかは覚えていない。確か路地裏を散歩だか探険だかしてたんだがだと思うんだが……。
当時俺は、いわゆるガキ大将だった。擦り切れたズボンのポケットに一切れのパンを突っ込んで、朝から晩まで街の裏道や野原を駆けずり回って……
まぁ、どうでもいいか。
とにかく、俺はその日ヴィルケ家の近くにいて、そこで音楽を聞いた。
弦楽器の音色と、微かなソプラノヴォイス。行く手にあった家の、ちょっとした庭園の奥の窓からだった。
俺はぶらぶらと庭園を横切って (悪ガキだったので平気で他人の家の敷地を横切った) 、ほんとうに何の気なしに、窓から声を掛けた。
「へい」
中にいたのは、俺と似たような年頃の少年と、少し年下と見える女の子の二人だった。
少年はヴァイオリンを提げていて、女の子は手ぶら。二人でひとつの譜面台の前で練習をしていたらしい。
二人は急に、しかも窓の外から声を掛けられて、びっくりして演奏をやめてしまっていた。
694
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:35:51 ID:sB6VQk8Q0
少年は柔らかそうなフランネルの白いシャツ、膝丈の紺のズボンをサスペンダーで吊っていた。女の子は胸元にフリルをあしらった淡い桃色のワンピース。
一目でいいところのお坊ちゃんお嬢ちゃんと知れるなりだ。
対して俺は、擦り切れてつぎのあたったズボンと、お袋が毎日洗濯してくれてたから色だけは真っ白だが肌触りはガサガサの麻シャツに、くたびれたハンチング帽。
普段なら、声を掛けたり掛けられたりなんて絶対にありえない相手だ。ただ、彼らが演奏していた音楽について、俺はひとつ我慢ならないことがあった。
俺は窓枠に手をかけながら言った。
「お前ら中々上手いな!だが選曲がなってねぇ。そんな黴臭い音じゃジジィどもしか悦ばないぜ?」
「だ、誰ですか」
そして少年の (当然の) 問いを無視して、ヒョイと窓枠を乗り越え部屋に滑り込んだ。
そこは楽器室だった。ヴァイオリンやギター数丁と、その頃は名前も知らなかった金管楽器。ニスと木材の匂い。
少年は庇うように俺と女の子の間に立った。女の子は少年の服の裾を握って、身体を少年の後ろに隠すようにして、俺を見ていた。
二人ともいきなり上がりこんできた俺を警戒していたのだろう。
あとで知ったが、俺は少年と同い年で、当然ながらそのときは同じガキ同士だった。
だが線の細いタイプだったその少年と比べて、俺はガキながら大柄な方だったし、物言いも腕白だった。
そんなのがズカズカ入ってきたのだから、特に女の子が怯えるのは無理もない話だ。
695
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:42:12 ID:sB6VQk8Q0
俺はそんな彼女の不安に全く気づかず (もっとも、気づいていたところで配慮するようなデリカシーもなかったが) 無遠慮に室内をじろじろ見て回り、目当てのものを見つけた。
磨き上げられたグランド・ピアノ。毛ほどの躊躇いも見せず歩み寄る。女の子が声をかけてくる。
「それ、お父様のピアノ……」
だから触ってはだめ、とはっきり言えはしなかったにせよ、その子の口調は俺を咎める色を含んでいた。
だが俺はそんな控えめな抗議を無視して、勝手に鍵盤蓋を開け、2つ3つ鍵盤を叩いて具合を確かめた。
さすがに見かねた少年が声をかけてきた。
「ちょっと、君――」
俺はチッチッチッ、と気取った仕草で指を振り、それを遮った。
「本物の音楽ってのはこういうもんだ」
鍵盤上で俺の指が踊った。跳ねるようなタッチから、肘ごと押さえ込む重音。
二人ともが一瞬呆気に取られる。
「シュレーゲ・ムジーグ (ジャズ・ミュージック) ?」
少年が呟く。見た目からは、俺の繊細な指捌きが想像できなかったんだろう。二人とも目を丸くしていた。
696
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:48:28 ID:sB6VQk8Q0
俺は酒場つきの宿屋の息子で、酒場の喧騒を子守唄代わりに育ってきた。
酔っ払いのたわ言、喧嘩の怒号、大声の合唱、そして何より、良識ある大人たちが「騒々しい」と形容し眉をひそめる、素晴らしい音楽の数々。
6つの時分には、俺はホールに据えてある年代もののピアノ、ギター、サックスで自分の好きな音を出せるようになっていた。
俺は即興で好きなように弾きながら、まだヴァイオリンを下げたままの少年に話しかけた。
「ほれ、どうしたよ。合わせてみな」
少年は一瞬躊躇ったが、それでも促されるままにヴァイオリンを構えなおした。俺は手を止めずに、入ってくるに任せる。
最初は恐る恐る来るかと思ったが、意外にやつは大胆に参戦してきた。
跳ねる高音、流れる低音、スウィング、スウィング、スウィング。
いつの間にか女の子は、ピョンピョン身体を跳ねさせながら俺たちのセッションに聞き入っていた。
初めて聞いたのかは知らないが、心を揺さぶる本物の力が音楽にはある。
身体の奥からウズウズさせるテンポ、心躍る旋律。
それが、俺とクルトとミーナの出会いだった。
697
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:53:40 ID:sB6VQk8Q0
俺たちはすぐに仲良くなった。
ミーナは偉い先生の下で音楽の手ほどきを受け、お上品な音楽に飽きたときは俺たちとセッションを楽しんだ。
俺は店の手伝いをサボって、ミーナやクルトは音楽の先生の目を盗んで、たびたびこの秘密のギグは催された。
あるときはミーナの屋敷で。あるときは開店前の俺の店で。
俺は二人に秘密の抜け道とハゼが釣れるドブ川とガラクタいじりを教え、二人は俺に詩と読書と静かに語らう喜びを教えてくれた。
クルトが近所の悪タレどもに侮辱されたとき、俺が先にそいつらをぶん殴って大喧嘩になったこともある。
多勢に無勢ではあったが、俺もクルトも絶対に負けは認めなかった。
結局二人して傷だらけになって帰ることになり (勝敗は俺たちの名誉の為に伏せる) 、後で二人ともミーナにしこたま怒られた。一緒に絆創膏を貼ってもらいながら。
何年かの平和な時が過ぎた。少年たちは成長し、女の子は少女となった。
698
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 20:58:17 ID:sB6VQk8Q0
いつの頃からだろう。俺はミーナに惚れていた。
俺のピアノにあわせて歌う彼女を見ていたときからだろうか。
それとも、町外れの草原で、3人でピクニックをしたときからか、
喧嘩の傷に絆創膏を貼ってもらったときからかも知れない。
俺はミーナに惚れていた。
だが同時に、彼女がクルトに惚れていることにも気付いていた。
ミーナのクルトを見る目には、俺や他の誰を見るときとも違う光が宿っていた。
俺自身が彼女に恋をして初めて、俺はその光の正体に気が付いた。
ウジウジ悩むのは性に合わなかったし、『まぁクルトなら仕方ない』と俺はあっさり見切りをつけた。
……つけた、つもりになった。
きっと俺は隠し通せる。いずれ時期が来れば、ただのいい思い出になる。そのときそうは思った。
ただ、その『時期』が来るには、思ってたよりは長い……ずっと長い時間が必要だった。
699
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:03:44 ID:sB6VQk8Q0
そして戦争が始まった。
700
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:07:55 ID:sB6VQk8Q0
大昔から、人類の歴史にはしばしば怪異、ネウロイが出現してきた。
ただ、今回のネウロイの進攻は、これまでのものとは大きくその性質を異にしていた。
『進攻』。
ネウロイの出現にこんな言葉が使われたことはなかった。
これまでのネウロイはあくまでも謎の怪物、局地的な災害のようなもので、組織だった攻勢を仕掛けてくる存在ではなかった。
しかし1937年の扶桑海事変を皮切りに、連中は明らかに、戦争の論理でもって人類の領域を切り取り始めた。
そして1939年。俺たちの住む欧州は帝政カールスラント、その隣国オストマルクに大規模なネウロイの進攻があった。
その勢いは留めがたく、カールスラントに迫るのも遠くないと思われた。
ネウロイは、たとえ破壊できたとしても、瘴気をばら撒いて辺りを人間の住めない土地に変えてしまう。
ゆえに何としても、やつらを封じ込めなければならない。
帝政カールスラントでは軍備の拡張が急ピッチで進められていた。
701
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:14:06 ID:sB6VQk8Q0
3人の中で軍に最初に志願したのは俺だった。
オストマルクがきな臭いってんで、軍が兵を募ってたんだ。
腕っ節には自信があったし、おいおい親父の店を継いだときに、「元歴戦の勇者、今は酒場の主」ってのもカッコいいと思ったからな。
そして幸運にも、俺には戦士の素質、ウィッチの適性があった。
魔力を持ち、魔導エンジンを稼動させてストライカーユニットを動かすことができる異能。
ストライカーユニットはネウロイの攻撃や瘴気を防ぐシールドや、ウィッチ自身の身体能力を強化する機能を持つ。
ストライカーユニットを装着したウィッチは、空を駆け、あるいは地を走り、生身では到底扱えない重火器を軽々と振り回してネウロイと戦う、強力な戦力になる。
ウィッチの適性は、男に現れるのはすごく珍しい。
俺は陸軍で実施されてる適性検査を受けた。規則で男でも全員受検を義務付けられていたものだ。
「一応やっておくか」以上のものではなく、技師たちも機械的に結果を処理していた。
だから俺が機械に乗り、何らかの結果が出たとき、まず連中は首を傾げていた。
彼らは最初は怪訝そうに、やがて目の色を変えてあれこれ操作盤をいじりはじめ、結果を3度確認してようやく納得した。
俺はその週のうちに、陸戦型ストライカーユニットの操縦者となることが決まった。
最初の実戦で、敵中で瘴気に巻かれて孤立していた味方部隊を救出し、俺は鉄十字章を授与された。
クルトは喜んでくれたよ。
ミーナは、無茶をしすぎだと心配そうだったが。
その後、過酷で容赦のない訓練と、より過酷で容赦のない実戦を経て、俺はひとかどの陸戦ウィッチになっていった。
702
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:17:20 ID:sB6VQk8Q0
俺に次いで、ミーナに魔力が発現し、彼女は航空ウィッチに志願した。
航空学校への入学許可証を、誇らしげというよりむしろ申し訳なさそうに見せに来たのを良く覚えている。
クルトは反対したらしいが、俺は彼女の背中を押した。
勇気ある決断、立派な志である、と。一緒に戦えて嬉しいと。
そう、俺は心配よりも喜びが先に立った。
俺がもう少し内省的な人間だったら、俺の中の喜びの正体に気づいただろうか?
彼女と一緒に戦えるのが嬉しいのはもちろんだった。
ただ、俺はむしろ、彼女が俺と――クルトではなく――同じ道を、選んでくれたことで、クルトに対して密かな優越感を抱いていたのだ。
今なら、そうだったのだと分かる。
気づいていたとしたら、その後に起こったことが変わっただろうか。例えば、……いや、詮無い事か。
最後に、クルトも軍に志願した。
ミーナが志願したときから決めていたらしい。
703
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:23:52 ID:sB6VQk8Q0
軍に入ってから、俺たち3人が会う機会はかなり少なくなった。任務であちこちに移動したし、何せ戦時中だ。数少ない非番の日が重なることは少ない。
だから、その日3人が集まることができたのは奇跡的な偶然だった。
前線から少し離れた地方都市の貸しスタジオ。俺が一番最初に到着し、まずミーナを出迎えた。
他愛無い話をしていると、すぐにクルトがやってきた。ミーナが弾む声で出迎えた。
「よく3人とも都合がついたわね」
「ああ。俺は本当は夜までかかるはずだったんだが、思ったより人数が足りてたらしくてな。ミーナは?」
「私は、今度の作戦関係で少し近くに来てたの」
ミーナはそれ以上は言えない、というそぶりをして見せた。まぁそうだろう。一応は軍事機密だ。
秘密にしたところで、ネウロイにどれほど有効なのかは知らないが。
俺はクルトに話を振った。
「そっちの調子はどうなんだ?」
「毎日毎日、油に塗れてばかりさ」
クルトは首をすくめて見せた。クルトは資格を取って整備兵に志願し、先月から近くの基地で働いていた。
「ストライカーの整備兵って、競争率けっこう高いんだろ。ウィッチとお近づきになりたいって男どもが群がるらしいじゃないか」
「確かにそういう傾向はあるかもね」
「実際のところ、どうなんだ?かわいいウィッチと仲良くなれたか?」
「ええと……」
クルトは少し言葉を捜すように黙った。その視線が、ちらとミーナに向かったのを俺は見逃さなかった。
ミーナもまた、その逡巡を見逃さなかった。
704
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:29:55 ID:sB6VQk8Q0
「クルト、なんで言葉を濁すのかしら」
「ミーナ?いや、君が思うようなことはないよ?」
「私が何を想像してたか、分かるのかしら?」
ミーナは顔は微笑みながら、しかし静かな迫力を秘めた口調でクルトを追求している。
クルトはミーナに気圧されたように身を反らせながら、あれこれ言い訳していた。
俺はそんなミーナと一緒になってクルトをからかいながら、しかし同時に軽い苛立ちを感じていた。
ミーナとクルト、二人のやりとりが ――喧嘩しているように見えて単にじゃれあっているだけのやりとりが―― 酷く癇に障った。
俺から振った話題であり、この苛立ちは理不尽なものだ。それは百も承知であったのだが。
「だから、僕はそんなことしないよミーナ。」
「ええ、ええ。知っていますとも。でもね――」
「なぁ、二人とも。そろそろ一曲演らないか?」
俺はやや強引に話に割って入った。おもむろに立ち上がり、スタジオの隅にセットされている楽器類に歩み寄る。
「まだ早いんじゃない?」
「そうだよ。夜は長いんだし……」
言って、くすくすと笑うミーナとクルト。
俺は振り返る。
「いいから、始めるぞ」
ぼそっと、思ったより不機嫌な声が出た。二人の表情から笑みが消えた。
705
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:33:50 ID:sB6VQk8Q0
しまった、まずい。そんなつもりは。
俺は慌てて取り繕う。急いで焦っただけだという風に。
「ほ、ほら、借りてる時間にも限りがあるだろ?」
「え、ええ」
「……そうだね。始めようか」
二人もぎこちなく頷いた。
その日のセッションは、あまりいい出来ではなかった。
俺のリズムキープはやや乱暴になったし、クルトも何度か音を外していた。
歌うミーナがおろおろと困っているのが分かった。罪悪感を感じたが、どうにもならなかった。
706
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:41:33 ID:sB6VQk8Q0
■■■■
ネウロイは封じられねばならない。その目標とは裏腹に、人類は劣勢を強いられていた。
絶えざる瘴気と鉄火の攻勢により、人類はオストマルクから撤退せざるを得なくなった。やがては帝政カールスラントからも。
1940年。
「最も長い撤退戦」が始まった。
大ビフレスト作戦、そしてダイナモ作戦。
後方も予備もない、正真正銘の全力出動。
首都を失い、小ビフレスト作戦で避難し切れなかった民間人と、軍自身の撤退戦。
俺たちは祖国を捨てて逃げたのだ。
必ず奪い返しに来る。
俺は燃えるカールスラントを網膜に刻み付けてから、西へ向けて街道を走り始めた。
707
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:49:11 ID:sB6VQk8Q0
陸戦型ストライカー、「Ⅱ号歩行脚」の機関砲の砲身に一羽の鳩が止まっていた。
照準器の向こうを、多脚型のネウロイが移動している。
金属質の装甲で覆われたずんぐりとした立方体に近い車体に、同じく装甲で覆われた太い六本足。
全体的に左右対称で無機質な平面で覆われた体躯に、短砲身の主砲が唐突に突き出していて、それが前面なのだろうと推測できる。
俺達の部隊は200メートル程離れた茂みに伏せて、そいつらをじっと狙っている。
俺はこの撤退戦で、殿の部隊に居た。
カールスラント軍は民間人を前後に挟んだ編成となっている。
前方部隊がネウロイを追い払いながら、後方部隊がネウロイを押しとどめながら進む。
連合軍が、ダンケルクで港湾部の安全を確保した後、こちらに向かって進軍してくれているはずであり、
彼らと民間人を安全に合流させるのが当面の軍事目標だ。
ネウロイの追撃は厳しく、後方部隊は少なくない損害を出していた。
しかしそれでも、最後尾に位置していた俺達の部隊は、寡兵ながら遅滞戦闘でよく粘っていた。
道は斜めに俺の前を横切っている。
あと少しで敵部隊は完全に俺達のキルゾーンにおさまる。あと少し。あとほんの数十メートル。
目標の左右軸の移動に合わせて、じりじりと狙いを修正する。
その僅かな振動が砲身に伝わり、鳩が飛び立った。
一両のネウロイが、僅かに砲身をこちらに向けたような気がした。
背筋を嫌な汗が伝った。
708
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 21:55:21 ID:sB6VQk8Q0
ネウロイに目はあるのだろうか。人間の目は動くものに特に注意を払う。
同じような茂みがいくつかあり、その中の一つから鳩が飛び立った。人間なら無意識にそこに注目するだろう。
ネウロイはどうだろう。ここで伏撃を狙う俺に気づいただろうか?
ネウロイには人間のような目はついていない。しかし恐らく光を感じるセンサーはあるのだろう。
俺は確かにその「視線」を感じた。
息を殺してそのネウロイの様子を窺う。耳の奥で血潮がごうごうと鳴っている。
敵部隊はまだ完全にキルゾーン内に進入していない。
いまだゆっくりと進行中……否、足を止めた。気づかれた!
「攻撃開始!」
号令が発せられるや、引き金を握りこむ。連続する轟音。伏せていた全車両が攻撃開始。
魔力強化された徹甲弾が、ネウロイの黒い平面装甲に突き刺さる。血が噴出すように火花が飛び散り、装甲が砕けていく。
視界の端で、ぱっと羽が散るのが見えた。
十字砲火を受けて、たちまち数両のネウロイが崩れ落ちた。生き残りが味方の残骸を盾にして反撃を開始する。
ウィッチのシールドは強力だが、さすがにネウロイの砲弾を正面から受け止めるのは危険を伴う。
そこで車体ごとシールドを傾け、斜めに受けて弾く。背筋が凍るような金属音。
鉄の焦げる匂い、瘴気と硝煙。振動、至近の着弾に舞い上がる土煙。空気を弾丸が切り裂く音、爆発音、エンジン音、怒号と悲鳴。
どちらかが死ぬまで続く、無様なセッション。
今回、最後まで生きていたのは俺たちの方だった。
709
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:02:07 ID:sB6VQk8Q0
「なんとか片付いたか」
汗をぬぐいながら呟く。奇襲が功を奏し、こちらの部隊の損害は軽微だった。
何両か被弾し履帯が外れていたが、修理すればすぐにでも移動を再開できるだろう。しかし急がなければ。
突出してきたネウロイをこうやって逐次始末しながら、俺たち自身も撤退しなければならない。大陸に置いてけぼりを食らったらことだ。
ふと見ると、足元に一羽の鳩の死骸があった。嘴から舌をだらんとたらし、血を吐いていた。
先ほどの戦闘で、発砲の衝撃を間近に受けたのだろう。ほんの偶然だ。偶然俺は生きて、こいつは死んだ。
この戦闘の当事者は俺のほうであったのに。
「……すまんな」
俺は小さくひとりごちた。
そのとき、す、と足元を影が走った。同時に空から響くエンジン音。再び背筋が粟立つのを感じながら、仰ぎ見る。
同じように空を見上げた兵士の一人が、悲鳴じみた声を上げた。戦車兵にとって、最も遭遇したくない敵がやってきた。
「ネウロイ攻撃機視認!」
「急降下爆撃が来るぞ!退避!」
もはや修理だの何だの言っている暇はない。全員が手近な動ける車両に掴まり飛び乗り、一目散に森に向かって走り出した。
空中の敵をどうにかする手段を、この戦車隊は持っていない。隠れてやり過ごす以外に手はない。
陸戦型ストライカーは戦車のように人間を乗せられないが、俺も自分の手で一人の兵士を掴み上げて (機関砲に比べれば大した重さじゃない) 履帯に巻き込まないよう注意しながら走った。
710
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:06:56 ID:sB6VQk8Q0
頭上から風切り音がする。サイレンの音にも似た、独特のエンジン音が響く。
急降下爆撃機型ネウロイは目標を定めると、地面に対して40度以上、場合によっては70度もの急角度で急降下し突入してくる。
単に目標の頭上を航過しながら爆弾を放り出すより狙いが付けやすく、また爆弾にもスピードが乗るので命中率も高い。
直撃すれば、いくらストライカーユニットで強化したウィッチのシールドといえど、ひとたまりもない。
戦車のみならず、地上洋上のヴィークルにとって、急降下爆撃機型のネウロイは最も身近な死神だ。
そして今、その鎌の切っ先が俺の首にかかっている。
木立は疎らで、ネウロイの狙いを十分に妨げてはくれない。
抱えている兵士が大声で何事かを喚いている。
放り出してやりたいが、スピードを落とすわけにはいかないし、後続の車両に轢かれてしまったら大変だ。とはいえ、爆撃でぶっとぶのとどっちがマシだろうかな?
「クソが……!」
焦燥を押さえつけ、より隠れるのに適した場所へ向かって走る。エンジン音が近づく。振り返っている余裕はない。
俺は覚悟を決めかけた、その瞬間。
『シュトゥルム!』
無線から少女の声が響き、頭上から唐突に殺気が消えた。
思わず振り仰ぐと、今まさに爆弾を投下せんとしていたネウロイたちの横っ腹を、帝政カールスラントのエンブレムをつけた航空ウィッチの部隊が食い破ったところだった。
被弾したネウロイが火を噴きながら墜ちていく。
711
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:13:42 ID:sB6VQk8Q0
『そこの君、危なかったねー』
編隊の一つを率いている少女 (もちろんウィッチだ) が無線で声をかけてきた。今俺を狙っていた奴を墜とした娘だろう。
短めの金髪、ただ一部分だけ髪の色が変わっている。恐らく、魔力の発現により使い間の耳に当たる部分が現れているのだろう。
「ああ、助かった。さすがにタマが縮み上がったぜ」
『タマ……?男の子?珍しいねぇ』
「まぁな。とにかく、礼を言う。ブリタニアで何か奢らせてくれ、戦友」
そこへ、新しい声が無線に入ってきた。
『フラウ、無駄話しないの。まだ敵が残ってるわよ』
『はぁーい』
フラウ、というのは今俺が話していた娘の名だろうか。見ると、返事をしながら手を振っていた。
そして、彼女に注意するこの飛行隊長と思しき声に聞き覚えがあった。
「もしかして、ミーナか?」
『あら。そういうあなたは……』
「俺だ。助けてくれてありがとうよ。部隊の連中もそう言ってる」
『間に合って良かったわ。幸運を!』
「そっちも」
例の一件以来、ミーナともクルトとも少し顔を合わせづらかったのだが、自然に話すことができた。俺は内心、ほっと息をついた。
フラウと呼ばれた少女が合流していく中隊の先頭に、確かにミーナがいた。長い髪をなびかせ飛んで行く。可憐なウィッチ達の中にあって、なお一層優美に気高く。
「美しい……」
部隊の誰かが呟いた。
俺も心底同意見だった。
712
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:17:37 ID:sB6VQk8Q0
俺たちはその後、何とかダンケルクに辿りついた。これから放棄するとはいえ、一応まだ人類の勢力圏であり、一安心といったところだ。
ガリアのパ・ド・カレーに展開した部隊の撤退が遅れている、という情報が入ってきたのは、そんなときだった。
このままでは、救出船に間に合わない、と。
カレーには、クルトの所属する部隊がいた。
ネウロイがいなければ、人間同士の世界大戦が起こっていただろう、というのはよくある言説だ。
資源や領土を奪い合う相手がネウロイから人間へと変わるだけで、結局のところ歴史に大きな変化は起こらないのだ、としたり顔に語る学者もいる。
ただ、末端の兵士にとって、人間との戦いとネウロイとの戦いには大きな違いがある。それは「降伏が許されるか否か」だ。
人間同士の争いなら、敵地に取り残され、追い詰められた兵士には降伏する権利がある。捕虜にはなるが、少なくとも死にはしない。
無論、降伏が許されず虐殺されたり、捕虜になったとしても非人道的な扱いを受けたりする可能性はあるが。
しかしネウロイ相手にはそもそも降伏という選択肢が意味を持たない。戦えなければ、殺されるだけだ。
そしてカレーで戦う兵士に、後者の運命が容赦なく襲い掛かろうとしていた。
俺は到着してすぐ、まだストライカーすら外していない状態だったが、その場で援軍に志願した。今も胸を張っていえるが、そのときの俺に迷いはなかった。
クルトが恋敵であるということも意識を外れてはいなかったが、その事実は俺の決断を一切鈍らせはしなかった。
部隊が再編成され、俺たちは再び求めて戦場に向かうこととなった。
713
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:21:48 ID:sB6VQk8Q0
カレーはダンケルクから僅か40km程度の距離にある。しかしその主要な連絡線にネウロイが進入し、ちょうど段階的撤退の最中にあったカレーの部隊と鉢合わせたらしい。
立ち往生している間に続々とネウロイが集まってきて、身動きが取れない状況だった。
援軍はダンケルク側からネウロイの前線を突破し、なんとかカレーの連中との合流に成功した。
俺の小隊は彼らが撤退する道路の維持を命じられた。道脇のトーチカに篭って、うぞうぞと街道へ寄って来るネウロイを撃ち続ける。
照準、射撃。照準、射撃。再装填、照準、射撃。単調なビート。
ダンケルクからほんの数十キロしか離れていない場所なのに、ネウロイどもはキリなく現れた。この果てのなさに、カールスラントは、人類は追い詰められたのだ。
返し矢が雨霰と飛んでくるが、幸いなことに小型のやつらばかりで、頑丈で分厚い鉄筋コンクリート製のトーチカを破壊できる大口径砲を装備した大型ネウロイはいなかった。
おそらく軽装の足が早いやつだけが先行して来ているのだろう。この調子ならいくら寄って来ようがⅡ号の機関砲で一掃できる。
だが、あまりグズグズしていると大型が追いついてくるだろう。さっさと片付けてトンズラといきたいところだ。
背後の街道を猛スピードのトラックが次々と通り過ぎていく。あれらの車両には疲れきった兵士たちが詰め込まれている。
彼らはもう祈るくらいしかできない。どうか弾に当たりませんように、地雷も踏みませんように。
やがて残りの弾薬が心もとなくなり始めた頃、最後尾のトラックが見えた。もはやこの部隊より内陸に、生きた人間は残っていない。
「さぁ、もうここに用はない。俺たちも撤退しよう」
ネウロイの攻勢が途切れたタイミングを見計らい、トーチカを出る。
まったく唐突に、目の前を通過中だった最後尾のトラックが爆発し横転した。
714
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:26:35 ID:sB6VQk8Q0
「8時方向、戦車砲!」
だれかが叫ぶ。軽戦車の口径ではありえない。砲弾の飛んできた方角へ首を巡らせると、4kmほど離れた丘の上にゴマ粒のようにネウロイが見えた。
はっきりとは分からないが、大口径砲を装備した支援火器型だろう。足の遅い連中だが、ついに追いついてきたのだ。
見る間に稜線を越え、同じような影が数両現れた。
「退却する!急げ!」
隊長が命令を下した。断固とした口調だった。横転したトラックは捨て置かれた。
トラックは車両前部を撃ち抜かれ吹き飛ばされていた。運転手は即死だ。撃たれたことも痛みも感じる暇はなかっただろう。
この距離の第一射が命中するとは、不運だったとしか言いようがない。
後部車体は比較的原型をとどめていた。生存者がいるかも知れない。しかしすぐにもタンクに火が回り、残った部分も爆発炎上するだろう。
隊長の命令は的確といえた。
だが、俺は見つけてしまった。
横転した荷車の中、何人もの兵士が折り重なって倒れている中に、よりにもよって、クルトがいたのだ。
自分の血の気が引いていく音が聞こえた。ざわざわと、皮膚の下で一万匹の虫が一斉に這っているような。
隊列を離れて駆け寄る。
「おい、どこにいく!?」
「敵が来るぞ」
誰かが声をかけてくる。無視する。脂汗が背中をじっとりと濡らし、一気に寒くなったような錯覚を覚えた。
心臓が早鐘を打つ。叫び出したいような気がしたが、何を叫びたいのか自分でも分からず、また舌が乾燥して口腔にはり付いて声が出せなかった。
715
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:33:53 ID:sB6VQk8Q0
転げるように荷車に取り付き、覗き込む。中は暗く、しかし見える範囲でも其処此処に血糊が飛び散っていた。
被弾の衝撃で何らかの部品が跳ね回ったのだろう。微かにうめき声が聞こえる。幾人かは生きているようだ。
クルトは動かなかった。しかし奴さんを引っ張り出す過程で、その胸が上下していることに気づいた。
呼吸している!生きている!嗚呼!
とはいえ、意識がない。担ぎ上げて、脱出しなければ。他の生存者は……。
俺がそこまで考えたところで、ガソリンに引火し、トラックは再び爆発した。クルト一人をシールドで庇うのが精一杯だった。
俺はクルトを、クルトだけを引きずって離れた。それ以上の余裕はなかった。
燃える車の中から、弱々しく、しかし確かに生きた人間の悲鳴が聞こえた。今でも覚えている。忘れたくても忘れられない。
そして匂い。硝煙と金属が焦げる匂い、ガソリンの匂いに混じって漂う、肉の焼ける匂い。
ただそのときの俺には、感傷や罪悪感に浸る暇はなかった。またぞろ小型ネウロイがわらわらと現れ、追ってきていたのだ。
彼方からの砲撃も始まっていた。俺たちを助けようと飛び出しかけた一人の陸戦ウィッチが、目の前に戦車砲が着弾したために慌てて遮蔽の陰に戻っていった。
小口径の機銃が雨霰と降り注ぐ。背筋が凍るような金属音、擦過音、風切り音。もがくようなエンジンと駆動系のうなり声。足元で土煙が跳ねる。
もちろん地面だけ狙ってくれるような奴らではない。俺の機体に、体に、クルトに容赦なく弾丸が襲い掛かった。クルトを装甲と俺自身の体で庇いながら、俺は進んだ。
車体ごとシールドを傾け、必死でネウロイの攻撃を弾く。それでも何発かが貫通し、シールドを支える腕に衝撃が走る。確認する余裕はない。
俺はそれでも断固として前進した。前方の丘の陰で味方が待っている。援護射撃を繰り出しながら、大声で俺を呼んでいる。
履帯が止まった。何かが挟まったか、ギアに被弾したか。駆動系をカットオフ。普通に歩くように脚を動かして、一歩ずつ前進する。あと少し。あとほんの20か30メートル。
断続的な衝撃。目に血が入る。興奮で痛みを感じないが、確実に被弾している。……もしや、ここが俺の死に場所か?
クルトを抱える腕に力がはいる。と、クルトが小さく身じろぎした。
716
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:38:11 ID:sB6VQk8Q0
「う……」
「クルト!?おい、しっかりしろ!」
「……君、なぜここに」
気絶していた割りに、クルトはしっかりした調子で喋った。確認する暇がなかったが、大きな怪我は無さそうだ。
「こっちの台詞だ。面倒かけさせやがって」
「助けに来てくれたのか……すまない」
「自力で動けるか。あと少しだ。せーので、走るぞ」
「分かった」
俺たちはネウロイの斉射が途切れたタイミングを見計らい、最後の力を振り絞って、駆け出した。
履帯の動かない俺はクルトの少しあとを、後方からの射撃を防ぎながら走った。
小型ネウロイが追いすがってくる。機体後方に向きを固定した機関砲を撃ってけん制する。
一両がめちゃくちゃに機銃を乱射しながら肉薄してきた。俺は腰部ハードポイントに吊ったマインゲショス (魔導手榴弾) で迎撃しようとして、それを取り落とした。
思わず自分の右手を見る。いつの間にか、右手は真っ赤に染まって、指が何本か欠けて骨が見えていた。
呆けたのはほんの一瞬だが、それが致命的な隙となった。肉薄してきたネウロイが俺に体当たりした。
シールドはギリギリ保った。しかしストライカーユニットは過負荷で一時的に行動不能に陥り、俺はもんどりうってうつぶせに倒れこんだ。
クルトが顔色を変えて振り返る。
「おい……!?」
「そのまま走れ!行け!」
俺は怒鳴りつけると、仰向けになって身を起こし、残った指で無理やり俺に体当たりしたネウロイを撃ちまくった。
717
:
ミーナの幼馴染な俺
:2016/07/03(日) 22:42:07 ID:sB6VQk8Q0
正確な狙いは期待できなかったが、その必要もなかった。何せ向こうから寄って来ている。ネウロイは弾が尽きたのか、機銃ではなく踏み潰して俺を殺そうとしているようだった。
俺に撃たれて火花を噴き出しながらも、執念さえ感じる動きで俺に近づいてきていた。
クソが、これが俺の死か。まぁいい。仕事は果たした。俺が殺されてる間に、クルトは逃げ切れるだろう。
静かな諦観と、ちょっとした満足感が俺を満たした。しかし
「うおおおおおお!!!」
クルトが雄叫びを上げながら駆け寄ってくるのが視界の端に映った。
馬鹿野郎、せっかく俺が捨て身で気を引いてるってのに!ウィッチでもないのに何をする気だ。無駄死にだ。
そう叫ぼうとした。
クルトは無意味なバンザイアタックを仕掛けたわけではなかった。
クルトは俺が落としたマインゲショスを片足で軽く蹴り上げ、掴んだ。そのまま流れるように安全ピンを抜き、目の前のネウロイの足元に訓練通りの鮮やかなアンダースローで放り投げた。
完全に回避も防御も不可能な位置。歴戦の兵士もかくやという、冷静で見事な投擲だった。
爆発。未知の金属でできたネウロイの数tはある体躯が、一瞬衝撃で浮き上がる。破壊のエネルギー全てを食らった証拠だ。さすがのネウロイも一撃で崩れ落ちた。
「クルト、お前」
「今のうちだ、早く来い。走れ、兄弟!」
クルトは目を丸くする俺を、整備兵らしい手馴れた操作でストライカーから強制排出し、俺の腕を自分の肩に廻して体を支え、走り出した。
俺はほとんど引きずられるように走った。周囲に弾着の土煙が立つ。もうまともなシールドも装甲もない。被弾すれば今度こそ死ぬ。
そんなときであったのに、俺はガキの頃のことを思い出していた。
街の悪ガキどもと喧嘩になって、ちょうどこんな風に、傷だらけの泥だらけになりながら、二人で肩を貸し合って帰ったことがあった。
俺たちはギリギリで丘の陰に駆け込み、そこでばったりと倒れこんだ。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板