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【安価】やる夫は誰かのために戦うようです【R-18】

1 ◆x0SRSoJXe.:2018/11/18(日) 22:14:42 ID:NOfdPGR20

   ∧ `i¨ヽ   i   i  γ⌒ヽ`i¨ヽ `i ̄'`| ̄`ヽ.  .i\ i\
  _/,,∧ ├く    ∧ .∧ {{   }}|-く. ├一.|    }  .| | ヽ| .:iヽ
. _/_   ヘ_jL \__/ ∨ ∨ヽ、__ノ jL \」__.,イ!____ノ   | | .:| | ヽ
                    γ⌒ゝγ⌒ヽ `i¨ヽ `i ̄'\‐┘ー, .| └─:\
                   {{   {{   }}├く ├一. ¬┌ .:| ┌─'′\
                    ヾ、__.イ ヾ、__ノ .jL \」_イ   j_.L._j__L      )\

●この作品は株式会社フロム・ソフトウェアによって平成18年12月21日に発売された、『アーマード・コア4』の二次創作作品です

●原作との相違点も多く、作者の知識の至らない点は自己解釈によって補われています。あらかじめご了承ください

●この作品はフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません

3209 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:01:40 ID:NjlOvYzI0

    /||ミ
   / ::::||
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 |:::::::::::::::|゙i : : : :○ ○゙i
 |:::::::::::::::|}: : : : : : : _ _ _l      ハロー。
 |:::::::::::::::||: : : :-=´_ _,´
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 |::::::::::::::(_ノ / . . . ||
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   \ ::::||
    \||

3210安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 20:02:45 ID:CYScYWVE0
ハロー

3211 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:08:16 ID:NjlOvYzI0

         _ _ _
       /: : : : : : `i
.       i: : : : : : : : : :!
       、: :○: : ○: :!
        i: : : : : : : : : i          クーガーやブラックジャックに限らず、好きなキャラっていうか、尊敬するキャラか。
        l: : :,, --_ッ: :',
        丶 `‐'´: : : :ノ          それを自作品に出すのは、中々緊張するものがあるね。
         / ´: : : : : : : : `ヽ
  .     /: : : : : : : : : : : : : ヽ        使っているAAに恥じない人物背景を用意できているか、
    , -‐': : ,: : : : : : : : : : : : : :ヽ
  /: : : ,-イ: : : : : : : : /`丶: : : :、       振る舞いや言動をさせられているか……あまり自信はない。
  r⌒ ,/ /: : : : : : : : i   i: : : : i
  ` ‐ '  /: : : : : : : : : |   ! : : : |       ではやっていこう。平和なラブコメスレとして再始動だ。
       i: : : : , _ -‐ ´,)   ` ヽ _|
        (_ _i ̄(_ -‐'´i
      | :|`‐´i : : : : |
       |: :ノ_ _ ノ: : : : :|
       |: : : : : |: : : : : !

3212 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:08:30 ID:NjlOvYzI0

            ____
          /      \
         /─   ─   \
       / (●) (●)     \
       |   (__人__)      |       はやてさん、寝てるお……
       \   ` ⌒´    _/
        / l        ヽ          
.       / /l       丶 .l
       / / l        } l
     /ユ¨‐‐- 、_     l !
  _ /   ` ヽ__  `-   {し|
 /          `ヽ }/
            / //
  ,,, __ ___ _/ /_/

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
朝日を瞼越しに感じて目を覚ますと、
隣で暢気な寝息を立てているはやてが横になっていた。
他人には絶対に見せないであろう、寝間着にすっぴん、髪もぼさぼさ、
というあられもない姿で、口をぽかんと開けて涎を垂らしている。

あれからというもの、夜にははやてと一緒の和室でテレビを身ながら眠った。
いつの間にか、それが二人の間での自然な流れになっていた。
女盛りの美女と一緒の部屋で眠って、我ながら辛抱堪るまいと思っていたのだが、
あまりの自然さに、それが当たり前となっていき、抵抗も緊張も消えていった。

無防備な姿を見せられていることで、自分とはやての関係を錯覚しそうになる。
恋人でも家族でも、友人でもなんでもない自分たちは、なんと呼べばいいのだろう。
寝返りを打つ彼女を見つめつつ、体を起こす。

たまには自分が朝食を用意しよう。冷蔵庫の中身や、
調理器具の配置はある程度把握できていた。
トーストとコーヒーくらいは用意できるはずだ。
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3213 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:14:18 ID:NjlOvYzI0

               ____
             /      \
           /   _ノ   ⌒\
          /   ( ●) ( ー)ヽ      「おはよ〜」
            l        (__人__)   |
          \     ` ⌒´   /       おはよう、はやてさん。
          /      __    ヽ
           |  、    |〜|      ヽ     
         ゝ_ ̄つ=====と )
                ̄ ̄





            .. -‐‥…‥‐- ..
            /: :⌒: :⌒: : : : : : : : : : : : ,
.        /: :/: : : : : ,ヘr 、: : : : : : : : : ′
        /: :/   /   / '^i^i }       . :
.       /: :/ ; i i {_,. {   l |: :}: :: : : : : : : : :.;
      /: : i i: :|: :|癶「乂  | l ノ: :/、/}: :i: : : i
      { {: :|: :|: :{ィ芹芋ミ  jノイ//: :/7/> : :!
      { {: :ト、乂个゚辷ノリ   芹芋ミゝ</>: : :j
         '.: :八 i:i  ¨´      辷ノリハ>/∨〉/
       j/: :: :从 """   '    ¨´  ノ: : 〉〈       あー……先起きてたんか。ありゃりゃ、パンにコーヒーと。
    °  }: :: :iハ \   - 、  ""゙厶イ: : 〈∧〉
.  ι     j|: : ∧ \ \      _,イ : :./: :,小、       おおきに。
       _」!」L.._〉、 ',_} `ー‐ 'i/./ /_/川 :
     /\  `ー\ ヽ    人_/ /  ⌒ヽ} :        「はやてさん……胸元、ボタン外れてますお」
     i   ヽ  \ } }  /. // /      `ヽ
     |     '.   / /` ´〉/¦   /    '.       んん……あー……。
.     〉       // 、,〈 { 乂 ,f      /  
    /}       i   {   i 〉   ,f       /、
   /∧: .、__    |  \¦/    「   、_  {: :}
    { {: :\    │   .Υ    i      / ノ}
    {人 }      '    |    /       /: :}
      )ノ.      '.、_,ノヽ、 __.;      ハ丿
       |      ∨, :.  -‐/   '.    /
       |      i  .l  /    , /
       '.       |  |. /     V
        ヽ     l  | i       〉
           ノ       〉、 |      /,
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
あれから二日が過ぎた。
あまりにも穏やかな日々に、戦場で聞き続けた轟音が大昔のことのように、
もしくは映画の中の出来事のように思えてきた。

忘れられたわけでもないし、この先忘れることもないだろう。
目を閉じる度、暗闇がスクリーンとなってその光景を映し出す。
日常の中に埋もれていっても、決して消えはしない。

けれど、目の前には、それを悪い夢だったのだと、
そっと言い聞かせてくるような優しい日々がある。

平和な世界で生きていいのだと、言ってくれる人がいる。
それに罪悪感を抱きつつも、甘えずにはいられない自分がいた。

寝間着のまま台所に立ち、トーストを二枚棚の上の白いオーブンに突っ込み、
インスタントコーヒーを入れたマグカップへ沸かした薬缶の中身を注ぐ。
彼女も自分も、たっぷりのミルクに角砂糖が二つ。
軽快で長閑な音ばかりが静かな台所に微かに響く。
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3214 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:15:07 ID:NjlOvYzI0

          ____
        /      \
       / ─   ─   \        「今日はちょっと本社の方に顔出してくるさかい」
      /( ●)  ( ●)    \
      |  (__人__)       |       分かりました。掃除とか色々済ませておきますお。
       \ ` ⌒´       /
       /   ー‐ /⌒  ヽ        「ほな頼むわ。合鍵、なくしとらんよね?」
____/_____/ /_______
   (⌒ィXXXX(⌒ /             うん。出かけたとしても、散歩くらいだと思うけど……。
    /XXXXXX/´   フキフキ
     ̄ ̄ ̄ ̄

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
やはりはやては、自分のことを欠片ほども異性として意識してはいないようだった。
それは油断というよりも、信頼の表れと思った方が良さそうだ。
優しく微笑む目に、「この子なら大丈夫」という思いが滲み出ているように
見えてならなかった。何を根拠にしているのかは分からなかったが、
それを言えば、自分だって根拠もなくはやてを信頼しきっている。
お互い様な事は、言ったところでしょうがない。

時折冗談めかして、風呂場に向かう際に「覗いちゃあかんでー」と言われたりするが、
当の本人はあっけらかんとしたものだ。こっちの気も知らないで。

とはいえ、欲情しようものならどうなるか分かったものではない。
自分の妙に強い理性に今は感謝していた。
自慰も最近はしていない。もしかしたら枯れ始めているかもしれない。
むしろそれが今の状況における最善かもしれないので、嘆くこともないが。
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3215 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:22:32 ID:NjlOvYzI0

                   , - ― -   .
                , '": : : : : : : : : : : : : : : : >、
           _ ,. '" : ,ィ: : : : : : : : : : : : : : : 、: : :、 ヽ
            /: ヾ、: : :/: : : : : ヽ: : : : ヽ '、 : : ', : : ヽ :ヽ
         /: : :/: , : i!' : : : : : : : ヽ: : : : :ヽ: ',: : :',.、: : ,'、: ',
         /: : :,': :_!iヽi!/ヽ:_:_:_:_:_イ三三三三ヽ_:_',ヾ/:/:',: '
        ,': : , イ ノ三三三三 ̄',:三三三三リヾ,、:!'/ ヾ,.!: i
        !/ , イ、三三三三:!: : :ヾ三三三イiニヾ,、 : : : !: i
      /---、' ,ィゞ三三三ソ ',: : : :/イ iっ::心!: : : !`ヽ:.!:.!: ',
     r ー-、 !' / ', 〃示ヾi! ',: : ,'   い;;;;;::i: : : i 、!.ii!!: !: :',       ほな、行ってきます!
     /  イ !ゝ'/ヾ ヽ',  ∨:∧. ',:.,'   ゞ斗'.':.i: :i'"/ヾ: :!: : ',
     !  し/ /: !: :ヽ:ヽ. 弋:ツ ヾ     ...,':/: /イ:.!: i!: ! : 、ヽ      「いってらっしゃい。待ってますお」
   _r/  イ.,- "',: ',: : : :`ヾ    `   ,  ./:/: ,': i!: !: i!: !: ! :ヾ、
 . /ヾ、\ /、   ヽ:!',: : i、: :'、   `ー‐   /:/: :,'、:i!: !: :!: :!: !: :'、      ……うん。お留守番、よろしうな。
 /.:.:.:.:.>、` /     ヽ: :i ヽ: >        , イイ: :/ /:!: !: :!: :i: :!: : :',
./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!      ',:.! ヽi: :!イ `r " , イ: /:i ./!>、: :!: :i: :!: : : ,
.〉、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/     , --',!''";;;;;;/.、  r---!、/イ i!/: !;;;;;;;;>、:i: :',: : : ,
:.:.:\:.:.:.:.:.:.:./    /;;;;;!;;;;i!;;;;;;;;/, i ',イー;;/ /'、〃/:.:.i;;;;;;;;;;;;;;;;;;>、 : : i
:.:.:.:.:.:>-,-' ,ィ‐, イ、;;;;;r-‐''":./:.:/ヽヽ;;;;/, イヽ':.:.:.:i:ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;>、
:.:.:.:.:.:.:.:.:,'   i/;;;;;;;;;;;;/:i:.:/:.:./:.:.,'. ヽ/::::7-‐ ./:.:.:.:.:.!:.:.:.:.`ヽ;;;;;;;;;/;;;;;;;'、
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スーツ姿に着替えたはやてを門扉の外、車で出発するところまで見送る。
今日は大分日差しが強く、軽く掛けておくには可愛らしいものの、
実際に目を隠すと似合わないサングラスをはやては手にしていた。

元気に手を振ってくるはやてに、手を振り返す。
こういう行為は家庭において一般的なことらしいが、
自分にはどうにも不慣れで、胸の奥から何かが溢れ出るような感覚に襲われた。

昔、こうして親に手を振ったことがあっただろうか。
軽くさかのぼり、あると確信する。父と母は油の匂いをさせながら帰ってきた。
それはやがて油の匂いではなく、仕事帰りの親の匂いと成り代わっていき、
その匂いを嗅ぐ度、「ああ、かえってきた」と実感させられていた。はずだ。

今では、油の匂いを嗅いだところで何も思わないが。
遠ざかっていく車体を見送りながら、しみじみと考えていた。
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3216 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:31:51 ID:NjlOvYzI0

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       l\  \       // ′ .l
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       |   `ー──〜ソ"
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       |       //  |
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.     |                ,、 ヽ
      \  \        ||   │
       \  \      /  /彡\
       /\  \   i′  く ヽ\彡\    ____
      /   \  /]  /  |  \彡\/__    ヽ    ゴオオオオオオオオ…
    /    / (ノ/)) ̄ヽ    \   \彡\ミ}  , ‐、 i
   __| .   | / / ̄   ヘ    )   |ゝ三ノ   i   iノー----‐
  (___/ /        `ー‐'′   ゝ======ゝ= '
     [二二二二]

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それからはもう、自分でもどうかと思うくらいに長閑なものだった。
庭の落ち葉や得体のしれない虫の死骸を竹箒で片づけ、、
屋内の掃除機がけや廊下の雑巾がけ、拭き掃除、
大体終わる頃にはお昼時といった具合である。

適当に炊飯器で炊いた米を濡れた手で掴み取り、三角形に握り、
味噌を塗ってフライパンで焼いたものを四つ程。
皿に盛って縁側まで持っていき、日差しと蝉の声を供に齧っていた。
じんわりと湿気と暑気が立ち込めてはいたが、シャツとズボンを目一杯捲って
過ごせば、耐えられなくもない。最初はやられたものだが、少し慣れた。
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3217 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:46:31 ID:NjlOvYzI0

       ___
     /ノ  ヽ_\
    / (ー) (ー )\
  / ⌒ (__人__) ⌒ \
  |   /ζ⌒|     |
   \  ゝ .(⌒)     / ズズー
   / /  | ̄     \
   |  /   |        |

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掃除している時、不思議なものを見た。

「かまへんかまへん、見られたらあかんもんは前もって隠しとるよ」と
本人から許可されているとはいえ、掃除に入る時は緊張した。
いざ入ると、特に変わったものもない、普通の部屋だったが。
畳の上に箪笥や衣装棚、本棚に化粧台といったものが壁沿いに並べられ、
押し入れの向かい側にテレビがぽつんとあり、窓が一つあるだけだった。

彼女の個性が表れていたものとしては、本棚だろうか。
紙の本という珍しいものがぎっしりと詰められており、中身は色々だった。
旧時代の小説、詩集、コミック、とにかく色々だ。

なんとなく、その中でも大部分を占めていた『ドラゴンボール』というコミックには
興味をそそられたが、掃除を優先した。

はやての私室を掃除した後に玄関に向かうと、おかしな棚を見つけた。
今の今まで大して意識していなかったが、一人で落ち着いた時間の中、
意識の端っこに引っかかったのだ。

それは他の棚よりも意匠が凝っているような気がした。
中から不思議な匂いも漂ってくるし、ただならぬ雰囲気を感じ取り、
とりあえずは触らないでおいた。後ではやてに訊いてみるとしよう。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3218 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 20:55:56 ID:NjlOvYzI0

     _____     ━┓
   / ―   \    ┏┛
 /ノ  ( ●)   \  ・     なぜか洗濯物は『私がやっておくから気にせんでええ』と言われたお。
.| ( ●)   ⌒)   |
.|   (__ノ ̄    /       まあ、考えがあるんだろうし、任せるかお。
.|             /
 \_    ⊂ヽ∩\       となると、この後暇だお……
   /´     (,_ \.\
.   |  /     \_ノ

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
僅かな洗い物を片付け、やることを終えると、途端にどうすればいいか
分からなくなった。テレビを見たり、昼寝したりするのもいいかもしれない。
胃袋も満たされているし、布団を敷いて横になればすぐに睡魔がやってくるだろう。

ただ、それだけだと少し勿体ない気がした。
折角だし、引きこもってばかりいないで散歩してもいいかもしれない。
何よりも、ただだらけていると、暗い記憶が襲ってきそうで、怖かった。

はやてと二人でいる時は、意識が彼女に向けられているからまだいい。
一人でじっとしている時が、一番怖かった。

下↓1 暇だ……どこかに散歩しに行こう
1.近くに川があるとはやてが言っていた。見に行こう
2.少し歩いたところに商店街がある。見に行こう
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3219安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 20:59:37 ID:8aM1YZ460
1

3220 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:02:52 ID:NjlOvYzI0

     ___
   /ノ  ヽ、_ \
  /(●) (●.) \      そういや、近くに川があるって言ってたお……
/  (__人_,)    \
|  l^l^ln ⌒ ´        |    本物の川なんてそうそう見られるもんでもないお。
\ヽ   L         ,/
   ゝ  ノ             見に行ってみるかお。
 /   /

3221安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 21:02:55 ID:0pnRGi3g0
水かさを確認しないとな(フラグ)

3222 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:03:08 ID:NjlOvYzI0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                             │ :: │
                             └─┘


                               ┌┐
                               └┘


                                   □

                               ・

3223 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:13:29 ID:NjlOvYzI0

                           |
                      \           /
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=__-_ -__= - _-_ -_ =_ -_ ^__-_=  -ー"`゙           i ,.,...ユiW
_ -_ __ -_^__ =_ -_ ^__   _,,、。"`゙ :::   :::         ∥,,::iリv,i
_ = _ -_ _ _ = __ __,,、。-ー''"`゙:::                  」:.::.vノiVi
  _,,.,..、。v-ー''"゙~ :: ' ::: : ::: :::    ::  :::: :: :::      「;;,,;;:yハiW
`"゙  :::: :: :::' ,:: ::::  : ::: :                  /,:.;,:.;,:.ナwy

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
さすがにこの日差しの中、そのまま出かけるのは日焼けが怖かった。
日焼けというものがどういうものかは知らないが、はやてから散々脅かされた。
曰く、日焼けしたら最後、それは時間の経過でしか治らない。
日焼けしている間は皮がべりべり剥がれ、お湯を被れば地獄の痛苦を味わう。
つまり、入浴やシャワーが拷問の時間と化すのだそうな。
更に言えば、後々の皺やしみの原因になるとかどうとか。

というわけで、ちゃっかり貰った日焼け止めを肌の露出している部分に塗りつけ、
しっかりと戸締りしてから出かけた。

話に聞いていた川は、少し歩けばそこにあった。
水の流れる音が聞こえてきたと思い、歩みを早めると、それは見えた。
草原を縦に引き裂くように流れる水流が、そこにあった。
底には涼やかな色の石が転がっており、陽の光を煌々と反射している。

溜め息を吐きながら川へと近づいていく。
軽く感動さえしていた。こんなに澄み渡った水がとめどなく大量に流れている。
飲み水に困ることなどなくなっていたが、こうも見える形で目の前に現れると、
感慨深いものがあった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3224安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 21:16:07 ID:0pnRGi3g0
ドブ川とせせらぎの差を実感したかw

3225 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:20:58 ID:NjlOvYzI0

      ____
     /     \
   / \   / \
  /  (●)  (●)  \     な、なんか跳ねたお……
  |     (__人__) u   |
  \  . |┬-r|    /     あれは……魚かお!? こんなところで、生きて泳いでるお……
   /   `ー´9mー )
          `ーー‐'゙

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
見つめていると、水面で飛沫が上がった。
よくよく見ると、それは魚のようだった。暗い色の魚が水面を跳び、
そしてまた飛沫を上げながら川へと戻っていった。

「オイオイなんだってんだ、タイムスリップしてきた人みたいなこと言ってよ」

驚嘆しながら腕を組んで観察していると、横から渋い声をかけられた。
初めて見る川に意識を取られ、全然気づいていなかった。
咄嗟に振り向くと、そこには変わった着物の中年男が立っていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3226 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:24:55 ID:NjlOvYzI0

              、_刈从WWWW从从≦二ィ_,_
              、_x≧W从从从WWi{从从从i从ア
                ィW洲从从}i州从ハ从从}Wkく :.
             、_j从WWW{i从{     , 、_  `}从 :.
             洲W从从リ{ィ=≦壬r示≧=代 :
             刈洲W{iレ'´ 込Z弐シ {Z弐近{ :.
              イ洲r=i{|        _ 冫    } :.
                 }从{ V|i 、_       ′   .' :.          よぉ兄ちゃん。独り言激しいなオイ。
                 从 {_  `     .ィこ>   ,'  :.
                }ト、_         `二   /   ::.          「すみません」
                    从汽     ,ィi斥仆v   :.:
                 洲 ` ー‐- {i」从」シ{   .:.           別に謝んなくてもいいよ……しっかし、そんなに珍しいか?
                ノ]}           |   .:
               /.::i」   、         j\_ : .           「まあ」
           _  -‐ {::::::::{、   、     / {ヽ::ヾヽ、
         _/    |::::::::| \   、   {  ハ::.:.:.. `丶、        ふうん。
    _  -‐ ´        |::::::::|  `ヽ、__     /  ',:.:.:.. i   ``丶、
  /            |::::::::|      `ヽ.  {_    ',:.:.:. i      ヽ、
 /                 |::::::::|       l |  ||!   }:.:.:.::!        \
./      \       |::::::::|       l |  |{    l::.:.:::l            ヽ
          ヽ      |::::::::|     /,ア ̄ ̄`ヽ l:.:::::::l       i   `、
           \   |::::::::|   //  />≦二;;}:::::::l        |    `、

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
咥えタバコの男は、ぼさぼさの黒髪と眉、蓄えられた顎髭、
そして厳めしいサングラスと怪しげな風貌だった。
旧時代に出てくるジャパニーズマフィアを意識したファッションなのだろうか。
靴にいたっては下駄だ。

その右手を見やると、長い棒が握られていた。何かの道具だろう。
グリップがあり、その上には筒状の機構が取り付けられている。
そこから細いワイヤーが棒の先まで伸びていた。

「これか? これ、竿」

「さお」

「釣り竿だよ、釣り竿。これはリールで、先っちょのがルアー」

「つり」

「おまえなあ……」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3227 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:32:51 ID:NjlOvYzI0

         ヽ 、________ ヽヽ. 、
       _,, ..≧::::::::::::::::::::::::::ヽV::ヽl
       ,.イ::;ィ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`=イ/
       //::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::<
      〃::::::::::::;イ//リ|:/|:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     ∠::::::::从(     l/ !::::::::::::::::::::::::::::::: ヾヽ
      /イ∧` 、,,ィ≦=rヽl/ル::::::::::::::::::::::::ヾ、
        〈_≧r=!:::::::ノ    リ:::/ヽ:::::::::::::lヽ       ていうか、なんかおまえ、その辺の兄ちゃんと毛色が違うな……
        !:::::/   ̄       lん) !::::::::::ル
        `l〈 _       ,..  ( ,.イ:::::::::::(         養成学校の生徒って感じでもねえしよ……
         ヽr__      /  l´ !::::::::从ヽ
    ___ ,....,..._ ト-`¨      ノ  ルリ人ヾヽ         まいっか。おまえも釣るか?
  r‐"_l_辷〕_}illi、   ,, -   ,,..::::"::::.. | __
  f,! └‐r‐‐/ / ^vllllllr''"  ,,...::''::::::::::::::::::::/´  /`!      「やってみたいですお」
  H__ノ__ノ__ノ /   r=`-''::::::::::::::::::::::::::::/  /   ヽ
 {   ∨   l    ヽ:::::::::::::::::::::::::::::/  / ,. "   \    おう、ここだとニジマスが釣れるからよ、釣って食おうぜ。
 l、   l   /    / l::::::::::::::::::::::/  / /
 /`'ー― /     / /:::::::::::::::::/  / /            釣りながら色々話せんだろ。
/     / / ̄/  /:::::::::::::/     /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
なんだろう。気のいい人なのだとは思うが、そこはかとなく感じられる、
このだらしなさというか、砕けた感じというか。
お高く留まっている連中からは嫌悪されそうな手合いだろう。
自分はそんなに嫌いではないが。こちらとてスラム上がりの落ちこぼれだ。

お言葉に甘えて釣り竿を握らせてもらう。
これを正しい姿勢で、そこそこの勢いをつけて川へと投げ、
ルアーを水面へと投入する。そして、リールを巻いて糸を戻す。
これをひたすら繰り返せば、たまに魚がかかる、そうだ。

半信半疑で言われた通りに竿を振りながら、魚もそんなに馬鹿なのだろうか、
と水中の魚たちに思いを馳せた。ルアーという釣り餌の模型も、
言ってしまえば色のついた鉄の板だ。

けど、糸が射出される時の軽快な音は、中々小気味よくて気に入った。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3228 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:38:13 ID:NjlOvYzI0

 ノ_,、_ノノ,,孑 / ノ
彡从毛乂乍リソミヾ壬ミ
从彳川少匕从彳ミ川少<
毛仆卅从ミ从毛仆卅从彡
W从匕ミ弋幵W从匕弋乂
从乂lヽlミ\卅从乂lヽl\Wミ
从W毛彡厂''V'\ '    .∨
W从匕乂         ',        「おじ……あなたは? 普段何されてるんですかお?」
从卞弋V'      ',    , -',
災什人.        ', ii/少ミ}       おう、それ聞くかね。この俺に。
升入    `゙ー-=_ノ_,t壬昨ノ
ミミ______ _, -壬少ノ rx゙".rxl        「あっ……」
W    .`弋匕ミ少' { .', { .∨
/'     ` ̄´  _.', .',.', ',       昔は戦場に立ってたよ。コジマ技術導入試験型ノーマル部隊、サフィラスフォースってやつ。
∧        rx  .`', .',.', ',
. ∧.      r゙x X--‐'', .',l  ',      俺はそれだった。おかげで体中ボロボロでな、永遠の療養中ってわけ。
  `ー- ,_.   \\ \/', .',  lヽ
      `ー- .._ヽ ヽ `ー'   l ハ
          Y´ ヽ ヽ     l \





     ____
   /      \
  /  ─    ─\       奇遇ですお。
/    (●)  (●) \
|       (__人__)    |      「おまえもそのクチかぁ」
./     ∩ノ ⊃  /
(  \ / _ノ |  |         でも、今は戦ってもいないし、守られる側にいますお。
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

3229 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:44:15 ID:NjlOvYzI0

                   、_,、_ ,、_,__,_
              _洲WW从W斥k
                刈州州从从込iト
              仆W^__、_ ,__V[,
                洲「{弐]刊卉」i{`
              {」i` ̄〈|` ̄ り      ..
                }l、  ‐_,‐' /{     ...:..
                 ∧\iWi{レ'{リ`   ....:..       だよなぁ、いいトコだよなぁ、ここ。
                 _/.::::',_r三く斗ヘ、...:...
           , -<:::::::::::::`r一^㍉,.:、.``丶、       俺も気に入ってるよ。子供をここで暮らさせてやれてるってだけで、
          /  ヽ:::::::::::::`マヽ、  ヽ、  `ヽ.
.          /      `、::::::::::::::∨.\_  `、   ',     すげー嬉しいしよ。他じゃあんな育て方できねえもん。
          /  \     `、::::::::::/.:::::::::}   ',    }
       /    ヽ    `、::::/.:::::::::/l    ト、  |     「……でしょうね」
        〈   、   、    ∨.:::::::::/ {    | V^廴
       }    、  }    /.:::::::::/ ∧  |  }  }     ああ。
      /    __\」    /.:::::::::/  { ∧  }  |   |
.     /  _/     ̄`¨¨¨¨¨`ヽ_|  ヽ/    }
     {                 {   l   /     ′
      ',                 L、 」_ {      ,′

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
川の流れる音を聞きながら、変わった風貌の中年男と一緒に釣りに興じるという
不思議な状況になっていたが、大して警戒心は抱いていなかった。

ここの人達が自分に危害を加えるようには思えない。理由がない。
鬱憤を晴らしたり、金や食料を奪ったりする必要もないだろう。
完全に無防備な状態を晒すつもりはないが、ある程度は安心していた。

本当に、おかしな場所だ。トウキョウでこんなことをしようものなら、
ごろつき共に素っ裸にされているところだろう。
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3230 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 21:47:27 ID:NjlOvYzI0

          ____
        /   ― \
.     /   (● )  ヘ\
     |   (⌒   (● ) |     ……散々戦争してきて、今更ですけど。
      ヘ     ̄`、__)  |
        ヽ           |     人を殺すのも怖いけど、殺した後も、凄く怖いですお。
      , へ、      _/
.      |          ^ヽ
.      |      1   |





                  、_,ヽ\汁|ヽヾ_,_,
                `久匕卅从W勹災七
                    乂从W仆幵卞从Wミ
                    YヾlVlN从マ大W从ダミ
                      ノ   ∨r 、卞卅从从       まぁなぁ。企業は美化してくれるし、幾ら殺しても責められやしねえ。
                r}-―==ヽ)}从オミ仆匕
                `l    |i/ 'W从卅冫       けど、実際戦場に立ってる身からすると、
                 ',       W从彡'
                  ',     ,  ,r'´ ̄         そこにいるのはただの人だし、終わった後はただの人殺しだしなぁ。
                   """"ヾ//´///
                          l/´//////        言葉で幾ら飾っても、やってることは、な。
                     /////////
                       //////////        ……お、かかってるぞ。巻け巻け。
                    {/////,r'´
                    ヘ//,r'´ ,r'´
                      )'´ ,r'´

3231 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:02:12 ID:NjlOvYzI0


         ヽ 、________ ヽヽ. 、
       _,, ..≧::::::::::::::::::::::::::ヽV::ヽl
       ,.イ::;ィ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`=イ/
       //::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::<
      〃::::::::::::;イ//リ|:/|:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     ∠::::::::从(     l/ !::::::::::::::::::::::::::::::: ヾヽ
      /イ∧` 、,,ィ≦=rヽl/ル::::::::::::::::::::::::ヾ、
        〈_≧r=!:::::::ノ    リ:::/ヽ:::::::::::::lヽ
        !:::::/   ̄       lん) !::::::::::ル       おー、四匹も釣れたのか。おまえセンスあるなぁ。
        `l〈 _       ,..  ( ,.イ:::::::::::(
         ヽr__      /  l´ !::::::::从ヽ       俺、昼まだでよ。あっちに洗い場あんだ、処理して塩焼きにしようぜ。
    ___ ,....,..._ ト-`¨      ノ  ルリ人ヾヽ
  r‐"_l_辷〕_}illi、   ,, -   ,,..::::"::::.. | __
  f,! └‐r‐‐/ / ^vllllllr''"  ,,...::''::::::::::::::::::::/´  /`!
  H__ノ__ノ__ノ /   r=`-''::::::::::::::::::::::::::::/  /   ヽ
 {   ∨   l    ヽ:::::::::::::::::::::::::::::/  / ,. "   \
 l、   l   /    / l::::::::::::::::::::::/  / /
 /`'ー― /     / /:::::::::::::::::/  / /
/     / / ̄/  /:::::::::::::/     /

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途中、男が「トイレトイレ」と席を外している間に、三匹立て続けにかかり、
釣り上げた。竿を引く力は予想以上に強く、暴れる魚を釣り上げた時は
不思議な達成感を感じた。

足元に置かれていた、水の溜められたバケツに放してやる。
素手で掴むとぬめりがあり、やや苦戦しながら口から針を抜く。
見るからに痛そうだが、魚は針を抜かれ水に入れられた途端、大人しくなった。

戻ってきた男はバケツの中を覗くと上機嫌そうに後ろを親指で指した。
近場にキャンプ場があるらしく、そこの洗い場を借りようという算段らしい。
七輪なるものもそこにあるそうだ。好奇心に任せるまま頷き、背中を追う。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3232 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:02:22 ID:NjlOvYzI0

        ____
       /    \       「じゃ、これでケツから刃を入れてな、洗いながら内臓引っこ抜くんだ」
.    /          \ 
.  /    ―   ー  \    あ、そうか……
  |    (●)  (●)  |
.  \    (__人__)  /     「そりゃそうだ。ハラワタごとは食えねえからな。ああ、その前におでこをぶっ刺して絞めるんだ」
.   ノ    ` ⌒´   \
 /´             ヽ





   o
    ゝ;:ヽ-‐―r;;,               。
,,_____冫;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\      ,,,,,,,, o  /
"`ヽ;:;:;;;:::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:从    (;:;:;:;:ヾ-r
   〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:) 0  ソ;:;:;:;:;:;:;:}
  ,,__);:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ノ     ゞイ"ヾ,:;:,ソ
  (;:;:ノr-´^~;;r-ー⌒`    ,.、
  "  ,,,,      _;:;:⌒ゝソ;:/
    (;:;:丿    (;:;:;:;:;:;:;:;:;:)
            ヾ;;;;;;;;;;;;/; \
            ´  /;:ノ 。  。
                ()

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
人気のない石造りの洗い場で蛇口をひねり、バケツを載せる。
男から小さな折り畳みナイフを受け取り、小指程度の大きさの刀身を
魚の細く、けれどしっかりと肉の詰まった頭へと当てた。

白くなっている部分がお腹で、ここを裂けば内臓が出てくる。
それを取り除き、水で血を洗い流して、それから焼いて食べるのだそうだ。

淡々と説明する男を他所に、考えるべきではないことをふと考えた。
人間と同じだな。それもそうだ。魚も人間も動物だ。
瞼の裏で、マーシフルの掌の上で絶命した兵士の姿が蘇り、
目の前のぐったりと脱力した魚と重なった。

視界が揺れる。足から力が抜け、そのままへたり込んでしまった。
男が隣で心配そうな声を上げるが、上手く聞き取れない。

結局、なんとか持ち直すまでに、男がさっさと下処理を済ませてしまっていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3233 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:09:55 ID:NjlOvYzI0

            }i|ハi从}i{{l|W从川{ {从i|{  i !        {_
            V   }ハハ{V   Vハ{{i{ハ :{i|!       {{`′
               }            |W从小j!i !i|  ,  、_≧ァ
             ム              |/}イ小j}}_} }!}W¦ 「广
            」__\、    _  -‐    |/}/从从从i{ハ {
           { f≧メ}、_,)≦二 __         |/ムi7'⌒V小!|W
           ‘斥沙′`} ]三三ミF¬==≠f/   }仆{ハ!
            { /  ‘弐三三ヲ      }小/  从}Ⅵド
             ∨     ` ̄´       l/ノ__//从Wバ     普段は魚の切り身ばっか食ってる奴らが大半だがな、
             }〉--、              _ イ/}|V/
         :       く_、__            /  厂´}i||V|ト|{        一から釣って食うには殺さなきゃならねえ。
         :      /∠}厶_       /   /  |ハ|」{i  
        :   // }>r‐ `        _/    |从{了        ハラワタ抜いて、血を抜いて。誰かがそうしてる。
         :. //    }i|l}ト、_    _  -‐          / {_
        `゙´       ゙ー≠≧=≠             /   {ヘ._       手ぇ汚さずにいられるのは、誰かが手ぇ汚してくれてるからだ。
              _/    l           /      ,′ \_
             ´ ハ      |        /       /     }\    ……そうだろ? じゃねえと、報われねえだろ。俺たち
             /   { ‘.    」     /       /    ,′
.         /       !  }i  /     ハ      , '      /
        /      |/∧/      {  ヽ.     /     /   パチパチ
          /      / / {\    _」    \/       / /





   / ̄ ̄ ̄\
 /        \    
/    ─   ─ ヽ
|    (●)  (●) |    ……。
\  ∩(__人/777/
/  (丶_//// \

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
借りてきた七輪を草むらのなるべく平らなところに置き、
下処理を済ませたニジマスたちに塩を塗りつけ、鉄串を口から差し込む。

七輪の中の炭に着火すると、男は網を被せ、そこに魚を並べた。
やがて魚から滲み出た脂が火へと零れて弾ける音が聞こえてくる。
さっきまで生臭いばかりだった魚から香ばしい匂いがしてきた。

男の話には、否定も肯定もできなかった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3234 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:16:24 ID:NjlOvYzI0

              、_刈从WWWW从从≦二ィ_,_
              、_x≧W从从从WWi{从从从i从ア
                ィW洲从从}i州从ハ从从}Wkく :.
             、_j从WWW{i从{     , 、_  `}从 :.
             洲W从从リ{ィ=≦壬r示≧=代 :
             刈洲W{iレ'´ 込Z弐シ {Z弐近{ :.       え、おまえはやてちゃんと暮らしてるの?
              イ洲r=i{|        _ 冫    } :.
                 }从{ V|i 、_       ′   .' :.       いやー知ってるも何も、桜花の看板娘だからなあ。
                 从 {_  `     .ィこ>   ,'  :.
                }ト、_         `二   /   ::.       となると、大変だろ。あの娘、ほら、魔性の女ってやつだから。
                    从汽     ,ィi斥仆v   :.:
                 洲 ` ー‐- {i」从」シ{   .:.        今まで何人勘違いして玉砕したことか。罪作りだねーほんと。
                ノ]}           |   .:
               /.::i」   、         j\_ : .         あれ、天然だから。
           _  -‐ {::::::::{、   、     / {ヽ::ヾヽ、
         _/    |::::::::| \   、   {  ハ::.:.:.. `丶、      なんだよ、気になんのかよ?
    _  -‐ ´        |::::::::|  `ヽ、__     /  ',:.:.:.. i   ``丶、
  /            |::::::::|      `ヽ.  {_    ',:.:.:. i      ヽ、
 /                 |::::::::|       l |  ||!   }:.:.:.::!        \
./      \       |::::::::|       l |  |{    l::.:.:::l            ヽ
          ヽ      |::::::::|     /,ア ̄ ̄`ヽ l:.:::::::l       i   `、
           \   |::::::::|   //  />≦二;;}:::::::l        |    `、





     ____
   /      \
  /  ─    ─\
/ u.  (●)  (●) \     え? あー、その……
|   /// (__人__)    | 
./     ∩ノ ⊃  /      「おうおうおうご馳走さん、青春だねえまったく」
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
話題を変えようとはやての話をすると、男はすぐに食いついてきた。
やはり桜花重工の旗頭たるはやてのことは知っているらしく、
色んなエピソードを語ってくれた。

というのも、既に近隣の子供たちから青年に至るまで、
彼女に恋心を抱いては玉砕した人々が結構いるらしいのだ。
明日は我が身である。

彼女は実際は身持ちが硬いが、表面上の無防備さや揺るさに引き寄せられ、
突撃を仕掛ける男たちが一時期絶えなかったそうだ。

当人は不思議がるばかりだったそうだが、同じ男としては同情を禁じえない。
あれは、勘違いする。彼女が思っている以上に男心とは単純なのだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3235安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 22:20:44 ID:0pnRGi3g0
天然かよ・・・

3236 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:33:10 ID:NjlOvYzI0

                   、_,、_ ,、_,__,_
              _洲WW从W斥k
                刈州州从从込iト
              仆W^__、_ ,__V[,
                洲「{弐]刊卉」i{`
              {」i` ̄〈|` ̄ り      ..
                }l、  ‐_,‐' /{     ...:..
                 ∧\iWi{レ'{リ`   ....:..     ようし、嫌なこと思い出させちまった詫びだ。
                 _/.::::',_r三く斗ヘ、...:...
           , -<:::::::::::::`r一^㍉,.:、.``丶、      良いこと教えてやるよ。明日の午後五時からな、近くの神社で夏祭りがあんだ。
          /  ヽ:::::::::::::`マヽ、  ヽ、  `ヽ.
.          /      `、::::::::::::::∨.\_  `、   ',    「なつまつり?」
          /  \     `、::::::::::/.:::::::::}   ',    }   
       /    ヽ    `、::::/.:::::::::/l    ト、  |     おう、昔のイベントだよ。後で調べとけ。そこにはやてちゃんを誘ってみろ。
        〈   、   、    ∨.:::::::::/ {    | V^廴
       }    、  }    /.:::::::::/ ∧  |  }  }     俺の経験から言わせれば……あの娘は、押しに弱いタイプだ。
      /    __\」    /.:::::::::/  { ∧  }  |   |
.     /  _/     ̄`¨¨¨¨¨`ヽ_|  ヽ/    }
     {                 {   l   /     ′






       /  ̄ ̄ \
      /ノ  ヽ__   \
    /(―)  (― )   \     そんな無責任な……
    |.  (_人_)   u |
   \   `⌒ ´     ,/      「男にはな、守るべき時と攻めるべき時があんだよ。大丈夫だって。
     /         ヽ
.    / l   ,/  /   i       あの娘なら振った後言いふらしたりもしねえって」
    (_)   (__ ノ     l
    /  /   ___ ,ノ        えー……やる夫、一緒に暮らしてるんですお? 気まずくなりますって。
    !、___!、_____つ

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
後で調べたのだが、夏祭りとは旧時代の日本において田舎町で行われた、
飾り付けた神社の境内や商店街などで行われるお祭りだそうだ。
出店がたくさん並び、浴衣という着物を着こんだ人々が闊歩し、
とにかく楽しいイベント、らしい。

男の言っていることはともかく、その夏祭りというものには行ってみたい。
帰ったらはやてに話してみるとしよう。告白とかどうとかは別として。

それはおいておくとして、ぱりっと焼けた魚はとても美味しかった。
塩と魚の脂が良い味を出していた。身も新鮮なだけあって弾けるようだ。
さっきまで生きていたものに対し、謝罪の言葉を抱くのは違和感を感じた。
なのはの言葉が蘇る。後悔するくらいなら最初から殺すな、と。

串を両手で摘まんで魚に齧りつき、考えることを中断する。
とりあえず、残さず食べよう。肉の一片まで、食べられる部分は、全部。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3237 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:33:35 ID:NjlOvYzI0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                         └──────┘


                           ┌───┐
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                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘


                               ┌┐
                               └┘


                                   □

                               ・

3238 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/19(月) 22:37:23 ID:NjlOvYzI0

       , -‐   ‐- 、
     /: : : : : : : : : : ::',
    , ': : : : : : : : : : : : : : :',
  /: : : : : : : : : : : : : : :○:',
  ヽ : : : : : : ○: : : : : : : : :',         今回はここまでだ。皆も攻め時とそうでない時を見極めなければ痛い目を見るぞ。
 .  `ト : : : : : : : : : : : _,-‐'`iヽ _
    i: 丶: : : : : :,-‐'´__,-‐'´: : : `ヽ      基本的に、二度と会うことがないような人、今後大して関わらない人には攻めていい。
    | : : :ト: : : : `-‐´ : : : : : : 、: : : 丶
    | : : :'、j`-‐ : : : : : : : : : : : \: : : ヽ   逆に身内だったり、学校や職場内では守りの一手だ。女は言いふらすからねえ……
    丶,,:_:_:_: : : : : : : : : : : : : : : : | : : : i
          `ヽ: : : : : : : : : : : : `ー‐'    他校や職場外でするといい。職場恋愛はお勧めしないね。怖くない?
             ヽ: : : : : : : : : : : : : ヽ





                           _ ______
                      ´.: : : : : : : : : : :`
                       l: : : : : : : : : : : : :i
                    i: : :○ : : : ○: :.|
                        |: : : : : : : : : : : |      次回は来週の月曜日、10/26の午後八時からとしよう。
                     j: : : -===- : :.i
               r―--┐     i: : : : : : : : : : : :l       それじゃ、シーユーアゲイン。
              i: : : : : ',      ゝ : : : : : : : : :t´
                ',: : : : : i  , f: : : : : : : : : : : : : :ヽ       夏祭り回……エロゲらしくなってきたじゃあないか。オラワクワクすっぞ。
                \: : : :y: : : :Υ: : : : : : : : : : :y: : '..,
                ',_: :: :/  i: : : : : : : : : : : :l丶 : : :ヽ
                     ̄   l: : : : : : : : : : : .i  \ : : :丶

3239安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 22:40:20 ID:CYScYWVE0
乙でした

3240安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 22:41:18 ID:JnQ6iwZ60
乙ー

3241安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 22:51:57 ID:0pnRGi3g0

死霊の盆踊りをオマージュ…してたら嫌だなぁw

3242安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 23:03:55 ID:qEveFhzc0
魚を殺すのとヒトを殺すのとはどれくらい違うのかとか考えてしまった
おつー

3243安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 23:04:13 ID:Q09M3rrw0
乙でした

3244安価のやる夫だお:2020/10/19(月) 23:16:58 ID:8aM1YZ460
おつです

3245安価のやる夫だお:2020/10/20(火) 23:05:24 ID:dNxtI7Cw0
乙でした

3246 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:01:11 ID:eewyaVm60
    /||ミ
   / ::::||
 /:::::::::::||____
 |:::::::::::::::||      ||
 |:::::::::::::::||      ||
 |:::::::::::::::||  、 - ‐‐ -,
 |:::::::::::::::|,´: : : : : : : : :
 |:::::::::::::::|゙i : : : :○ ○゙i
 |:::::::::::::::|}: : : : : : : _ _ _l      ハロー。
 |:::::::::::::::||: : : :-=´_ _,´
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 |::::::::::::::(_____ノ´||
 |::::::::::::::(_ノ / . . . ||
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   \ ::::||
    \||

3247 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:05:50 ID:eewyaVm60

                  . . .-─‐-. ミ
                     |: : : : : : : : : : `: ..
                     |: : : : : : : : : : : : /
                    }Ο : : : ◯: : : :,′
                   : : : : : : : : : : : :i
                      { -===- 、: : :. :.|
                    〉: : : : : : : : : :ノ       やる夫君のAAでさ、携帯使ってる場面のがあるんだけどね。
                  i: :`ニニニ´: : : : ‘,
                 __/ : : : : : : : : : : : : i       スマホ持ってるAAがないのよね。ガラケーしかない。
      ___        /.: : : : : : : : : : :‘,.:.三|
     / :::: ヽ: : : :‐--∧_: : : : : : : : : : :./:|: : : |        いや、仕方がないし、文句もないんだが、時代を感じるね。
     .′ :::::::‘: : : : : : }/∧ア´二二ヽ:/ | : : ‘,
.    ‘::::::::::::::ノ: : : : : :ハ \{/: : : :/⌒゙ヽ : : :‘        やっていこっか。私たちはピチピチヤング、いつだってエブリデイ最の高。
.       ゝ-=彡-──<¨¨゚‘; .: : :./:::::::::::::::} : :. :.|
                 \: :′:::::::::::/______」        
                     弋:::::: /
                       `¨´

3248 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:06:04 ID:eewyaVm60

    . . <: : : : : : : : : : ≧: : .
.  , : : :_:_: : : : : : : : : : : : : : : : : : > 、
 ,: : : : : : Y´: : : : : : : : : : : : :丶: : : : :\
./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ: : : ヾ:.、
: : : : : / : : : : : : : : : : : : : : : : : ; : : : ; : :ハ
: : : : /: : : : : :/;_:_:;: : :/: : : : : : :∨: : ∨: :!
: : : ::{: : : : : : {´`´`∨: : : : : : : : ∨≪∨:{
: : : ::|: : : : : : | _,.--}:-:、 : : : :; -:∨≪Ⅵ
: l : {:!: : : : : : !´  __l! ∨:|ヘ : }从: }: : : |リ
: |:l:从: {:-: : ::トz====㍉,   }/__,ム:| }: : |            たっだいまー。
: |:|: : {`ヽ ∨:!ゞ辷:ノ    ( ´¨´八.!::从
: |:|: : `ヾ_- .,         ,   .: : : ト 、            「お帰りなさい、はやてさん」
: |:|: : ∨: 〉く: 、     __ .,  .ィヘ:_:_、`ヽ
::介∧ ∨{  Y: >、    ̄ <: :{ ゝ_ィ^ヽ.            お、ええ子にしとった?
:{ .l: :∧ ∨:\): }ヾ:、/ ̄_Y二ニrf´` `  、
:| .|:∧ \{~ ‐}:l:!  >‐ミ {_|_ {ノ^ヽ     、__         「……多分」
ゝ/ ∧     |ハ./三三∨ ̄ `ヽ. ハ    〉:::::Y
_/ / ∧    / }!ゞ三三≧--=ニニニ{ト-::イ:::::::::!        そか、ならええわ。
.   /  \. /  .!::::::>:..寸二〉::::>:::::`ヽ:::::::::::::::|
,-=ミ    .У_.」::::::::::::::::><::::::\:::Y::::::::;::::::;ノ{         「あ、お風呂沸かしておいたお」
   `ヽ  {   .|:::::::-<::::::::}::::>::Ⅵ:::::::::::Y:::::::l、
       l!    !::::::{:::::::::::::└::―:-Y::o::::::::}::::::::|::\       おお、それは嬉しいなぁ。おおきに。
       l!   ム::∧::::::::::::::::::::::::::::`::、::::::|:::_:::_::_:::::
       l! イ::::::::::::::\::_:_::::::::::::::,::-::‐'::´:::::::::::::::ト、

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
河川敷で元ノーマル乗りだったという男と魚釣りに興じ、
日が暮れてきたからと家に帰ってテレビを見ていると、端末が震えた。
もう少しで帰れるという、はやてからの連絡だった。

彼女の名前が画面に出た時、安堵を覚えるのはなぜだろう。
ただ、少しずつ、自分の中の当たり前が書き換わりつつあるように感じていた。
おかしな状況には変わりないが、それが普通になってきている。
この短い時間の中で、このジオラマのような世界で、はやてと暮らしている。
それが普通であり、自分にとってその象徴たるものがはやてなのかもしれない。

車の音が聞こえる度に、はやてだろうか、とそわそわしていると、
ついに鍵が回される音がした。椅子からすっくと立ちあがり、玄関まで出迎えに行く。

仕事帰りの彼女は特別くたびれた様子もなく、けれど目つきや語気の端々から
若干の疲労を滲ませていた。出迎えに来た自分を見ると目を細め、
声を弾ませる。

夕飯の用意は荷が勝ちすぎるので、せめて風呂だけでも、と用意しておいたのだが、
はやてはそれを聞くと極々小さくではあるが歓声を上げてくれた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3249 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:11:30 ID:eewyaVm60

     ____
   /      \
  /  ─    ─\
/    (●)  (●) \      夏祭り……ううむ、やる夫が誘ったところで、はやてさん困らないかな。
|   u.   (__人__)    |
./     ∩ノ ⊃  /       いや、はやてさんだったら、本当に困るならちゃんと断ってくれそうだお。
(  \ / _ノ |  | 
.\ “  /__|  |         言うだけ言ってみるかお。
  \ /___ /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
はやてが先に風呂へ入っている間に、どう誘ったものか、
そもそも誘っていいものかとリビングの椅子の上で悶々と考えていた。

夏祭りというものに興味がある、というのも本音だ。
ただ、自分一人で行こう、という気持ちがなぜか湧かなかった。
はやてを誘って、はやてと一緒に行く、断られたら行かない、という大前提が、
いつの間にか自分の中で作られており、それに違和感も感じなかった。

テレビの古めかしい四角の画面に歌劇の舞台が映っている。
といっても、ミュージカルはミュージカルでもコメディらしいが。
観客たちの沸く声が聞こえてくるが、考えに夢中で内容が入ってこなかった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3250 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:18:39 ID:eewyaVm60

                      . . ''"゚~.:/⌒\ ‐-ミ
                    /⌒\//.: .: .:.:⌒\.: .: .:.\.: : \
                /.: .: .: .: r∧.: .: .: .: .: .: \: .: .: \.: .: :.
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色々と悩んだり考えたり、落ち込んだりもした。
けれど、はやてと一緒に居ると、不思議と張り詰めた表情が綻ぶのが
自分でもわかった。

彼女が笑っていたり喜んでいたりすると、胸の内で堅く結ばれたものが解かれ
暖かい気持ちになれた。自分がどんな人間か、ここに来るまでに何をしてきたのか、
忘れてしまったわけではない。そうではないのに、暖かいものがこみ上げてくる。

罪悪感や後悔なんてものではない。怖かった。
自分の行いが、自分の行く末が怖くて仕方なかった。果てのない恐怖だった。
元に戻すこともできず、償いなんてできるはずもないことを抱えて、
不安と恐怖でどうにかなりそうだったのに。

ここではやてとこうしていると、それらは優しい平穏という仕切りの向こうへと
追いやられ、目の前に広がるのは、彼女との日々だけとなる。
そしてそれを享受し、何も知らない子供のように眠る。
素敵な夢でも見ているかのように。

そして、こうも思うのだ。これが夢なら覚めてほしくない、と。
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3251 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:23:17 ID:eewyaVm60

               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (●)  (●)  \
            |      (__人__)     |
      ( ( \    )⌒´  。 ,/
           _ n  ー‐      \
        /-(ミ>二==____とー、ヽ
        i /ヽミ/   .∨////// i |
        i/  |     ヽ、__ノ   ヽ|
        .〈   |      ゝ_,,へ ノ

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
風呂上がりのはやてと一緒に夕飯の用意をし、テレビを見ながらいただいた。
今日は中華風で、あまり辛くない麻婆豆腐と餃子、ワカメのスープだった。
二人とも辛いものや苦いものは不得手だということで、
当然の如く辛みがかなり抑えられた麻婆豆腐と相成った。

主な行程ははやてが担当しているが、食器を出したりといった簡単なことは
自分も手伝うというのが、二人の食事の用意となっていた。
最初こそいたく感激されたが、段々と喜ばれ方も穏やかになっていき、
今日にいたっては「ん」と優しく目を細めるだけに留まるようになったが、
それはそれで感慨深いものがある。

自分が誰かにとっての日常の一部になっているのだ、というのは、
存外に嬉しいものだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3252 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:26:17 ID:eewyaVm60

     ___
   /   ヽ、_ \
  /(● ) (● ) \        あの、はやてさん。
/:::⌒(__人__)⌒::::: \
|  l^l^lnー'´       |       「んー?」
\ヽ   L        /
   ゝ  ノ               えっと、その……
 /   /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
洗い物を済ませて食器を片し、冷蔵庫の中を物色するはやてへと向き直る。
「たまには別のにしよかなぁ」とぼやきながら、いつもと変わらぬ銘柄の
缶ビールを鷲掴みにしていた。確か、あれはオルデンブルクグループの
ドイツ系飲料メーカーが手がけているビールだったはずだ。

食糧分野においては、IGIOグループがトップシェアを誇り、
次点でオルデンブルクグループ、その次にアヴィアコルグループ、
最後にSIグループとなっている。オルデンブルクグループのそのメーカーは
結構人気らしいが、飲めない自分からすればよく分からなかった。

小気味いい開封音を鳴らしながら鼻歌を歌うはやてに呼びかけ、
夏祭りについて聞いてみた。最初から誘ったりできなかったのは、
ひとえに勇気の不足だ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3253 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:26:40 ID:eewyaVm60

                        -‐…‐-
                  _.、-''" .: .: .: .: .: .: .: .: .`丶、
                    /⌒: .:/.: .: .: .: .: .: .: .: .: .:\.:\
              //⌒ヽ(.: .: .:.:\.: .: .: .: .:.\.: .:\.:\
                 /.:/.: .: : /∨\.: .: .:.:\ .: .: :\.:\.: .:\:.ヽ
.               / : .: .: : : | :i⌒ヽ : .:| : : |\ .: .: :\.:\.: .: .: : .
             /.: .:.|.:.: .: .:| :|   |.:.:.|.:.:./ ̄ ̄\ :| .: 〈∨〉 : :.
.            / .: | :|: : .: :/|⌒ |.:.:.| : : |  |.:.: .: .:/|/〉〈∧〉.:.:.:|
           /.:|.: :| :|.:.:.: .:.:|八  | .:j||.: .:| _|__|_.:/ ///:|.:.|: .: .: |
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        /.: .: :|.: :|八 : .: 八  _):刈 |.:.八   _):狄リ| .: 八| .: .: :|
        /⌒7.: : |.: :|.: .:\.: .:.:ヽ乂少 j/   ∨'少'.: .:/,ノ.: .: .: :|
          |: .:八.: .: .:\:\.:〈⌒, ,  、    , , 厶イ.: .: .: .: .: :|       私もここに住み始めたんが十七から……
          | /  \(\: \:::込     _       イ.:.:.: .: .: .: /.: |
          |:    \⌒\ .: 个        //.: .:/.: .: .: /.: : |        ちうても、たまにしか帰らへんかったから、
            /.: .:./r<\.: .: .\:>-<  / ̄/ .: /.:./、.: .:.|
            /:r<__||"^\\.: .: .\___/∧///.:.//\:|         行く機会もたまにしかあらへんかったんやけどな。
            / : /⌒\八   \\.: .:| \_/〈∧\.:.:// / ̄ ̄|
        ⌒7 :〈      ∨ ̄ ̄ ̄ ̄|.: |〉 /⌒\ |:::::V/./     ∧       せやけど、何度か行ったことあるで。
          {.: 八    / /    .八∧∧:i:i:i:i:|\:::::: 〈     /⌒\
         /    r<      /:::::::::〈 \:i:i|  |\::::〉      \\ |      楽しいで? 出店のご飯も美味しいし、
        /     /____/::::::::::/ :\ |⌒ヽ |::::::\~"''〜、、 \\
.       /  _.、-''":::::::::::::\::::/____/::::::::::::|:|:i:i:i:i|:::::::::::: ̄|:::::\:\ \\     色々遊べるし。
      _.、-''" /:::::::::::::::::::::::::V:::::::::::/::::\::::::\:i:i:i:|:::::::::::::::::厂〕:::::Y: \__|. \
     /    ./:::::::::::::::::::::::::::::}:/: /:::::::::::::::::::::::::::〈⌒〕:::::::::::/ ̄:::::::::}::::::| \  \
    /      ノ:::::::::::::::::::::::::::::::/::::::``〜、、 :::::::::::::::\|:::::::::/::::::::::::::::八::: \ \  \
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「行きたいん?」

はやては何かを察したかのように、穏やかな声音で聞いてきた。
頷いて返し、明日の夕方から始まるらしいと伝えると、
彼女は端末の画面に指を滑らせはじめた。予定を確認しているのだろうか。

ここで「ええやん、行っておいで」と言われたらどうしようかと思ったが、
その心配は杞憂に終わった。彼女も行きたかったのだろうか?
それとも、単に面倒見の良さの発露なのだろうか。少し、気になる。
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3254 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:44:52 ID:eewyaVm60

               ____
             /      \
           /   ⌒   ⌒\       「――ここで速報をお知らせします」
          /   ( ●) ( ●)ヽ
            l   ::::::::: (__人__) :::::::|      お……
          \     ` ⌒´   /
          /             ヽ





               _____
          /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:――
       __,.∠:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.⌒\:.:.:.:\
.      /:.:.:.:.:.:.:/:.:.∨:. /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
     /:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:. | :.:{:.:.:.:.:.:.:.:. |:.:.:.:.:.\:.:.Λ:.:.:.:.:.:..
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  |:.:|:.:.:|:.:|:|:.:.:|:.:.:.:|斗ぅ=ミ :|:.:.:.:.:|ァう=ミ: |:.:.:.:|:.:.:.:.: |
  |:.:|:.:.:|:.:|:|:.:.:|:.:.:.:{ )いハ 从:.:.:.:.| )いハ Y:.:.: ノ:.:.:.:.: |       ん、どないしたん?
  |:.:|:.:.:|:.:|ヘ:.人:.:.: 乂;;ツ   \:.| 乂;;ツ 从:.Λ:.:. /:.|
  |八:.:.|:人:|:.\\ト''        '''  /:.:.:/ }:.:.:.:.:.|
     \   |:.:.:.:.:.八     '    _,   /彡/_,ノ:.:.:.:.:.:|
       八:.:.:.:.:.个   `       イ:.:.:.:| :.:.:.:. |:.|
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ただ、こういうのはちゃんと、言葉にして誘ったほうがいいと思い、
気の利いたセリフを考えていると、テレビがニュース番組へと切り替わった。
アーカイブからの過去の番組の配信ではなく、リアルタイムでのニュースだ。

といっても、何か凄い情報が流れるということはあまりない。
世界情勢の解説、ブライドルの様子、自社の主張、それくらいだ。
要は、気にしてもどうしようもないことばかりということである。
それに不満を覚えるような層は、そもそもテレビなど見られていないだろう。

その映像の中に、速報としてコーカソイド系の男性アナウンサーと、
下にテロップが流れていた。コロニー・アマツ周辺でネクスト機による
戦闘が発生した、とのことだった。コジマ汚染の影響や被害の有無などを
淡々と説明している。
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3255 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 20:52:44 ID:eewyaVm60

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                   ∨ ∧ ` <_   |___  l    __,.、/:::,.、 ヽ::/ -‐   ̄    _)Y辷ーJ
                    /∨//勺  ̄  「  ヽL rくニ〃/''´ ..,;;;:::∧ jI_ ニ=‐''" ̄⌒ー'’
                 〈/∨//∧ \  |   l llメ~  /..:、''´..:'::>'’
          _         ∨// ,イ 、\|   l l|.、  / .....::::::::::∧
        \\           /〈//}  ヽ-=イL,イ⌒/.::/>:::::::::::∧
.           \\       ,:イ ィ㌻ ィ |!_//<ー'’ ///:::::::::::::::::ム
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    [_____  ̄ ̄ l|∨ーrヘ、_/ }  У     //:::::::> ´                  __
    \ヽヽヽヽィト-----|! l_|   マ/´|/)入__rくミュソ´━‐-  _        _.、<   l|
       ̄ ̄ ̄\l√ ̄l゙゙~ ノーゝ、_/<  {乂r刈j         ‐  _.、<    _>'´
              |! _,ィlリ< ̄ ̄     .> ´ /'/ 》         _.、<       /
           Yοノr'´     > ´/  ./'/ 》             ``''-  _     /- _
          >'^¨~    > ´ヘjィ/「   /'/ 》                  `¨¨~   -_
        <____> ´  /  |l  \, Ⅵ》 -  _                    ヽ
            ,.+'´ ,′ />ミⅣ  / `~|r=二ニ=‐- ―┯━‐-  _    __ _ 、<
           ,.+'’   l  ,' ,  ,' Ⅳ/|     八  ',         ー――=ミ、  ̄ ̄
           /      l /`ー、乂 Ⅵ!   /  \ \      ,ィチミ_、  ∨ /
         L」__    / _/  _ Ⅴ./弋   イ\ >    l{  (__}|!  ∨ __
           ̄    \  (辷__,> ´    \_/   ゞ、    ゝ.、__ノ γ⌒ヽ ゝ、
                  \!   !                   `'<_       {   《   ヽ
               l   /                        ‐  _弋_ノ~''<_」
                   l /                              `{   ̄``¬、
                  ∨                           \      li
                                               \    l|
                                               \  l|
                                                `㍉j

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説明が終わると、ドローンによって撮影されたというVTR再生が始まった。
その映像を見た時、目を見張った。見覚えのある機体が二機、
空中戦を繰り広げている様を遠目に撮影している光景だった。

片方はカズキのリベリオンだ、間違いない。漆黒のオルデンブルクフレーム、
スタビライザーの位置、大型ブレードといえば彼の機体だ。

そしてもう片方は、自分の最後の僚機でもあった、カタストロフィだった。
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3256 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:00:20 ID:eewyaVm60

      ___
     /::::::::::::::: \
    /::::::::::::::::::::::::::::\     なんでも、ありませんお。
  /::::::::::::::::::::::::::::::   \
. |:::::::::::::::::::::::::::(ー) .  |    お風呂入ってきますお。
  \    (__人__) .  /

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アナウンサーによれば、リベリオンがオルデンブルク輸送艦隊の
護衛任務に就いていたらしく、それをカタストロフィが襲撃した、とのことだった。

結果、リベリオンがカタストロフィを中破しつつも撃退。
カタストロフィは撤退し、リベリオンもアマツ周辺領域を脱出。
つまるところ、二人とも生き残ったらしい。

それを聞き、夏祭りだなんだと浮かれていた気持ちが途端に沈んでいった。
話題を切り、席を立つ。
途中で口を噤んで一緒に観ていたはやては困惑した様子でこちらを見つめるが、
取り繕う余裕もなかった。

少なくとも、目を逸らし続けていた現実を垣間見て尚、
彼女を夏祭りに誘えるほど、自分は居直れていなかったのだ。
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3257 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:00:40 ID:eewyaVm60
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3258 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:07:34 ID:eewyaVm60


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     /: : : : : :|/ | : :|:V: : :i : :| : : : : V〉: : ハ
.    /: : : : : : :|i !::斗-V: :|ー|‐|:-|: ::|:|i: : : |i
    ′l: : |i :|i |i_,.ィテテミ : : |N|ィテミN: |:|i: : : |i
   { |:::|i :|i |i  r勿, |:N  r勿ノ !::|:|5!: : : .
.      从::|i: |i |i: ^¨¨  i      」::|:|,ノ: ;小:.        ……大丈夫なん、ちうのもおかしな話やな。大丈夫ちゃうか。
.      〕: :|i |N」    ,  、  .: /|:| : /: : :|i
        |i ||:|:i>       .ィ :/::」:/〈: : : 八        これからは、ニュースは映さんようにしよか。
        |i ||:|:|///〕ニ=-   | l: : :/  V⌒V:\
        |i7⌒V| V寸ニニ才 !: /   \_,V⌒ :、     
.       _ --厶ヘ V  V /⌒丶 | {    -=ミ,V{  ,ハ
     〈,   /     V V^V__/^V |/ /    \ /
    /∧ /     }.  }i / Vi{  」 /  ______ /   __
.    {  V      ,リ,  }i   i{  }i,  /    |ー━=ミ」
    r」  ⌒ー‐―( ̄ ̄〉ム  /|  i|/    |    _.」L
    |⌒ー}     /    \ V   /  \   _|  ー=ミ__ )
    |   ノ    ,/       \ ./   f/―‐┐___   } \
   ∧__(___  _/        \   /  ̄ ̄〉 乙...
    /   /八       _ji斗〜'へ  ̄ ̄|   」(
 /  /   / ̄,.. .-‐ '''""~         .V  rノ.   \

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
風呂から上がり、居間へと戻ると、はやてはさっきのままの状態で座っていた。
ビールに口を付けた様子もなく、素面だった。
冷え切っていたであろう缶ビールは結露すらなくなり、温くなっていそうだ。

椅子を引いてこちらへと体の向きを変えると、はやては手を膝に置き、
眉尻を下げて気遣いの言葉を口にした。

思わず頭を振り、そのままうつむく。
違うのだ。気を遣わせたかったわけではないのだ。
ただ、あの場で、気にしないということができず、どうすればいいかもわからず、
逃げるように去っただけで。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3259 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:12:34 ID:eewyaVm60

             , - ー― -   ..
      ,  '": : : : : : : : : : : : : : : : : :> ..
     , ': : :、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :≧ 、
  ,. ' : : : : : ヾ,ィ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
 ,.': : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ: : : : 、 ヽ、
./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : ヽ、:',
' : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 、: : : : :'、: ヽ:.',ヾ、
: : : : : : /: : : : : : : : ,: : : ', : : : : : : : : : : : : ヽ.: : : : ', : ',:.!
: : : : : :,': : : : : : : : /ミ彡ヽ: : : : : : : : : : : : : :',: : : ,ィ',、 ',:!
: : : : : :i: : !: : : : : :i!    ',:',: : : :、 : : ', : : : : ',://!:',: !
: : : : :, i: : !: : : : : :i   _ ,:i、: : : :!,: : :',: : !,: : ',イイ.ノ:/リ
: : :!: :i: ! : i: : : : :', ', ´   リ ヽ: : :!',: : i:.!: !',: : :!,イ: i i!
: : :! : i: ',: :i: !: : : :ヾ、    -―-'、: ! ': : !リリ !: : !.!: : i
: : :!: : !: !,: !:!ヽ: : : !,,ィ示千キ''ヾ ヾ ',: !==''!:/! i: :,'i!          今は無理かもしれへん。
: : :!: : ! i ヽ',). ', : : ',`<Z汐     i i/   !'ヾ',!/ i!
: : :',: : ', ヽ、`- ヽ: : ',             ヽ   .,: : :ヽ、           けど、いつかは気にせんでようなるかもしれへん。
:.i!: :',: : ',: : : ヽ_ノ、ヾ'、              ,.イ: : : ',、ヽ
:.!i: : ',: : '、: : : :! ヽ:` 、       -=='  , イ!,、ヽ., -- 、',          忘れるのは、無理やと思うけど。
:i !', : '、: : ヽ: : ヽ '、: ヽ',>   __ .イ : !i:!ゝイニ ̄ .'、
:i i:.'、: : 〉、 : ',、: : \ ',: :',ヾ /、`ー-,  ̄ ̄r‐'‐'     ',         だから、これからは静かに……
',',',: i'、/, ヾ: ', `ヾ、ヽ!:i:i`ヾ''!_ヽ  i!i    ヽノ丶       ',
ヾヾ./ ヾ、 ヾ、   `i:iリ  /;;;;;;ヽ. ゞ==---、   ヽ.     ',ヽ、__      「やる夫は」
  /   ヾ、       リ,i! /;;;;;;;;;;;;;ヽ 、   ヾ、.  ゝ、  ノイ/::!
_/   / ヾ、   // !i、`ー--〈;;;`ヽ、ー――--}`ー―‐''"::::::::}
. /   /    ヾ,、. // i !:::`ヽ、 ヽ;;;;;;;;;;;ヽ::::::ヽ:::::\::::::::::::::::::::::::i!
/   /     ヽ_/ , i !、:::::::::::>ヽ;;;/:: ̄ヽ/..、::::::::\::::::::::::::::::ノ、
イ  ̄ `ヽ、   ,ィ , イ  !'、:::::::::::::,::-、>、:::::ヽ::::`i::::::::::ヽ--ー"イi
      `ヽ  i !     i:',:ゝ''":::::::::::::',:::::::`ヽヽ:::i:::::::::::::::',: ̄:::イ!
          i !     !::'、:::::::::::::::::::::ゝ-----ゝ'::::::::::::::::i::::::::::::::ヽ、
         i i !    /:::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::',゚:::::::::::::i!:::::::::::::::::::ヽ
ヽ        i .',',. , イ::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::',:::::::,、:ノ____::::::::
  ヽ、__     i .!i' ! !:::::::::::::::::::ヽ__::::::::::::::::::::::::, --'."::i::i:::::::::::::::::::',ヽ、
`ヽ、      i/ /. ,'. ,'::::::::::::::::::::::::::::i--' ̄::: ̄::::::i !:::::::i::!::::::::::::::::::::!





        ____
       /    \
.    /          \
.  /    ―   ー  \      ……やる夫には、そんな価値、ないですお。
  |    (●)  (●)  |
.  \    (__人__)  /       リンクスでなくなったやる夫には。
.   ノ    ` ⌒´   \
 /´             ヽ

3260 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:15:32 ID:eewyaVm60

..     ____
    / ―  -\
..  /  (●)  (●)       やる夫は……リンクスになれるって聞かされた時、嬉しかったんです。
 /     (__人__) \
 |       ` ⌒´   |      これで自分でも、って。
. \           /
.  ノ         \       
/´            ヽ





   / ̄ ̄ ̄\
 /        \
/    ─   ─ ヽ     ……昔、友達がいたんです。友達と、よく、話してたんです。
|    (●)  (●) |
\  ∩(__人/777/      『俺たちは、ただの路上暮らしじゃ終わらない』って。
/  (丶_//// \

3261 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:32:11 ID:eewyaVm60

  i .: .: .: .: i.: .: .|.:i.: .: ! Ⅵ.:V.: .:V i:/i\}.: .: .: .: .: .: .: .: .: }
  |...: .: .: .: .: .: .:斗:-┼.ハ : }',.: ∨\i:i}-、.: .: .: .: .: .: .: .:i
  | .: .: .: : .:',.: {八.:_.{/ Ⅵ Ⅵ.: }: .: .: |/ }.: .: .: .: .: .: .: .:
  | .: .: .: i.: .:Ⅵ:i爪r'ハ¨¨}} ', Ⅵ:|: .: .: |i , .: .: .: i.: .: .: .::     ……。
  | .: .: .: l .: .: Ⅵ  vリ ノ' }  Ⅵ|: .: .: |//.: .: .: .:| .: .: .: :
  |.:i.: .: .:{ .: .:..八           Ⅵ: .: .: |/.: .: .: .: .i .: .: .: :
  |:.|八.: ハ.: .〈             |: .: .: |、 .: .i : .: .: .: .: .: i
  |:.{⌒Ⅵ∧ .: 、             |: .: .: | }.: .:|: .:..i.: .: .: .: {





        ____
      /      \
     / ─    ─ \
   /   (●)  (●)  \      あの時……。
   |      (__人__)     |
    \    ` ⌒´    ,/
    /⌒ヽ   ー‐    ィヽ
   /      ,⊆ニ_ヽ、  |
  /    / r─--⊃、  |
  | ヽ,.イ   `二ニニうヽ. |





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:::.:::.:.:.::.:.::.::.:.::.:.:.:.::.:::.:.:.::.::.::.:.:.::.:.::.:.:.:.::.::.::.::.::.::.:.::.::.::.:.::.::.::.:.::.:.::.:.:.::.:.::.:.:
..:..:.:..:...:.:.:..:..:.:.:..:.:..:.:.:.:..:..:.::..:.:..:.:.:.:.:..:.:..:..:.:.:..:..:..:.:.:..:.:.:..:.:.:.:..:.:.:..:.:.:.:.:.:.:..:
  ..:.:.. .. . ...:.:.:..:... ..:.:.:... . .  ..  .:.:.:.:....   ....:.:.:.. ..:.::..:...  ....:..
...  ...     ...:.:.             .    ...   ....:.:.:.:.::..
               О ゚  。 ノ  、。 ゚  О
             ∩/。◎ ◎。ヽ∩
                弋ゝ (_人_) ノノ  
                |       |
                |       |

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両親が死に、住んでいた家を追い出された後。
訳も分からず路傍で泣き続け、兵士から情けで貰った硬貨も
通りすがりの悪臭を放つごろつきの中年男性に奪われ、
途方に暮れて家の近くでうろついていた。

宛もなく歩き続け、歩き疲れて、どことも知れない家屋の冷たい壁に背を預け、
アスファルトの上に座り込んでいた。

両親を呼ぶこともやめ、喉が渇いた、腹が減ったといった言葉しか思いつかず、
掠れた声で、「水」とぽつぽつ呟くのが精いっぱいになるまで弱り果てていた。

多分、あのままだったら、自分は野垂れ死にしていただろう。
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3262 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:33:51 ID:eewyaVm60

          ,..-'": : : : : : : : : : : :.,..- ..,,: : : :',: : : :.: :ヽ,,,,,,,,,,,
     ._..- ̄~/i: : : : : : : : : .,'´    `'-.: : ::/: : : : :,/
  ._..-'"   / │ /''''>: :,il'''′     ゙'ッ_"": : : `゙,゙ニ=‐
.-'"     ./ / /  ./ :./ `''ー ..,,,,,,,,、     ヽ.: : /
       ,l!-ッ : !、 .! ,i′ .‐'''ニヽ    ',   / : : :!
  .     l ,'-''li..-ヘ,,,¨   'ー゙‐'    -、\ l: ィ-ィ-ゝ
 │   /   |   /',          |フ..〉 ./ ̄゛ ',
  !   .l゙   .l、 i′ヽ       !  ´ .,/゛    !
  .!  l゙    l゙ヽ.゙   l  , - 、  ‐  ,.イ      ゙l
  .|  !   │ `゙'―‐', ´゙ゝ" _..-'" l       │      ……。
   l |   .!       \,_,//   l   /    /
  ./   !    |         /    l ./    /
. /   .l   │       _,./    ,l___,,,,,,,,,,  \
゛    !    !     _..-'" /    ./        l゙
    .!   ,!  ._ /   ./    ./│       !
    .|   !  ゙ !    ./   /  .l       │
    │  !  /   ./  /     |       │
     .|  |   〈  ./ /       !           l
     l  /    ヽ,'./         .!        l
     | /   ._..-レ゙         | ー ,,,   .ヽ  !
     | .,' ̄ ̄   `´゙'、        ヽ   ~`- ̄  ヽ
     |.,' .!        ゙―――――ーゝ ..,,,_  `''‐ ヽ
     l゙  .ヽ                   `゙''ー、,  ヽ
    /    .!                      `'‐、.ヽ
   /     /                          ゙''.l、
  /     /                            ゙ヘ,





               l!i!  ., 、 、i .i! !!
               l!  〇 〇) ヽil |l
               l! (人__) ノ.i!.|l      ……。
               l! (ξ)_,ノ| i!.|l
                   | | .|__ノ
                   LLノ

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そこに、彼が通りすがった。
自分よりそこそこ年上の、けれど少年の域を出ない男。
ごろつきにしては上等な恰好をした彼を、なんともなしに目で追っていると、
彼はふと立ち止まって、こちらを見た。

それから幾らか見つめ合った後、彼は黙ってジャケットの内側を探り、
何度も使いまわした形跡のあるペットボトルを差し出してきた。
中には澄んだ水が入っており、それを見た途端、思考が吹っ飛んだ。

彼の手からボトルを奪い取り、中身を夢中で喉へと流し込んだ。
落ち着きを取り戻し、少ししてから、立ち尽くしていた彼がぽつりと呟いた。

「どうしてこんなことしてんだろうなぁ、俺」
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3263 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:38:38 ID:eewyaVm60

        __ ノヽv
          `>、    `Yト、
        /  、ヽ )) ノ  ル′
      イ  >r─-、ノノィ了
      ムィヒュ}ハゝ_ `ー彡′
         久4iり ァ‐ ` rイ
     /〈 ヽ   `´  fソ r‐、
     ノ`ー、ヽ \  ‐r┘r<_ハ勹、
    /    \\ 〉‐<ト、 `ーヒニソト、        「それもそうですお。八歳の子供があんなスラムに一人で放り出されて、
   /      \\ \〉  l|  l |
   〈           \\ \ノト-┘|         十年近くも生き残れる訳がありませんお。
   l.l         \\ Y   |
   ||      l/       \ヽト、_ ノ          ……一人でなら」
   ll     .イ!       ヽハ{
   |   〃l!ト、       ヽ\
   |     》 `┬<__   ヽト、
   l   / 7´ ̄`ヽ    `ヽ   N
   l     ノ      人         ト、
   ヽ、_______ 人      |∧
       // T   フハ       l il
        〃   l       ハ    / l|
       〈    l  /      ヽ、_ノ个〈|
        ヽ  |Y/        / l
        \ハiノ          / /
           {         / ,'
           |        ,' l
           |         /  |
           |      /   ,'

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彼はただ、クニヒコ、と名乗った。
年齢は当時十五歳だと言っていたはずだ。

路上暮らしは当然自分より先輩で、十三の頃からだと言っていた。
ただ、その割には体つきもしっかりしており、ぼろぼろではあるものの
しっかりとしたジャケットとパンツを着こんでいた。

そんな彼に自分はついていき、特に何か決まり事も作ったりもせず、
一緒に配給の列に並び、時として彼の稼ぎ、まあ、スリだったのだが。
それにも付き合うようになっていった。
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3264 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:49:10 ID:eewyaVm60

     <:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::} /
    /::::::::::::::::::::::::> '´ ̄`ヽ、::::::::::::::::::::レ ィ´
    _)::::::::::::::::::::::::::::ゝ   ̄`ヾ、\::::::::::::::::::::/
    `Y:::::::::, -、::::::/    fサ`ヾ \ `ー┐::::/
    ノ:::::::/⌒ }:::::l     ̄`    r=ヘ::::ハ
   /:::::::::::'、 { ハ::::{            fア`}ノて
   ⌒Y::::::::}o_ Ⅵ            `Yイ
    /)人/  }       ;: 「二`ヽ、イ/         おお、六本も……! 背が小さいからやりやすいのかね?
      /   \       `ー、)_ン ノ′
     rー┴- 、         ー  /           とにかくでかしたぜ、やる夫! 今日はベンダーの中身を空に……
, -─‐' -- 、 \  \       /
         丶、\  `丶_/              って、財布の中身が空だな……こいつは入ってるか。
          \ \ イ\
           {ト、 \\.\              
 ,    ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ } 「`ヽ \
                 ト、 \ ト、 ト 、
                   \」| ', \ `ー- 、
                    `ヽ ヘ  '.   \             /
                   \   、    }          _,.   ´





                   - -、
                ● ●) ヽ      ベンダーって、壊せないのかお?
                   (人__) ノ
              /      ヽ      「防弾素材に耐衝撃コーティング……とにかく滅茶苦茶かてえんだ、無理」
.                (|     し'
                   .し    J

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クニヒコは両親がオルデンブルクアジア支部の社員だったものの、汚職が発覚。
かなりの金額が横領されていたらしく、二人とも財産没収の末に
コロニーから追放され、ついでに息子のクニヒコも上級市民IDを剥奪された、
と語っていた。つまり、元は自分よりも良い生活をしていたのだ。

オルデンブルクのコロニー管理が杜撰なため、トウキョウの居住区には
修理もなされていない廃墟が数多く存在しており、それを転々としながら
スリで得た金と配給食で日々を凌いでいた。

いつしかスリは自分がやった方が効率も良いしリスクも少ないということで、
自分が担当することになった。もしかしたら、彼も彼で自分を利用しようと
していたのかもしれない。実行犯を他人に任せられれば、
もしも捕まったとしても、彼に憲兵の手が伸びることはなかったろうから。

だが、彼は自分が成果を持ち帰る度、いつしか自分の無事も喜ぶようになっていった。
段々リスクを避けようと場所も変えるようになった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3265 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 21:59:53 ID:eewyaVm60

                        .ィ__
                    _ .::::´::::::::::::::::て
                  人ノ:::::::::::::::::::::::::::::::::::\
                、):::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::て
                   {:::::::::::/ ̄}::::::::::::::::::::::::::::::(
                  ヽr'"/   ヽ:::::::r=-、::::::::::ミ__∠
                  〈、  f}`   }:::::}に l}:::::::///  
                     `}  ´    ゝイ rイ:::::::( >´         「こんなにお金集めて、どうするんだお?」
                    く_ __ィ     ノ ∨(´イ
                    ヾフ′   /  }/ \_         へへ、聞いて驚くなよ。
                        l   /  ,  ┴ 、  /
                       _`二∧// ̄ ̄{イ/          ……市民IDのクラスを上げるには、
                 ,   ´ //イ/     ト、 /
                  /   //  /         ヽハ          企業から目をかけられるか、結構な額を積む必要がある。
               l    /  /|          }|
             /ヽ/ /  / ノ            |           けどな、一月だけ……臨時上級IDって仕組みがある。
          , <  、| _r-、_∠               |
         /r==- 、 rくヽヽ」┘            / イ__          大体十分の一くらいの額で取得できてな。
         /- f     >'ー`           7/ / |
      |  {    /           __ ∠ -一j !            医者に罹りたい奴とかは、大抵そうしてる。
      /    ∨  /          /      / |
       {    ∨              ´       / |            上級なら医療費も八割企業が持ってくれるからな。
       ヽ、__ヽ、      > ´           }  |
         / / \___/              /   !
         / /                  /     |
      / /                 /       |
       / 「                   r''          |
     /   }                   /|        |
   /   イ                    /|        |
 /    /|              /l |        |





                 / `ー┘\|\_,
            、-‐' ´  __ト、     `ヽノl
             ) `ー-'     \|!      |
           /     _ __     i     !
          ∠     く     ̄`ヽレ‐‐┐  レ|
          丿     / ,r‐-、       |   /
         ∠、    | ´  __ミコ j  r=-‐'l   L
           ヽ r-、 |   r'´o`   '´o` !  /              で、だ。トウキョウのエリアC-6……端っこの方な。
            ハ | .!   `  ´   l `  トレ' 
             ス_ヽ|        ,   /ノ                 そこにネクスト整備施設っていうのがあるんだ。
   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄フ 〉 `l   r-、___  /__ _
  /         |! |  ゝ、  `  ̄ ̄ ̄´ /       \           そこには……なんと対コジマ装甲のノーマルもある!
            |  !    ヽ      /          丶
            |  ト、     ` ー, イ             |          親父が昔言ってたんだよ。トウキョウの施設で、
         ノ`ハ  l `ー-、__/_,|             |
     ___/ /_アヽ |          |             |           そういうのがあるってな。
    (___|  / /  r' |          |             ソ―-、__, -v―、
       | ム,'   L_| r‐、       |   〉     r-、__/     |  ヽ_ノ   
       L_ ゝ__   レ' /   r‐、  |  /    /     __  ,r‐ 〉  〉
         ヽ |     / ̄`v'   |   |  \    ヽ /`ト- / -| |  |   /
         |    、_/  、    /   |   \     レ' |  |   |    L/
         |         >‐‐ '   |    /     ゝ-'⌒ヽ、__人_/
         |       /      |   /              | ヽ

3266 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 22:10:55 ID:eewyaVm60

          /\          イ
            /::::::::::::ー -- 一 ´:::::::l
      ト、__/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
      |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:\
    ヽー' :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:   ア
      |::::ヽヽ:::::::::::::/::/:::::::::´::::.:.:.:.:.:.:.:    |
     |::::::::::`:::::::::〃:::::::/:.:.:´⌒:.:.:.:.:     ヘ
      l:::::::::/ ̄ヽ-‐ 一  ̄`ー-‐、::.:::.:.:.:....   ヽ      で、俺たちはその臨時IDを金貯めて取得して……
   ∠:::::::::|             ゝ.:.:‐-:、    \
    T:::::/-‐、     _    く::.:ヽ、:     /      基地に入るんだ。そこで働かせてくれって頭下げるもよし。
     \イ  ̄``   ー― ==-、 ヽ:.:ヽ:   /
       {| r fjト    ィ,ァー-、   〉:::r=-、 |         無理そうなら……そのノーマルをかっぱらって逃げる。
       i  ー-      ー-‐   /:::/ ⌒ l:.:ミ
         i    ,           /::/o ノ//          「無茶じゃないかお?」
       、    、         〃' -ィ\| 
        、               /  |ト             無茶しなきゃあなあ。でねえとこのままだ。
         ヽ `ー-‐-‐'    /   |/
           、  ー     /    /
            、     /     /
            ー-<     /
                /ヽ /

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臨時IDという制度は、労働者たちの希望だった。
金を溜めてそれを取得すれば、仕事だって相応の機会を得られる。
そうしてコロニーに押し込められ、労働に従事し、ギリギリの賃金で生を繋ぐ
日々を脱し、華やかな上級ID所持者としての生活を望める。

クニヒコもそれを狙っているようだった。
しかも、ただ上級ID所持者になろうと思っているわけではないようで、
彼はよく「稼ぐだけじゃねえ。デカくなるんだ。誰も無視できねえくらいに」と語った。

そのために、彼は武力に目を付けていた。ノーマル乗りになろうとしていたのだ。
実際、コロニーの若者たちにとって、唯一の希望とも呼べるのが、
ノーマル乗りという道だった。専門技術はいらず、ACの基本操作さえ覚えれば
誰でも操縦できるという点から、一番の近道だった。

彼はそこからさらに成り上がっていくのだと、よく自分に語って聞かせた。
当時は自分もAMS適性について大した知識もなく、
まさか自分のような人間にもあるとは思っていなかったため、
上手くいけば自分もノーマル乗りになるのだと思っていた。
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3267 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 22:19:38 ID:eewyaVm60

       /`ー〃/    <_
    |!/|l/  /          ̄ ̄二=─
  |Vl ヽ /ヘ 〃´ 彡         ゝ
 \ヽヽ     _              \
 ヽ、ト、.__,,. '"´   `ゝ             \
  \/    ___ ミ、              >
    ム ヽー''"´-‐-、  ヽ   / ̄ ヽ        ト      世の中は結構単純だ。雇い主さえいれば食っていける。
   ヽ-、    、 _fj_〉  |  l! l⌒) l      ナ
    | f〉         | / 〈oノ /       广       最悪敵対企業の施設まで逃げて、そこで雇ってもらうさ。
    レ'          レ′ r-‐' l    r彳
    ヽ            |   V、__/⌒ヽ         もしもかっぱらう場合は、一番性能が良さそうなのにしようぜ!
      、ー一‐'''´     ノ_ / ̄ ̄〉
      ヽ ̄´     -/'´       `7
       l    //             ヽ
       `ー-‐ / /             \
          / /              ヽ
       //  /                   l
      / /   l                     l
        |l /  |





    Z  从  v 〃:::::::::::::::::::_,,:::::::::::::ミ
 ト、V  ,"  〃:::::v〃:::::__‐''"~  ミ:::::::::::ア
 ミ  ミ/ヽ、 ::::-''""::__,,,,,_ "''フ::::::::::::::::::::<
|'- ,,_  ,,,、 ::_,,-‐''""   `,::::`"''''‐-、、:::::::ミ
ヽミ  / `"~        /:::::::::::___ ミ ::::::::了      俺もおまえもよ、こんな生活するために生まれてきたワケ、ねえんだ。
   ミ|''‐-、 、__..,,,-‐"''''‐ "‐r::::「=、ゝ:::::::r''
    \‐q、   ,,u‐-、   |::::|⌒ ):::::/         負け組になるために生まれてきたなんてあるわけねえ。
    ミ|`"   `‐- ''    |::ノヾ/‐くv"‐-、_
      l ノ         W |  ノ ヽ        俺は、俺らは、デカくなるんだ。誰からも踏みつけられないくらいにな。
   _,-‐'''ヽ 、,,_         /  /  /
 /    \、,,_____      ノ  /  /         「……うん」
/       ヽ、  `   /  /  /
|        /`,   __,,イ   /   /
.|        /  `~i゙ゝ、`''、  /    /

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その理屈は、自分にとっても希望だった。
このまま終わりたくない。その想いは一緒だ。

ただ、それ以上に、クニヒコの役に立ちたかった。
自分を拾ってくれた彼に、生き永らえる術を教えてくれた彼と共に在るために。
それに、自分も良い生活はしてみたかったし、ここで死ぬというのも嫌だった。

クニヒコが成り上がりたいと言わなければそれまでだったろうが、
彼がそう言うのであれば、自分はどこまでもついていこうと思っていた。

最悪の場所で最悪の暮らしの中で、彼の隣だけが、辛うじて笑える場所だったから。
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3268 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 22:30:02 ID:eewyaVm60

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       ノし ゙\, .,、,/"u\
     / ⌒ (◎)ヾ'(◎)u \
      | u  ⌒゙(__人__)"⌒ u |
       \ u   `ヾ,┬、/` ,/
.       /⌒/^ヽ、 )__( ,ィヽ、
      /  ,ゞ ,ノ ゙⌒" ,  ゝ、
     l /  /      ト/.\\





≧::::::::::::::::::\         ` ̄   /::;∠:ヽ::::::::::::::::
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`Y:::/⌒Y:::Y  __ヾミ、   }l   /:::::|::::!::::}:::::::::::::::
ノ::::{ { i:::::|  《  aヾゞ彡  /:::::::::::|::/:::/:::::::::::::::
 ̄八、ヾハ:::{   ー一 -='  イ:::::::::::::l/:::/:::::::::::::_:_
─ァ´ \ Ⅵ 「 ̄ ̄ ̄}    {|:::::::::::::::/::::::::::/ヽ   
 /   / ̄l ヽ     」     l|:::::::::/:::::::::::::/       
 l  |  ヽ   ̄ ̄ ___r‐-|:::/:::::::::::::::::::>、
 |   ∧    \   /'ー─{ -|、, --、::::::::/:{::::\     
 |   ∧     \ヾノ`Y       ̄}:\/\::::ヽ
 | -─┴ ___.ノ -ァ′ /       ̄l::::::::\:
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             {     / - =    /::::::::::::::

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がむしゃらだった。
ゴロツキ同士の縄張り争いで、人をたくさん殴ったり蹴ったりもした。
クニヒコも拳銃こそ持っていたものの撃ちはせず、脅し程度に使っていたので、
結局は殴り合いだった。ただ、それも積極的にはやらなかった。

別に自分は体格に恵まれていたわけでもないし、
クニヒコも特別筋肉質というわけでもなければ格闘技の経験者というわけでもない。

大抵はスリと配給の受け取りを繰り返しながら手ごろな廃墟を転々として、
諍いが起きれば逃げ、勝てそうだったら殴り合った。

そうやって、何度対汚染ドーム越しに夕暮れを眺めただろうか。

恐らく十歳になる頃に、それは起きた。
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3269 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 22:36:29 ID:eewyaVm60

                  |V:::::::::::::::::::::::
                    l`゛::::,,,,.::::::::::::::::::~V|
                   'ly/ ̄ ヽ_::::::::::::::::::::|
        。   。  ゚ 。 |゙゙ ..,- 丶 /:/゙'l,::::::::ゝ 
         ゚  ゚     ゚  タイ    ゙´。__/::::::.イ
              ゚  / . ′    / .l、::ッ-″
                   ヽ,、    ̄´  .メy
                     `'Y      !
               ,, -‐‐‐-- / l、  ,,,,,__ |'ー、
          ,r -'"     / 丿"'¨´   `'!、 .ヽ、
     ____,, -ゝ     ,,-'"  /    i     / l  ̄^'''''‐、
__,, -''''´          \ /      l   / / __l      i    __   __ __
            /´ ̄.フ       !  / //        l、   l l / ノ ノ
               l  /        l│./ / \        `゙'' vl _l/ / /-、
        ⌒ゝ / /}        リ  /  /   l         l  l  l l r ‐'
⌒l-ー''''"゙ ̄ ̄/// l        /  .i   /    |.        .l .┴┴ !┤
__ l、      ノ !/   l        !   l   /    /ヽ.       l   ---- l
.. ノ `ヽ、  / /   .!         / l /    l  ヽ     _丿     / .l
  `ー‐′ /   /   l            r-' | !     l    ヽ  / __ ゝ ソ 丿





         :, -─‐──‐-、:
          :/     #;;;;゚┳  \:
       :/ ;  ゜#     °  \:」
      :l  .U┳     ; ;;;;;#;;;;;;;;;;;; l⌒ '";;;; ヽ、:
       :|;;;;#;;;┃;;; ;;  u.    ;   |ー       \:
.      :! u. _ノ#ヽ、__ # ∪        ;;;  ,;   \ ,rー、:
        :ゝ。((-‐)  ;;;;;;(--)::。 i';;;⌒┳ ̄` ̄ ̄ ̄ヾ`ヽ ヽ:
       :(  ヽ'"(__人___)"'__ ,ノ ヽ、__;;__"___,、___ソノ__ノ:
  ´ ´ `゚~゜´^" ´~`゚゜`⌒ ´"´´゚^゚^ ~゜゚`´^゙^ ^´'゜´^゚´ '゚^´゙ ^ ゚゜

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夜明け頃に、別の廃墟を探そうと二人で移動を始めた時だった。
後ろから別の浮浪者に襲われたのだ。

クニヒコがベルトに差していた拳銃を奪われ、銃口を突き付けられ、
抵抗を禁じられたままタコ殴りにされた。

今までが奇跡のようなものだったのだ。幸運だったのだ。
それが尽きただけのことであり、そういった光景もありふれたものだった。
自分たちの番が回ってきたのだ。

それでも、命まで奪われることはそうそうない。
無一文の者をわざわざ殺したところで得られるものもそうないからだ。

今回はツイていなかった。溜めこみ続けた金が入った鞄も奪われるだろう。
一からやり直しか。もしくは後々奪い返すのか。
しこたま殴る蹴るを繰り返され、体中が熱を帯び、ぼんやりとする意識の中で
考えていると、視界の端で倒れ伏したクニヒコが男たちの足に掴みかかった。
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3270 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 22:41:00 ID:eewyaVm60

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      ,. -‐-.,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/  ,'7 ̄`ヽ_       //::::ヽ.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
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       ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.`ヽイ/:::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::l`
     _ノ;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ.::::::::::::::::::::::::::::::|__
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        シ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::  ~ ̄~ ̄~ ̄,`


╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
クニヒコは、それまでの努力が水泡に帰すのが耐えられなかったのだろう。
男の足に掴みかかり、囲んで蹴られながらも離さず、やがて足を掴まれていた
男が悲鳴を上げた。噛みつきでもしたのだろうか。

それからは、よく覚えていない。

男たちが去った後には、血だまりの中で転がったまま、
冷たくなっているクニヒコだけが残されていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3271 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 22:49:50 ID:eewyaVm60

         _ ノ゛,, ;、、、 '⌒ゝ、 ',
       `┬;;;:::┬′   ィ===yl
        ⌒゙''''''´"        }
     l!            u   ./    クニヒコ……
   i! |l     /´   |   ゝ /
\  l| l      ゝ、____人_____ソ
  ` .、  ι     、::::::::::ノ/
   :ミ:ー.、._        ̄  ``'''ー-、

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
鈍い痛みに苛まれろくに動かぬ足を引きずり、物言わぬクニヒコのところまで
行くと、そのままくずおれた。揺さぶっても名前を呼んでもクニヒコは起きなかった。

しばらくして、震えが止まらなくなった。
走り出して、そのまま逃げ去った。
怖かった。何か複雑な感情なんて持ち合わせていなかった。
ただ、怖かった。涙と鼻水と血と小便を垂れ流しながら、走った。
片割れを殺された獣のように、ただひたすらに。

そこから先は、大して変わらなかった。
クニヒコが死のうと、腹は減るし喉は乾く。眠らなければ身体が持たない。
延々と、そうした日々の繰り返しが、再び始まった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3272 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:21:24 ID:eewyaVm60

      ___
     /::::::::::::::: \
    /::::::::::::::::::::::::::::\
  /::::::::::::::::::::::::::::::   \
. |:::::::::::::::::::::::::::(ー) .  |
  \    (__人__) .  /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
ただ、クニヒコと一緒に居た頃ほどの貪欲さはなくなった。
食糧も毛布も何でも、持ち切れなかったりする分はそこらの行き倒れている
他の子供に明け渡したり、なんてことも多くなった。

ある日、いつものように配給を受け、裏通りへと足を踏み入れると、
家屋の裏で蹲る少女を見かけた。

栗色の髪は枯れ木のようにぱさつき、雑巾を纏っているかのような服装だったが、
伸び放題の髪の下の顔つきは些か愛嬌があるように思えた。

少女に配給食の内の一パックを渡す時、こう吐露した。

「一人だと、なんか、さ。あげるよ」

すると、少女は二人で食べることを提案してきた。
当然訝しんだが、周囲に人の気配もなかったので、そのまま隣に腰を落とした。

どうやら少女は、居住権を失って後、ずっと一人の男と生活していたらしい。
今となって思えば、慰み者として重宝されていたのだろう。

ただ、少女に食事を分け与えた時、クニヒコと最初に出会った時のことを
思い出した。彼も、こんな気持ちだったのだろうか。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3273 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:27:35 ID:eewyaVm60

..     ____
    / ―  -\
..  /  (●)  (●)
 /     (__人__) \     戻ったお……。
 |       ` ⌒´   |
. \           /
.  ノ         \
/´            ヽ





        ____
       /    \
.    /          \
.  /    ―   ー  \      ……。
  |    (●)  (●)  |
.  \    (__人__)  /
.   ノ    ` ⌒´   \
 /´             ヽ




     ____
   /       \
  /      ―   ‐
/        ( ●)  )    くだらないお。
|            (__ノ、_)
\           `_⌒
/           \

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
少女は何も敷かずに座り込んでいたため、他の廃墟に置いていた
毛布を取りに行った。別に少女をどうこうするつもりもなければ、
ずっと一緒に居るつもりもなかった。極めて短絡的な行動だった。
しかし、一晩くらいは面倒を見ようと、そう思ったのだ。

少しして戻ると、少女はアスファルトの上に倒れ込み、肩で息をしていた。
駈け寄って確かめると、身体が熱かった。
まあ、事の顛末としては、病気を患い男に捨てられたところに、
自分が通りがかったというだけのことだろう。

しばらくすると、少女もまた、クニヒコ同様に動かなくなった。
冷たくなっていく少女を傍目に、彼女に掛ける筈だった毛布を羽織り、吐き捨てた。

何もかもがくだらなく思えていた。この場所も、暮らしも、自分という人間も。
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3274 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:31:01 ID:eewyaVm60

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  ..:.:.. .. . ...:.:.:..:... ..:.:.:... . .  ..  .:.:.:.:....   ....:.:.:.. ..:.::..:...  ....:..
...  ...     ...:.:.             .    ...   ....:.:.:.:.::..

..     ____
    / ―  -\
..  /  (●)  (●)      ネクストに乗れるって聞いた時、嬉しかったんですお。
 /     (__人__) \
 |       ` ⌒´   |     ネクストに乗れれば、自分でも、強い力が持てる。守ったり壊したりできる。
. \           /
.  ノ         \      あの黒いネクストみたいに。
/´            ヽ




   / ̄ ̄ ̄\
 /        \
/    ─   ─ ヽ     そうだお。やる夫は、黒いネクストに親が殺されたし、思うところもあったお。
|    (●)  (●) |
\  ∩(__人/777/      けど……それ以上に、憧れたんですお。それだけの強大なものに。
/  (丶_//// \

3275 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:38:04 ID:eewyaVm60

         ____
        /― ― \
      /(●)  (●) \
     /   (__人__)     \      やる夫は……望んで人殺しになったんですお。それなのに、こんな……。
      |    ` ⌒´      |
      \           /       アリー・アル・サーシェスの言う通りですお。
        /         \
       |              )      望んで人殺しになって、途中で怖くなって、今頃マトモぶったところで。
.     |  |         /  /
       |   |       /  / |       
       |  |      /  /  |
      (YYYヾ  Y (YYYヽ |
     (___ノ-'-('___)_ノ





   / ̄ ̄ ̄\
.. / /     \ \ 
/  (●)  (●)  \     やる夫には、はやてさんに良くしてもらうような価値なんてないんですお。
|    (__人__)    |
\    ` ⌒´    /
/              \

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
何もなかった自分でも、ネクストに乗れさえすれば。
それだけの強大な力があれば。

何かの役に立てる。誰かが必要としてくれる。
大きなものを守ったり、壊したりできる。

自分のような人間にも、価値が生まれる。

そうだ、たったそれだけの理由だった。
あれだけ力を欲していた理由は、ただ価値が欲しかった。
自分の存在に、命に、価値が欲しかったのだ。

そのためだけに、ネクストに乗り、戦場に出て、殺戮を繰り返した。
笑い種だ。これほどまでに軽薄な理由で人を殺す者が他にいるだろうか。

サーシェスの言葉を受けて以来、奥底でずっと考えていた。
きっと、自分は価値が欲しかったのだ。理由が欲しかったのだ。
自分を自分たらしめてくれるものが欲しくて、それをネクストに求めたのだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3276 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:43:29 ID:eewyaVm60

      ___
     /::::::::::::::: \
    /::::::::::::::::::::::::::::\
  /::::::::::::::::::::::::::::::   \
. |:::::::::::::::::::::::::::(ー) .  |
  \    (__人__) .  /

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俯き、目を瞑る。
やはり、駄目だ。こんな生活もそろそろ終わりにするべきだ。
最初から、自分のことなんてどうでもよかった。

ここで暮らすのはいい。けれど、これ以上はやてに迷惑もかけられない。
彼女は自分を罪のない子供のように扱うが、それは大きな間違いだ。
この家で、はやての重荷となって生きていくのは、良くないだろう。
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3277 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:46:57 ID:eewyaVm60

             , - ー― -   ..
      ,  '": : : : : : : : : : : : : : : : : :> ..
     , ': : :、: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :≧ 、
  ,. ' : : : : : ヾ,ィ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : \
 ,.': : : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : `ヽ: : : : 、 ヽ、
./: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ: : : ヽ、:',
' : : : : : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : 、: : : : :'、: ヽ:.',ヾ、
: : : : : : /: : : : : : : : ,: : : ', : : : : : : : : : : : : ヽ.: : : : ', : ',:.!
: : : : : :,': : : : : : : : /ミ彡ヽ: : : : : : : : : : : : : :',: : : ,ィ',、 ',:!
: : : : : :i: : !: : : : : :i!    ',:',: : : :、 : : ', : : : : ',://!:',: !
: : : : :, i: : !: : : : : :i   _ ,:i、: : : :!,: : :',: : !,: : ',イイ.ノ:/リ
: : :!: :i: ! : i: : : : :', ', ´   リ ヽ: : :!',: : i:.!: !',: : :!,イ: i i!
: : :! : i: ',: :i: !: : : :ヾ、    -―-'、: ! ': : !リリ !: : !.!: : i
: : :!: : !: !,: !:!ヽ: : : !,,ィ示千キ''ヾ ヾ ',: !==''!:/! i: :,'i!
: : :!: : ! i ヽ',). ', : : ',`<Z汐     i i/   !'ヾ',!/ i!
: : :',: : ', ヽ、`- ヽ: : ',             ヽ   .,: : :ヽ、         ……で? それだけかいな?
:.i!: :',: : ',: : : ヽ_ノ、ヾ'、              ,.イ: : : ',、ヽ
:.!i: : ',: : '、: : : :! ヽ:` 、       -=='  , イ!,、ヽ., -- 、',        「えっ」
:i !', : '、: : ヽ: : ヽ '、: ヽ',>   __ .イ : !i:!ゝイニ ̄ .'、
:i i:.'、: : 〉、 : ',、: : \ ',: :',ヾ /、`ー-,  ̄ ̄r‐'‐'     ',       あんなぁ、私を舐めすぎやで、自分。
',',',: i'、/, ヾ: ', `ヾ、ヽ!:i:i`ヾ''!_ヽ  i!i    ヽノ丶       ',
ヾヾ./ ヾ、 ヾ、   `i:iリ  /;;;;;;ヽ. ゞ==---、   ヽ.     ',ヽ、__    それくらいのことで、はいそーですかと言うと?
  /   ヾ、       リ,i! /;;;;;;;;;;;;;ヽ 、   ヾ、.  ゝ、  ノイ/::!
_/   / ヾ、   // !i、`ー--〈;;;`ヽ、ー――--}`ー―‐''"::::::::}
. /   /    ヾ,、. // i !:::`ヽ、 ヽ;;;;;;;;;;;ヽ::::::ヽ:::::\::::::::::::::::::::::::i!
/   /     ヽ_/ , i !、:::::::::::>ヽ;;;/:: ̄ヽ/..、::::::::\::::::::::::::::::ノ、
イ  ̄ `ヽ、   ,ィ , イ  !'、:::::::::::::,::-、>、:::::ヽ::::`i::::::::::ヽ--ー"イi
      `ヽ  i !     i:',:ゝ''":::::::::::::',:::::::`ヽヽ:::i:::::::::::::::',: ̄:::イ!
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  ヽ、__     i .!i' ! !:::::::::::::::::::ヽ__::::::::::::::::::::::::, --'."::i::i:::::::::::::::::::',ヽ、
`ヽ、      i/ /. ,'. ,'::::::::::::::::::::::::::::i--' ̄::: ̄::::::i !:::::::i::!::::::::::::::::::::!

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
だが、返ってきたのは、予想だにしなかったものだった。
はやてが呆れたように溜め息を吐くのが聞こえる。

顔を上げて見ると、頬杖を突きながら目を細める彼女の姿があった。
呆然と立ち尽くす自分に、彼女もまた椅子から立ち上がり、歩み寄ってくる。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3278 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/26(月) 23:55:50 ID:eewyaVm60

              -‐━━=ミ
          /⌒:^.: : : : : : : : : ::>
       _.-=ミ: : : : \: : : : : : : : :V: `.
       .ィ: : : : 7:〉 :∧: : :V: : : : : : :〈/: /〉:.
     /: : : : : :|/ | : :|:V: : :i : :| : : : : V〉: : ハ
.    /: : : : : : :|i !::斗-V: :|ー|‐|:-|: ::|:|i: : : |i
    ′l: : |i :|i |i_,.ィテテミ : : |N|ィテミN: |:|i: : : |i
   { |:::|i :|i |i  r勿, |:N  r勿ノ !::|:|5!: : : .       君が自分のない人間な理由もよう分かった。
.      从::|i: |i |i: ^¨¨  i      」::|:|,ノ: ;小:.
.      〕: :|i |N」    ,  、  .: /|:| : /: : :|i       けどなぁ、やる夫君はただヤケ起こしてるようにしか見えへんで。
        |i ||:|:i>       .ィ :/::」:/〈: : : 八
        |i ||:|:|///〕ニ=-   | l: : :/  V⌒V:\      どうすればええか分からんで、無力感と罪悪感ばっか募らせて。
        |i7⌒V| V寸ニニ才 !: /   \_,V⌒ :、
.       _ --厶ヘ V  V /⌒丶 | {    -=ミ,V{  ,ハ     けどなあ、それは君が狭い世界で生きてきたからや。
     〈,   /     V V^V__/^V |/ /    \ /
    /∧ /     }.  }i / Vi{  」 /  ______ /   __     悟ったようなこと言うには百年早いわ。
.    {  V      ,リ,  }i   i{  }i,  /    |ー━=ミ」
    r」  ⌒ー‐―( ̄ ̄〉ム  /|  i|/    |    _.」L
    |⌒ー}     /    \ V   /  \   _|  ー=ミ__ )
    |   ノ    ,/       \ ./   f/―‐┐___   } \
   ∧__(___  _/        \   /  ̄ ̄〉 乙...
    /   /八       _ji斗〜'へ  ̄ ̄|   」(
 /  /   / ̄,.. .-‐ '''""~         .V  rノ.   \





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  |:.:|:.:.:|:.:|:|:.:.:|:.:.:.:|斗ぅ=ミ :|:.:.:.:.:|ァう=ミ: |:.:.:.:|:.:.:.:.: |      君がどれだけ自分を責めてもな、私には関係あらへんで。
  |:.:|:.:.:|:.:|:|:.:.:|:.:.:.:{ )いハ 从:.:.:.:.| )いハ Y:.:.: ノ:.:.:.:.: |
  |:.:|:.:.:|:.:|ヘ:.人:.:.: 乂;;ツ   \:.| 乂;;ツ 从:.Λ:.:. /:.|       私は君がええ子や思うとるし、それは変わらん。
  |八:.:.|:人:|:.\\ト''        '''  /:.:.:/ }:.:.:.:.:.|
     \   |:.:.:.:.:.八     '    _,   /彡/_,ノ:.:.:.:.:.:|       もしも私に悪いなぁて思うんなら……
       八:.:.:.:.:.个   `       イ:.:.:.:| :.:.:.:. |:.|
       /:/:.\/ ̄         < |\__:.:|:. /:.:八|        しっかりと自分を持った人になって、幸せになって、
     /:/⌒∨ :. :. :. {\>r≦.  ノ| : :. :. :. :.\:.:.:|
    /:.:./ :.:.:.: ∨:. :. Λニ=‐‐=ニニニニ|:. :. :. :. :. :./:.八        私の寝覚めを良くしいや。
   ⌒ア/:.:.:.:.:.:.:.:∨ /  ∨二二二./|:. :. :. :. :/:.:.:∨\
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3279 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/27(火) 00:01:47 ID:AL7CGfaE0

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            _/_.: ._)\.: .: .~"''〜、、.:/\| |: .: ヽ
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            /.: .: .: .: .: :|:∨ハ.: .: .: .: .\.: .: .:\.: .: .:\.:.', ',',
        /: .: | : : .: .: | :|彡|.: .: .: .: .: .:\.: .: .: .: .:.:.:|.:\',:|.:.:',
         .: .:/.:.|.: .: |.: .:| :|_|_. .: .: .: \ : | .: |.:_:|_.:|.: .: .: .:| : ..',
       ∥:/.: .:|.: .: |.: .:| .: 八.:.:\.: .: .: : |/|.: .|.: .: |.: .: |:∨ : .: ',
      ∥.: .: .: |.: .: |.: .八:\__\:(_\ : .: |  |.: .|.: .: |.: .: |) |.: .: .: :',
      { i.: .: : | .: 人: .: .: / ̄ノハ \.:|  x===ミ.: .:人八.: .: .:.:',       価値なんてなくてもな、人間生きられるんや。
         |.: .: : |.: : : |:\ : 乂 乂^ツ   )   , ,  ノ/イ.: :| : : .: .: ',
          j八.:.:.|八.: |.: .:| .: .: :>, ,   、        /|: j|.:.:.:|.:\.: .: .:',      そないなもん、必要ないんよ。やる夫君。
         \| | :\.:.:.| : .: 込    _   '⌒)   .: :| :リ.:.:.:|.: .:.:\.:.:.:',
           :|.: .: .: .:|.:|\.: .:> ,.  '‐-‐  / | ∨/.: .: :|.:\.: .: .: : :      そないなもんがなくても……
          /.:|.:|.: .:.:.:|.:|/(    >   _/ /:| | : .: | .:|\ ̄\.: .:i
            /.: :|.:|.: .:.:.:|.:|//∧  /:::| |\_/../ :| .: : |.: |/∧  ∧.:.|      君は笑ってええんや。
         . .: .:|.:|.: .:.:.:|.:|/⌒∨:::: | \ニニ/  ∧ .: .|.: |__〉 / ∨
         | 八|八.: .:.:|.:|/\_/ :::::: | /⌒> <⌒/:::∧.:.:| :八 ∨ \ ',\
         | / ∧.: : 八  /::::::::::::|  〔:i:i:〕 /:/⌒ハ :|/  \ \ \   \
          /  / :).: .: .:∨⌒7⌒:〕  /:i:i:| /:::::::::::::::〉八 ̄/ ̄ニニニ-_   .
           / / /⌒\.: {.ニ〈::::: 八_/:i:i:i:|::::::::::::::/-=ニ∨:::::∧ニニニ-_   |
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       / く_ノ=/:::::{/:::::``〜、::\:::ヽ_/::: /:::::::::::::::::::::::::V::/ ::::: 'ニニニニ_|
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             .': .': : : : : :|:|_:|: :l|   l: | : : ∧: :| : |: |: : |/ : |: .
             |: |: : : |: : :|:l: :\|  从|: ,: | |:_/:|: |: : }_: : |: : 、        「でも」
             |:∧: ,: V: 从ィ雫≧、 |∧:| ィ≦雫ミ:|: /-ミ,|:|: :V\
             |:{ V、: ∨:l∧ Vzり   }'  Vzり ノ|/r、 ノ|:|: : |: 、:\      くどいなぁ。サーシェスの言うたことが気になるんか?
             ゞ  }: \〉:∧                ,、_/: |:|: : |: : \:ヽ
                |: :|: :| : ∧     '      ∧: :|: : |:|: : |: : : : \: .    あないなもんどうでもええに決まってる。
                  .': :|: :|: /:个 .    - 、    . 个:l: :|: : |:|: : |\: : : :、ヽ}
                /: : :|: :|:八: }: | > .     <|\: : : ,: : |: : ∧: |\: : }     サーシェスは君のことどうでもええ思うとるやろ、多分。
                ,: : :/:|: :|: : :〉l从/.|\::`´-:/ |、 \- 、: V:/: :l :|  ∨|
                {: :/__|: √/ {' /...|  ><  |..V  \ `7'> 、:|__ }/      だったら、そないなのが言った言葉だって、
             / 「 ̄´  |:/ \  ,'......| ////∧ /....∨ /| /   `Y⌒\
            '  |´ ̄ ̄/ ||   V....../|イ 〉-〈  ,.........∨\〉      /     ヽ     どうでもええて思わん?
          /   ∧   /|/---/... /...| ////| ∧........∧ ̄ ̄\ V       :.
           /__/_/「 ̄   ,.\/.....l |/// |/...∨./.....∨ /  ∨       \    私の言葉より、サーシェスの方が信用できるん?
       /´  / |   /    /. ̄.........∨///_/.........\.......∨ /  }、        \
     / ̄ ̄ ̄ ̄ /    ∧................ ∨...../..................>.....∨  \_>-----  、 \___
      /         イ___/.....\...............∨.,.............../............\__         >  ̄   \
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/......................................./´   ヽ:::::::::::::...........\....∨................::::::::::イ   \ \.....................................ヽ  \    \

3280安価のやる夫だお:2020/10/27(火) 00:10:56 ID:55eSASvU0
信じるというか、心の傷をえぐられて劇物塗られた感じだからね
もしかしてと思っちゃうんだよ

3281 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/27(火) 00:14:12 ID:AL7CGfaE0

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             |\.: ..:{ )\ ィ芋芋ミ :|.: .: .: / ィ芋芋ミ:/.: .:.人.: : |.: |       そら、はよ寝る支度しい。
           八..:\:{ } ^)\      |/):/      /.: / : .: .: |.: |
             /.: .: .: .: {,/ //⌒:/:/:/:.   〈i    :/:/:/: イ ノ.: .:/.: :| 八       夏祭り行くんやろ? 私も付き合ったるさかい。
         /.: .: /.: / .:.∧        ___       八.: .: / : : |.: |.:\
           /イ. .:/.:./  〈 : : : \__   |    |     . : .: / .: .: .|.: |.: |⌒      君と同年代の子でもおったらええなぁ。
            |.::∧.: `丶、 ̄ ̄\.: .\ \_/   イ : ./:|.: .: .: .:|.: |:八
          _|:〈_∧.: .: .:L\   ).:.:..八     イ  ̄\/.: : |.: .: .: .:|.: |.: : \      いや、おるやろ。多分。知らんけど。
      /  \ ̄ ̄\.: `丶、 .:./⌒\><  |\  /\.: |.: .: .: .:|.: |.: .: .: |
     /  \   \   |.: .: .:|| \     〉::::/  \ \  ∨ : .: . 人八.: .:.:.|
      〈    \)   \__|.: .: :八_ /\  /         |.  /.: .: / ̄ ̄\.:/
     | 、       〉 八.: /  /    /          :| 厶 イ       ∧
     | ∧        |   )' _/    /           .:|    |     /  \
       〉 \    |/ /\    ∧_      //    | ̄ ̄\/  /  ',
      {     \   |/     \   / \ \     //      |  \ ./ ,:    ',
     〈 ̄ ̄\. \ <       \ハ.   \_ _/        |    ∨./    ',
     }      \_/|\        ~}    /Y⌒\      |   \ 〈 / \. ',
     }___/ / |  \     //|   /:i\  /:i:i\    |    \∨       ',
     〈    ./ |   |   \/ /∧ / \/⌒:i「 ̄ \__|     ',      ',
       〕    |  |      /V ∨_  {:i:i:i:i:i:ノ /二=-―…    ', |/     ',
      〕   / .|    \     / ̄ ̄     ∨:i:i〈./             } /       }
      〕  ./  |  \    /           ノ:i:i:i:i:\              ; /  /  }

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
はやての有無を言わさない笑顔に、頷く他なかった。
必死の吐露を溜め息と笑顔という形で飲み下され、返す言葉もなく、
否定する言葉も思いつかず、大人しく寝室へと布団を敷きに向かった。

彼女は無力でも無価値でも認めてくれる、いや、
それゆえに自己を否定する行為を良しとしなかった。

こういった時、どうすればいいのだろう。
いや、どうすればいいか、ではなく、やりたいことはある。
どうするのかが正しいのかは分からないが、やりたいことははっきりした。

明日の夏祭りの時にでも、それを言おう。伝えよう。
熱くなる目頭を抑えながら、人知れず思った。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3282 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/27(火) 00:16:36 ID:AL7CGfaE0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
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                         └──────┘


                           ┌───┐
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                             │ :: │
                             └─┘


                               ┌┐
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                                   □

                               ・

3283 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/27(火) 00:24:16 ID:AL7CGfaE0
〜Tips〜

               ____
             /      \
           / ─    ─ \
          /   (●)  (●)  \
            |      (__人__)     |
          \     `⌒´    ,/
          /     ー‐    \
【Name】
入束やる夫
【Status】
AMS適性:B
AMSに接続するための適性。
これがなければネクストを操縦できない。
そこそこの適性を持っており、精密な動きを可能とする。

戦闘技術:D→C
ネクストに搭乗しての戦闘経験、知識、技術。
しっかりとした訓練を受けてはいるものの、自分に合った戦闘スタイルが身についていない。

【Note】
日本人の少年。十八歳。誕生日は11月6日。人種としては日本、ベトナム、中国などアジア系の血が滅茶苦茶に混ざっている。
オルデンブルク統治下のコロニー・トウキョウで生まれ、
十年間まともな教育も受けないまま孤児として育つが、
オルデンブルクの行った全市民のAMS適性検査で見出され、リンクス候補生となる。
が、一般教養が皆無であることが災いし認定試験で落第してしまい、リンクスとしての未来が閉ざされかけたところを、
元リンクス、高町なのはに拾われ、独立傭兵としての道を歩むこととなる。
ブライドルランク26。コロニー・トウキョウの軍事施設を間借りして活動する。

【New】
路上暮らし時代に二年近く共に過ごした親友が目の前で死んだ過去を持つ。
以降、自身に強烈な無力感を覚え、世界を壊せるほどの力であるネクストに憧れに近い渇望を抱く。

自分を他者のために使うことで他者から認められたい、生きていることを許されたいという、
かなり変わった形ではあるが思春期の発露と言えなくもない性質の持ち主。

要は精神が摩耗したアンパンマンみたいな奴。顔を食わせてる時だけが安心できる。

根は素直だが頑固な一面もある純朴な少年。
ちょっと極端な部分も強く、こうと決めたら曲げない一途さを持っている。
実は社交的で人と関わるのが好き。一人でなにかしている時より誰かといる時の方が笑顔が多いタイプ。
空っぽな性格故に人からの影響をもろに受ける。周囲の人間次第で聖人にもなるし地獄に堕ちることもある。

十二年近く路上暮らしサバイバルを生き抜いただけあって適応能力が高く、観察眼も鋭い。応用も利かせられる。
社会経験が皆無に等しいため、一般的な道徳に乏しくルールを守りはするが必要とあらば迷いなく破る傾向がある。
他者との関係に依存してはいるが承認欲求などは弱く、社会的評価に興味を示さない。

コジマ汚染への耐久値が常人より優れた値を見せており、リンクスとしては長命。

3284 ◆x0SRSoJXe.:2020/10/27(火) 00:30:31 ID:AL7CGfaE0

                  . . .-─‐-. ミ
                     |: : : : : : : : : : `: ..
                     |: : : : : : : : : : : : /
                    }Ο : : : ◯: : : :,′
                   : : : : : : : : : : : :i       今回はここまでだ。
                      { -===- 、: : :. :.|
                    〉: : : : : : : : : :ノ        言うなればやる夫君のキャラの成り立ちはアナキン・スカイウォーカーや
                  i: :`ニニニ´: : : : ‘,
                 __/ : : : : : : : : : : : : i       ハリー・マクドゥエルに近いものがあるね。
      ___        /.: : : : : : : : : : :‘,.:.三|
     / :::: ヽ: : : :‐--∧_: : : : : : : : : : :./:|: : : |        彼等も何かしらに駆り立てられ、生き急いでいたから。
     .′ :::::::‘: : : : : : }/∧ア´二二ヽ:/ | : : ‘,
.    ‘::::::::::::::ノ: : : : : :ハ \{/: : : :/⌒゙ヽ : : :‘
.       ゝ-=彡-──<¨¨゚‘; .: : :./:::::::::::::::} : :. :.|
                 \: :′:::::::::::/______」
                     弋:::::: /
                       `¨´





            _ _ ___ __ _   __
            / :::::::::::::::::: :i,   .ヽ::::::\
           i:::::::::::::::::::::: i  / \  \
           i :::::::○::::○i/      ̄ ̄
           / :::::::::,,- -_ッi    i i i
          /::::::::::`ー‐'´ヽ   __i i i--i
           /|::::|::::::::::::::::::|:::|   ̄ ̄ ̄|::::::::|      次回は来週の月曜日、11/2の午後八時からだ。
        /::::\ヽ :::::::::::::i:::|      ノ__ノ
         /::::::::::::\\::/|:::|               モコイさんも今しっちゃかめっちゃかな状況だが、
    .   (_ _.) ̄i __.\\ |:::|    i i i
      /::::::/| ̄|ヽ::::: し( メ    ノノノ          投下だけはしっかりやっていきたい。いきがい。
       /::::::/ノ_ _ノ >:::::)     \
    /:::/    /:::/        \__          それじゃ、シーユーアゲイン。
   /:::::/       (_つ        /:::::::::/
   し'                  ノノ・ ./∴:・:
                   ~~~~~~~

3285安価のやる夫だお:2020/10/27(火) 00:33:10 ID:55eSASvU0


3286安価のやる夫だお:2020/10/27(火) 00:33:38 ID:ch6qUvfU0
乙でした

3287安価のやる夫だお:2020/10/27(火) 07:03:32 ID:CwaZnANI0
乙ー

3288安価のやる夫だお:2020/10/27(火) 22:18:18 ID:Z.wmuLGQ0
乙でした

3289 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:04:55 ID:7n63alzQ0

    /||ミ
   / ::::||
 /:::::::::::||____
 |:::::::::::::::||      ||
 |:::::::::::::::||      ||
 |:::::::::::::::||  、 - ‐‐ -,
 |:::::::::::::::|,´: : : : : : : : :
 |:::::::::::::::|゙i : : : :○ ○゙i
 |:::::::::::::::|}: : : : : : : _ _ _l      ハロー。
 |:::::::::::::::||: : : :-=´_ _,´
 |:::::::::::::::||___ : : :丿       
 |::::::::::::::(_____ノ´||
 |::::::::::::::(_ノ / . . . ||
 |:::::::::::::::||/    ||
 |:::::::::::::::||      ||
 \:::::::::::|| ̄ ̄ ̄ ̄
   \ ::::||
    \||

3290 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:10:53 ID:7n63alzQ0

                     -‐'.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
                    ヽ;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.
                       、., ____ _.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.
                      ! }  _ __二ニ=z/::::::
                     ィリ;.;'^´;.;.;.;.;.∠::::::::::::::::::::::::::
                   /;.;.;.;.;.;.;.;.;.,;-イヽ:::::::::::::::::::::::::::       女神転生リマスターが発売されたねえ。
                      ,'=====z-,弍     !:::::::::,L 、:::::::
                           ! i_ソ    /:;/_  ,'::::::::::::      モコイさんもしっかりボイス付きリマスターだ。
  __、---、                    ノ    ,,  /´  フ/:::::::::::::
r´: : : : : :/'.、               、            /:::::::::::::::::       みんなもライドウ君にぶっ殺されてこよう!
z―-イ´: : :'.,               ヽ、        r┴‐‐---―
: : : : : : : : :○',.        r、       -―    l;.;.;.;.;.;.;,;.;.;.;.;.;       んじゃまあはじめよっか。
二: : : : : : : : : i           i ゝ          、_    i;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
: : : : : : : : : .-=i          rj |        r;.;.;.;r:::::::::::i;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;
: : : : : : : : : : : :i         i i |        \;.;.ヽ:::::::::i;.;.;.;.;.;.;.;.;.;/

3291安価のやる夫だお:2020/11/02(月) 20:18:19 ID:DK12CIT.0
わぁい

3292 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:19:20 ID:7n63alzQ0

                                    _ . . :''"゚~ ̄ ̄~~"''〜、、
                               /⌒\.: .: .: :⌒\/. .: : \`丶、
                          __/.: .: .: .: .: .:/.: .: .: .: .: .: .: .:  ̄ ̄\\
                         / -‐…: .:/.: .:./ ハ '.: .: .: .: .: .: .: : \ : : : .: |.:.::ヽ
                         /    /.: .: /.: .:./:/゚^|: .: .: .:|.: :| : .: |: .: |.: .: .:.:.| .: .: :.
                           (     /.: .: /.: .:./|.:|_|.: .: .: :|.: :| : .: |: .: | ̄ ̄ |∨〉 : .
   ((\./ )   ( \                  .: ./ :/.: : / :.|  |.: .: .: :| :/¨¨7ト、 |二二 |∧〉 : i
    \i 「 }.,_ \__\            /.: ' : ; : .: .: { ,x=ミ|.: .: .: :|/ __/ |.: /|___|.: |.: .: |
      |_| V ニ=-\ニ-_           ; : { .: | :|.: .: Y ノ狄.: .: .: | ⌒7ミk、.: |/.: .: /.: :|.: .: |      行ってきまーす。
      乂、,,)\}ニニ\ハ            |.:八.: |八.: : 乂∨ツ \ .: | ノ狄( ハ:/.: .: /.: .: |.: .: |
       \ニ}〕トミニニ 八             |  〉:|.: .:\:.(_' ' 〈i  \ 乂少' ノ : .: /'Y.: .八.: :|      「行ってらっしゃい」
         :、ニニニ\ニ.ハ             /.: | .: .: .: {⌒ r.  _     ' ' / : .:/ ノ.:.:/.: .: .:|
          \ニニ Y /〉         .: .: :|.: .: | 八  ∨ ::::::)   ⌒7:.:.:/.: .: .:/.: .: .: :|       夕方には帰るわ。ほな、、また後で。
           〈-=ニニ人         | : /|.: .: |.:.:.心   ‐-  __ / : /.:.://.: :|.: .:.:.|
            |ニニ=---=)          | /八.:.:.:|.: :|:/\__   〈⌒∨://.: .: .:/.: .: |.: .:.:.|       「はい」
            |ニニニニ〈         :(  \.: .:几 ̄ _〕___\ |://.: .: .:∧.:|.: | .: .八
            |~''‐-=ニニ〕         ___.、-'' 〕 |\ 〕ニニニ〕.|:/.: .: .::.:// |.: |\ .: .\
            |    |         / / |_,,〕 |/_>|o __,/〕 .: .: .: /   .|.: |⌒|.: .: : |
            |    ,     __/ ´   | ____.j_|_/.人 {   厂|.: .:/ |\_/|.: |  |.: .: : |\
            |      ', ____r< ̄ ̄ ̄\ \|.   /ニ\T彡〈  |.: ,  |  | 人:八| : : 八
            |     V/\  ``〜、、 \ |  _ -‐-ミ)|〕ニ∧八 (  |  |  \  ノ.: : /  )
            :.      :   \       _.-ニ <\- _ -=\∧.:\ |  |    ⌒T彡

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
いつも通りの朝。というよりも、こうして朝を迎えるのがいつものことになりつつある。
まだ一週間近くしか経っていないというのに、ずっと昔から、
こうして過ごしてきたかのように錯覚させられる。

朝日を浴びて目を覚まし、朝食を済ませ、仕事へ行くはやてを見送り、
できる範囲で家事をこなす。そうすればあっという間にお昼だ。

こうしていていいのだろうか、という焦燥感はすっかり鳴りを潜め、
不思議な安心感を抱きながら庭の雑草を抜いていた。
じっとりとした暑さの中での作業は中々に過酷ではあったが、
誰かに監督されてるわけでもなし、のんびりと進めていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3293 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:38:08 ID:7n63alzQ0

     ____
   /      \
  /  ─    ─\
/    (●)  (●) \    ドラゴンボール……やる夫の中の何かが惹かれるお。
|       (__人__)    |
./     ∩ノ ⊃  /     その眩しい笑顔に……。
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
一通りの家事が終わり、簡単に昼を済ませると、途端にやることがなくなった。
事前にはやてに許可を貰っていたので、彼女の部屋の本棚にあった
少年漫画に手を伸ばし、それで時間を潰していた。

紙の書籍、それも原本だ。売り飛ばせばかなりの額になる骨とう品であるそれを
畳の上で寝っ転がりながらページをめくっていく。

内容はといえば、かなり面白かった。笑いあり涙あり、といったやつだ。
書かれたのはかなり古い時代だったはずだが、人間が手に取る以上、
面白さは共通なのだろう。一応近代のものでもあるし。

さすがに古代芸能や演劇までは、自分にも理解できない。

昨日、家の中で見つけたものについて、はやてから大抵の回答はもらっていた。
玄関にあった不思議な箪笥は「おぶつだん」と言うらしい。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3294 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:46:17 ID:7n63alzQ0

        ____
      /      \
     / ─    ─ \
   /   (●)  (●)  \     漫画……日本の漫画は面白いお。
   |      (__人__)     |
    \    ` ⌒´    ,/      昔は平和な国だったらしいし、そういうのが盛んだったのかな。
    /⌒ヽ   ー‐    ィヽ
   /      ,⊆ニ_ヽ、  |
  /    / r─--⊃、  |
  | ヽ,.イ   `二ニニうヽ. |
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
どうも宗教的な家具らしいが、はやてが熱心に信仰しているわけではないようだ。
様式美の類なのだろう。

世界を巻き込んだ経済戦争と生存圏の縮小による生活エリアのコロニー化に伴い、
そうした施設なども失われて久しい。
願掛け、懺悔、お祈り、そういったものをする場も、今ではほとんど現存していない。

だからこそ、こういった各家庭に小さくぽつんと、そういったスポットを象るのだろうか。

六巻くらいまで読み漁った辺りで、首の根っこ辺りに痛みを覚えた。
しばらく猫背になっていたせいで負荷がかかってしまったようだ。
鈍い痛みを緩和させようと首を回しつつ立ち上がる。

また、暇つぶしに散歩でもするとしよう。夕方までは時間がある。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

3295安価のやる夫だお:2020/11/02(月) 20:47:29 ID:DK12CIT.0
首周りはパイロットやってたから丈夫かと思ってたぜ

3296 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:51:41 ID:7n63alzQ0

   ~ ̄ ー-          厂
        `,つ   ー=一
        (     r―一          、__
          ̄) |             ,> 二ニメトヘ、
          {._ l    _       ーイ   `Z:::::::::::::ヽ
           }l._」」ノ}        〃ィrヘハ気メ;:::::::::::::::
.            ~ ̄77/_        l _  キ 〉::::::::::::!
               f′ ,='       〈_ ` キ レ‐;::::::ノ
  .           / ノ          /     Σ::::く_,
            / f       _ -r一/ rヘ. ̄〉-―-<
.           /   !__     _// ,ムノ´/´  |/     \, v‐y―z'⌒ヽ
          /   |  メ^' ̄l  /  {/         〆    >'´ ̄`<
          |    ト  〉      i′              /     /
          L__ノムノ一ー-f  /o         , -一>'    -=ニ
                   ;  /         イ´  /  -=ニ
.                  /  {         /  /  ノ´
                  /  ノo        /   lf /
                  〈   /____   , ィ′  |巛
 ____________ノィ7///////>、   |
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昨日の河川敷に向かってみると、そこにはあの元ノーマル乗りではなく、
診療所の医師である間がいた。

陽も微かに傾き始め、日差しも少し落ち着いた昼過ぎ。
汗も引いて、時折吹き付ける風で涼めるくらいの余裕が出てきていた。
間は河川敷の斜面になっているところに、汚れるのもお構いなしに背を預けていた。
指の間に紙タバコを挟んで煙をくゆらせ、律儀に携帯灰皿が近くに置かれている。

ぼんやりとした表情で川を眺める横顔は、よく見ると端正な顔立ちなのだと
気付かされた。ルルーシュと同じような綺麗な部類に入る。
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3297 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 20:57:30 ID:7n63alzQ0

          ____
        /   ― \
.     /   (● )  ヘ\
     |   (⌒   (● ) |      こんにちは。
      ヘ     ̄`、__)  | 
        ヽ           |      「おう……サボりじゃないぞ」
      , へ、      _/
.      |          ^ヽ         まだなんも言ってないですお。
.      |      1   |





                             __ ___ 、 .... _ ,、、
                           ̄_..二ニ=- `ヾ `' _`ヽ
                        <.´             .ヌ:::::::::::`::...
                             .>       <:::::::::::::::::::::::::::\
                        /      .>..::´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
                       / /     '´/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ハ
                      / / ,イ    /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
                        / ' / /'   .::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}  ,
                      ,' /,′  ///::::::::::::::::::::::/ノ::; イ::::::::::::::::::::}_ノl /
                      {/ i ハ /′ ,:::::::::::::::z≦==x,,::::::::::::::::::::::::::::::::/./
                      _{ Ni   .:ハ::::::::;' 弋゙で× `ヽ /::ァ‐ 、::::::::::::/    今は非番だ。全く、あの小娘め。
                   _..xz≦三从. {ニ{  i ::{∧:::::{ X  ̄ ´   ..::/   j:::::::::::/
                 xz≦三三三三三ヘ{ニ{  {::〈 ヾ::j  X    ..::::/   .ノ:::,,,ィ       非番の時の食生活にまで小言を言いやがる。
     \ 、       ´  ̄ ̄ ` '' ‐<ニ三三∧ ilヾ{`.. _    X  イ:::/_ ,,イ≦三!
       ヽ `   .    ______`''<三_ヘj ∧',  `ヽ_.z≦二三三三三三/    
        }     `   .}三三三三三三/ ̄`丶、乂___\三三三三三三ニイ、
        乂         `''<三三三../⌒/`丶、 ∨_ヽ__  ヾ三三三三彡'゙三リ:.、
          `   .. _      `''<三人`ー───(/_ `ヽ.∨三..>''三三三三\
        ____   フ≧zx.. ____ヽ... _ .... ィ{ {/  ノ_j>''三三三三三三三\
    <.         ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄´ _...∠.j_ゝ-‐=≦三三三三三三三三三三
       `ヽ. __ ....  --===≦二三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
     ∠三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三
      /三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三

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どうやら彼は牧瀬の小言から避難するために河川敷にいたそうだ。
聞けば、インスタントラーメンを買い込んできたところを見つかって
こっぴどく叱られたらしい。一応、二人は叔父と甥くらいの歳の差があったはずだが。

「先生のお母さんみたいですお、牧瀬さん」

「からかってるつもりか? 言っておくがな、男なんてのは全員マザコンだし、
女だって全員ファザコンなのさ、極端な話をすればな。
一皮剥けば、求めているものの中身は母性か、父性だ。
……俺は彼女に母性を覚えたためしはないがね」

そこまで徹底的に言い返されると、言葉が出てこない。
間の前でこういった言動はよそう。抑え込まれるのがオチだ。
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3298 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 21:02:47 ID:7n63alzQ0

..     ____
    / ―  -\
..  /  (●)  (●)      「そういうおまえは」
 /     (__人__) \
 |       ` ⌒´   |     暇つぶしですお。やることも終わったし。
. \           /
.  ノ         \      
/´            ヽ





    ,,.-:::" ̄ ̄`゙'ー-、r=
  ./::::イ   i  !、  ヽ
  |:::イ i|/__レ|./lヾ  ヘi
  |lr:l l -ー レ -、 vレヘ!      ふーん。だったら後で俺の手伝いをしろ。全く、夏祭りだと?
  ムl レi    |キ N
  彡`ー      ' キ          勝手にやってる分には好きなだけやればいいがな、俺が的屋の主人だと?
 彡;;;;| `ー  ̄ , '
  ,,r「 ̄ ̄7` / ̄7          文化再現というのも分かるが、柄に合ってなさすぎるだろう……。
/::::::::::::::::/^<:::::::〈
::::::::::::::::::::<水>:::::::ヽ           「いや、今日はお客さんで行こうと思ってるんですお」
::::::::::::::::::/:::ハ::::::::::::::ヽ

3299 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 21:05:46 ID:7n63alzQ0

              __z=‐-Zニ=、__
           __≧  >ニニニニニ`ヽ
           _>  <ニニニニニニニニ',
            7/ /ニニニニニニニニニ!
           7  7ニニニニニニニニニニ}___ノノ-‐ァ
           И/ Nニニ!ニ=‐∨}/ニニニニニニニ<__,
              // {ニ{ニ芍ア. . . .ム=/ ヽニニニニ≦          ほう、あの娘とか?
            И∧{ ∧{ へ,,. . .〈ニ/ __/ニニニニヽ⌒
                i!__  ノ \,. .  ‐=ニニニニニ{、__          「いや……ええと、まあ」
                 ヽ_  ‐=ニニニニニニニニニニ=‐
                  /ニニニニニニニニニニニニニヽ      いいじゃあないか、そうでもなけりゃ、
                 /ニニニニニニニニニニニニニニニニ`ヽ
                 7ニニニニニニニニニニニニニニニニニム    あの娘も行かんだろう。おまえとしてもオイシイだろうしな。
               /ニニニニニニニニニニニニニニニニニニム
              ///ニニニニニニニニニニニニニニニニニニム
             ヽ \'ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ\
               \二ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ\
              // |ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ≧=、
              // |ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ}!
              //  i!ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ、\ニニ、
              //  |ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ} ヽニニ\
                !ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニム  マニニニ\
                |ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニム  マニニニ\





     ____
   /      \
  /  ─    ─\      オイシ……というか、皮肉らないんですかお?
/    (●)  (●) \
|       (__人__)    |     結構ズタボロ言われるもんだと思ってましたけど。
./     ∩ノ ⊃  /
(  \ / _ノ |  |        役目も投げ出していいご身分だなー、とか。
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

3300 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 21:11:48 ID:7n63alzQ0

::Vi /| /     _          / /  ハ          ヽ \ヽ\
::∧ハ./| //i/ィ/  V    /  / { /  { |  |          \ ',ヘ ハ
::::::::::V::::/:::::/ / ̄ヽ /   / /   |  | ハ  | ヽ {  l        ∧ ヽ
::::::::::::::::::::::::|  {   /  ∧||  |  | |弋 ミミ、| |  |         }ハ
:::::::::::::::::::::::::i   { |   | |ハ  ハ ト .| ィt、-、 V/ /  |         |
:::::::::::::::::::::::::ヽ   |   | ヽハ | .レ \  ヾソヘ ノ .// ノ   ィ   ハ |
:::::::::::::::::::::::::::::廴  |   |   \ハ ゝ    ゞノ/ /フ /  /    | | |
:::::::::::::::::::::::::::::/ハイ|   |      \     / イ/  /  i  .| | .ノ
::::::::::::::::::::::ノ/.// | `ー'´               レ /  /  ハ/
::::::::::::::::://   | +              -=イ:::/ / /   / ./
:::::::::::<  ´     | キ             _    V / /   /
≦=、__     ∧キ              `    Y / /
::::::::::::::::::::: ̄≧=、 >`メ、         ̄` - _/`ー ' ´/ ./
:::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:>、、        - 、ノ  / /
:::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.::.\       /
:::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:>、    /
:::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.≧ー<
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ̄`ー - 、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ̄ ` ー ─ - 、 _
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:.\

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そこで間は深く息を吸うと、「あのな」と言い聞かせるように話し始めた。

「自虐はよせ。自分が惨めになるだけだ。自分で自分を貶すっていうことは、
他人に貶される前に自分で貶して済まそうとしてるだけだ。
必死に自分の心を守ろうとする働きだ。人に言われたら辛いことを、
自分で言って笑って済まそうという、な。
それ自体は自然なものだが、やりすぎるとみっともないし、惨めだ」

「惨め、ですかお」

「そうだ。高潔さに年齢や肩書は関係ない。みっともない真似はするな」

そこまで言って間は鼻を鳴らし、再び川の流れへと視線を落とした。

こういうところがあるから、自分は彼を嫌いになっていないのだろう。
色々と言ってくるが、自分を言い負かそうだとか、傷つけて笑い者にしようとか、
そういう悪意は一切見えない。どちらかというと世話焼きなのかもしれない。

とりあえず、立ったまま見下ろしているのも居心地が悪いので、
彼が好きな訳ではないが隣へ座り込んだ。

「なんだ、気色悪い」

「いや、そういうのはないですって」
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3301 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 21:28:57 ID:7n63alzQ0

   /     /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
   /     ,': : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :
   / /   |: ,: : /: : : :/: : : : : i: : : : //ハ: : : : : : : :
    / l   1: /!: : : / /: : : ://: : :/ノ ノィ: : : : : : :
   ,|  | |  |':.:|≧: . |:/:/:/_仁ィ:≦Zz/ィ: . r‐、: :      そもそも、俺はおまえみたいなタイプは好きじゃないんだ。
    | | |!  |!:.|ゞセl:.:ト;イ/ラ人 ゞ仍;j  /ィ::/ う l: :
   || |l |l  |:.:| ̄´|:l /  キ   ̄´、  /: | 仆 |: :      女々しくてうだつが上がらず、うじうじうじうじと。
    |ヽト ||, |::|   ソ     キ    /: : | .レ /: :
    |: : ', |:', '!  /       キ r‐1: : :─ '"´: :        優男でもいいがな、もう少ししゃんとしていろ。
     |: : ヾ: ', ト,  ヽ-‐ 、     ヾ!: : : : : : : : : : : :
    '´: : : : : :.ヽ!\   ー─‐─   ハ: : : : : : : : : :.:       
   : : : : : : : : : : : : \ ´ ̄ ` 、, <|::|: : : : : : : : : :
   : : : : : : : : : : : : : <`ー ≦:::::\: :.|: : : : : : : : : :
   : : : : : : : : : : : / ∨: :ハ: : |: : : : |: :|: : : : : : : : : :





     ____
   /      \
  /  ─    ─\
/    (●)  (●) \      やっぱ、そっちの方がモテますかお?
|       (__人__)    |
./     ∩ノ ⊃  /       「うーむ、受ける層が違うだけだろう。優男が受ける層もあれば伊達男が受ける層もある。
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |         ただ、おまえはワイルドや色男という感じではないからなあ。庇護欲掻き立てた方が……」
  \ /___ /

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それから少し、真面目な話は小難しい話をすることもあれば、
時々他愛もない話も挟んだ。

タイプこそ違うが、彼もクーガーに近いものがあるように感じた。
古風で頑固で一風変わった男。ただ、なんと言うべきだろうか。
芯というか、筋というか。言動や在り方がどっしりとしているのだ。

人と話した感覚を、こう譬えていいのかは分からないが、とにかくこうしよう。
椅子に座ったとする。その時、しっかりとした椅子に座った時の安心感とでも言おうか。

きっと、こうした人は、昔からこうだったのではないだろうか。
おじいさんになった後でも、似たようなことを言い続けるのかもしれない。

柔軟でクレバーで、時代や状況で主義や主張を変える人もいる。
彼等は反対だ。どんな時代や状況でも、大して生き方を変えないだろう。

それを疎む人もいるだろうが、個人的には好感が持てた。
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3302 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 21:45:02 ID:7n63alzQ0

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       /./ イ::::::::::::::::::::::::::::::ハ:::::::::/::::::ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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      |/ //::::::/:::::::::::::::::ハ:::| ./:::/三≧///::::::::::::::/ _ ヾ:::::::::::
      | / .i:::::/i::::::::::::::::::| 升彡イニ ̄   //i::::::::::| /  ) i:::::::::::
.       i .l::/ ィ::::::::::::::::::| ヾテr j /     ./::::::::::| ) / .|::,:::::-      はあ、人のため。誰かのためねえ。
.       | .| ハ i:::::::::::::::::::ミ、 )‐'´      /::::::::::::| / - ' ´三三
.       |  | |.レi::::::::::::::,、:ヽ\        ./:::_::::-:::'::´三三三三       そんなに人に認められたかったのか?
.        ヽ  | | |:::::::::::/ `ミ、_ \   _ - ' ´三三三三三三三
         Ⅶ Ⅵ::::::::/_  -    Y´三三三三三三三三三三        「……」
         ヽ  V:::ハ:::::::>、  _ .\三三三三三三三三三三
          /ヾハ:::/三 >' ̄    ヽ三三三三三三三三三        愚直、誠実、善良、実直。どれも美徳だ。
          /三三三/三三ニ} ̄    V三三三三三三三三三
         /三三三三三三三::i、   _ ィ ト三三三三三三三三         その後に身を滅ぼさなけりゃな。
       <三三三三三三三三三三三三ニ.| ヽ三三三三三三三
        ` - 、三三三三三三三三三≧/:::\三三三三三三          自滅する程の善行は、ただの愚行だ。
           ` - 、三三三三三 ///):::::::::人三三三三三三
              \三三ニ.///.//::::::::/ | |三三三三三三





         ー=≦ミ:i:i:i:i:i:i:i:寸=─-
        / ≧>:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i\
       /才∠:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:\
      /  艾:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:ム
     /  イ/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i  Y
    ./ ///:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:|ノ}/} }
    {イ   ハ:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/  ̄寸:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/乂./}
    , / '/:i:i:i:i:i:i{ハ/>ハ:ム 圦} .l:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/:ノ           ガキなのさ。裁量ってのが分かってない。
    |/| .ハ:i:i:i:i:i从//苡 .}:iム ::ノノ-=ニ二二二二二二二ニ=-
    | .| ! V:i:八〈.ムイ._ム=ニ二二二二二二二二二二二二/         まず、理由や報酬を求める時点でガキなのさ。
     八 |   Vム乂 寸ニ二二二二二二二二二二二二二/
      \  寸\  寸ニニ二二二二二二二二二二二/            そういう奴の末路は二つだ。
            ̄`く  寸二二二二二二二二二二二/
             人   |二二二二二二二二二二二二ニ=-          利用されるだけされて捨てられるか……
               `´人二二二二二二二二二二二二二二二ニ=-
           -=ニ二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニ=ー   疲れ果てて嫌になって世捨て人になるか、だ。
        -=ニ二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニ
         V二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニ|  おまえは後者かな?
            V二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二j_
          V二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二|
          V二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニ|
           }二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニ|
          八二二.二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二|
          ./二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニニ|
         /二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニニニ
        ./二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ニニニニ

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間の言動は徹底してぶっきらぼうだったが、考えさせられる言葉も多かった。
今までに出会ったことのないタイプだ。
自分に対してひいき目で見ていない分、言っていることが的確になっている。
歯に衣着せないだけ、まともに聞いていると時折耳を塞ぎたくなるが。

とにかく彼は、自分の未熟さに言及すれこそ、否定の言葉は口にしなかった。
よくよく頭の中で言葉の意味を反芻し、噛み砕いてみると、
年長者の助言と取れなくもない、気がする。
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3303 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 21:55:12 ID:7n63alzQ0

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               ≦  ,;≠"':':':':::::\
                <  ,;''":::::::::::::::::::::::::::ヽ
              _〃 ,'::::::::/∧ル::::::::::::::::}
               7  ハ´ ̄¥ ´ ̄|:::::ト、:::::!
                レ! イ  ̄ キ ̄` |:::::| }::::}       そら、おまえはこれでも食っとけ。
                Vハl   / キ  .l:::├<:::/
              ∨ヘ    `  キ 仏イ:::::::〈        「……凍った水風船?」
                 ル ハ  ―  キ   |:::::::::彡
                    \_ イ   ハ;;;;;彡        おっぱいアイスだ。かつて実在した由緒正しい、乳房を模したアイスだ。
                   〈 ̄ ̄l_ < ̄ ̄7
                     >:::::::/水ヘ }::::::::::::\        そこの突起を噛みちぎってだな……ククッ。きっと似合うぞ?
                   イ::::::::l ハ  /::::::::::::::::::ヽ
              /:::::::::::::lノ ヽ/:::::::::::::::::::::::ヘ       「ぐぬぬぬ……い、いただきます」
                 /:::::::::::::::::::l   /::::::::::::::::::::::::::::::',
             l::::::::::::::::::::::| ∨:::::::::::::::::::::::::::::::::l       ……食うのか。おまえは変に素直だな。
                l:::::::::::::::::::::::| /::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
             l:::::::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l

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途中で「腹が減った」とだけ呟くと、間はスラックスのポケットに手を突っ込みながら
川沿いに歩き出した。なんとなくついていっても怒られなかったので、
とりあえず背中を追いかけていくと、木造の大きな屋台にも似た建物が
河川敷の傍、住宅街の端にぽつんと建っており、そこに入っていった。

くすんだ紅色の看板にはひらがなで四文字、「だがしや」とあった。
見れば、中には色とりどりの、菓子なのか玩具なのか判然としないものが
これでもかと詰め込まれた棚や冷蔵庫が置かれている。

珍妙な品ぞろえを遠巻きに見ていると、間がおかしなものを持ってきた。
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3304 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 22:11:07 ID:7n63alzQ0

                             . -: = :==: 。
                         。 : : : : : : : : : : : : : :≧: 。
                      。<: : : : : : :/: : : : : : : : : : : : : :>,
                    ィ: : : : : : : : : : :/ : : : : : : : : : : : /: : : : `ヽ
                  /7: : : : : :/: : : ; イ: : : : : : : : : : ::∨: /: : : : ::ハ
                 ,:´ /: : : : : :/: : : / /: : : : : : : : : :; : : ∨: : : Y : : : .
                〃 / : : : ;': /: : : :/`ト: : : ::!: : : : : : :;≫ハ : : : |: : : : .
                    /: : : : :l:/: : :|_/__ {/|: :/ |{T: -: ; ::{:≪:| : : : |: : : : :
                /: : : : : :{ : : : |{斧心 ∨: :l :|: : : : `ト: : | : : : |: : : : |
                ,: : : : : : /:∧: :{. {辷:リ ∨:ィ竿ミ、:/ }:从.x≦|: : : : |
                 {: : : : : /:/  〉ト      `゙ {辷心 <乂マヘ>/ : : : ;′
                 j从 : r‐;′ /:ハ   、      `゙´/: : : : :マ∨: : : :/
                 乂/ />'´ __}:、  r- 、    . : : : : : : ::/ : : ィ/
                =- ´    ¨二ト:ヘ、 ` ‐'   イ : : : :/ : : /:/: :}
             , ´         、∨/ル>―=彡: : : : ::/: : 乂从ル'
.              ,     __、  _ , >'´    __.イ}.ノ :_:_:_厶イ__
             /    ,´`¨¨¨`´ , - = イ ///ィ´    _。-=}_
.            /     /   r‐=二  /   .////.}_ 。-< _。-=ニ∧
,             /     /   ノ     /    //。イ    _ - ´     〉、
.、        /     /厂⌒ _ ム.  /    //  _ - ´    _ - ´  く
. ゝ.     __/     /」 。<.   /    / _ - ´     _ - ´       Y
   `ヽく⌒ ./     / } ,′    ./   _ - ´     _ - ´          」
.       \ /    / 八{      _ - ´     _ - ´          _(
         {     / .イ  }  _ - ´     _ - ´          _ - ´  }
       人__ イ /   く  {{     _ - ´          _ - ´     {

⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ
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       /   (●)  (●) \|l(^)    もしもし……はやてさん。
       | ///  (__人__)   l(_ )
       \     ` ⌒´   /⊂)     あ、今日は現地集合ですかお。了解ですお。
       /             ヽ ノ





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      レV  /  ィ      / 彡:::::::::::::::::::::::ィ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|
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       | i .| /  /i    / /:/i::::::∠-=彡-=ニニK::::イ≦::::::::::::::::::::::::::/
       レ |ハ  i∧    /i/:/::::ハ/ \ ≧ィtjヽ、_ ̄>イ::::::::::::::::::::::::/  i
         | |ハ ./ l    | |:::|::/     \ ヾン_> ≦彡::::r -、::::::レ彡/   さて、ガキのお守で休みを一日潰す趣味ないんでね。
        >ハ ;;ヾ:::|  |  ハレ:://      ヾ  ̄     /::::/ r 、}:::::::::イ/ /
      /..:::::::::\:::::ヾ ハ |  /       \      /::::∧  /::::::::::://ノ   俺はここいらで失礼させてもらおう。
       /.:::::::::::::::::::::::::レ:::ヽ|  ヽ_、        }    ./::::/ y./::::::::::::::::::://
     ./::::::::::::::::::::::::::::::::::::∧  _        {    廴:/  ノ:::::::::::::::::イ=≦、   「アイス、ごちそうさまでした」
   /::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::∧   ` ̄ ー-     }    /ー'´::::::::::::::::://::::::::::\
  /::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::{i:::/ ヽ   ̄        {  / |:::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::   ああ……あれ、結構高いんだ。駄菓子は高級品だからな。
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../::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::|     L__   - <´   /:: ∧:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::    今度、なんか良い酒でも持ってこい。
∧::::::::::::::::∧::::::::::::::::::::::::::::ヽ      <´      ...::: |} ヾ:::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::
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三時を回った辺りで、はやてから電話がかかってきた。
今日は夏祭りの開催場所である商店街に現地集合、とのことだ。

家で合流して一緒に行かない分、変な期待が沸き上がった。
例の、浴衣なるものを着てくるのだろうか。やはり。
浴衣姿のはやて。考えるとなんだかむず痒いような感覚に襲われる。

間とはあっさりとした別れとなった。
くたびれたシャツを着た後ろ姿に頭を下げ、自分もまた踵を返す。

家で少し支度をしてから商店街に行くべきだ。
大した仕度ではないが、ちゃんとアイロンのかかった服を着こんでいこう。
深い意味はもちろんない。
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3305 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 22:11:38 ID:7n63alzQ0

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3306 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 22:16:45 ID:7n63alzQ0

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_ノ | トミ  `丶、|: : : ::| |  |  |\ \__'ノ'´ _,r──j|.:.:|:/   /: : : : /.:.:。s1: |:| |
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 ̄..|:| | |丁=‐ ___ ``丶| |_|  | |:| |\ 寸ニニニニ匚|: /|/___/ ,、 '゙ |  | | |:| |
  |:| | |¨| ̄] || ``^iiー| | |   |ー' | |||\ヽマ⌒Li|-|/__,/|::|:::| |  人 .:| | |:| |
‐-- L| | :|: : ] ||   i| | | | |ZZZ|___,|_|┤l |_|\'v'⌒i|‐|: :||: : : l |::|:::| [/_\| | |:| |
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‐ ‐ 」 | |ニニニl_||   i| |~~| |‐||二|ニ:| |__,| | |:| |⌒i | :|: :||: : : l |::|:::| [人_人| | |:| |
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    / ―  -\
..  /  (〇)  (〇)
 /     (__人__) \
 |       ` ⌒´   | ユカタ…ハヤテサンノユカタ…
. \           /
.  ノ         \
/´            ヽ

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その日の商店街は大盛況となっていた。
間の抜けた笛と太鼓の音が響き渡る中、普段どこにいるのだろうか、
電灯と提灯に照らされた商店街に人がごった返していた。

家族連れ、二人組の男女、若い少年少女たちに小さな子供。
人という人が溢れかえり、とにもかくにも賑わっていた。

その一角、商店街の入り口であるアーチの脇に立ち、端末を握りしめていた。
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3307 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 22:20:03 ID:7n63alzQ0

        ____
       /    \
.    /          \
.  /    ―   ー  \     (はやてさんが来たら……色んなお店を回って、色々食べて……
  |    (●)  (●)  |
.  \    (__人__)  /      間さんとか……あのおじさんもいるかな。あの辺の店も見てみたいお)
.   ノ    ` ⌒´   \
 /´             ヽ





     ____
   /      \
  /  ─    ─\
/    (●)  (●) \     (それから……はやてさんに、お礼を言うんだお。昨日はありがとうって。
|       (__人__)    |
./     ∩ノ ⊃  /      なんだか、ああ言われた後、ちょっと楽になれた気がしたから)
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

3308 ◆x0SRSoJXe.:2020/11/02(月) 22:23:05 ID:7n63alzQ0

          ____
        /   ― \
.     /   (● )  ヘ\
     |   (⌒   (● ) |
      ヘ     ̄`、__)  |
        ヽ           |
      , へ、      _/
.      |          ^ヽ
.      |      1   |

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
時刻は午後の五時を若干過ぎたところだ。
待ち合わせは半なので、あと三十分はある。
我ながら気合いが入りすぎているというか、空回りしているというか。

商店街の中では見たことのない屋台がずらりと並び、
浴衣の人も普通の服装の人も、老いも若きも、男も女も、
少なからず笑っているように見えた。

なんだか良い匂いまでしてくる。はやてが来たら、最初は食べ物を見ようと提案しよう。

一人で先に回っていても構わないと言われてはいたが、そうするつもりはなかった。
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