したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

カオスロワ避難所スレ3

1管理人 ◆WI16BozYZw★:2015/07/08(水) 21:45:14 ID:???0
前スレッドが1000間近のため新規スレッドを用意いたしました。

486何が可笑しい!!:2019/10/06(日) 00:33:04 ID:YGO.fsHI0
投下乙です
ここでギムレーがやられたか……
戦力面でも考察面でもかなり痛手だけど、セルベリア達に与えた影響は相当大きい
監視の屍兵消滅でアナキンも気が付くだろうけど、どうなるやら

487 ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:10:42 ID:RpHoSSuk0
投下します

488死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:11:26 ID:RpHoSSuk0
『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
(考え中)        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火(負傷中)   1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


               拳 1-1 聖

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



第三回の攻防が始まる……まずは表・拳王連合軍の攻撃。
ここでもメジャーリーガーでもあった高津のピッチングが猛威を振るった。
まずは剛速球で上条・シャドーマンタッグことイマジンスレイヤーを完封。

『アイエエエエエエエエエエ!
 プロの投球はニンジャ反射神経やニンジャ運動能力を凌ぐと言うのか!?』

敗れたジョジョに続いてディオとデューオがクロスフュージョンして挑む。
ザ・ワールドによる時間停止は対抗手段を持たぬ高津には有効……かに思われた。

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?
球が重すぎて全然動かないぞ!!」

無駄無駄ラッシュの如くバットを叩き込むが投球はビクともしなかった。
投げられた際のパワーが桁違いであり、ディオの腕力では力不足だったのだ。

「こ、こうなれば…奥の手のデューオーバーヘブンで……」
『やめておけ、まだ試合も中盤なのに倒れてしまうぞ。
回復のアテも少ない、後にはイチロー・ドラゴンズの奴らも控えているのに最悪ここで再起不能になるのは勿体無い』
「くっ……今は機ではないということか」
『そういうことだ、使いどきは今じゃない。見送ろう』

リオレウス戦で発揮されたディオ最強の技「デューオーバーヘブン」による一分間の時間停止ならば、千を越えるバットのラッシュで高津の球を飛ばすこともできるだろうが、使用には極大クラスの疲労というバックファイアがデカすぎた。
一発のために博打を打つよりも、戦場に長く残り時間停止能力を安定して使い続けるために、ディオは「勝つために逃げる選択」をしてあえてアウトになることにした。


そして、打席は一巡し、一番バッターに戻る。
ということは高津と互角かそれ以上の実力を誇るメジャーリーガー・ムネリンに打順が巡ってきたということだ。

「あなたの球は見切った!」
「チッ!」

ムネリンはベンチにいる間に高津の投球を研究し、どこに当てれば良いのかを学習。
そして、見事にクリーンヒットさせたのだ。
しかし、狙いはホームランのような大きい当たりではなく、ワンバウンドさせてからのゴロだ。
ただし……

「ぐあッ! ヘルメットに土が!」
「計算通り」

球は高津の目の前で落ちたが、その際にマウンドの土が飛散し、それが高津を襲った。
ジェットマンのスーツに守られている高津には土によるダメージこそなかったが、視界は土で覆われ見えなくなってしまう。
それにより捕球できなくなった隙にムネリンは一塁へ走る。

「取らなくちゃ……!」
「……待て、犬牟田!」

ショートの犬牟田がゴロになった球を取ろうとするが、高津が慌てて静止する。
高津の静止よりも早く捕球してしまった犬牟田だったが、そのボールはグローブの中で未だに高速回転していた。
それは運動エネルギーという形で犬牟田に襲いかかる!

「なに!? 勢いがまだ死んでな……」
「かかりましたね」
「うわああああああああああああああああ!!」

一時間ほど前に闇がヒロインXを殺害した時と同じように、死にきっていない莫大な打球による運動エネルギーが犬牟田を襲う。
そのまま、腕の中の球に数十m地面を引きずられ、血しぶきと土煙を上げた。

489死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:01 ID:RpHoSSuk0

「犬牟田ーッ!」

高津の悲痛な叫びがスタジアムに木霊するが、ムネリンは何の感傷も抱かず……むしろイチローラブの障害をまた一つ取り除けたとして、喜々として一塁を越え、二塁へ走ろうとする。
このまま三塁まで、あわよくば一発ホームインを目指そうとするが、残念ながらムネリンの期待通りの進軍にはいたらなかった。
彼が二塁へ向かおうとした時、セカンドの闇のグローブに野球ボールが入ったのだから。
そして彼女に送球はしたのは死んだと思われたショート・犬牟田である。

「なん……だと……?」
「ゲホッ……! 死んだと思った? 残念、対策済みでした!」
「ふう、アタイの氷がギリギリ間に合って良かったよ」

犬牟田は血まみれのボロボロでこそあったが、確かに生きていた。
本当ならドラゴンハートの補正ありでもバラバラになりかねない一撃であったにも関わらずだ。
その理由は三塁にいるチルノが、先程も披露した氷の鎧による防御を犬牟田が吹き飛ばされる寸前に施し、彼の命を守ったからである。
更にボールも止まったところで近くにいた二塁の闇へ渡したことでムネリンの進軍も阻止できた。

「無事で良かったぜ犬牟田」
「イタタタ……ちょっと計算ミスがあるとすれば彼のパワーを侮って怪我をしてしまったことですね。
すいません……血が止まるまでベンチで休ませてもらいます」
「わかった無理をするな、それで良いなサウザー」
「ああ、了解だ」

相棒の無事を喜ぶ高津。
一方、辛くもムネリンの攻撃を止めた犬牟田だったが代償として手傷を負ってしまった。
ある程度治るまで戦場に立つのは危険であるし、犬牟田自身も負傷者が残り続けるのは危険であるとして退場することになった。
代えの選手もいない聖帝軍はショートと一番打者を欠いた状態で戦うしかない。


ムネリンの次はクロえもんであったが、ブラックホール打ちにこだわりすぎた結果、打てないまま三振してしまい、ムネリンの進軍の甲斐無く拳王連合軍の第三回攻撃は無得点で終了となった。

「俺、いちおう元から野球選手なのに扱いわるくねえか!?」




第三回・裏

「ダメか……!」
「あのメスゴリラの妖怪、氷の壁をぶち破ってきやがった!」
「フンッ」

スタービルドガンダムに乗ったレイジと、妖精王クラスの魔力を得たチルノでさえMEIKOのボールを捉えることはできなかった。
レイジはガンダムによる質量とビームサーベルのパワーを使って突破口を開こうとするが、MEIKOボールの威力はビームサーベルの出力よりも上であり、逆に突破され。
チルノは氷を使った防御や、投球の減速を狙うが、圧倒的パワーと殺意の前ではどうすることもできず、三振を許してしまった。
既に投球の余波(というかデッドボール万歳なMEIKOの投げ方)によりガンダムもチルノもダメージを少なからず負ったが、むしろ四肢がしっかりと残って生き残っているだけ、実力者の証左でもあった。

ツーアウトにより聖帝軍も拳王軍と同じく、打順が一巡した。
ただし、一番目のバッターボックス入って犬牟田がリタイアしているため、二番打者の紘太こと鎧武・極アームズが入ることになった。

(さっきは手も足も出なかったが、犬牟田が考案した作戦で行くしかない)

選手としては今試合は退いた犬牟田だが、ベンチ送りにされても休んでいるわけではない。
その頭脳でチームのために敵のデータを研究し、作戦として提供しているのだ。
紘太もまた、バッターボックスから出る前に作戦を受け取っている。

「へへ、ぶっ殺してやるぜ、MEIKOボー……」
「今だ!」

鎧武はMEIKOがボールを投げる前に、クラックから一本の槍を召喚し、バットと持ち帰る。
槍の名前はバナスピアー……ライバルであるバロンこと戒斗が使用する槍である。
更に槍を手にとったと同時に、MEIKOの足に黄色いバナナ状のエネルギーが絡みつく。

「なに!? フォームが……!」

絡みついたエネルギーにはさしたるダメージはない。
だが、この妨害がMEIKOが投げることに至って大事なものを奪うことになる。
MEIKOボールに圧倒的殺傷力を与えていた「黄金長方形のフォーム」それによる「無限の回転」が失われたのだ。

『極スカッシュ!』

先ほどのまでの勢いを失った状態で投げられたMEIKOボールに鎧武はバナスピアーによる必殺技、スピアビクトリーを放つ。
眼前まで来た球は剛速球でこそあったが破壊力は薄く、見事にバナナのエネルギーにクリーンヒットした。

「クソッ!」
「これが俺たち聖帝軍の力だ!」

490死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:58 ID:RpHoSSuk0

悔しがるMEIKOを尻目に打ったと同時に走る鎧武。
ボールの飛んだ先はレフト方面……即ちプニキが待ち構えているが、熊はボールが来てもまったく取ろうとする気配がない。
それもそのはず、プニキはバッターとしてホームランを取ることだけにしか興味がなく、打つこと以外の能力も極端に低い。
犬牟田は試合の中でそれを見抜いたために、他の選手たちに飛ばすならレフトであると指示を出したのだ。

「それぐらいは予測済みです!」

されど長らくプニキと付き合ってきた拳王連合軍には、熊が守備ができないことなど織り込み済み。
レフトへボールが飛ばないように、ショートのムネリンが射線をカバーするように配置されている。
元々そういう作戦であり、ムネリンは高くジャンプして打球を取ろうとする。

『イチゴチャージ』
「悪いな! 犬牟田の方はアンタがレフトを守るために動くことも予測済みだ」
「空からクナイが、イタタタ!」

走行中の鎧武は次なる手としてイチゴアームズの力であるクナイバーストを発動。
空から無数のイチゴクナイの雨が降り注ぎ、ムネリンにダメージを与える。
ムネリンを殺すには威力が足りないが、打球を掴ませないことには成功し、飛んでいったボールは放物線を描いてレフトに落ちた。

……え? 守備妨害の反則じゃねーかって?
カオスロワ式野球という名前の決闘にそんなルールはない。

ちなみにプニキは持ち場に落ちたボールを拾いに行こうともせず蜂蜜を食べている。


「こさせません!」

鎧武の次なる障害として艦載機を発進させた空母艦むす、一塁守備者の翔鶴およびクロスフュージョンしたロックマンが襲いかかる。
だが、鎧武は艦載機の攻撃に怯まず、前進しながら火縄大橙DJ銃を召喚しオレンジのロックシードをセットする。
するとオレンジ状のエネルギーが銃から発射されて無数の艦載機を飲み込んだ。

「沈め! ロックマン、翔鶴!」
『危ない! アイアンボディを!』
「はい!」

エネルギーは艦載機を全滅させた直後に翔鶴とロックマンを飲み込み、あたりを閃光に包む。
二人は直前に動けなくなる代わりにダメージを微量に抑えるアイアンボディのチップによる防御を行い、ほぼ無傷で攻撃をやり過ごす。
だが、その隙に鎧武には一塁を踏ませてしまった。
拳王軍にとって幸いなのは、この間にセンターの平等院がレフトのプニキに代わって(ついでに熊にゲンコツをして頭にタンコブを作らせた)球を拾って二塁に送球。
鎧武の二塁進行だけは防いだことか。

次にバッターボックスに入ったのはMEIKOから今試合始めてヒットを取った金色の闇。
再びラオウ同様に首から下がマッチョな体型となってMEIKOに挑む。

「また、それか……だがさっきこそ面食らったが、ダーリンの打ち方の欠点はわかっている」
「くッ……!」

ラオウの相棒であるMEIKOは、彼の癖や体格の都合上、打ちにくいコースがあることを知っている。
MEIKOはそこを的確に突き、闇からツーストライクをもぎ取った。

「次はど真ん中だ、イクぜ」

このど真ん中とは、心臓狙いということである。
次の一撃で闇を討つつもりである。
そして全力全開のMEIKOボールが放たれた。
嵐のような投球が、闇に襲いかかる。

実際に球は手に持つバットと筋力だけでは抑えきれず、闇を押しつぶそうとさんとした。


(なるほど……先ほどより格段に威力が増している。
ラオウの筋力を真似たところで打つのは困難ですね)

一方の闇は、文字通りの意味で死球が迫っているにも関わらず冷静であった。
なぜなら闇にはまだ討つ手があったのだから。

「これで、どうですか」
「髪の毛!?」

闇のトランス能力は全身に及ぶ。
髪の毛をラオウのような豪腕に変えて打つこともできるのだ。
闇は新たに作った髪の毛パンチで真上から打ち込んで、胸を抉るハズだった野球ボールを近くの足元にめり込ませた。
足元と言っても殴られた野球ボールは数mほど下の地中までめり込んでいるが……とにかくヒットである

「畜生ッ!!」
「やるな……」

MEIKOが叫び声とラオウの呟きと共に、ヒットを確信した闇と鎧武はマウンドを走る。
ラオウは地中に埋まったボールを掘り起こそうする。

「今度こそ突破は……」
「させない! 走れ、闇!」
『邪魔を!』
「ありがとう、コウタ」

一塁の翔鶴が再び、妨害のために艦載機を発進させ、ガンデルソルなどのバトルチップによる攻撃も加えようとするが、先に一塁を発った鎧武が火縄橙DJ銃による攻撃で翔鶴の攻撃を迎撃し、召喚したガンデルソルも破壊。
その内に闇はトランス能力で元の女性の姿に戻って一塁を突破する。
ロックマンは翔鶴を守るために防戦……すなわちインビジブルのチップを使って回避することにした。
怖気づいたのではない、聖帝軍の副リーダーである闇に懐に入られたら危険を察知したからだ。。

491死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:14:39 ID:RpHoSSuk0

「惜しい……あと数瞬とどまっていれば首をはねられたものを……」

ロックマンの勘は大当たりであり、暗殺者としては一級である金色の闇は一撃で殺害するつもりであったようだ。


場面は三塁へ走る鎧武に移る。
二塁にいたイマジンスレイヤーは、クラックから王の財宝の如く取り出した無数の武器で足止めに成功。
鎧武は彼に右手によるタッチを許さないように二塁をふみ、三塁へ向かう。

「滅ぼす……」
「それはこっちのセリフだ! 俺は大阪やたくさんの人々を殺害したおまえらを絶対に許さねえ!」

その前に鎧武はセンターから前面へと走ってきた平等院の相手をすることになった。
ショートにいるムネリンはどうしたって? 彼は直接殴り合う戦闘は専門外だから……

「平等院!」
「ジョジョ、助太刀は無用だ。
おまえはMEIKOからボールを受け取るためにも二塁から動くな!
あと一人でもアウトに追い込めば、スリーアウトでチェンジになる」

平等院は今にも持ち場から離れそうになったイマジンスレイヤーを制止し、鎧武との一対一の戦いを選ぶ。
鎧武はすかさず、火縄橙DJ銃による砲撃を放つ。
フルーツのエネルギーが立ちはだかる平等院に向かうが、彼はこれを待っていましたと言わんばかりに弾き返す。

「散れ……」

平等院が返すのは光る球(デストラクション)。
フルーツエナジーは光球となって鎧武に跳ね返る。

「まだだ!」

鎧武はここで単純な単純な防御力とパワーなら極アームズより上なカチドキアームズに変身し、光る球を耐える。

「ぐう! うおおおおお!!!」
「来るか!」

光る球はカチドキの鎧を破壊し、中身の紘太にも決して低くない打撃を与えたが、進軍を止めるには至らなかった。
鎧武はその身を再び、極アームズによる白い鎧に変えて突進してくる。
その手には大剣モードに変えたDJ銃……ロックシードを装着したところからして斬撃で決めるつもりか。

「滅びよ!」
『極オーレ!』

鎧武が放つオレンジ色の光・火縄大橙無双斬と、培ったテニヌの力を行使した平等院のラケット。
二つの全力がぶつかり、爆発を起こした。





結果としていえば、DJ銃は平等院の渾身のラケットひと振りによって折られ、平等院に届くことはなかった。

492死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:16 ID:RpHoSSuk0

……だが!


カチャッ

「!!」
「この距離ならラケットは振れないな!!」

鎧武の腕にはこっそりと召喚したブドウ龍砲なる銃が握られており、それが平等院の胸部を捉えていた。
鎧武はラケットを振って直接叩くことができないほど肉薄していたため、迎撃や防御は間に合わない。
次の瞬間にはブドウ龍砲が火を噴き、平等院の胸を貫いた。

いかな、人間を超越したテニヌプレイヤーといえ、攻守はラケットに依存している。
ラケットかそれに近しいものを振ることができない状況に追い込まれては戦闘能力は激減する。
それに気づいた鎧武は火縄大橙無双斬自体を囮にし、弾かれることをあえて念頭に入れてわざと振らせ、そこで産まれた隙に銃を叩き込むんだのだ。

「平等院……!」

未だに地面から野球ボールを掘り起こす作業をしていたラオウは倒れた平等院を見て、確かに言葉を漏らした。


「ラオウ、すま「トドメだ!!」」

平等院を確実に葬るために鎧武はさらに2、3撃追加で頭に向けて銃弾を放つ。
平等院の死体は、頭が粉々のザクロのようになった。



【平等院鳳凰@新テニスの王子様 死亡】



「貴様ら……!」
「よくも平等院を!」

平等院を殺した直後に聞こえてくる拳王軍からの怨嗟、そしてロックマンなど遠距離攻撃できる存在が、鎧武に向けて一斉射撃を放つ。
だが鎧武は慌てた様子はない。

「ここまでは作戦通りだ、あとは……」

後方を見ると一塁から二塁へ向かう闇の姿が見えた。

「よし、ここで一気に!」

闇は鎧武が平等院を下したと見るや、再度トランス能力を使用。
今度はサウザーのような細身のマッチョな体型になった。

『あの体型……まさか!』

シャドーマンがひと目で闇の肉体がサウザーに近いものに変わったとわかった時、嫌な予感を感じた。
そしてその嫌な予感は見事的中する。

以前に拳王軍から点を奪った時のように、闇はニトロエンジン付きの改造車の如く爆走を開始。
トランスによってサウザーと同じ速度を闇は手に入れたのだ。

『「アイエエエエエエエエエエエエエ!」』

二塁のイマジンブレイカーがどこぞのゴールキーパーのように闇に吹っ飛ばされて宙を舞った。
ジョジョとシャドーマンはサウザー化した闇に命を取られないだけで精一杯であった。

「闇!」
「さっきのお返し……捕まってコウタ!」

サウザー闇の速度は圧巻の一言であり、既に鎧武の背後まで迫っていた。
そこで紘太はあえて変身を解き、身軽になった体が闇の小脇に抱えられた。

「よっしゃあ! このまま二人でホームインするぜ!」

紘太と闇はこの状態でホームインし、一気に二点稼ぐつもりなのだ。
カオスロワ式野球のルールなら無論問題ない。
過去に二人でポジション守っていた守備もいたし。

「させるかよ……ダメだ、止められねえ!」

三塁のクロえもんが阻止に入ろうとするが、失敗して上条同様に吹っ飛ばされる。
紘太を抱えているせいか僅かに遅く、片手が塞がっている分だけ攻撃力も落ちているが、それでも高速の移動はできていた。
ロックマンたちの援護射撃もまた、すいすいと躱していく。

このままホームベースへ走りたい、闇。
だがベースの近くにはやっと野球ボールを手にしたラオウがいた。
まだベースは踏むには数瞬だけかかる。

(拳王がベースを踏む前に……!)
(同じチャンスは二度とないかもしれねえ、勝負に出るぞ闇!)
(ええ!)

493死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:45 ID:RpHoSSuk0

三塁を二人で踏んでしまった以上、戻るという道はない。
前進制圧しか道は残されていなかった。
ラオウが先に踏むか、闇たちが先かの勝負であった。

スピードは僅かであるが、闇の方が上だ。
しかし、拳王には剛拳があった。


「受けてみい、このラオウの無敵の拳・天将奔……」

ラオウは奥義の一つである天将奔烈を放とうとする……が、撃てなかった。
その射線上には三塁で倒れているクロえもんがおり、敵に当たろうが当たるまいがクロえもんが巻き添えになってしまう。


「……ただのブラフ! このまま押し通……」
「図に乗るな小娘が!」
「がッ!」

闇はかつてサウザーがラオウを突破した時のように高くジャンプして乗り越えようとするが、ラオウは同じ手は二度と食うかと、蹴りで闇を打ち落とす。
闇は寸でで髪の毛を盾のように硬化させて防いだが、ダメージを受け落下。
さらにボールを持っていたラオウに触れられたことでスリーアウトが確定した。
だがラオウの表情に喜びはない。

「……あの背が低いガキがいない!」

本当なら闇と一緒に倒れているべきの葛葉紘太の姿がなくなっていた。

「ここだぜ」
「いつの間に……」
「悪いが、アンタが闇に触れる前にベースを踏ませてもらったぜ」

ラオウが振り返ると、そこにはベースの上に立っていた紘太がいた。
彼は闇によって投げられ、ベースへと帰還を果たしたのだ。
他の者の目では紘太がスリーアウトになる前に踏む瞬間をはっきり捉えている。

すなわち……聖帝軍がまた一点をもぎ取ったのだ。
聖帝軍側ベンチからは歓声が沸き立ち、拳王軍側は平等院の死も含めて落胆の声が上がった。



               拳 1-2 聖


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

494死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:12 ID:RpHoSSuk0

時刻は22時27分。第四回表。
拳王軍の打者はラオウ、聖帝軍ピッチャーは高津。

高津はラオウに関しては以前の打席で食らいついてくるような危険性を感じていたが、それでもピッチング自体を放棄するわけにはいかない。

(ラオウ、おそらく一番危険な男だろう。
しかし、負けるわけにいかないし、負ける気もしない!)

高津の士気は最高潮であった。
犬牟田が、サウザーが、闇が、聖帝軍の者たちが死力と絆を持って拳王軍の罠を突破していく様に、これ以上ないくらい熱意を感じたのだ。
最初からプロ野球である高津が燃えないわけにはいかない。

(あの世で見てろ、ササキ。
俺は必ず、聖帝軍を優勝させて世界を救う!
おまえが大魔神軍で到達できなかったステージに、代わりに行ってやる!
だから、まだ魂が無事なら応援していてくれ……
ライバルである俺が強ければ戦ったおまえの株もあがるんだからな)

先に旅立った強敵(とも)に、心の中で誓いを立てつつ最高のコンディションで高津は剛速球を投げた。






「聖帝軍、貴様らは」
「!!」

「 貴 様 ら だ け は こ の 拳 王 が 絶 対 に 許 さ ん ! ! ! 」
「ッ!?」


相対していたラオウから発せられた強烈な殺気。
憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情。
そのラオウの目は、覗いてしまった高津の士気が一瞬にして奪われかけるほどであり……

次に高津が目にしたのは、フォームが見えないほどの速さでバットを振ったラオウ。
そこで高津の意識はブラックアウトした。



【高津臣吾@ササキ様に願いを 死亡】



全ては一瞬の出来事であった。
ラオウがボールを打った瞬間、打球は高津のジェットマンのヘルメットすら突き破って彼の頭部を粉砕し、高津の血を帯びた野球ボールは聖帝軍の誰も捉えるころができまま、観客席に巨大クレーターを作った。
ホームランである。

聖帝軍が次に理解したのは拳王軍に一点取られてしまったことと、ピッチャー高津の死であった。


「た、高津さああああぁああああぁああああん!!」

ベンチから犬牟田の悲痛な叫び声が上がったのは、ちょうど22時30分の出来事であった。




               拳 2-2 聖

495死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:40 ID:RpHoSSuk0



『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
考え中          6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

なし           1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
考え中          7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード



【二日目・22時30分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

496エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:21:44 ID:IfalQ6jE0
6/らに安全と判断され苗木・霧切・キュゥべえはアウラのドラゴンの背に乗り、空でイチリュウチームとの平和的な接触が果たされるかに思われた。


「その娘と……ツバサを会わせるなあ!!」


それが二人と一匹を見た時のアナキンの、焦りと怒号の混じった第一声である。
元ジェダイの騎士にしてシスの暗黒卿、アナキンはフォースの力によって接触してきた苗木・霧切・キュゥべえの心を読んだのだ。
内二人は個人的復讐や生存に関する打算的な思いがあったのは確かだが、少なくとも世界の破滅――大災害を招きたがるような者ではなく、接触は有益と判断できたが、問題は残る一人である霧切。
彼女の心は崩壊しかけており、トラウマの原因であるツバサを引き合わせたら最後、確実に崩壊することがわかった。
絶望したら魔女になる魔法少女ならトラウマの火に油を注ぐことになる。

だが、アナキンの忠告は遅く、霧切はイチリュウチームに匿われているツバサを見てしまい……発狂、ソウルジェムは一瞬で真っ黒に染まり、砕けた。

「やめるんだ、霧切さ――」
「キョウコ……なにを、きゅっぷい――」

今にもツバサに飛びかかろうとした霧切を苗木は抑えつけようとするが、彼は触れた瞬間に彼女から溢れ出る魔力で一瞬にして蒸発。
せめて彼がダイヤの指輪に似た魔法石の効果を知っていれば結果は変わったかもしれない。
続いて近くにいたキュゥべえもまた、蒸発した。
キュゥべえは人間と違い、心や感情を理解できないために、ツバサを会わせた場合のリスクを予測できなかったのだ。

『キュゥべ……苗木ク……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

自らが原因で、親友二人を殺してしまったことにも魔法少女の絶望を加速させる。




私はただ、この世界の謎を解いて希望を見出したかっただけなのに――




その思考を最期に、霧切響子は絶望で死んで、魔女として生まれ変わった……
そしてイチリュウチームは咄嗟の判断で脱出できたラミレス・ホルス・ふなっしー、そしてツバサを除いて脱出不能の結界の中に閉じ込められた。

 □

魔女誕生による魔力だけで100名近いアウラの民が命を落とした。
姫巫女であるサラが民の死を嘆くが、クリスとシマリスは彼女を立たせようとする。

「なんてこと……また、多くの民が」
「サラ! 悲しみたいのはわかるが、手を止めてる場合じゃないぜ!」
「あの魔女をやっつけないと、ぼくらは全滅でぃす!」
「ええ……わかっています」

魔女の誕生から30分が経った。
幸いというか、ここまで生き延びたイチリュウチームのメンバーは猛者が揃っていただけに、ある者は直感的に回避し、ある者は優れた耐久力で、ある者は強い運に助けられ、またある者は野球による技術によって誕生時点で死亡したメンバーはゼロであった。
だが、そこからが真の戦いの始まりであった。

497エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:22:35 ID:IfalQ6jE0


霧切が巨大な魔女……宙に浮いている落書きのような希望ヶ峰学園のような見た目をしたソレは、体から出す魔力の結界でイチリュウチームを閉じ込めていた。

イチロー、ナッパ、6/、クリス、シマリス、ガレオン級のような火力に優れ、または遠距離攻撃ができるものは魔女に攻撃をしかける。
仲間になるかもしれなかった少女を攻撃するのは気が引けるが、アナキンと蛮の見立てによると魔女化した時点で霧切は既に死に、魔女は呪いの集合体でしかないと教わり、殺すことこそ霧切のためだと言われたため、仕方なく総攻撃を開始することにした。

レーザービーム、ジャイアントストーム、クルミボール、バレットパーティー、無数のクルミと火球が魔女に直撃する。

「……む、無傷!!?」
「なんて堅牢な結界なんだ! 俺のレーザービームさえ通用してない!」

だが魔女を守る結界は……彼らの総攻撃すらものともしなかった。
基本的に火力が控えめな胡桃使い二人、まだ発展途上のシンフォギア装者であるクリス、モブドラゴンならまだしも、イチローの魔王すら一撃粉砕せしめる投球やスーパーサイヤ人の攻撃さえものともしないと言えば、どれだけ規格外な結界かわかるだろうか?
更に言えば自分たちを閉じ込めている結界そのものにもイチローは既にレーザービームを投げたが、通用しなかった。
それと同じレベルの防御結界が魔女にも敷かれているのだ。

そして、魔女側からも反撃のロケットみたいな形状の魔弾が地上のイチローたちに降り注ぐ。
ロケットの威力はガレオン級たる大型ドラゴンが一発で消し飛ぶレベルであり、サイヤ人でもない限り直撃は死を意味していた。

だが前線に立つイチローたちはバット・エネルギー弾の乱射・胡桃・銃弾によって迎撃や回避に転じ、雨あられのように降り注ぐロケットを死人を出さずに切り抜けた。

「……こんな状況じゃなきゃ良い野球の練習になるんだけどね」
「言ってる場合か! アンタやナッパの攻撃でもダメって……どうすりゃいい! このままだとジリ貧だぞ!」
「焦るな6/、今度は一点集中で攻撃してみよう、どこかに弱点はあるハズだ」

なんとか戦線を奮い立たせようとするイチローであったが、彼自身もまた形成が不利であることは理解していた。
ドリスコルが乗るグレートゼオライマーでさえレーザービームの直撃には耐えられなかったであろうが、今度はそのレーザービームが直撃しても倒れない敵が現れたのだ。
宗則のようなホモ愛……もといメジャーリーガーのようにレーザービームを爆発する前に受け止められる存在もいなくはないが、直撃を受けて無傷な敵はこれが初めてである。

(この戦い……真正面からじゃ勝てないかもしれない、どうにか脱出口を見つけてくれ蛮!)




「はあ!」

イチリュウチームの後方ではアナキンがおり、双剣でイチローたちが迎撃しきれなかった魔女のロケット攻撃を斬り払う。
さらにその後ろでは蛮・はやて・サラの三人に数名のアウラの民が、穴を掘っていた。
塹壕作り……ではない。塹壕程度では魔女の攻撃で地面がめくれ上がってしまう。
魔女霧切から発せられた結界は地表のみで地下には及ばないのではないか?、と考え、地下から脱出口を作ろうというのだ。
結界の外に出れば、閉じ込められている時よりは希望があるし、最悪イチローでも倒せない敵から逃げてしまうことも可能になる。
魔女も都庁の勢力と合流できれば対処法もあるかもしれない。
首輪を外しているとはいえイチローたちの体力は無限ではないので、急ぐ必要があった。


「メタグロス、コメットパンチだ!」

蛮の指示によりメ6/から借りたメタグロスから放たれる強烈なパンチによって地下に大穴が空いて行く。
何発か打ち込み続け硬い岩盤やコンクリを砕いた結果、どこかの地下鉄トンネルへの道が開けた。
それはおそらく、結界外の場所にも繋がっている。

「やったで! これで皆を外に……」
「待て!」

脱出路が見つかったことにはやては喜び外へ踏み出そうとするが、蛮が制止をかける。
実際、蛮の直感通り、はやてのぬか喜びとなった。
明かりを灯すとその地下通路に繋がる道にも魔女による結界が敷かれていたのだから。

「そんな……」
「やはり異形となった彼女を討つ以外、道はないのでしょうか……」

どうやら結界は魔女を中心に、障害物に関係なく一定範囲内に設置されるようだ。
無理に突破しようとすれば苗木たちと同じく蒸発するだろう。
はやてとサラ、蛮、ついでにメタグロスは苦い気持ちを抱きながら仲間に報告するために、溜息を吐き肩を落とすように地上に戻った。

498エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:23:18 ID:IfalQ6jE0


一方、地上。

「……耐えきるだけならなんとかなりそうな気もする」

そう呟いたのは6/である。

「何を言ってるでぃすか、どうみてもピンチでしょうに!」
「待て待て、冷静に状況を考えてみろ」

一見、状況を呑み込めてように見える台詞だが根拠はある。

「確かに攻撃力や防御力は理不尽だが、肝心要の攻撃は大味だ。
アウラの民やまともな装備がないサラとはやては流石に苦しいが、他の面子なら防いだり弾いたりするのは余裕だ」

実際、魔女の攻撃はロケットらしき砲弾を乱射してくるだけ、避けるだけなら一定の実力があれば苦労はしない。

「外の様子はわからねえが、結界から脱出したラミレスやツバサたちは確実に生きている。
あいつらが都庁に辿りつき、都庁の連中が狂信者の攻撃を凌いで勝利していれば、救援も来てくれて外側から魔女をやっつけてくれるかもな。
となるとイチローやナッパで倒せねえ、蛮たちの脱出路を探す作戦もダメなら、俺たちがとる道は持久戦!
敵も魔力は無限じゃないだろうし、耐えきることなら勝機は見える!」
「そうですか……そう思うと少し気が楽になるでぃす」
「そうだ、最後まで希望を捨てちゃいけねえ!」

6/の持論は多少強引かもしれないが、シマリスや他の仲間にも光明を見せた。
都庁同盟軍からの救援が来るのなら、手数が限られているイチリュウチームよりは魔女を退治する手段があるかもしれない。
攻撃も脱出もダメだとわかったならば、それに絶望するよりは、終わらない戦いはないことを信じて耐え忍ぶ道を選べば希望も見えたのだから。









――そう、うまくいくかしら?






6/は油断していたわけでも、魔女がロケット以外の攻撃を持っている可能性を忘れていたわけではない。
相応の覚悟、注意、予測を立てたからこそ皆の前で希望を口にしたのだ。
彼の不幸は魔女のもたら絶望は予測を遥かに上回っていたことにある。

499エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:23:52 ID:IfalQ6jE0

「な、なんじゃこりゃあ!」
「6/! うわああああ!」

突如、6/の足元に魔法陣が現れたと思いきや、彼を中心に新たな結界が現れて仲間たちを押しのけるように追い出した。

「俺の周りに結界が!」
「助け出すんだ!」
「クソッ! 伝説のスーパーサイヤ人になった俺の力でもビクともしねえ!」
「ソウルエッジとソウルキャリバーでもダメだ!」

イチローたちは大慌てで結界に閉じ込められた6/を救い出そうとするが結界は割れる気配を見せない。
当の6/も内部から胡桃を投げて対抗するが、抵抗は無意味だと言わんばかりに胡桃を弾く。

「これは魔女の攻撃……!? どうすれば……」
「6/! 後ろだ!」
「え?! がッ!!」

仲間の忠告も虚しく、6/は閉じ込められ呆然としていた隙に何者かに羽交い絞めにされた。
彼を捕まえたのは魔女が生み出す『使い魔』であり、それらが地面から複数這い出て結界の中の胡桃使いを捕えた。
使い魔はいずれも禍々しい落書きのようなタッチで描かれた霧切に似ていて、いずれも6/レベルの腕力では追い払うことはできなかった。

そして使い魔の産み主である上空の魔女霧切から声らしきものが発声された。


――オシオキターイム!


……ノリノリの青狸みたいな声で。



『胡桃千本ノック、行きます』


使い魔がそう告げると、本当にいつの間にかの内に一体の使い魔の恰好が野球のユニフォームさながらとなり、6/から奪った千個の胡桃でノックを始めた。
明確な殺意と共に打ち出された球は動けなくなった6/に、正確無比に向かっていく。

「げふッ、ぐあああ!」
「6/、やめろおおおおおおおおお!!」

6/の顔や腹に打球が命中し、肉体を抉りながら流血させる。
そこから魔女の言った「オシオキ」とは「処刑」のことだと察した仲間たちは彼を助けるため(特にナッパは)自身の消耗を度外視して助け出そうとするが、結界は一切の揺らぎを見せなかった。

外にいる仲間たちの頑張りを嘲笑うように、内部での胡桃ノックはさらに威力と速度を増していた。
もはやノックというより速射砲であり、一秒間に何発打っているかわからない胡桃はいずれも6/に全弾直撃。
200発目までで歯の八割が折れて、400発目で両目を失明させ、600発で左足が複雑骨折し、800発目で選手生命である右手を失った。
そして900発目までに6/は悲鳴を発することもなくなり……

迎えた最後の1000発目では、全身から血を垂れ流すボロボロの革袋のようになっていた。

「6/……そんな……」

6/の死に仲間たちは失意を覚える。
もう何度目かわからない喪失のショックがイチリュウチームの心を抉った。








「か、……勝手に殺すなよ」

500エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:24:29 ID:IfalQ6jE0


「6/!」
「生きてた! まだ生きてるでぃす!」

否、死んだと思われた6/は、まだ生きていた。

「この俺が、げほッ、胡桃で死ぬことはあっちゃならねえ」

胡桃使いである6/は胡桃を受けながらも、飛んでくる胡桃の角度を計算し、僅かな微動で最もダメージの少ない部分にあたるよう調整していた。
それでも虫の息だが、千本ノックを確かに凌いだのでである。

「嘆くなよナッパ、シマリス。
俺は志半ばで倒れたハラサンや仲間たちのためにも、選手が野球をしないまま死ぬわけには行かねえんだよ!
必ず、イチリュウチームが優勝して、預言も完遂して、ツバサが世界を救うところを見てやるんだ!」

血反吐を吐きながら苦し紛れでも、声を絞り出す6/。
彼の宣言には一欠けらの闘志の鈍りも見せなかった。
そんな彼が仲間の視線を受けながら負傷も無視して立ち上がろうとする。

今、彼は東京と千葉の県境で最も目立っていた。
不屈の闘志を持つ野球選手◆6/WWxs901s氏にイチリュウチームとアウラの民の皆が注目していた。







『ハイ、通行の邪魔です』
「ぎゃッ!!?」

千本ノックを乗り越え、皆の注目を浴びていた6/の闘志は虚しく。
いきなりやってきたリリーフカーに高速で衝突され、彼の肉体は胡桃のカスか肉片かわからないくらい粉々になった。
彼の死と一緒に、彼を閉じ込めていた結界も消えた。


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手 死亡】


「うおおおおおおおおおおおおお、よくも6/をおおおおお!!」
「許せない、でぃす!!」

ナッパとシマリスは6/を殺された報復として、霧切似の使い魔たちを拳や胡桃で殲滅していく。
流石に魔女より格段に戦闘力が低いことや、無敵の結界に守られなくなったこと。
何より6/殺害後は全く無抵抗にだったため使い魔たちはものの数秒で全滅した。
だが全滅した端から、魔女の中からまた新しい個体が生み出されて補充されていく。

「ナッパ、シマリスやめろ! 弾と体力の無駄だ」
「ナッパ様、親友を奪われた気持ちはわかりますがここは抑えて」
「うっうう……」
「チクショォォーーー!!!」

蛮とサラに制止され叫ぶナッパとシマリスは攻撃の手を止める。
使い魔をいくら潰した所で、本体の魔女には一切の打撃を与えることもできないのだから。


『うふふふ、味わってくれたかしら?
私は受けた絶望と悲しみ、そこから生み出された呪いを』

501エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:25:12 ID:IfalQ6jE0

ふと、聞き覚えのある声がどこからか聞こえ、イチリュウチームは振り向く。
声を発したのはすぐ近くにいた霧切似の使い魔…だが、ただの使い魔ではなく、白と黒のクマみたいな顔のマスクを被り体格も高校生相応、明らかに特別仕様と思われる者からだった。
警戒しつつ、アナキンは声をかける。

「おまえは他と違って知性があるみたいだな」
『ええ』
「喋れるってことはまさか響子ちゃん本人やんか……?」
『それは違うわ。
私はしいていうなら魔女となる寸前の霧切響子の残留思念を色濃く受け継いだ使い魔、コピー品みたいなものよ』

敵意を持っているとはいえ相手と意外な形でコミュニケーションが取れると思わなかったイチリュウチームは驚く。
ちなみに本体である魔女霧切も空気を読んだのかは謎だが、攻撃の手を止めていた。

「コピー品でも構わない、話し合いができるなら君にどうしてもお願いがある。
僕らをこの結界の中から出してくれ」
「オイ、何を言ってんだイチロー! こいつは6/を殺し――」

いちおう仲間を殺した怨敵である魔女との交渉を図ろうとするイチローにクリスは批判をするが、イチローは手で制した後、話を続ける。

「僕らは大災害で世界が滅ぶ未来を回避するために、どうしても都庁にたどり着いて、野球もしなければならないんだ。
大災害が着てしまえばTCという物質で響子ちゃんも含めて何もかも滅んでしまう。
6/を殺されたことは心が痛いが……もし逃がしてくれるなら攻撃したりしない、それぐらい大災害回避は僕らに取って急務なんだ」

なんとか残留思念と言えど響子に善意があることを信じて、訴えかける。

『ふふふ……世界を救いたい?

ふざけないで。
こんな腐った世界にうんざりしたから彼女は魔女に身を堕としたのよ。
何もかも滅んでしまえばいいんだわ、こんな絶望しかない世界なんて。
それに霧切響子は人としてとっくに滅んでいる……自分ごと世界が滅びてくれるなら嬉しいわ』
「くっ…!」

現実は非情、交渉は決裂である。
更にマスク越しでもわかるレベルで使い魔は凄む。

『彼女はこの世界の謎を解いて希望を見出したかっただけだった。
だけど世界は彼女が想像した以上にエゴに塗れて醜かった』

この使い魔の力なのか、彼女の背後に映像のようなものが映る。
そこに映るのはクライシス帝王、姫川友紀、安倍総理、Wゴロー、ハクメンそして食人鬼としての風鳴翼。
全員の瞳が、方向性は違えどむき出しの狂気に満ちていた。

『この世界の人たちは我良しなら他人はどうでも良い連中ばかり……
己の欲望のためならそれまで共にやってきた仲間を平気で裏切ったり、名声のために危険に晒すことも厭わぬ人。
無軌道な破壊と、自分が得をするために規則と合理性を盾に他者を食い物にする連中。
そして自分勝手な正義のために食い荒らす化け物ども……』
「待て、世界は悪い奴ばかりじゃない!
こうなったのも、殺し合いを仕向けた黒幕がいるからなんだ!」
『全部黒幕とやらが悪い? いいえ。
黒幕はきっときっかけに過ぎない…大災害と殺し合いで漸く、隠されていた人の本性が暴かれたのよ。
どうせ皆殺しにするんだから黒幕だろうが誰だろうが、関係ない』
「勝手な理屈を言いやがって! ただ自分が悲しい目にあったから他人も不幸にして良いと思ってんのか!」


イチローとクリスが反論すると映像には存命時の南光太郎、霊烏路空、矢車想、風鳴弦十郎、デカオの姿も映るが……いずれも無残な死体へと変わっていく。

「う……これは、総司令まで!?」
『確かに良い人もいたわ。
だがそういった人ほど悪人どもに利用され、騙され、殺される。
善人も心変わりしていつかは悪人になるかもわからない。
世界の闇に悶え苦しめられるぐらいなら善人も諸とも殺してあげた方が温情よ』
「だが滅ぼすことで助けになるなんて思い込みは――」
『そして……魔女となった霧切響子が最も許せなかったのは』

サラの意見を遮るように、最後の映像が流れたが、それはツバサを中心に守るように囲う、イチリュウチームであった。


『彼女の仲間や人々をたくさん殺した、食人鬼を善人だと思っていたあなたたちが匿っていたことよ!』

502エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:25:43 ID:IfalQ6jE0


「「!?」」
「待てよ、今の翼先輩は…ツバサは違うんだ、生まれ変わって食人鬼じゃなくなったんだよ!」
「それに理性を持ったテラカオスは必要不可欠、僕らの世界にはどうしても彼女が必要なんだ」
『誰がなんと言おうと罪人は罪人として裁かれるべきよ。だのにあなたたちは匿った。
主催による放送もあったのだから食人鬼のことを知らないとは言わせないわ。
信頼していた人を殺していった風鳴翼が英雄になることなんて私は認めない。
罪人の力を借りてでも助かりたい人々も世界も滅びて然るべきよ!』

霧切響子にテラカオス・ディ―ヴァの残滓であるツバサがどのような経緯で心身ともに生まれ変わったかなど、知る由もない。
否、仮に知ったところでツバサ一人に頼らざるをえない人々と世界に絶望するだけだろう。

「頼む話を聞いてくれ、それには深い事情があるんだ」
「諦めるんだイチロー」
「アナキン!」
「こいつは響子の残留思念、あくまで精神状態をなぞっただけの偽物でこれ以上は深い思考はできない。
ツバサを呪い、僕らを呪い、世に呪いの言葉を投げかけるスピーカーでしかない」
『ご名答よ、私はもちろん魔女が考えを変えることはない。そもそも彼女は自我だって残ってないのだから。
ただ呪いだけが残っている。
あなたたちが苦しむところを見たいというね』
「くっ……」

苦虫を噛み潰したような顔をするイチリュウチーム。
説得は無意味とわかったが、さりとて6/を一方的に処刑した隠し種を持っている。
その気になれば、全員先ほどのように結界の中で一人残らず皆殺しもできるのだ。
隠し種の正体がわからないと全滅である。
ではどうすればいい……そう考えていたイチリュウチームの足元に何かが落ちてきた。

落ちてきた物体の正体はウィザードライバーと、インフィニティリングだ。
持ち主と大半の指輪は吹き飛んだが、ベルトとこの指輪だけは破損を免れたらしい。

「これは苗木くんがつけていたベルトの…なんのつもりや?」
『ゲームをしましょう。
そのベルトには魔女と同じ魔力を込めた…それを嵌めて仮面ライダーになれば、変身者は結界の外へ出られる』
「一人だけ助けてやるっちゅうことか」
『話はまだ終わってない。
インフィニティスタイルの力さえあれば、今の弱った風鳴翼なら簡単に倒せる。
そして翼を殺して来たのなら結界を解いて、他の全員も逃がしてあげる』
「なんやて!」

これは取引だった。
ツバサをイチリュウチームの誰かが結界の外に出て殺しに行けば、ツバサ以外の全員を助けると言うのだ。
だが……

「できるわけねえだろ!
ツバサは仲間だし、世界を救えるかもしれない混沌の化身だ。
殺しちまったら世界を救えねえ!」
『あら、そう。
従わないなら魔女の呪いであなたたち八人を20分に一人、ランダムにオシオキしていくわ』
「魔女の呪い、オシオキ…さっき、6/を殺したアレか」
『あなたたちは予言の完遂のために化身の他にも野球をしなければいけないのよね?
残るメンバーは外に出た二人を含めても10人……あと最低2人死んだらチームで野球はできなくなるわね。
おっと、そこのモブドラゴンたちで人数を稼ごうなんて思ないでね。
彼らなんてイチリュウチームがいなくなったらオシオキなしでも全滅するから数に入れてないわよ。
それからツバサを殺さずにベルトを持ち逃げしたり、ベルトをつけたまま魔女に反抗したら即全員オシオキよ。
変な考えは起こさないことね』

ツバサを守ろうとすれば今度は野球チームが一つ壊滅する。
究極の選択であった。

『このゲームは化身か野球か、どちらかしか選べないのよ』
「ひ、卑怯でぃす!」
『彼女も食われて死ぬか魔法少女として生まれ変わるか、選択を迫られたわ。
突き詰めるとどっちも絶望だったわけだけど……あなたたちも同じ絶望を味わいなさい』

使い魔はほくそ笑みながら消えていき、そして魔女からの再度のロケット乱射と次のオシオキへのカウントダウンが始まった。

(く……どうすればいい、ツバサもチームも大事だ。片方だけ選ぶなんて僕にはできない…!)
(テラカオスは他になのはがいるが、どう見ても制御できてるようには見えない…不屈の勇者たるテラカオスを探しだすより大災害の方がきっと早い)
(だが野球チームの作り直しも難しい、考えている内に選手は減っていく……これまで以上に最悪の自体だな)

イチローが、アナキンが、蛮が、その場にいるイチリュウチームの対主催たちが戦いながら打開策を考える。
その窮地に比例して使い魔から託された希望を追い求め絶望の波にのまれた少年の忘れ形見、インフィニティリングが妖しく輝いていた。




 □

503エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:27:18 ID:IfalQ6jE0

その頃、結界の外側。
都庁からの救援として来たほむらは、オオナズチの背に乗り、空から重機関銃による射撃を魔女に向けて試みていた。
しかし、銃弾は結界は貫けず、蒸発するだけであった。
一方で結界の外への反撃も一切なかった。
ほむらは機関銃をリロードしつつ、オオナズチに話しかける。

「これだけ撃ってなぜ、反撃してこないのかしら?」
「一瞬で捻りつぶせる羽虫だから今は反撃する必要がないと思っているのか、それとも攻撃できない事情があるのかどちらかでしょう。
ほむほむが言う魔法少女の呪いが形になったものならば、何も考えてないって線もあるかもですなw」
「慢心か秘密か白痴か……いずれにせよ、それが私たちの付け入る隙にはなりそうね」

ほむらの盾の中には死した貴虎が所持していたN2爆弾が三つある。
起爆コードがなければ意味ないハズだが、これは出征前の天才ハッカー犬牟田がほむらが千葉へ旅立つ前に解除してくれた。
威力が高すぎるため、世界樹の前では使えず、魔物たちもこのような武器を嫌うので防衛戦闘には使えなかったが、生存者がほとんどいなくなったこの場所なら大丈夫だろう。

「この爆弾を三つ同時に発破すれば、あの魔女を倒す、もしくは大きな打撃を与えることもできるはず」
「結界の中で生きてるであろうイチローたちは大丈夫なんでしょうな?」
「そこは任せて、爆風がチームを傷つけないように調整するのには自信があるわ。
…問題なのは、この堅牢すぎる結界ね」
「ラミレス氏が言うには、このまま攻撃を続けてほしいそうですが、結界の穴を見つける前に弾薬そして中のチームは持つんでしょうな?」


魔女から町一つ分、離れた場所のとあるビルにはラミレス・ホルス・ふなっしー・ツバサがいた。
ふなっしーは怪我と消耗が激しいツバサとホルスを介抱し、ラミレスが双眼鏡を使って遠くから巨大魔女とほむらオオナズチたちの様子を見ていた。

「ラミレス監督、ほむらに攻撃させてるけどアレは意味あるなっしか?」
「弾の無駄遣いホル、仲間は気になるけどツバサだけでも都庁に送り届けた方が良くないホルか?」
「都庁ハマダ、狂信者ト交戦中。迂闊二向カウノハ危険デス。セメテ都庁ガ勝ッタトイウ報告ガアルマデ待ッタ方ガ良イデショウ。
ソレ二、ほむらサンタチ二攻撃サセテイルノハ無駄ジャナインデス」
「どういう意味なっし?」
「一見無敵二見エル結界モ、ドコカニ穴ガアルハズ。ソレヲ見極メル為二撃タセテイルノデス」

よく見るとほむらたちは適当に弾を撃っているのではなく、一か所に火線を集中したり、結界の違う場所を攻撃したりしている。
僅かにでも穴が開いたら、その穴にほむらは時間停止の魔法を使ってN2爆弾を魔女本体へ叩き込み、ダメージを負わせる作戦なのだ。
仮に失敗しても都庁の戦力と合流したときに、結界の特性を知ることができただけでも重要なデータとなるだろう。

「ンン?!」
「どうしたホル!?」
「今、確カニ弾丸ガ、バリアノ中ヲ通ッタ様二見エマシタ」



「オオナズチ、今確かに……」
「見えましたぞw たったの一瞬ですが結界が弱まって、たったの数発ですが魔女に弾丸が直撃したところを!」

撃ち続けていたほむらとオオナズチは、刹那の瞬間だけ結界が弱まり、魔女に命中したところを。
もちろんワルプルギスの夜以上の戦闘力を持っているであろう魔女霧切相手に機関銃程度では大したダメージにはなりえないが、結界が貫徹したことが大事であった。

この時刻はちょうど6/が魔女と使い魔にオシオキされた時間と一致する。
実はオシオキの瞬間だけ内部の対象者を確殺するためにエントロピーが集中するため、一瞬だけ結界が弱まるのだ。
ラミレスが言った通り、一見無敵に見えても相応の弱点が存在するようだ。

その事実にほむらはラミレスたちはまだ気づいてないが、ただの刹那の内でも結界を破った事実に、イチリュウチーム救出の希望を見出し、今度は武器を変えるなりして検証を続けるのだった。

504エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:27:51 ID:IfalQ6jE0




【二日目・23時00分/東京〜千葉・魔女の結界内】


【霧切響子(魔女)@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】

※外観は宙に浮いている劇団犬カレー作画の希望ヶ峰学園、結界の防御力はイチローのレーザーさえ貫徹できないレベルです
※呪いの力で20分毎に一人、イチリュウチームのメンバーを強制的にオシオキ(処刑)できます
 即死耐性は無効化、どんなに強くても結界の中にいる限り、強制的に殺されます
 オシオキから逃れるためには代表者を一人決めてウィザードライバーとインフィニティリングを装備し、結界の外にいるツバサを殺害しないといけません(殺害しなかった場合は結界の中のメンバーが全員オシオキされます)
※ただし、オシオキ中は結界の力が僅かに弱まる模様
 この瞬間のみ結界を貫けるかもしれません



【イチリュウチーム】

【イチロー@現実?】
【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【シマリス@ぼのぼの】

【生存アウラの民】
スクーナー級×200、ガレオン級×15

※アウラの民はオシオキの対象外
 イチリュウチームが全滅すると守り手や指導者がいなくなって自動的に全滅します
※ギムレーの手で屍兵化されていたアウラの民は、ギムレーが死亡したため消滅しました。


【二日目・23時00分/東京〜千葉上空・魔女の結界外】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】

505 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:28:17 ID:IfalQ6jE0
投下終了です

506隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:42:14 ID:O9KqTJGo0
ネオ・ジオングスーツ始め多くの起動兵器が深海棲艦により整備を受けながら眠る、東京ビッグサイトの地下格納庫。
そこには影薄キャラ特有のステルス能力で今まさに破壊工作を行わんとする三人の潜入者がいた。
セルベリア捕縛に向かった小町・あかりとは別行動を取っていた影薄三人組である。

「倉庫から爆弾を見つけてきたっす」
「罠の類もチェックしてみましたが、あの辺りの道を通っていけば問題なさそうです」
「ありがとよ二人とも、よし始めるか」

日之影たちは狂信者の新兵器破壊に必要な爆薬の用意や、工作活動前の下調べをしていた。
いかな存在感が薄い、忍者よりも忍んでいる連中とはいえ、油断は禁物。
食人海豹ぼのぼのにはステルスを見切られたこともあり、破壊には慎重を要した。

準備を終えた三人組は爆弾を抱えて警報などの罠を踏まないようにネオ・ジオングに接近していく。

(気づかれてないっすよね)
(ここで整備を行ってる奴ら、生気を感じないゾンビみたいで気持ち悪ぃな)
(まるで見てくれは生き物みたいなのに機械のようです)

黙々と作業を続ける謎の異形たちに影薄たちは小声で感想をこぼす。
都庁にも魔物という異形がいたが、こちらはまるで幽霊であり魔物と比べても異質であった。

影薄たちはまだ知らない、彼女たちはかつて艦むすと言われた人造巫女たちの慣れの果てであることを。



狂信者を束ねる神のために作られた赤い巨大鎧に影薄たちが肉薄する。

(近づくとやっぱでけえな……100Mはあるぜ)
(こんな大きいものを複数しまい込める場所を、二日足らずでビッグサイトの地下に作りこめちゃう狂信者のメカニズムも脅威っす)
(さあ、登ろうとましょう。装甲部分はともかく、内側からなら小さな爆薬でも有効なハズ)

三人がネオ・ジオングのあまりの大きさに驚きながらも、いざ登ろうとする。
だが、いざ登ろうとした瞬間。

「ッ!?」
「日之影さん!」

日之影は背後から気配を感じ、咄嗟に振り替えるとそこにはゴーグルとイヤホンをかけ、大きな篭手を三人に向けて振りかぶっていた少女型深海棲艦――集積地棲姫がいた。
明らかに整備のための行動ではなく、攻撃の準備。
迷っていれば自分も黒子もモモ死ぬ。
そう感じた日之影は彼女がこちらを攻撃する前に、先に拳で彼女の腹部を貫いた。
ドラゴンハートで格段に強化された拳は直撃ならば深海棲艦を一撃で葬れるクラスだ。

『ケンゾウシタ…シンヘイキ…ハ……ヤラセハ……シナイ………ッ!』

血なのかオイルみたいなのかよくわからない液体を腹の風穴から流しながら、集積地棲姫は格納庫の床に倒れ伏した。
そんな哀れな彼女の轟沈に感想を挟む暇もなく、周囲から砲口を向けられていることに気づく。
いつの間にやら影薄たちは格納庫中の深海棲艦に包囲されていることに気づいた。

「ひ、日之影さん……」
「これはまずいかもしれません」
「ああ……こいつらの対応があまりにも早すぎる。
どう考えてもこのゾンビもどきたちは俺たち影薄が『見えている』
ひょっとすると罠に嵌ったのは俺たちかもしれねえ……」

深海棲艦がどうやって影が薄いステルス存在を見抜いたのかは、日之影たちにはわからない。
ただわかるのは、彼女らの視線が当てずっぽうではなく真っ直ぐに影薄たちを捉えていること。
いつぞやの海豹のようにちゃんと見えていたということである。

「散開ッ!!」

深海棲艦の誰かが発砲するよりも早く日之影は他の2人に指示を出し、三者は格納庫の中でバラバラになって逃げだした。
この指示は的確であり、直ぐに深海棲艦による集中砲火が襲い掛かった。
ドラゴンハートとデモニカスーツのおかげで身体能力が上がっていたことも幸いにして、三人とも負傷せずに済んだのだ。
日之影は拳で、黒子は銃で、モモは刀と雀力で迎撃し、イロハ級程度の深海棲艦を倒していく。

507隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:42:43 ID:O9KqTJGo0

「やばいっす、まさか潜入に気づかれてしまうなんて……敵がどんどん来てしまうっす!」
「僕たちだけじゃなく他の場所にいる小野塚さんや赤座さんも危ない!」
「仕方がねえ、こうなりゃスピード勝負だ。
俺と黒子がけん制するからモモはよじ登って爆弾でこの赤デカいのをぶっ壊せ!」



「そうは……させないデスよ!!」
「チッ!」

強引にでもネオ・ジオング破壊を進めようとする影薄たちに、処刑鎌の連撃、飛翔する回転鋸、大きな槍がそれぞれに襲い掛かる。
日之影は槍を白羽取りし、黒子は散弾で鋸を迎撃、モモは防ぎきれなかったが雀力を防御に回すことでダメージを最小限に減らした。
デモニカスーツはところどころ避けてエロい感じになったが。

「モモ!」
「だ、大丈夫、また裸に逆戻りしそうな悪寒がするっすけど……」
「騒ぎを聞いて駆けつけてみれば」
「やはり侵入者がいたデス。まっちゃんが言った通りだったデス!」
「ビッグサイトはやらせへんで!」
「クソッ、厄介な連中がきやがった」

格納庫に馳せ参じたネームド狂信者は、狂信者のエースであるシンフォギア装者である切歌。
切歌と同じくシンフォギアの使い手となったレジーナ。
そして巨人への変身能力を得た「元」お笑い芸人・松本である。
強者である日之影だからこそ、三人の強さは周囲の深海棲艦の比ではないと。

「良いかい、切歌?
深海棲艦たちは影の薄い彼らを捉えられるように事前にセンサーを改造しておいた。
彼女たちが攻撃した先に敵がいる。そこを狙って攻撃するんだ」
「ありがとうデス、サーフ博士」
「なんや? 兄ちゃんは戦わへんのか?」
「……クラウザーさんを想う気持ちは確かだけど、科学者だけに戦闘は専門外なんだ。
僕は後ろに下がらせてもらうよ……君たちの武運を祈る」
「ええ! 任せて!」

切歌たちの後ろには黒髪Ⅿ字の研究者サーフもいた。
どうやら彼は戦闘はろくにできない代わりに深海棲艦に影薄が見えるように改造したらしい。
そそくさと物陰に隠れてしまった。

「博士……ということは技術者か!」
ちょうどいい、あいつを捕まえればディーやセルベリアを捕まえるまでもなく、黄泉レ〇プマシンをなんとかできるかもしれねえ!」
「何をぶつくさと、ネオ・ジオングとサーフ博士はやらせないデス!」
「お嬢ちゃん! 邪魔をすんじゃねえ!」

「何発撃ちこんでも無駄やで、生贄は殺害や」
(銃弾が効かない……!)

「アンタたちなんかにクラウザーさん復活阻止をやらせるもんですかあ!」
「私たちだって……負けられない理由があるっす!」

サーフを捕まえようとする日之影を止めるように切歌のイガリマが襲い、日之影は拳で押収する。
松本は黒子を狙い、黒子は銃で撃つが、ドーピングコンソメスープで得た鋼のボディと巨人化能力者特有の再生能力でビクともせずに吶喊する。
一方でレジーナはモモと相対し、ツインテール状のパーツに括り付けた鋸と斬鉄剣をつばぜりあう。
そして周辺からは絶えず放たれる深海棲艦の射撃。
ものの五分足らずでビッグサイトの格納庫に暴力という嵐が吹き荒れた。

508隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:43:46 ID:O9KqTJGo0



少し離れた物陰に隠れながらサーフは戦闘の様子を伺う。

(これは正直まずいな……)

その表情はこの殺し合いが始まってから初めてと言えるぐらい、渋い顔をしていた。
彼はカオスちゃんねるのサーバーと繋がっている違法改造のスマホで掲示板及び、各参加者のナノマシンから得た殺し合い全体の情報を見ていた。

サーフは殺し合いを表向きの主催であるベイダーたちにやらざるえないよう誘導した元凶である、インターネットや隠蔽工作を通じて殺し合いを裏から操っていた黒幕と言っても過言ではない。
だがそんな黒幕や支えてきた掲示板にも、全能でないが故の限界や穴はある。
彼はついさっきまでギムレー急襲のためディー専用兵器の製作を急がねばならず、その間は掲示板を見ることができなかったのだ。
彼が掲示板を見てない間に情勢は対主催だけでなく、彼にとっても悪化していた。


まず、一つが貴重なテラカオスの内一人が死亡し、残る一人や貴重な野球チームも魔女によって今まさに風前の灯火ということだ。
主催陣営がテラカオス化したなのはを黒き獣へのカウンターとして投入し、敗死させてしまった。
敗死までは予測できたが問題はツバサの方だ。
ツバサの近くで霧切が魔女化し、ツバサが魔女の力によって弱体化。
イチリュウチームも魔女の結界に閉じ込められてしまったのである。
自分が神になるための礎であるテラカオスはもちろん、イチリュウチームの全滅も予言が完遂できないため、サーフにとっても面白くない。
せめてなのはが黒き獣に勝っていれば……または霧切が魔女化しなければ、どちらか片方だけなら許容できたが、不運が最悪のタイミングで一片に来てしまったのである。
この未来がわかっていたなら人質であるユーノを主催より先に拉致するか、霧切をツバサに合わせないように計らっていた。


次に都庁に送りこまれた狂信者たちの戦況。
掲示板やナノマシンなどの情報を統合すると、ドリスコルたちはそれなり追い込んだが敗北したらしい。
全滅してないはずの現地の狂信者からの情報が途絶えているのでなんともいえないが、少なくともルルーシュが提案した人質作戦は無意味であったようだ。
一部偽物が混じっていたとはいえ非情にも人質にした魔物ごと攻撃したとある。
ここで問題なのは送り込んだ天龍がやられたということだ。
オシリスの天空竜のスキルを受けついだ天龍が一撃でやられるとは思わなかった。
あらゆるスキルを無効化するが故に、超性能を誇るグレートゼオライマーと組めば、余程の戦下手でもない限り負ける可能性は低い。
となると、オシリスのスキル無効化能力をさらに無効化する切り札が都庁にはあったということか?

(まさか……竜殺剣?
もしくはそれに類するものを都庁が手に入れたということか?)

サーフの脳裏に思い浮かんだのが、計画実行前に警告に来た真竜をなます切りにした竜殺剣ドリス。
だがドリスは狂信者からの信頼を勝ち取るためにセルベリアに献上した。
他の剣は存在しないハズだが、なんにせよチートドラゴンさえ葬れる何かが都庁同盟軍にあるのは確かだ。

(さらに現地に向かった深海棲艦たちからの応答は途絶えてる。
大半は死んだからわかるが、生き残ってる深海棲艦……特に戦況の監視係を任せていた867号から応答がないのがおかしい。
いったい都庁で何が起きているんだ? 遠巻きの情報しかない掲示板だけじゃ足りないぞ)

天龍とともに送り込んだ深海棲艦からも来るべき報告がこない。
天龍と共に全滅しているならまだわかるが、一部が生き残ってるから尚更送ってこないのが不可解なのだ。
この際、戦の勝ち負けよりも、何が起こってるのかわからないから怖いのだ。

(都庁でいったい何が起こってるんだ?
新たなに深海棲艦を送り込んで調査させるべきか……何か嫌な予感がする)

サーフはまだ知らない。
送り込んだ深海棲艦の一人が都庁の力と使徒の歌で浄化され、艦むすとなり、黒幕の名前をバラしたと。




そして何より問題なのは、目の前でも起こってる出来事。
小町たち、影薄組の襲来である。

(ナノマシンの信号からこいつらだけ都庁を離れて真っ直ぐこっちに向かってきていたから潜入してくるだろうと予期はしていたさ……ただ)

ディーにこそ伝えてないが影薄たちがビッグサイトに向かっていることをサーフは読んでいた。
だからセルベリアの防衛計画に便乗する形で潜入してくるだろう地下には信者以外は通れないゲートを作り、念の為にネームド狂信者も用意された。
深海棲艦にもナノマシンからの信号を読み取ることで見えない影薄組の位置がわかるようにもした。
一見、穴のない作戦に思われたが……

509隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:44:23 ID:O9KqTJGo0

(まさか、奴らの中にクラウザーの信者がいたのか……普通にゲートを突破されてしまってた。
そしてサイコマンンンンンンッーーー! 何が完璧超人・始祖だよ!
クソの役にも立ちゃしない、殺されるにしても30分程度は持たせろよ!)
直衛のサイコマンは暗殺であっさり轟沈。
ゲートもモモがクラウザー信者だったためにくぐり抜けられてしまった。
せめてサーフがネオ・ジオング作りに着手してなかったり、サイコマンが時間を稼げば、何らかの対応は取れたが後の祭りである。

影薄組にはビッグサイトの深部に入られ、格納庫では日之影たちが切歌と、屋上では小町がセルベリアと戦っている。



こうして彼がサーバーを覗いてない僅かな間に不運が重なり、黒幕でも看過できない問題が一片に重なってしまったのである。

(僕がすべてを手に入れるためのゲーム『カオスロワ』で勝つにはここからどうしたら良い?
貴重なテラカオスも野球チームも保護したい。都庁で起こってる事象を調べたい。
入り込んだ影薄組もなんとかしないといけない!)

涼しい顔を装いつつも、額には冷や汗を流す。
なんとか平静になるようこらえているが、もはや掲示板をいじるだけではどうにもならない事態になっている気がするのだ。

(まずは目の前のことからだ。
いっそ、必要機材と最低限の戦力だけ持ち出してビッグサイトから逃げるか?)


サーフとしてはネオ・ジオングスーツが破壊されてDMC狂信者が敗れても構わない。
ビッグサイトは狂信者を装えば安全地帯だったが、影薄組に侵入された以上、これからも安全である保証はない。
ネオ・ジオングのサイコ・フェードは強力無比で「計画にいらない存在」を駆逐する分だけ楽になるが、破壊されても計画自体に大きな支障は出ない。
狂信者の存在意義もこの男にとっては殺し合いの促進と落ち着いて殺し合いを管理できる安地、ついでに邪魔な奴らを一掃する手段程度の価値しかない。
もちろんクラウザーへの敬意など皆無だ。

(しかし、自爆を嫌がっていたセルベリアはまだしもディーがヤケを起こして黄泉レ〇プマシンを爆破させる危険もある。
影薄どもも黄泉レ〇プマシンが上層部が全滅すると自動で自爆する機能を知らずに二人とも殺して僕もろとも自滅させてしまう可能性もある……そうなると計画は水の泡だ。
やはり逃げずにネオ・ジオングは守るべきか)

マシンが爆発すれば貯められたエネルギーが一気に暴発させて関東中の参加者を皆殺しにする。
ビッグサイトにいる自分は支給品などで逃れたとしても、テラカオスやイチリュウチーム、下手をすると九州ロボやフォレスト・セルのような器まで全滅したら、自分ごと世界は大災害に飲まれてゲームオーバーである。

サーフは知らないが、影薄組は上層部を全滅させたら自爆してしまうことを知っているのでディーかセルベリアのどちらかは残すだろう。
だが依然としてディーは勝てない戦いなら無理心中を選ぶ考えの持ち主なので、兵器を守らなくてはならない。
切歌・松本のようなエース級狂信者は数えるほどしかおらず、ネオ・ジオングという切り札を失えば、狂信者は今度こそ勝機を失ってしまうだろう。
とはいえ戦闘に加担すれば魔女に襲われているテラカオスと野球チームを失ってしまうかもしれない。

狂信者を見捨てて逃げるか、それても狂信者の助けとなるか、サーフはジレンマに陥っていた。

510隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:44:50 ID:O9KqTJGo0




「……あなた、ひょっとしてマナさんが言っていたレジーナさんじゃないっすか!」
「あなた……マナのことを知ってるの!? 会ったことがあるの!?」

レジーナと争っていたモモは、ここで相手がかつて共に戦い亡くなったマナの探し人だと知り、刀を構えつつも声をかけた。
レジーナもマナのことを知りたいがために鋸を構える程度にとどめた。

「マナさんは……共に戦う仲間のプリキュアだった。
けども狂信者のラージャンに殺されてしまってっす!」
「え……嘘よ!」

マナを殺したのは自分を仲間として引き込んだ狂信者そのもの。
その事実にレジーナは衝撃を受ける。
本当だとすれば狂信者のマッチポンプもいいところだからだ。

「レジーナ、敵の話に乗せられちゃダメデス!」
「そうやそうや!」

切歌たちは、モモの出鱈目(ラージャンがマナを直接殺したことは知らないため)を信じるな、と言うがレジーナの、耳には届いていない。
一方のモモは続けて切歌や松本にも口を出した。

「あなたたちもクラウザーさんを真に信望してるならよく聞いてください!
このバカげた殺し合いは、それを開く原因となった大災害をたった一人の……竜殺剣を持った悪魔によって招かれた!
そいつが間接的にクラウザーさんを殺したも同然なんですよ!!」
(なんだと!?)
「これは……大災害を瀕死の状態で生き延びた竜の神様が、自分の消滅をも厭わずに告げた真実っすよ!」

モモの出した言葉に狂信者はもちろん、隠れていた黒幕さえも震撼させた。
大災害を竜殺剣を持った悪魔の情報……それはニルヴァーナの生き残りが全滅した現状では自分しか知らないはずだ。
徹底した情報隠蔽も行ったハズなのに、いったいどこから漏れたのか。
サーフはそれを知るとために耳が離せなかった。



【二日目・23時00分/東京都 ビッグサイト格納庫】


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ネオ・ジオングを破壊する、そのために格納庫にいる狂信者連中を倒す
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな
5:俺たちのステルス能力が通じない? なぜ?
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ところどころ裂けた)
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具、爆薬
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:狂信者と対話をする
1:クラウザーさんへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ネオ・ジオングを破壊する、そのために格納庫にいる狂信者連中を倒す
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました

511隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:45:14 ID:O9KqTJGo0


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除、イグナイトフォーム
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:侵入した小町の仲間をSATUGAIする
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:提督は見つけ次第SATUGAI
8:え? あの影薄い人が言っていたことって確かサイコバッシャーが……!
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】ショック、首輪解除 変身中
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:ステルスモモからマナのことについて聞く
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
4:提督は絶対に許さない
5:狂信者がマナを殺した……?
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません


【松本人志@現実】
【状態】ダメージ(小/回復中)、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:小町たちを殺し、蘇生装置を守る
1:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
2:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
3:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
4:? 何言ってるんやコイツ?
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません


【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅
    マスタキャンセラ・オートソーマ常備(万能以外無効、戦闘終了or逃亡成功時全回復)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×190、深海棲艦鬼・姫級×9
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:物陰に隠れ、ステルスモモの話を伺う
1:今は狂信者のフリをしてディーに従うが、旗色が悪くなったらビッグサイトから逃げる
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
7:都庁に向かった深海棲艦たちはいったい何をしてるんだ?!
8:可能であればイチローチームとテラカオス・ディ―ヴァ(ツバサ)を助けに行きたい
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢に自分の正体が告発されたことを知りません
※ナノマシンからの信号を通じて深海棲艦は影薄組のステルス性を無視して攻撃できます
 また、深海棲艦が攻撃した場所を辿ることによって切歌たちも攻撃ができます

512クラウザーさん、やっと復活するの巻:2020/03/15(日) 19:05:04 ID:.3MasLDc0
「新バンドを組んじゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達6人の友情は不滅だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「『僕は野球をやってるカス共を殺せればいい』」
 球磨川がカッコつけて言う。
「そう、そして私達が……」


「「「「「『正義だ!!!』」」」」」


 こうして正義の名の下に根岸崇一と野比玉子症候群予備軍の四人と球磨川はド派手にバンドを結成した。
 復活方法とは前の話に書いてある通りだ。
 そして、復活のエネルギーが少し余ったので死んだDMC狂信者達も復活した。
 初ライブの会場は東京ビッグサイト。コミケ会場だ。


【四日目・0時00分/東京都・東京ビックサイト】
【根岸崇一@デトロイト・メタル・シティ】
【状態】クラウザーさん
【装備】ギター
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:黒幕のサーフを殺す
1:新DMCと復活信者共を率いる
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】拳銃@現実
【道具】支給されていない
【思考】基本:主役になる。
0:新バンドの結成だッ!!
1:私が正義だ。
2:けいおん!!の真の主役になり、世界を超越し、完全体になり、私の国を手に入れる。
3:騒音を撒き散らす連中は悪だ。
4:ちなみに私達は正義だ。
5:故に黒幕のサーフも殺す。
6:私達が正義だ。悪は許さん。
7:何度でも言う、私が正義だ。
8:だが、正義なんて言葉、チャラチャラ口にする奴も許さん。
9:もう私達は死ぬことはない、何故ならば正義だからだ。
10:正義は死ぬことはないからな!
11:しかし、本当に死んだらどうしようか?
12:そしたら、また復活するだろう!!
※ドラム担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【巨人小笠原@なんJ】
【状態】アンドリューW.K.と合体中
【装備】バット、ベース
【道具】不明
【思考】基本:今度こそ生き残る!
0:(贔屓されちゃ)いかんのか?
1:(男と合体しちゃ)いかんのか?
※ベース担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【アンドリューW.K.@現実?】
【状態】健康、巨人小笠原と合体中。
【装備】自前のギター
【道具】支給品一式
【思考】
基本:復活祭とか言うパーティーに参加する。
1:しかし、なんか快感だ!
※ギター担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

513クラウザーさん、やっと復活するの巻:2020/03/15(日) 19:05:18 ID:.3MasLDc0
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【状態】健康、ケツが真っ赤。
【装備】デスティニーガンダム
【道具】支給品
【思考】
基本:自分が主人公になって黒幕のサーフを倒す
1:しかし、なんか快感だ!
※ドラム(楽器)担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【球磨川禊@めだかボックス】
【状態】健康
【装備】大螺子
【道具】支給品一式
【思考】
基本:???
1:『野球やってるカスどもを殺す』
※ピアノ担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
【三島一八@鉄拳6】
【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢】
【明智光秀@戦国BASARA】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】
【ラージャン@モンスターハンター4】
【トキ@北斗の拳】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢】
【比那名居天子@東方project】
【中野梓@けいおん!】
【柊つかさ@らき☆すた】
【その他DMC狂信者だった人たち全員@いろいろな作品】
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

514何が可笑しい!!:2020/03/16(月) 19:59:30 ID:4J8QErSA0
野比玉子症候群患者は復活不可なんだよなあ……(5270話参照)

でもインスピレーション湧いたから、これが通しで良いなら
あくまでルートの一つとしてのDMC完勝エンドを作ってみようかな

515クラウザーさんが復活すると言ったな? アレは多分まだ嘘だ:2020/03/17(火) 08:34:33 ID:rCr6FTDY0
ここは死者スレ。
未だに蒼の使者である黒き獣の影と死者の戦いは続いている。


「という作戦なのさ!」

前話(5289話)におけるクラウザーさん及びDMC狂信者軍団の大復活は田井中律による妄想……および作戦であった。
ご存じの通り、この世界の律はテラカオス化する前からデフォルトで狂ってるので雑でツッコミどころ満載で粗が目立つのも仕方がないことなのだ。

しかし、この作戦は狂った思考の持ち主であるネームド狂信者には意外と大受け。
一部修正すれば絶対に不可能ではないのではないか、という結論に至った。

「サーフが黒幕なのは死者スレでは既に周知の事実」
「狂信者すべてが復活すれば全員がサーフ処刑と大災害対策に動ける!」
「だがこの作戦にはクラウザーさんと(能力的な意味で)頭のおかしい技術者が必要不可欠だ」
「頭おかしい技術者には光裕一郎がいるじゃないか」
「「「それだ!!!」」」

死者の中には間違いなく今期最強の技術を持つ裕一郎さんがいる。
彼ならばごく短時間で黄泉レ〇プマシンを再現し、現世へ戻ることも不可能ではない……多分。
クラウザーさんはもちろん、蘇った時に狂信者たちを統制する必要があるので裕一郎さん以上に必要不可欠な存在である。

「だが、クラウザーさんも裕一郎も広い死者スレのゴタゴタの中で行方不明だ」
「ならばナイトである私と狭間が探してこよう」
「もうサーフは師匠とは思わん、カルナの前に突き出して尻穴に槍を突き刺してもらわないと気が済まない!」

ナイトと魔人皇は作戦の要である、行方知れずのクラウザーさん・裕一郎を探しに向かった。



「ところでりっちゃん、クラウザーさんや俺たちの復活のためのエネルギーはどうするんだ?」
「ああ、それならそこらじゅうにあるじゃねえか?」
「そこらじゅう……ああ、なるほど狂信者以外の参加者の魂を破壊して私たちの復活のためのエネルギーにするのですね?」

律の後ろには、ロープで縛られた罪のない死者の魂たちが怯え震えていた。

「……なるほど、やることは現世のそれと変わらないってことですね!」
「そうさ、残酷だが世界を守り、クラウザーを復活させ、私が目立つには仕方ないことだぜ」

つまるところ、ここにいる集団は現世でもやらかしていた狂信者の横暴を働こうというのだ。
復活エネルギー確保のために、味方以外の死者を虐殺するという忌まわしき暴力を。
その暴力を、ここにいない狭間と天子、律の作戦に乗り気じゃなかった狂信者を除いて賛同し、現世のように死者スレを血に染めようとしていた。


「そう、そして私達が……」


「「「「「『正義だ!!!』」」」」」







「何が正義だ! このバカモノども!!!!」

声高々に上げた根っこまで邪悪系狂信者と律達だったが、そこにブチ切れシグナム率いるまともな参加者軍団に包囲され、全員御用になった。

そして、カルナに尻の穴に槍をねじ込まれて魂を喰らわれ、宝具ブッパのエネルギーになりました。


「そんな、私が正義のハズなのに……」
「随分、尻の穴の小さい正義だな」

ドスッ

「アッーーーーーーーーーーーーー!!!(迫真)」


今日も死者スレは地獄です。

516クラウザーさんが復活すると言ったな? アレは多分まだ嘘だ:2020/03/17(火) 08:35:03 ID:rCr6FTDY0




※以下のキャラたちの魂が消失しました
 物語がどのような結末を迎えても復活できません

【田井中律@けいおん!!】
【三島一八@鉄拳6】
【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢】
【明智光秀@戦国BASARA】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】
【ラージャン@モンスターハンター4】
【トキ@北斗の拳】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢】
【中野梓@けいおん!】
【柊つかさ@らき☆すた】

※そもそも5270話において蒼の力で消滅しています
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【球磨川禊@めだかボックス】
【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実?】


【二日目・23時30分/静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
※根岸崇一(クラウザーさん)、狭間偉出夫、比那名居天子は復活していません
 すべて田井中律の妄想です


【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱで常に魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧
【道具】不明、同盟の悪魔将軍・アタル兄さん、正気に戻ったシグナム
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:罪人を魂喰いで魔力をチャージし、宝具コンボでシャドウであった者の影から死者を守る
2:オレの宝具は尻に刺す道具じゃないんだけどなぁ……
※死者スレにいる罪人(特に酌量の余地がないもの優先で)を魂喰いすることで魔力を補っています
 ただし、罪人だけの魂ではあと7時間しか持たず、それ以上は善人の魂を消費しなければいけません
 死者スレで魂喰いされた存在は物語がどんな結末を迎えても、二度と復活できません
 魂がないのでサイボーグ化復活も不可

517何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 19:36:02 ID:mjsv5bok0
魂消滅させるなら全員やれよ……省いた奴贔屓したいの?

518何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 20:13:56 ID:rCr6FTDY0
逆だ
全員消したらヘイトだと思われるだろ

519ズガン:ズガン
ズガン

520何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 20:31:34 ID:PWXnNpKQ0
アレはゴタゴタになった辻褄合わせのために仕方なくそうするしかなかったって言ったでしょうに・・・
嫌なら他に良い案を出せば良かったでしょ

521ズガン:ズガン
ズガン

522何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 21:52:33 ID:PWXnNpKQ0
付き合いきれん
おまえさんが単に狂信者が嫌いなだけじゃんか
文句があるなら似たようなことになってた他の組織にも言えよ

誤解なきように言っとくけど俺は全部好きだが

523何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 22:19:33 ID:VLoSqlOw0
クラウザーさんなんて適当にズガンされた奴なんてほんとどうでもいいし、それを無理に持ち上げてる寒い連中としか思えないね>DMC狂信者

524何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 01:28:40 ID:ECkbG7Io0
この人に賛同する訳じゃないがやっぱし十期が長すぎるんじゃなかろうか
だから展開を伸ばしてしまうようなキャラにイライラするのかも
俺もあんま書いてないから偉そうなこと言えんし今まで書いてた人の作品を踏みにじりたい訳じゃないが
とてももう終わる気配はないし下手をすれば十年後もまだやってるくらいなら多少強引でも総集編的に纏めて終わらせても良いんじゃないか
何より十期が続くにしても莫大な主要キャラの多さや設定の膨大さと今はその辺のロワより書き辛いのもカオスロワの醍醐味が損なわれてると個人的に感じるし

525何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 06:22:51 ID:c3f9lxSs0
とてもとても悔しいけどリアル的な意味でも一年以内の完結は難しい
>>524の言うことはごもっとも、そもそもパロロワ界隈自体が色んな意味で限界だ
……賛同だけど、ちょっとお願いがある


どうしても書いてみたい話自体はまだまだある、他の人も今は展開上書けないけど書きたい人もいると思う
そこで総集編的最終回を投下をする→年表の詳細を作るように、最終回を補完する過程のSSや、もしくは別ルートで進行する物語を後から書ける形にしたい

むしろ10期を書かせてください! お願いします!

526何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 09:47:41 ID:j5nb41Ds0
なんか色々あったみたいなところ申し訳ないんだけど、予約って大丈夫?
都庁、都庁攻め主催者、ルルーシュなんだけど

野球さえどうにかなれば(+試合時間分のシャドウの足止め』頭の中ではエンディングまで駆けることも考えつくんだけどね……
そこは野球詳しい人ほんとお願いします

527何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 09:53:26 ID:c3f9lxSs0
自己リレーで良ければ…

528何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 10:05:23 ID:Koy1tj3Y0
妄想ロワみたいなダイジェスト化(ただしキャラの死亡が雑な処理となる)なら書けない展開自体はない

529何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 10:14:15 ID:Koy1tj3Y0
展開は考えてても俺が書くとどうしても激長文化して時間がかかるのよね...
それはそうとして予約乙

530何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 17:28:56 ID:Z//SRRsg0
形は何であれ10期に一旦一区切り付けて11期開幕でも良いかもね
パロロワに人が居ないのと書き手が分散して両方爆死するかもしれんけど

531何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 21:56:31 ID:.pHcVXxQ0
>>526
野球はともかく、シャドウの足止めなら一応考え付いてはいる
フロワロは別個に対策いるけど、シャドウ本体だけなら野球2試合分くらいなら
十分止められる予定
ただ、都庁がジャック達の奇襲を凌ぎきれた場合の前提なんで、そちらの話次第では駄目になるかも
今影薄の方も考えていることあったけど、様子みつつシャドウの方を深く考えるべきかな

532何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 22:01:29 ID:zGtsbc2M0
もうそこまで持て余すのなら殺して良いんじゃないか?

533何が可笑しい!!:2020/03/19(木) 00:34:49 ID:r37Z8KYU0
ぶっちゃけシャドウやサーフが必ずラスボスである必要はない
流れ次第ではアナキン、拳王軍、魔女霧切、あと現状は対主催の誰かさんなどのチャートも俺の中にはある

534何が可笑しい!!:2020/03/19(木) 02:15:48 ID:LUWjuyzg0
サーフは書き手も読み手も皆が大好きな人気キャラだし、ラスボスしかありませんな。

535何が可笑しい!!:2020/03/20(金) 08:18:49 ID:JK847PXA0
>>531
黒フロワロはともかく、シャドウ本体はなのはのおかげで消耗はしているから
拳王軍VS聖帝軍の試合までは何もしなくてもなんとかなりそうだな

536何が可笑しい!!:2020/03/22(日) 07:17:30 ID:AZs7FRig0
拳王軍、聖帝軍で予約

537何が可笑しい!!:2020/03/22(日) 14:54:51 ID:hk/25/v60
>>536
トリ付け忘れてますぜ

538ズガン:ズガン
ズガン

539 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/22(日) 23:23:36 ID:AZs7FRig0
トリ忘れてたので再予約>>536

540 ◆BkO6szdC.M:2020/03/24(火) 22:33:06 ID:8FR1VR0.0
やっべ自分もトリついてなかったですね…
でも投下はなかったようなので予約していた都庁、主催、ルルーシュで投下

541 ◆BkO6szdC.M:2020/03/24(火) 22:34:03 ID:8FR1VR0.0
(……)

都庁、世界樹。
その奥地で取り残された男、ルルーシュ。
彼はその頭脳を持って考える。
考えねば死ぬ。
しかし彼はそういった死線を潜り抜けて生き延びてきた。

(……都庁の戦力、竜は削れたようだが逆に言えばそれだけ。狂信者共はドリスコルを含め大敗したか)

戦況はそう判断せざるをえなかった。
自分達の作戦にミスは無かった筈だ。単純に相手の力量がそれを上回った。

(救助した魔物が半ば監視されているこの状況、潜り込んだことにも勘付かれた可能性が高い……)

そして自分達の存在がばれているかもしれないことにもたどり着いた。
ルルーシュとて戦えないことは無いが、あの大軍とグレートゼオライマーすら退ける連中だ。
仮にギアスを使ったところで対処しきれず、そもそも何名かはギアスに対して耐性すらあるかもしれない。

(そして、今の歌にあの榛名という女……)

何より、今まさに自分の前で起きた奇跡。
そこから導き出される、僅か十数秒後の必然。
ルルーシュの思考がまとまり行動に移るまで、僅か数秒。彼の思考速度は次の現象よりも早かった。
つまり。



「お見事だ、都庁の者達よ」


「「!?」」



自らその正体を、同盟軍に晒したのだ。
当然、場は混乱する。榛名の登場でただでさえ混乱しているのだから。
その隙をついて、攻撃される前に次の言葉を紡ぐ。

「我が名はゼロ。どうしても諸君らに伝えたいことがあり、悪いが魔物に扮して入らせて貰った」

「狂信者共を利用したことも詫びよう。私の他に……何名か狂信者も紛れてしまっているが、それももう問題ないだろう」

「後は……彼女達が始末してくれる」


ルルーシュの言葉に、共に潜入していたカギ爪団の面々は憤慨する。
裏切ったのかと、即座に飛び出てこの男を始末したかった。
しかしそれはもう、叶わない。ルルーシュの言葉通りに彼らは鎮魂歌が終わった時点で詰んでいた。


「……撃て!」


魔物の中から、少女の掛け声。
直後、救助された魔物の一部が同じく救助された魔物の一部を撃ち抜いていく。

「榛名さん!」
「あ、あなたは!?」

そして、魔物の中から現れたのは海兵のような格好の少女。そう……駆逐艦と呼ばれる少女であった。

(理屈はわからないが、要はサーフの持ち出した兵器はあの歌で浄化されたということらしい)

(ならば必然的に、紛れ込んでいたイ級とやらもその影響を受ける。この結果は当然のことだ)

さらに数名の駆逐艦が飛び出し、潜伏していたカギ爪団を蹴散らしていく。
同士討ちを避けるために密かにつけていた識別基準が仇となり、彼らは混乱の最中で全員が抹殺されるのであった。

542続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:34:54 ID:8FR1VR0.0
そして、少しして混乱が落ち着いた頃。


「……お前は、狂信者ではないというのか?」
「ああ、大丈夫だよダオス。ゼロは信用できるから。あたしに耳打ちで作戦全部教えてくれてさ。
こりゃ大変だって報せに来たところでなんか凄い現場に出くわしたわけだけど」

ルルーシュは既にギアスの支配下においたさやかに命じていた。
「絶対に俺が都庁に疑われない言動を心がけろ。それ以外は全てお前の自由だ」と。
ルルーシュとしては狂信者に潜伏していたのも、敵対しているのも、協力者が欲しかったのも、全て事実。
ここまでくれば身の安全のためにギアスも含めて正直に打ち明けてもよかったのだが、
何しろルルーシュも知ってのとおりここの連中は仲間意識が強い。
明確な害を加えたわけではないが、絶対遵守という人の精神を捻じ曲げる真似は反感……下手をすれば殺意を買う。
だからこそそこだけは伏せ、彼女への命令も極力今まで通りに過ごせるものにしておいた。
万が一の時の手段としてやはりギアスは隠しておきたいという思いもあったが。

「……榛名、と言ったな。この男、ゼロの言葉は本当なのか?」
「榛名も堕ちていた頃の記憶は不完全、全てを把握し記憶しているわけではありませんが……彼が一部狂信者から警戒されていたのは確かでしょう」

そしてここに深海……否、艦むすの証言も加わる。
全てが真実ではない。全てが嘘ではない。混ざり合った情報は非常に手強い壁になる。

「……ここに来るために、狂信者を欺くために、結果として多くの魔物を犠牲にしてしまった」

「……本当に、申し訳ない」

ルルーシュはその場で頭を下げる。
これも偽りではない、一部は本当の気持ち。
状況から都庁の犠牲はやむを得ないとは思っていたが、それ以前は元々可能であれば平穏な接触も考えていたのだ。
こうなってしまえば当初の予定通りに切り替えた方が早いし、何より忌々しい狂信者のフリもしなくてよくなる。

「……そこまでして、我らに会いに来た理由とはなんだ?」
「はい。……この殺し合いの真の狙い。主催者が計画したプロジェクト・テラカオスについて」


ルルーシュが重々しく口にした言葉に、同盟軍の誰もが反応を示す。
テラカオス。その言葉を知っている者は一握りしかいない筈なのだ。

「主催者の計画を何故……?」
「偶々、ではあったのですが。粛清されたらしい安倍首相の妻は善人であったらしく……
一縷の望みをかけて、参加者にことの真相を纏めたファイルを送信していたようです。
残念ながら、それが発覚したのか彼女も粛清されてしまったようですが……」

再び、嘘と真実を混じらせる。
大切なところはしっかりと真実を伝え、今は関係ないところは嘘を伝える。
ルルーシュも言葉を選びながら、慎重に信頼を勝ち取っていかねばならない。
最終的な目標、ナナリーの為に。
そしておそらくこの後語られる、サーフの正体を聞く為にも。







しかしルルーシュの計画は、思わぬところで中断を余儀なくされた。

543続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:35:36 ID:8FR1VR0.0
突如、空間に妙な裂け目が生まれる。
直後、その裂け目は大きくなり……中からは謎の存在が現れた。



その手に、何かを持ちながら。


「!!!」


怒涛の勢い。世界樹に予期せぬ来訪者、その3。
ミヤザキの巫女たる榛名。彼女は今や巫女まどかも認める協力者。
偽りの狂信者たるゼロ。彼もさやかの話と今後の話を合わせれば協力者なのかもしれない。
さて、この三人目は?

いや、三人目ではない。


追加の100名もご登場だ。



「おや? これは偶々なのか願いを叶えてくれたのか。いや、スキマ転移が座標指定できないと考えるより最速であの二人と戦えるお膳立てg


ドッ!



早口を言い切る前に、スキマより現れた仮面ライダー……
biim兄貴は密やかに戦ってみたかった相手の一人であるレストの拳で心臓を貫かれて死んでいた。
その死の速さは、まさに彼が好む最速であったかもしれない。
あまりの速さに残る100人もパニックを
起こすが、次の瞬間には彼らも兄貴の後を追う。
躊躇いの無い瞬殺、つまりは一緒にやって来た100人も殺すべき敵。
魔物達は示し合わせるでもなく、次々に群がりあっというまに喰らい尽くす。

「……ゼロ、これもあなたの作戦か?」
「ち、違う! こんな連中、私も見たことが無い!」

感情の無い声と共に手についた血を振り払うレストを見て、すかさずルルーシュは本当のことを口にする。
そしてすぐさま元深海勢の駆逐艦にも(見えないが)視線を送る。
自分達が元の姿に戻れた実感もまだ無いまま、怒涛の展開となる現状に彼女達の理解も追いついてはいないだろう。
しかし駆逐艦、子供故にこの状況下で嘘は口にできない。ただ勢いよく首を縦に振り続ける。


「こいつが持っていたのは、N2爆弾!ほむらが回収したものと全く同じだ!なっ……起爆まで30分を切ってる!?」


奪い取った物を見てレストの顔は青ざめる。
空間転移で進入してきた敵が持っていた代物は、かつて仮面ライダー斬月が持っていた爆弾と同じ型。
鍛えられたダオス達ならば耐えられないこともないが、世界樹は少なからず傷を負う。

「くそ狂信者連中め、最初から私も始末するつもりだったか……!」

ルルーシュも当然N2爆弾に対する知識を持つ。
このタイミングで内部にこんなものを持ち出してくるとなると、恐らくは潜伏させていた狂信者が密かに連絡を入れたのだろう。
保身の為に都庁に鞍替えした瞬間、恐らくは灰色だった自分は黒となり、すぐさま狂信者からの粛清を受けかけた。
こう考えるのが一番辻褄があうと同時に、ある悪寒が彼の全身を支配する。

「ま、まさか……」

そしてそれは、ダオスとまどかも同じく。
爆弾の脅威はあるが、僅かに猶予あり。襲撃者も迅速に葬った。しかしその襲撃者は、いきなり内部に転移してきたのだ。
氷竜が倒れ、彼の分の結界が消滅したことが原因なのか。本当にゼロの始末目的かどうかはわからないが、とにかく侵入を許した。
そして相手が狂信者であるならば、101人で済むわけがない!


「あっ……!?」


まどかは思わず叫ぶ。
今、この上層部には残された世界樹のほぼ全戦力が集結している。
だからこそ敵も処理できたが、もし他の場所に、例えば戦えない子供の魔物やきらり達の避難している場所に向かわれたら?
守りは固めているが、N2爆弾を持ち出されたのだ。絶対は無い。

「ごめんレストさん、お願い!」
「わかった!」

たまらずまどかはレストを護衛につけ、避難場所へと跳べる樹海磁軸を目指す。
かかる時間は僅かに十数秒。万一があってもまだ間に合うはず。



その願いは、直後打ち砕かれる。

544続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:36:12 ID:8FR1VR0.0
「そ……んな……」

がっくりとまどかは膝をつく。
その瞬間、彼女の膝は生暖かくぬめる血の海に沈んだ。

避難所は、地獄そのもの。
無数の魔物の亡骸、一人たりとて生存者がいないとわかる程の蹂躙具合。
むせ返る血の臭いは、さながらカオスロワの縮図のようにすら見えた。
無価値無意味無慈悲に彼らは殺されたのだ。

「……どうして、だよ……っ!!!」

そして亡骸の中にある二人の姿を見つけた瞬間。
まどかもレストも、自分の手を握りしめて、血を流した。
その程度の痛みはなんでもない。魔物達が、この二人が味わった苦痛の恐怖に比べれば。

大きな犠牲を払いながらも聖帝軍と共に助け出せた、間に合った筈の少女は首を刎ねられ。
そんな少女の亡骸を抱きしめながら、守るという誓いを果たせなかった戦士の無念はどれ程だったことだろう。

「……」


魔物達はもはや原型を留めず修復は難しい。
もっと、はやく気がついていれば。後悔の念を抱きながら、損傷が少なかったきらりと魔雲天をレストは修復する。
魔力の無駄遣いと言われようが、彼はこの二人をこのまま放置できなかった。
自分とサクヤのような……それと違い、間に合った筈の二人。
もう直接的な戦力とはなり得ない彼らが、魔物が、どうして犠牲にならなければならないのか。
狂おしい程の、影薄に出会う前の状態かそれ以上の憎悪と敵意の感情がレストの中に渦巻く。


「……っ!?」


だが、彼は直後に冷静さを取り戻す。
血溜まりの中で、必死に生存者を探していたまどかの手がいつの間にか止まっていたのが目に入ったのだ。
そして彼女の全身…いや世界樹全体から自分以上の強い怒りを感じ取ってしまった。

「ま、まどか!?」

「……まだ、いる」

ぽつりと呟かれた言葉。
それは生存者のことではなく、外敵のことであるとすぐに察しがついた。
まどかの背から伸びる魔力の翼は世界樹と繋がり、今の彼女はより深く世界樹の現状を理解し力を振るえる。
かつての魔王マーラ戦でも全方位攻撃を可能とし、そもそも地下に向かう際は敵位置を確認してから向かっている。

侵入者は、知らなかった。いや知ることができなかったというべきか。
温厚なまどかではあるが、怒りが限界を超えた際の攻撃に容赦は無くマーラが消し飛ぶ程であり。
世界樹そのものを用いて攻撃できるということを。
致命的な失策は、100人単位という人数の多さ。
まどか、世界樹からすれば土足でそれだけの人数が踏み荒らせば嫌でもその位置を完全に把握できる。

「……許さないっ!」
「まどか落ちつくんだ!君は手を汚さなくていい!僕が…」

静止を振り切り、世界樹とまどかがシンクロする。
こうなってはもはや誰も止めることはできない。
巫女の鉄槌が、異物に下される。

545続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:36:55 ID:8FR1VR0.0


中層に転移していたメガへクスは、ぞわりと嫌な気配を感じた。
本来感じない筈のもの、これは2度目の経験だ。そしてこれが最後の経験ともなる。

「なっ、なんだ!?」

ヘルヘイムのような…いやそれ上回る異様な速度で周辺の根や枝に葉が荒れ狂う。
たかが植物などではない。明確な殺意と尋常ではない魔力の込められたそれは、無数の刃と槍となり瞬く間に兵士を肉塊に変えていく。
メガへクスも応戦するも、全方位からの殺意には流石に分が悪い。
絡みついた根はそれぞれがあらぬ方向へと動き、彼の身体をバラバラにねじり切り、さらに全身を滅多刺しにした。





「こ、これは……!」

下層に転移していた紫はしかしまだ生きていた。
下層は他の階層と比べて空間が広かったのが幸いし、無数の根が兵士を葬る中で紫は回避が間に合ったのだ。
とはいえ流石の賢者も焦る。
この攻撃は罠の類ではなく、明らかに現在進行形で自分達に向けられている敵からの攻撃。
地下で魔物を葬ってから、まだ数分すら経っていない。それなのにもう自分達の侵入がばれたというのか。
とにかくわかるのは、今やこの世界樹内部全てが攻撃範囲ということのみ。

(これはいけませんわね……一度、退かなければ。スキマでの侵入が可能とわかった以上、この部屋に拘る理由はない……!)

爆発までの猶予は無い。
しかし下層に爆弾を仕掛けることは最早不可能である以上、作戦は変えざるをえないだろう。
根が伸びないであろう上層部に狙いをつけて、紫はスキマでの緊急撤退を行う。






「え?」


紫の…侵入者達の誤算と不運はいくつか存在する。
内部状況の未把握、作戦実行の為に引き連れた300の兵士。
彼女達も奮戦はしてきただろうが、乗り越えた明確な死地は疲弊した安倍首相戦のみ。
対して都庁の軍勢は、拠点から動かない故に次々に難敵に遭遇し、犠牲を払いながらもこれを乗り越えてきた。
ドラゴンハートの恩恵も加わり、殺し合いの中で影薄を筆頭に生き延びた参加者達はみなが精神面を含め大きく成長した。
参加者と主催者。成長という一点においてこればかりはどうしようもない。

最速退場した兄貴の骸が貪られるのを見つけた瞬間、紫は驚くと同時に頭に強烈な痛みを覚える。

「がっ!?」

スキマから出ると同時に、魔王に頭を掴まれたのだとはわかる。
だが何故こうも迅速に敵と見なされた?僅かでも喋ることが許されるなら、話術は自分の得意分野だったというのに。
鷲掴みにされた頭部に魔力が流されているのが嫌でもわかる。洗脳でもするつもりか?
妖怪の賢者もまた妖力でもってこれに抗ってみせるが、思考を掻き乱されるのは避けようがない。
頭の激痛に耐えながら、なんとか現状を把握し打破しようとする頃には、彼女の身体は宙に浮いていた。
紫を鷲掴みにしたまま、ダオスは世界樹の外へと飛び出していたのだ。
一瞬だけ、紫は外にいたセルの姿を目の当たりにする。
なんと恐ろしげな出で立ちか。なんとしてでもこいつだけは滅ぼさねば。

(私をセルの餌にでもするつもり?けれど私ならば、たとえセルの触手を受けたとて耐えきれる筈。
口内に入れられた瞬間、脱出と共にセルの体内にN2爆弾をしかければ……)

そこまで思考を巡らせ、紫の意識は消失する。
魔力と握力で頭に激痛を送られ続けながらにセル打倒の考えを巡らせる紫は、賢者と呼ぶに相応しい力の持ち主だろう。
確かに、アルルーナ等ならば世界樹を傷つける愚か者に相応の報いを…女であれば性的な陵辱を考えたかもしれない。
だが現在彼女の生殺与奪を握るは魔王。彼は敵対者に対して微塵の容赦も見せることはない。
そして何より、榛名とゼロというキーパーソンかもしれぬ者まで現れたのだ。
腹立たしいが…所詮は無数の『狂信者の一将』に過ぎないだろう女に、余計な時間をかけるつもりなどハナから皆無。


「ダオス、コレダーッ!!!」


掴んだ女の頭を地面に叩きつけると同時の爆光。ゼロ距離のそれは賢者を塵も残さず消しとばした。
奥義でもって完膚なきまでに迅速に息の根を止めたダオスはすぐさま引き返す。


紫達の不運は、タイミングが最悪であったことに他ならない。
特務機関ではなく、一山幾らの狂信者と思われては、最初から対話も何もありはしない。
せめて、狸組がもたらした主催陣営名簿に彼女達の情報が載っていれば、或いは?
しかしいくらイフを考えたところで、もう彼女達が動くことはない。




546続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:37:29 ID:8FR1VR0.0
「……っ!!!」

スコープで状況を直前まで確認していた ジャックは歯を噛み締めて声を抑えていた。

紫が殺された。

相手は魔王。そして紫を殺しながらすぐ様に引き返して行くその様。ここから推理できるのは……

(都庁の感知能力が我々の想定を遥かに上回り、彼女の…いや彼女達の潜入が露呈したというのか!?)

早過ぎる。
ジャックとしてもこの認識だが、実際の問題としてこれ以外は考えられないというのが、彼の導き出した結論だった。
紫がスキマによる逃走もできなかったとなると、他の二人の生存も厳しいだろう。
作戦は失敗?いや違う。まだ自分がいる。やり遂げなければならない!

(それこそが、手向けでもある……)

三人は死んだ。冷静にそう判断し、ジャックは最後の準備に入る。
確かに予定は狂ったが、三人はしっかりと都庁の中に置き土産を残している筈だ。
起爆寸前のN2爆弾3個。今から何処かに運ぼうとしても間に合いはしない。
デイバッグの中に入れても、意味はない。
元より自分が要。侵入がばれてしまっては、もう一刻も猶予は無い。
すなわち、今から防御の暇も与えない程の速攻を仕掛けるしか道は残されていない。


「総員退け!これより、最後の攻撃を行う!」



ジャックの勇ましい声に、それぞれの機体の中で兵達は敬礼した後にその場から距離をとる。
打ち倒さねばならない災厄、その力はまさに人智を超えた存在。
世界樹全体ならともかく、災厄を倒すとなると、いくら兵が武装したところでなんの役にも立たない。
ジャックと、この用意に時間のかかる最強のオーバードウェポンしか勝機は無いのだと、理解していた。

兵士の一人は、改めてこの超兵器を目の当たりにして冷や汗を流す。
これを考えた奴は、絶対に頭が狂ってるとしか思えなかった。

その姿ーー潔し!!!

何も知らない者がみれば、馬鹿みたいな大きさの鉄筋コンクリートの柱そのものだ。
対安倍首相に使ったマルチプルパルスもふざけているが、それ以上のインパクト。

「……よし」

ジャックは柱…『マスブレード』を目標に向けてセットする。
一度きり。チャンスは一度きりだ。
ジャックがこの無骨な柱を決戦の武器に選んだのには、いくつか理由がある。
もちろん威力は説明不要なレベルだが、マルチプルパルスには流石に及ばない。
とはいえあれは紫の協力があったからこそできた芸当であり、ジャック一人ではとても全弾命中は難しいのだ。
そしてその他のオーバードウェポンもあるが、威力はマスブレードを下回る。
何より、一撃必殺を狙うならばこれ以上の武器はない。
相手のセルはACではなく超巨大な怪物。何をしてくるかもわからない以上、戦闘は最短最速で済ませなければならない。
相手の防御よりも速く、これであいつを叩き潰す。
ジャックのその意志に呼応するように、爆炎を吹き上げながらチャージは進む。


そして。

547続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:38:15 ID:8FR1VR0.0
「っ!!!」


ガクンとジャックの身体が、いや機体そのものが揺さぶられる。
マスブレードの推進力はもはや、そちらが本体だと言わんばかりの圧倒的なもの。
常識から逸脱した超兵器。故に、常識から逸脱した災厄を討つことも可能となる!



「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



オーバードウェポンは当然、使用者への反動も尋常ではない。
それでもジャックは吠え、コンマ1秒も逃すまいと災厄へと挑んでいく。
紛れもない決意の顔。背負う者の顔。
バーダックやベイダー卿からひかれるような、ゲイヴンなどという馬鹿げた存在ではない。


(必ず、成し遂げてみせる……!!!)


そう、散った仲間の為。この世界の為。
彼はまさしく勇者であった。





「……幕を引くとしよう。飛んで火にいるなんだったか」
「こそこそ用意してたつもりだろーが、俺の元拠点の様子が変わってりゃ気づくってもんだぜ?」
「にしゃぁ……」



ーー攻撃目標は三人に増えていた。そしてその三人はそれぞれが爆炎の魔力を纏ったかと思えば、それを災厄の口の中に入れて混ぜ込む。
直後に吐き出されたのは、ジャックの視界を埋め尽くす程の煉獄の炎。
魔王の、神の名を冠する樹の、そして魔神の一閃は深夜の関東地方を一瞬で真昼の様に照らし出した。


(アナキーー)


刹那。敗北を悟ったジャックは最後まで未来を危惧したまま、この世から全ての痕跡を残さずに消えてしまう。
超火力兵器諸共に、超々高火力の熱閃は全てを消し飛ばす。
ジャックの敗北を認識するよりもはやく、最終着弾地点の首相官邸跡地にいた兵士も一人残らず消えていく。
ニャル子の生首も、何もかもを飲み込んで。


「狂信者どもの拠点の一つを消せたようだな。だが次の問題は…」


ダオスはこの世から完全抹消された首相官邸跡地を一瞥した後にすぐに引き返す。
彼や神樹、それにセルにとって。今し方熱閃で葬ったのはネームド狂信者の一人程度の認識でしかない。

まさか、この殺し合いに深く関わっていた存在だとは夢にも思わない。
形こそ違うが、共に世界の破滅に抗おうとしていた存在だとは気がつくことはない。

もしかしたら、彼らが対話できる…共に戦う未来もあったのかもしれない。

だが全ては遅すぎた。
最良の未来は崩れ果て、そして無慈悲に時間は進んでいく。

548続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:38:48 ID:8FR1VR0.0


世界樹内は騒然としていた。
目まぐるしい状況の変化もだが、何よりもきらり達の惨殺の事実は大きな衝撃と悲しみを与えた。
涙を隠すこともしないカヲルはせめてレクイエムの一つでも捧げたかったが、それさえ許されない。

まどかの怒りで侵入者は一人残らず世界樹と魔物の養分となった。
しかしその置き土産というか、切り札まではそうはいかない。
起爆寸前のN2爆弾。それが三つも見つかった。
この場に犬牟田かほむらがいれば爆発前の対処もできたかもしれないが、今となってはそれも不可能。

しかし、この未曾有の危機すらも。
この場の者達にとっては、通過点に過ぎない。
狂おしい程の怒りと同時に、それに匹敵する怒りを覚える存在、この殺し合いの黒幕。
その名を聞いてしまったのだから。

「…時間がないね。手荒だけど、こんなものに構っている時間も惜しい。神樹、頼むよ!」
「お、おう。まさかとは思ったが、確かにそれが一番早いかもな!」

レストが両手でN2爆弾を縦に積み重ねて持ち上げる。
様々な能力を持つ彼だが、このように『同一物なら質量を無視して絶対落とさず縦積み9個までなんでもかつげる』という妙なものまである。
そして爆弾を持ち上げた彼を、さらに神樹が持ち上げる。

緊急時の対応は、いかに迅速に行えるかが鍵だ。
そしてこの作戦は本来であればとんでもない外法だが、もはやこの世界の無事な地域が残り少ないことが幸いした。
つまり。


「うらああああああ!」


圧倒的巨大かつ、マッチョになりさらに飛距離を伸ばした神樹がその投擲力でレストを世界樹の遥か上空に発射。
投げられる側に凄まじい衝撃だが、丈夫さは随一かつ担いだものを絶対に落とさないから問題もない。
そして高空より、かつて桃子にも語られた投げレベル9999withドラゴンハートのレストの豪速球が炸裂する。

「…狙い目は北海道と青森の間かな」

もう人の残っていない東北地方目掛けて、躊躇いなく3個のN2爆弾が綺麗にまとめて投げられる。
着弾後、凄まじい爆発が起きるが世界樹からは遠く離れている。これで置き土産も処理できた。


「っ!!」


遠方処理の完了を目視し、魔法で帰還しようとするレスト。
しかしあまりにも高く投げ飛んだ彼は、地上の状況を見て愕然とする。
ああ、やはりこの爆弾『程度』はもはや脅威ではなかったのだと認識する。

海上。バラバラにされているが、巨大な龍の翼骨が見える。あれはまさか邪竜ギムレー?
あれ程の存在が殺された?狂信者にはまだ武器があるのか。影薄達は大丈夫なのか?
千葉方面。かなりの魔力を感じる。まさかイチリュウチームとほむら達にも何かあったのか?
関西方面。毒々しい色の花が咲き乱れている。ウォークライの話にあった、より強力なフロワロか。
そして……沖縄。以前よりも強く感じる混沌の気配。ノーデンスの話にあった黒き獣が、あそこにいる。

(本当に、時間がない……!)

同時期に発生している、無視できない異常事態。
達成感に浸ることも、悲しみに暮れることも許されない。
拳を握りしめたまま、彼は絶望の情報を持って世界樹へと戻ることとなった。

549続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:40:00 ID:8FR1VR0.0


仲間の死を悼むことも許されない中、世界樹内はさらに混沌とした混乱に陥る。
テラカオスを保護していたイチリュウチーム、その大戦力であっただろう邪竜ギムレーのまさかの死亡。
そればかりか、ほむら達が向かった千葉方面に渦巻く大きな魔力。下手をすれば残りのチームメンバーも危ういのかもしれない。
西からはフロワロに黒き獣が迫っている。
これらの問題は、予言の一節たる野球に大きな影響が出てくる。

『黒いフロワロは、俺が生み出せる赤いフロワロとは比較にならん!耐性の無い者が触れたが最後、あっというまに腐り果てるぞ!
幸い俺達は世界樹とドラゴンハート、二重の恩恵で防ぐことができるがイチリュウチームの人間はそうもいかん…!』
「なんとか、侵食をとめられないんですか!?」
「今までの情報を統合すれば、この能力は真竜を捕食した風鳴翼のもの。そして方角を考えると……」
「彼女は黒き獣に敗れ、その力を奪われた。つまり今フロワロを操っているのは黒き獣だろう」
『フロワロを完全に消すには、生み出している真竜の力を葬るしかない。しかし黒き獣を倒せるのは、テラカオスだけ……』

ウォークライが語る黒いフロワロの脅威。
しかもそれは事実上完全な破壊はできないという絶望的な状況だ。
侵食より早く、イチリュウチームを助け出し、ドラゴンハートの力を与えて速やかに野球の試合を完結させなければならない。
すぐにでもイチリュウチームの追加救援に向かいたいが、もう世界樹も戦力はあるが頭数が減り過ぎた。
計画と防衛の両面からダオスとまどかが動けないのが痛すぎる。

「よ、よくわからないけど、それなら私達が!」
「まだ夢を見ているようだよ。でも、今の時代でグンマーの人と手を取るのは、きっと司令官も望んでいることだろう」
「大丈夫。心配しないで頼ってくれていいのよ?」
「たとえどんな危険な任務でも、今度こそやり遂げるのです!」

そんな中で、カヲルの歌で浄化された数名の駆逐艦が名乗りをあげる。
まだまだ子供。そんな見た目でありながら自ら死地に赴こうとする姿は、まさしく一人の戦士であった。

「……かつての我が一族は、このような者達を虐殺したのか。改めて自分達と戦争の愚かさを突きつけられた気分だ」
「……いくら僕らの一族が硬くても、こんな子達を殺し続ければそりゃ精神を病むでしょうね」
「え?」
「……案ずるな。かつてと同じ愚策はとらぬ」
「グンマーの戦術は知っているんだろう?君達には、二人の巫女を守って欲しい。使い捨て同然に前線に出したりなんかしないからね」

奮起する駆逐艦に対し、ダオスはその頭の上にぽんと手を置くと諭すように静止をかける。
レストも屈み目線を合わせ、死地に向かわず防衛の方を手伝って欲しいと呼びかける。
かつての時代において、凄惨極まる戦争を繰り広げたミヤザキの艦むすとグンマーの剣と盾。
それが永き時の果てに争わずに済んだ。
これは機械の身ながらに最期まで共に戦ってくれたフェイの功績も大きいだろう。


「………」


そんな光景を目にした榛名は、その瞳を潤ませていた。
かつての時代、あの子と一緒にこの光景を実現出来ていれば、どれだけよかったか。
悔しくはある。あの悪夢の日、自分以外の姉妹は悪魔化ウイルスを打ち込まれることなく、無残にそのまま殺された。
自分のように、使徒のもたらす奇跡で元に戻れるかもしれないということもない。
あの子とも、姉妹とも、もう2度と笑いあうことはできない。
それでも、今こうしてグンマーの子孫達は過去を乗り越えようとしている。艦むすに、ミヤザキに歩みよってくれている。

「……みんな、ごめんなさい。榛名は不甲斐無い巫女でしたが、どうか今一度一緒に戦ってくれますか?」

榛名の言葉に、駆逐艦達は揃って頷いた。
彼女達も深海棲艦に…強い後悔を遺していた娘達。その想いは榛名と全く同じだ。


「……戦艦榛名以下数名、ただいまより貴方達の指揮下に入ります!」


びっ!と乱れぬ敬礼をして見せる艦むす達。
ミヤザキとグンマー。かつて協力し、やがて対立した彼らは、今再び手を取り合った。
ノーデンスの語った過去を、乗り越えて。

550続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:41:06 ID:8FR1VR0.0


「それでは改めて……よろしいでしょうか?」

突然の襲撃、予期せぬ犠牲者、そして迫る脅威。
未だ悲しみと焦燥の感情冷めやらぬなか、榛名はゆっくりと口を開く。
この殺し合いを開く羽目になった、根本的な原因。首謀者の正体を。

「本来、榛名達がもっと早くに手を取り合えていれば、今のこの惨劇も起こらなかったのかもしれません……」

「ですが、榛名達の時代の頃からでも次の大災害は遥か未来の話。今この時代の大災害は、人為的に招かれたものなのです」
「それは我々も把握している。少数を率い神々を抹殺した、竜殺剣と悪魔の力を持つ者なのだろう?」
「は、はい。驚きました、榛名達がいなくとも既にそこまで…」
「生き延びた上位神が遺した情報だ。しかし、彼女でもその正体までは辿りついていなかったのだ」
「そうでしたか。概ね、その内容で間違いはありません。榛名達や過去の技術を復元させたのは、ミヤザキの末裔なのです……」

榛名の言葉に、何名かがぴくりと反応するが口は挟まない。
諸悪の根源とも言えるミヤザキの末裔。その正体はもうすぐそこなのだから。

「…その末裔、堕ちた榛名達の提督の名はサーフ・シェフィールド。彼こそが、今代の大災害の首謀者です。
その目的はかつての思想を歪めたもの。生まれたテラカオスを横取りし、自分自身がその力を手中におさめるつもりなのです。
彼はビッグサイトに狂信者として潜伏し、ネット上の掲示板を掌握。榛名達を戦力とし、内部情報の収集や外敵の排除を命じました」
「…自らは表に出ず、身を隠し続けるか。現在位置はわかるか?」
「いえ。ビッグサイト内からは動いていない程度しか。逆に、榛名達の現在位置と生死はあちらに筒抜けでしょう。
元々榛名は堕ちている時は867号と呼ばれ、戦況の定期的報告を命じられていましたから」
「ちょ、ちょっと大丈夫ですの?こうしてあなたが元の姿に戻って正体を明かしたなんて知られたら…」
「それは大丈夫です。榛名達は元々、提督への絶対服従をしないからこそ、悪魔化ウイルスなるものであの姿に貶められたのです。
流石にその状態で後から埋め込まれた生死の判別までは誤魔化せませんが、榛名の意思で彼への報告は断固拒否していますので」
「と、盗聴機とかは大丈夫なんですか?」
「はい。榛名も驚きましたが、この姿に戻れるなんてサーフの想像外だったのでしょう。
意志のない絶対に従順な兵器だと思い込み、盗聴や遠隔解体等の機能もつけていません。いくらでも生み出せる動く兵器程度の認識……」

少し悔しげに吐き出された榛名の言葉。
艦むすは確かに兵器かもしれないが、少なくともこうして榛名達は会話ができる。
それをまるっきり戦争の道具としてしかみない、それこそかつての後期ミヤザキの提督のようなサーフという男に誰しも怒りを覚える。
しかし相手はただ冷血なだけではない。神々の油断を狙い、綿密な計画を立ててこの災害を引き起こした切れ者だ。
榛名の言葉通りならば、これから先の動きもある程度予測がつく。

「……敵が報告がないことを怪しむ可能性が高いな。しかし生存はしている、普通に考えれば我らの捕虜になったと考えるだろう。
自爆機能が無いならば、敵の取る策は証拠の隠滅のため、新たな大群を率いてここにやってくる可能性も否定できん」

ダオスの言葉に、一同に緊張が走る。
多大な犠牲者を許してしまった、3度目の狂信者の襲撃。
いよいよ戦力、そして何より止まらぬ犠牲で心身の疲労で限界が近いこの時に更なる襲撃に耐えきれるのだろうか?
いくら榛名達が加わったとはいえ、敵は少数で神々すら殺す男なのだ。
確実に勝てる保証など、ありはしない。




「….ならば、微力ながら私も力を貸そう」



そんな時に声を響かせたのはゼロであった。

551続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:41:57 ID:8FR1VR0.0



「ゼロ、どういう意味だ?」
「元より私の目的は、この殺し合いの目的であるテラカオスのことを貴方達に伝えることだった。
しかしこうして、更なる根底…黒幕とも言えるべき男の正体まで聞かされては、私の情報の価値も下がっただろう。
私が貴方達と敵対する存在ではないという証拠にはなったと思うがそれまで。私がここに留まるのはデメリットしかない」
「?」
「だが、私が今この場を飛び出せば、それは少なからず貴方達の助けになる筈だ。
何しろ私も狂信者から見れば、信者を偽った許されざる裏切り者。殺害優先度は先程の襲撃から見ても上位の筈。
つまり、私と貴方達が二手に分かれることで、連中も戦力を二分する必要が出てくる。
貴方達の防衛力は今更説明はいらないだろうし、私もこう見えて腕は立つ。そこらの狂信者を引きつけ数を減らすくらいはわけはない」

ゼロの言葉には、納得できる部分もあった。確かにゼロが身の危険を冒してまで伝えてくれた情報も、
集まった各対主催チーム、ノーデンスと榛名の話を統合すれば、情報の旨みは少ない。
やはり主催陣営もテラカオスを目的とした一枚岩ではない存在だったことが確定したくらいか。

「仮に私が狙われなかった場合、それはそれで私はより多くのまともな対主催の者達に、より深く正確なこの殺し合いの真実を伝えられる。
貴方達はここから動けない以上、仲間を増やすことはできない。これはこれで、貴方達の手助けができるだろう?」
「……うむ」

ダオスが小さく声を漏らせば、ゼロも一礼し踵を返す。

「…改めて、感謝しよう都庁の者達よ。そして、貴方達の武運を祈る」

脱ぎ捨てたオーバーボディを再び着用し、彼は足早に去っていく。

残された者達は、止まらぬ悲しみの連鎖の中でも立ち止まれない。
幾つもの難題。次に為すべきことは何か?

【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹内部】

【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【榛名@艦隊これくしょん】
※まどかの所持品に駆逐艦×4が追加されました
※全員がギムレーの死亡、イチリュウチームの窮地、関西の黒フロワロを把握しました
※ゼロとの邂逅で、プロジェクトテラカオスの存在を知りました。ゼロ=ルルーシュには気がつけていません
※さやかのギアスは残ったままですが、命令により普通にしている限りは気がつかれません


【biim兄貴@現実?】
【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【八雲紫@東方Project】
【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
それぞれ死亡確認
※連れていたモブ兵士も全員死亡
※死亡時の攻撃が苛烈だったため、彼らの支給品の回収や再利用は不可能です
※首相官邸跡地は完全消滅しました

552続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:42:36 ID:8FR1VR0.0



世界樹の入り口から、一体の魔物が飛び出す。
正しくは魔物に扮した者。その最後の一人たるルルーシュである。

(くそ、くそ、くそぉ……っ!)

彼は湧き上がる殺意と怒り、そして焦りに蓋をするのに必死だった。

(深雪、この愚かな兄を許してくれ……)

ドリスコル達が敗れ、おそらく都庁の全ての戦力があの部屋に集まっていた。
その様子から覚悟は決めていたが、やはり作戦途中で愛する妹は殺されてしまったらしい。
当然最後の妹すら奪われたルルーシュの悲しみは並ではない。下手をすれば、あの部屋で自爆覚悟で暴れていたかもしれない。
それをしなかったのは一重に榛名の情報。
そして、さやかから聞き出した情報があったからに他ならない。


(だが深雪、ナナリー……お前達の為にも、兄はここで倒れるわけにはいかないんだ!)


(まずは、サーフをDMC諸共に殺す!奴さえ死ねば、テラカオスは都庁か協力者が手にする可能性が高い。
そうすれば沖縄の黒き獣も止められ、死者の魂が脅かされることも無くなる!)


ルルーシュの瞳は憎悪に燃えていた。
最初に榛名からその名前を聞いた時点で怒りは頂点に達していたが、その後はさらに臨界突破した。

黒幕、カオスロワちゃんねるの疑惑を最初から理解していたルルーシュにとって、榛名の解説の半分は不要だった。
むしろ気になったのは、ミヤザキの艦むすとグンマーの巫女。この関連性だ。
あの場のやりとりから、都庁の者は全員これを理解していると見て間違いない。
そう判断し、彼らが知らないサーフの話に食いついている隙に、ルルーシュはさやかから情報を聞き出していたのだ。
太古の大災害、それからの戦争、残された救済の予言の内容…
どれも信じられないような内容だが、ルルーシュの脳内からはこれらの詳細などもはやどうでもよくなっていた。



大災害の化身。沖縄の黒き獣は今、死者に狙いを定めて襲っている。



この事実が、ルルーシュに最も強い絶望と焦燥を生み出した。
死者の魂が狙われる。以前見た沖縄の異常気象、あれだけの力を持つ黒き獣に襲われたら。どうなるか。
考えるまでもない。生きている状態ならまだしも無防備な魂など完全に破壊されかねない。
当然、その中にはナナリーも含まれる。

(あれだけの戦力、知力、そして情報。救済の予言は都庁連中に頑張って貰うほかない。俺がいなくとも、彼らは止まることはないだろう。
さやかから情報は手に入ったし、火薬庫の真ん中に留まり続けるのは愚策だからな)

ボロを出す前に危険地帯を抜け出したが、先程の都庁に対する言葉は、ルルーシュとしての本心も含まれていた。
忌々しい狂信者を葬り、ナナリーと暮らす世界の為に奮戦してくれる都庁には感謝しかない。
面倒ごとは任せて問題ない。彼らが動いている限り、狂信者もサーフも一裏切り者にばかりかまけてもいられない筈。
その隙を突き、この溜まりに溜まった憎悪の感情を叩きつけてやる。


(……当然、クラウザーの魂も例外ではない。奴らがこの真実を知れば、テラカオスを生むよりも自爆を選ぶだろう。
そう、それを阻止する意味でも、俺の行動に誤りなどない……!なり振りなど構っていられるか!)


「クラウザーさん……」

「ふん、貴様らでも少しは役に立つか?」


戦意を失って立ち尽くしていた僅かばかりの狂信者をギアスの支配下に置き、都庁を難なく後にするルルーシュ。
理性と憎悪の狭間で揺れ動く彼の今後がどうなるかは、まだわからない。

ルルーシュは生き延びた代わりに己より大切な妹の危機を知る。
都庁は守るべき者を守れず更なる絶望を知る。
主催は後に頼りになる仲間の死を知る。
誰も幸せにはなれない。ナイトメアはまだ続く。




【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹外部】

【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(絶極大)、非常に激しい悲しみと怒り、半暴走
【装備】ガウェイン@コードギアス@反逆のルルーシュ、スマホ@スマホ太郎 、魔物のオーバーボディ
【道具】支給品一式 、魔理沙の死体半分、ギアス支配狂信者×15人
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
0:サーフを手段を選ばず殺す
1:ディーが自爆する前に蘇生手段を奪い、自分のものとしてキープする
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:身の安全の為、都庁に戻ることは控える

※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※さやか経由でノーデンスの残した情報等を知りましたが、ナナリーの危機の為完全に記憶できていない可能性もあります
※黒き獣の襲来により蘇生が不可能な現状も知りました
※主催者の襲撃を自分の抹殺に動いた狂信者だと思っています
※黒幕がサーフであることを知りました

553目指せ完結:2020/03/24(火) 22:43:02 ID:8FR1VR0.0
投下終了です

554 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/26(木) 23:16:23 ID:jRE2DRx20
投下します

555未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:17:08 ID:jRE2DRx20
異世界横浜スタジアム。
拳王連合軍 VS 聖帝軍。
現在2対2、四回表、二打席目。

本来ならば拳王軍4番プニキの打順が回ってくる頃ですが、ここは聖帝軍側がタイムを申請しています。

理由はピッチャーであり、聖帝軍守りの要であった高津臣吾が死亡退場したことにより、交代のピッチャーがいないことに起因しています。
拳王軍側はこれを受諾し、10分までなら待つことを約束しました。


 〜 〜 〜

「高津さん……」
「泣くな、犬牟田……」

先ほど拳王の前に沈んだ高津……そして亜久里、千早の遺体が入った死体袋の前で犬牟田は嘆き、他の聖帝軍の者たちも悲しむ。
聖帝軍側ベンチはお通や状態だ。

「残酷なようですが今は勝つための手立てを。
タイムも有限ですし、瑞鶴の話が本当ならば負けた方が異界に取り残されて全滅します。
高津さんたちの犠牲を無駄にしないためにも負けてはならないのです」

一行の中で比較的冷静に見える金色の闇は、悲しみで思考を止めるより、頭を働かせろと言った。
非情なようだが元々暗殺者故、こんな時に思考停止するのはまずいことを理解しているのだ。
無論、仲間の死を悲しんでいないわけではない。

「だけど、高津さんほどのピッチャーがこのチームにはもういない。
他にピッチャーに適正がある人は……」
「それならば私が投げましょう、肉体に関してはモーフィング能力で高津の真似ができる。
技術は試合やこれまでの彼の戦闘を見ています……100%の再現や、彼がまだ見せていない投球技術に関してはどうにもなりませんが……」
「次点で南斗で鍛えてきた俺ぐらいだが、テクニック再現はともかくピッチャー向けの肉体に構成し直すなんて技は持ってない。
最善策で言えば闇だけが適任だろう」
『ちょっと待て、闇が抜けた二塁の穴はどうすんの?』
「おまえがやるんだデストワイルダー。レフトの方は機動力があるガンダムに任せる」

ピッチャーは体の形を自由に変えられる闇が最も適任とされた。
しかし肉体はともかく、高津に比べれば格段にピッチャーとしての能力は劣る。
これは闇本人や他の聖帝軍の面子さえもわかっていた。

「しかし、よりによって次の打席はアイツかよ」

ばつの悪い表情でレイジが拳王軍側のベンチを見るとタイム明けをハチミツを貪りながら待っていたプニキがいた。
バッティング技術に限定すれば拳王軍最高レベル、下手すればカオスロワ野球界において最強のバッターだ。

「あいつらの方もけっこう死人が出てるハズなのに悲しむ素振りすら見せず呑気に飯なんか食ってやがる……味方を味方とすら思わない態度……絶対に許せねえ」
「気持ちはわかるけど、こらえて紘汰」

殺しあう敵とはいえ狂信者と同レベルか、最悪それ未満の死んだ味方の扱いに紘汰は怒りを覚え、チルノは彼を宥める。
ちなみに拳王軍側は既にマウンドに出ているプニキを除くと、一部がベンチの奥へと身を隠し、残りが余裕すらあるかのような表情でこちらのベンチを見ている。
実際問題、聖帝軍は既に稼働できる選手が7人しかいないのに対し、拳王軍はまだ10人も残っており、まったく消耗していない選手もいる。
同点でも主力ピッチャー不在の聖帝軍相手では余裕すら感じてくるのだろう。
今思えば、タイムに10分もの時間を許したのも優勢故の余裕だったのかもしれない。

「あのホームランぐまか…策を練らないとまずいか」
「向こうが10分も与えてくれたんです、そんなに長くタイムを取らせたことを後悔させてやりましょう」



一方その頃、拳王軍側ベンチ。

556未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:17:46 ID:jRE2DRx20

「あいつらモンキーのように今のところ、しどろもどろしてるだろうぜ」
「ヤクルトの高津さんともっと野球がしたかったのは俺的に残念だが、良い気味だ。アルトリ…ヒロインXや平等院を殺した罰を受けやがれ」

ベンチから反対の聖帝軍に向けて嘲笑うかのようにクロえもんとディオが中指を立てたが直に怒る翔鶴と上条によって止められた。

「やめなさい、敵とはいえ向こうもヒトなんです。無暗に相手を挑発することは許しません」
「そうだぞ、俺たちまでゲスな真似をするつもりはない」
「しかしジョジョに翔鶴! 奴らは世界を滅ぼすヘルヘイムの味方だぞ」
「へ、マナー講習のつもりかよ。
どうせ試合を始めた以上は皆殺しにする奴らなんだから礼儀もクソもねえ。
野球のルールだけ守ってりゃいいんだろ」

ディオはやや不服、クロえもんは超不服な様子で止めに来た2人に意見する。
翔鶴はさらに言い返そうとするが……

『いや、ディおじさんたちが正しいよ』
「彩……ロックマンさん!?」

翔鶴の持つPET……光彩斗もといロックマンが仄暗くドスの効いた口調で会話に割り込んだのだ。

『敵に敬意を払って丸く済むなら殺し合いなんて起きない。やるだけ無駄さ』
「でも、しかし!」
『そもそもヘルヘイムや聖帝軍は多くの人を殺した……彼らは殺してきた罪のない人に謝罪なんてしたのか?
少なくともカオスロワちゃんねるで彼らが謝罪する書き込みなんて一度も見たことがないよ』
「それは……」
『わかったかな翔鶴、悪党に情けも敬意もいらないんだ』

普段は優しいロックマンの言葉に翔鶴は驚く。
彼の妹として止めるべき発言だが、『義理の妹』がそれを阻害した。

「ここはロックマンの言う通りよ翔鶴姉」
『インドラ』
「瑞鶴?!」
「どのみち殺すのならばマナーだなんだ言っても意味がないじゃない。
下手なモラル自体が敵に付け入れられる隙を与えてしまうわ。
そんなことより敵をいかに倒すかを考えた方が先決よ」
「しかし……」
「翔鶴姉が気に入れないなら兵法の一つとして割り切ってみたらどうかしら?
敵を挑発してミスを誘発する……的なね」

瑞鶴は拳王軍は知る由もないが、彼女はサーフに復元されてから暗殺者として生きてきた身。
殺すべき者たちへの敬意など無意味だと知っていた。
(若干不本意ながらも)ロックマンの意見に賛同する。

『勝つための兵法……納得だね!』
「ええ、そうですねロックマンさん(アンタのために言ったわけじゃないけど)」
「2人がそう言うのなら……」
「だろ! 相手は所詮敵なんだ、遠慮も容赦もいらねえ」

翔鶴もロックマン・瑞鶴両方からの意見に流された。
賛同を受けたクロえもんは敵である聖帝軍へのヘイトを続けた。

一方、その様子に眉を潜めるのは翔鶴・ロックマン以外のネットバトラーとネットナビの二組。
他の者には聞こえぬように小声で会話をする。

『ロックマンの奴、さらに苛烈な性格になった気がする。
戦闘のストレスもあるんだろうが、それ以上にダークチップの影響だろうか』
『お館様、警戒をしてほしい。なるべくダークチップを使わせないように気を遣うんだ』
「ああ」
「……クロえもんに同調してた俺が言うのもなんだが、色々すまん」

ロックマンに現れた攻撃性はダークチップを使ったものによる影響と上条とディオたちは断定。
同じ仲間として注意の目を光らせることに。


「……ふん」
「イチローさんイチローさんイチローさん」

そんなやり取りをハクメンは横目で見つつ、ムネリンは相変わらずイチローラブで試合の行方以外は興味なしであった。

557未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:18:41 ID:jRE2DRx20


一方、ラオウとMEIKOは――ベンチ裏のロッカールームにて仲間の死体を弔っていた。
横倒しにしたロッカーを棺桶の代わりとし平等院とヒロインX(彼女は性質上、死体が残らない仕様だが)を眠らせている。
そしてラオウはその前に座り、黙祷を捧げるように静かに胡坐をかいて座り込んでいる。

聖帝軍は拳王軍は仲間の死を悲しんでないと思い込んでいるが、そんなことはない。
MEIKOの指示により、敵に弱い面を見せないためにわざと表向きは悲しみを見せないようにしているのだ。
ラオウにしてみればムギちゃんの次くらい長い付き合いだった平等院の死は大きなものであった。

「ダーリン……」

悲しみを察しているMEIKOはラオウの背中を恋人のようにそっと抱いた。

「……ムギちゃんや平等院のためにも我々が負けるわけには行かん。
必ずや聖帝軍を討ち倒し、皆殺しにするぞ」
「ええ、あなたが望むのなら」


 〜 〜 〜

そして、試合は再開された。
聖帝軍はピッチャーを金色の闇に変更し、レフトはセンターにいるガンダム一機に任せる形で空白となる。


「行きます」

ピッチャーとなった金色の闇は第一級を投げる。
だがそれはただの高津を真似ただけの投球ではない。
ファーストの鎧武、サードのチルノからさらに支援を受けていた。

「これが打てるか!」
「高津が生きていたら気に入らなかっただろうけど」
「こちらは素人ですからね」

野球ボールに紛れて放たれたクナイと氷柱の弾幕が、プニキを襲う。
ダメ押しに野球ボールの周りは氷でコーティングされており、打とうとした滑る仕様だ。
常人ならば……否、そこらの野球選手では到底打つこともできない弾幕である。

「どこまでもどこまでも甘いな」

だがプニキは攻撃に臆することなく、ニヤリと笑うと。
目にもとまらぬ速さのバッティングにより自分に向かってきた弾幕をすべて打ち返した。
さらに氷で滑るハズのボールもプニキの技量の前では意味もなく、難なく弾幕ごと打ち返すのだった。

「なに!?」
「うわああああ!」

打ち返された弾幕はベンチにいる犬牟田以外の聖帝軍に襲い掛かった。
氷柱やクナイが選手たちに刺さり負傷するも、手練れ揃いである聖帝軍の者を殺すには威力が足りなかった。

……ただ一人、身体的に恵まれておらず、装甲に守られてもいない、一般人であるイオリ・セイを除いては。
スタジアム右側で無惨な屍となったイオリが横たわっていた。

「イオリ!」

親友の死にレイジは言葉を上げるが、その直後にコクピットで警報がなる。
プニキの打った野球ボールはイオリが消えたライト側を狙っていたのだ。
コースはもちろんホームラン。

「させるかあ!!」

友の死を嘆いている暇もなく、レイジはガンダムのバーニアを吹かしてボールを阻もうとする。
そして、ボールはガンダムの装甲部分に当たるが、これは拳王軍にとっても聖帝軍にとっても、レイジにとってもプニキにとっても既視感のある光景だった。

「馬鹿め。ライトにいるガキでは俺の打球を取れないのは想定済み。
おまえがカバーに入るのは予測がついていた!」
「なッ、またさっきの曲芸を!」

ボールはガンダムの装甲の凹凸を何度から跳ねたとあと、観客席の方へ向かう。
もはや魔法じみたプニキのバッティング技術に聖帝軍は戦慄を覚える。
そしてガンダムに後ろへ飛んで行ったボールを追いかける余力はなく、他の選手も打ち返された弾幕による負傷で追いかける余裕はない。
拳王軍の三点目獲得、ホームラン記録の更新。
プニキはさらにニヤリと嗤った。


「一度、言ってみたかったんだよね……狙い撃つぜ!!」
「!!?」

プニキが勝利を確信した瞬間、観客席側から放たれた一条のビームが野球ボールに命中し、威力が死んだボールが落ちた。
ボールが落ちた場所は観客席ではなく、スタジアムの内側だ。ホームランにはならない。

プニキがホームランを逃したことは衝撃であるが、それ以上に驚かせたのはプニキのホームランを止めた存在であった。

「おい、なんでアイツがあそこにいるんだ!? あのガキはあそこでくたばってるハズだろ!」

ホームランを背後にある巨大なビームライフルで止めたのは――イオリ・セイ。
弾幕で死んだはずの少年が、観客席の方にいた。

558未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:19:10 ID:jRE2DRx20

「ふふッ……トリックさ、ライトにいる死体をよく見てみろ」
「あれは……マネキン人形!?」

からくりを解説すると、イオリは最初からライトには立っていなかった。
一流のガンプラビルダーであるイオリはガンプラ技術を応用してドームに放置されていたマネキンを自分そっくりの顔を人形に貼り付け、機械に強い犬牟田が簡単に動く程度の仕組みをもった機械をつけることで偽装をした。
よく見ればすぐ気づく代物だが、一般人であるイオリの存在を過小評価……特にプニキは気が付かなかった。

次にビームライフルだが、これはスタービルドストライクから外したものを観客席に放置。
レイジ的には野球の試合では腕が塞がって邪魔なうえ、置く場所が他になかったから置いていただけだが、閃いたセイはこれをホームランボールを迎撃するための対空砲にこっそり改造。
犬牟田のコンピュータによる予測ではプニキが何の特殊能力も持たないライト側を狙うのは予測済み。
そこでビームライフルの存在を悟られないように弾幕を張り、もし打たれても可能な限り速度を減らし、イオリの動体視力でも狙えるレベルまで遅くなった球をビームライフルで撃つ作戦だったのだ。

「最初の弾幕は俺に打たせないためじゃなくて、俺に大砲の存在を気づかせないための……罠!?」
「イオリは確かに俺たちに比べれば格段にひ弱だが、その才能を生かすガンプラ愛と発想力があった。
自分の能力に驕り、イオリをただの能無しと高を括った時点でおまえの負けだよ」
「俺が…ロビカスでもないただのガキに負けただと……」

サウザーの言葉を受けつつ、プニキはホームベースの上で立ち尽くす。
それだけに炉端の石にも等しい子供にホームランを阻止されたのがショックだったのだ。

「何をやってるんだプニキ! とっとと走れ!」
「ええ?」
「タッチされるまではまだアウトじゃないだろ!」
「あ、そうだ!」

ホームランこそ逃したが、聖帝軍がキャッチする前に地面にはついているのでヒットではある。
敵に捕まる前に塁を踏めば、アウトにはならないのだ。

「こうなりゃ塁を踏んでどうにか汚名挽回を……!」

そして(焦りのせいで名誉挽回を言い間違えるミスをしつつ)、プニキは一塁へ走る。
が。

『プニキさん足遅ッ!』
『ああー……ありゃバッティングばかり鍛えて他のトレーニングをまったくやってなかった口だな』
『あんなにハチミツばかり食べてたら太りもする……ブッタファック』

ネットナビたちがツッコミを入れたくなるほど、プニキの足は赤子のダッシュレベルで遅かった。
おそらく走力はカオスロワ球界でも最低レベルであろう。

「一塁が遠い、もっとハチミツを……!」

走って疲れたのかプニキは試合中にも拘わらず腰に抱えていたハチミツで栄養補給をする。
だが、彼がハチミツを口にすることはなかった。
白い悪魔がやってきたからだ。

「え……?」

プニキの行く道を遮るように巨大なガンダムが立ちふさがる。
そのマニュピレーターには野球ボールが握られ光輝いていた。

「うわああああ! お助け――」
『ビルドナックルッ!!』
「うおるとッ!?」

スタービルドストライク最高の武器であるビルドナックルが容赦なくプニキに向けて振り下ろされた。
ズドンという音と重みもと共にプニキは即死し、ガンダムの拳が地面から離れた後にはアウトという結果と潰れて焦げた熊肉のハチミツ漬けだけが残った。


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー 死亡】

559未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:19:47 ID:jRE2DRx20


「プニキ……!」
「正直、あんま好きな奴じゃなかったが……これはまずいね」

性格はともかく最高のバッターであったプニキの死は拳王軍のベンチを騒然とさせる。
聖帝軍が守りの要を失ったのならば、拳王軍は攻撃のエースを失ったのだ。

「やったなイオリ!」
「いや、僕だけじゃない、レイジやみんなの援護がなければこんなに上手くいかなかったさ。
……さて、ダミー人形はバレたし同じ方法はもう通用しないね」
「スタービルドに乗ってくれ、久しぶりに相乗りだ」
「うん」

観客席にいたイオリはライトのポジションには戻らずレイジが操縦するガンダムに乗り込んだ。
レフトだけでなくライトが空白になってしまうがイオリの脆弱さやガンダムの機動性を考えれば、レフトやライトをガンダム一機に任せた方が安全だろう。
また、一つのポジションに二人いることも、カオスロワ式野球ではなんらルール違反ではない(超人血盟軍の前例もあるしね)。

こうしてワンアウトとなった拳王軍の次の打席にはMEIKOが立った。
聖帝軍は先にプニキに行った弾幕攻撃は行わなかった。
打ち返された時のダメージがデカすぎると学んだからだ。
ただし、味方の支援がまったくなくなったわけではない。

「高津の投球なんてとっくに見切……クソ、氷で滑って飛距離が伸びない!」
「取ったぜ! これでツーアウトだ!」

チルノによる氷のコーティング自体は続行。
MEIKOは二回の空振りの上で三度にヒットをたたき出したが、当たった瞬間氷で滑ったため、飛距離と制球性を維持できずに一塁側に飛んでいき、紘太にキャッチされてしまう。
あっさりと取られたため呆気なく感じるが、これはMEIKOが弱いのではなく、それだけプニキのバッティングセンスが異常だったのだ。



だが、真の恐怖はここからである。

「任せたぞハクメン」
「……応」

亡き平等院に代わって6番センターに選ばれたのはハクメンである。
白い侍の姿に闇ははっと気づく。

(まさか……私たちの恩人であるフェイ・イェンを殺したという『お面野郎』……!?)

闇は直感と、相手が放つ隠し切れない強者のオーラでハクメンの正体を看破。
レストの話では刀を持っていたことと仮面ぐらいしか特徴がわからなかったが、レストと一対一で交戦して互角に戦える実力者の数は限られている。
となると移動した距離や時間を考えるとレストが戦った男としか思えないのだ。

「我は空、我は鋼、我は刃
我は一振りの剣にて全ての「罪」を刈り取り「悪」を滅する!!
我が名は「ハクメン」、推して参る! 」

ベンチにいる時は隠していたオーラが発揮される。
呑気な性格のサウザーもハクメンの実力に気づいたのか、口には出さぬものの玉のような汗を出す。
(こいつはプニキやラオウ以上にヤバいかもしれない)と。
サウザーと闇はアイコンタクトで合図を送り、さらに闇は左右や前方を見渡すふりをして仲間たちに目線の暗号を送った。
(こいつはまずい相手だから特に警戒しろと)

「投げる前に一つ、聞きます。
スカイツリーの辺りでネギ色の髪をしたロボットを斬りませんでしたか?」
「葱…? ああ、あの時のか」

闇は単刀直入にハクメンに問いかけると、やはりフェイ・イェンと縁がある存在であった。

「それからどうしたんですか?」
「世界を蝕む『凶』を狩るためには邪魔だから切り捨てたまでのことよ。
『凶』を守る者は例えどんな理由があれ悪鬼同然、消えてもらう他ない……必要な犠牲だ」
「マガトだかなんだか知らんが、必要な犠牲だと、貴様ァッ!」

フェイ・イェンは聖帝軍にとって恩人である。
そんな彼女を無惨に殺した怨敵が目の前にいたことに、サウザーや聖帝軍の選手は怒る。
まさかの遭遇に加えて拳王軍の手先だったという事実が怒りをさらに燃え上がらせた。

「もういいです……拳王軍はやはり芯の中まで腐っていた。
その真実があればあなたたちを気兼ねなく殲滅できますから」
「フンッ、なんとでも言うがいい。
『凶』に甘えなど不要、隙を見せれば何もかも滅ぼされるだけだ」


拳王軍は必ずここで全滅させる、その決意を新たに聖帝軍は制圧前進を開始する。

560未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:20:13 ID:jRE2DRx20

「ッ!!」

そして闇は投げ、チルノは投球に再び氷によるコーティングを施す。
その投球は高津が今まで投げた中でも最高クラスの速さである。

「ズェアッ!!!」

だが、その投球は本気なら惑星破壊も可能なハクメンの前では非力。
当て身の要領で弾き、そして打球は刹那の瞬間に紘太(鎧武・極アームズ)の肩当てに命中した。
その速さと威力は高津の脳を炸裂させたラオウの時の倍以上の威力を誇る。

「うわああああ!」
「紘太!」

幸い、吹き飛んだのは肩当て部分だけだが、かすっただけで立つことも維持できなくなるダメージが紘太を襲い、地面に倒させた。
なお、ハクメン自身が野球に関して素人だったので弾は鎧武に当たった直後にゴロとなってヒットどまりだが、これがホームランコースだったらプニキ以上に危険なバッターとなるだろう。

「させるかよ!」
「遅い! ズェアッ!」
「早いッ!サウザーの3倍以上はある!」

動けなくなった紘太の代わりにボールを取りに行くビルドストライク、そして三塁のチルノはバルカンと弾幕で一塁への進軍を阻もうとする。
だがそれらは全て切り払われ足止めにさえならなかった。
速度に関しても時を斬って移動できるハクメンは残像が置き去りになるレベルで、誰も捕らえられず、しかもほぼ無消費。
もはやBLACK RXですら軽くあしらえる論外レベルの強さ、それがハクメンであった。

(おまえたち自身に『凶』はない。
だが、世界の秩序のためには必要な浄化の邪魔をするなら話は別だ。
障害となるなら撫で斬りにさせてもらう!)

そのような想いを抱きつつ、時を斬りながら進むハクメンは最初のターゲットに見定める。
一塁を守る仮面ライダーは被弾で倒れており、首を落とすにはまたとないチャンスだ。
次に塁を進みながら二塁の虎、三塁の大精霊、最後に聖帝の首を順に落とすことで、聖帝軍の戦力を壊滅させる。
そうなれば六回裏終了を待つまでもなく試合は終了し、凶狩りとヘルヘイム討伐及び死者スレの黒幕を撃破に時間を割くことができる。

止まった時の中で刀を構えて突進しようとするハクメン。
その速度は最大速度であり、これで突進すれば確実に鎧武が細切れの肉塊と化す














――そのハズだった。

ツルッ

「ピャッ!?」

561未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:20:46 ID:jRE2DRx20


ハクメンが容赦ない奥義が発動しようとしたその瞬間、ハクメンの足が滑り転倒、そのままツルツルと、しかし猛スピードで正面方向に体が滑って行った。

(いきなり足場の摩擦が消え……いったい何が!?)

0.1秒足らずの高速思考の中でハクメンは自分が転んだ原因を探る。

(これは……氷!?
目に見えないほど薄い氷の床が一塁までの道に敷き詰められている!?)

その正体はチルノが秘密裏に仕掛けた氷の床。
氷精としてパワーアップの限りを尽くしたチルノが力の限り設置したトラップだ。
いかなハクメンとて、移動は足を使う以上、勢いがついたまま走れば確実に転倒するレベルだ。
ならばジャンプすれば良いだろという話になると思いきや――

(あの弾幕射撃は私を足止めするためではなく、罠と魔力の動き悟らせないための囮!
弾幕の際に発声した土煙が罠の隠れ蓑にしたか)

ハクメンにしてみればチルノやガンダムはおろか、聖帝軍など蟻を踏み潰すより簡単にできる存在だ。
せいぜい機動力でレストさえ上回っているサウザーなら多少手こずるだろうか、という相手だったハズだ。
しかし、それは直接的に対決すればの話。
個々の技能とそれを掛け合わせるチームワークさえあれば、彼を罠にハメることは可能だった。

(だが、浅い! もう一度時を斬って……――)

それでもハクメンはあきらめず地面に刀を突きたててブレーキをかけて再起を図る。
だが時を斬る能力が終了した直後、それができなくなる事態に陥った。
再び時を止めようとした瞬間、ハクメンの関節という関節が一瞬で氷に阻まれて、一切の身動きが取れなくなった。

「氷が!」
「アタイの罠に引っかかった以上は、逃さないよ!」

こうなれば、「時を斬る」動作は不可能。
それでもハクメンが魔力を解放すれば体に張り付いた氷も足場の氷も一瞬で解けるだろう。

「うおッ、あぶねえ!」
「この私が……」

だが、この瞬間の場合、ハクメンが力を解放するよりも氷に摩擦を殺されてスリップしたままスタジアムの壁面に激突する方が早かった。
それだけハクメンは、自分でも制御できるなくなるほど早く動きすぎたのだ。
あまりの運動エネルギーはハクメン自体をも傷つけ倒れさせた。
ちなみにスリップした結果、紘太さんがいる一塁はギリギリで躱した。

「トドメだ、本日二回目のビルドナックル!!!」
「ぐふうッ!!」

更にレイジは野球ボールを持ったビルドナックルを動けなくなったハクメンに叩き込む。
いつものハクメンならば避けたり防ぐことなど造作もなかったが、今は倒れた状態で態勢が悪く刀も衝突した際に手放していた。
お見舞いされたビルドナックルは直撃し、拳王軍にスリーアウトをたたきつけた。

「やったね、レイジ」
「いや、頑丈な鎧だぜ、仕留めきれなかった」

ハクメンは直撃をもらいはしたが、生きていた。

「気絶……してるの?」
「もう一つおまけにビルドナックルを叩き込もうと思ったが、やめにした。
こいつはとっくにタッチされてアウトだし、もう一回やったら反則になるだろう」

ハクメンは鎧に僅かな罅が入る程度しか目に見える負傷はなかったが、伸びているか倒れたまま動かなかった。
ハクメンはこの後、他の拳王軍の仲間に担がれ――六番センターのポジションを控えの選手であるメーガナーダに交代したため、今試合では退場扱いとなった。

562未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:21:18 ID:jRE2DRx20

 〜 〜 〜

次回、四回裏。

               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
メーガナーダ       6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト




『聖帝軍 布陣』

-             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番センター
デストワイルダー     6番セカンド
-             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

 〜 〜 〜

「まさかプニキを失い、期待していたハクメンがああもあっさりやられるなんて」
「MEIちゃん、気を落とすな。
だが認めよう、聖帝軍は今まで戦った中で最強の野球チームであると!」

先ほどはラオウのホームランと高津の抹殺で歓声に沸いていた拳王軍だが、今度は打って変わって拳王軍の方がお通やムードであった。
そんな中でコソコソと光兄妹は内緒話をしていた。

『翔鶴聞いてほしい……もしもいよいよって時は僕にダークチップを使って欲しい』
「彩斗兄さん……あれは……」
『わかってるさ、でもあのチップは戦局をひっくり返す力を秘めている。
僕らが負けて拳王軍が負けてしまえば元も子もない。
……これ以上、仲間の死を見たくないんだ』
「…………」

ロックマンの悲壮な覚悟に翔鶴は何も言い返せなかった。
ロックマン自身もこれまで以上の窮地を肌で感じ取っており、全滅するぐらいなら悪の心を得た方がマシではないかとさえ考えだしていた。

『(最悪、僕が完全に悪の心に染まったら、ジョジョやディおじさんたちがデリートしてくれるさ)』

それは己の破滅を計算に入れてでも妹や仲間を守らねばならないという、覚悟であった。

563未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:21:44 ID:jRE2DRx20



一方、気絶したハクメンは瑞鶴とメーガナーダによってベンチの裏で介抱されていた。
だが、瑞鶴とメーガナーダは黒幕の手先、その黒幕が喉から手が出るほど欲しいテラカオスを殺す力を持ったハクメンに何もしないわけがなかった。

(本当なら殺しておくべきだけど、この後の都庁の連中やイチリュウチームとの試合を考えたら、まだ生かした方が得策ね)

ハクメンを殺せるまたとないチャンスであったが、拳王連合軍自体も度重なる戦いで戦力が激減している。
今回の試合でこそ遅れを取ったとはいえ、単純な戦力でみれば今殺してしまうと拳王軍まで壊滅する恐れがある。
拳王軍自体は壊滅しても良いが、愛する姉翔鶴まで死んでしまうのはいただけない。
自分と翔鶴が生き延びるのに必要な肉壁なのだ。

(でも、何もしないのも後々まずい……だから)

瑞鶴は治療するフリをして、超小型の爆弾……今まで暗殺のために使ってきたスマホで起動するリモート爆弾を罅の隙間か鎧の内側に入れていき、包帯で固く覆った。

(これでよしと、いざテラカオスや提督さんを殺そうとしたらいつでも起爆できるわ。
流石のハクメンも中身までは鎧ほどの防御力はないだろうし、この爆弾で殺せなくとも手傷は確実に受けるでしょうね)

ハクメンは完全に気を失っており、巧妙に鎧の内側に埋め込まれた異物にはそう簡単に気づくまい。
気づかれて摘出されても気絶に追い込んだ聖帝軍のせいにするだけである。

入り口はメーガナーダに見張っており、ラオウたちに気づかれた様子はない。
瑞鶴の治療に見せかけた工作は完了である。

「ありがとうメーガナーダ、こっちの『仕事』は終わったわよ」
「インドラ〜もぐもぐ」
「あれ…? あなた何食べてるの?」
「インドラ♪(熊肉のハチミツ漬け)」

うっかり仲間の死体を食べてしまったメーガナーダくんは、ペットの躾がなってないと拳王軍に怒られた瑞鶴ごと仲間たちの前で土下座することになった。



【二日目・23時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

564 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/26(木) 23:22:19 ID:jRE2DRx20
投下終了です

565 ◆gmrRot5lNM:2020/04/01(水) 08:53:05 ID:4yb.AVWk0
小町、あかり、セルベリア、ディーで予約します

566 ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:18:44 ID:eTGa3rlc0
予約分を投下します

567死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:19:48 ID:eTGa3rlc0
いつぞやの新宿都庁地下で繰り広げられた赤い影と青い閃光のぶつかり合い。
それが今度はビッグサイトの屋上で再び繰り広げられていた。

「セルベリアァ!!」
「小町ィッ!!」

赤い機械刀サイファーと青い竜殺剣ドリスが激しくぶつかり合う。
一太刀、二太刀、三太刀。互いが攻め手は防ぎあう。

最高位の完璧超人さえ一撃死させた切れ味のサイファーと、それを傷一つなく耐えきるドリス。
その硬さからセルベリアの持つ大剣が間違いなくオリハルコン製であることは間違いないと小町は戦いながら見抜く。

(邪竜をあっさりと倒したところからしても本物の竜殺剣みたいだ……
この世界の摂理を守っていた真神を殺した竜殺剣の形状がどんなものかまでは知らないが、そんなに沢山あったら都庁のドラゴンはとっくの昔に絶滅している。
都庁にあるものはレストが造り上げたものだし、この世界に大災害を招き入れた悪魔が使った剣である可能性が濃厚だろう)

小町は思考を巡らせる。

(だとしたらセルベリアが世界を滅ぼした悪魔なのか?
さっきまでは人間だった覚えがあるが、悪魔の力を隠してただけ?
剣を仮に拾っただけならどこで手に入れて竜殺しの力を知った?)

だが、彼女が考える間もなくセルベリアは矢継ぎ早に攻撃を繰り返してくる。
思考のリソースを考察につぎ込む時間がない。

(とっちめて、聞き出すしかないか…!)

とにかく、勝たねば……そう思って小町は剣を振り、牽制の銭を投げる。

「喰らえ!」
「喰らうか! 『距離を操る程度の――」

セルベリアが剣と槍の二刀流による全力全開の突進を放つ。
小町は以前戦った時と同じように距離を操る程度の能力もとい間合いを支配する能力で、突進を防いでから隙ができたところにサイファーの一撃を加えようとした。

「ッ!」

しかし、小町は直感でこれが能力で防げないと思い、剣による防御も選択。
避けている余裕はなかった。
実際、突進撃の前になぜか能力が発動せず、小町に突進が命中。
サイファーで直撃こそ躱したものの、突進力自体がかなりの衝撃であり、腕の筋肉に多大なダメージ、さらに床に転がり追加ダメージ。

「ゲホッ、どうして能力が」
「追撃する」

血反吐を吐きつつ、今まで自分を強力に守っていた能力が発動しなかった理由を疑問に持つが、セルベリアは屋上の床に転がり込んだ小町に容赦ない追撃を加えようとする。

「させない!」

そこで主人公――隠れて攻撃の機会を伺っていたあかりは遠距離からエンシェントソードの雷による援護を行い、小町への追撃を防ごうとする。

「そこか!」
「居場所がバレてる、わああああ!」

あかりが攻撃してくるより早く、槍から出る光線が放たれ、あかりの頭部に命中し、その体はビッグサイトの屋上から落ちようとしていた。

「あかりぃぃぃ!!」

小町は急いで落下しそうになったあかりの下へ能力を使った瞬間移動を用い、助け出した。
飛行を行いながら小町は彼女の無事を確かめる。

「あかり!大丈夫かい?」
「か、かすっただけ、ヘルメットがなかったら即死だった」

ビッグサイトから落ちたのは焦げて穴が開いたデモニカのバケツヘルメットのみ。
あかりは寸前で躱したこととヘルメットがダメージを吸収したことで死を免れていた。

「墜ちろ!」

安堵も束の間、セルベリアは飛び続けている小町たちに向けて槍ビームを発射して機動を制限したのち、さらに自分も小町に向けて飛び立ち、剣と槍による叩きつけ攻撃を行う。

「クソッ、防げないなら避け――られない!? がはあ!!」
「いたあああああああああい!!」

あかりを抱えながら小町は回避行動に移る。
攻撃を能力で弾くのは不可能だとわかっていたために、今度は能力で攻撃の範囲内から出ようとした。
だが、できなかった。
まるで何かの力に引っ張られるように回避ができなかった。
小町は咄嗟にサイファーによる防御を行うが、サイファー自体はともかく、伝わった強い打撃の振動は小町をビッグサイトの屋上に墜落させて叩きつけるには十分だった。
そこへ槍ビームが飛んできたが小町もあかりもすぐに態勢を立て直して追撃を躱す。

568死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:20:23 ID:eTGa3rlc0

「畜生、防げない攻撃と避けられない攻撃をしてきやがる!」
「あかりの存在も見抜いてるみたい! 普段なら嬉しいけど今は嬉しくない!」

小町の距離を操る程度の能力を無効化し、影薄の位置さえ把握している感知能力。
単純に能力が上がっただけでは説明がつかない、セルベリアの謎多き強さに二人は焦燥する。
その様子を見てセルベリアはほくそ笑む。

(ああ、おまえたちを倒せるように、スキルやポテンシャルを死に物狂いで手に入れたからな。
悪魔化で手に入れた『貫通』、必中攻撃を可能にする『後の先』、そして度重なる改造手術で手に入れた『心眼』。
これらを手にしてる以上、今までの戦術が通用すると思うな)

ギムレー戦にも使用した耐性を無視する『貫通』。
いくら小町の能力でも攻撃の反射に応用することはできないので、間合いに入れば確実に発動し、能力による回避を無効化する。
『貫通』一つでは回避に能力を使われると意味がないので、格闘攻撃ならば絶対必中を可能にするバトルポテンシャル『後の先』の出番となる。
ちなみにポテンシャルが彼女が本来持っている『ヴァルキュリア』『リーダーシップ』『実験体』『戦車嫌い』の他に一つしかつけられないので、ギムレー戦で使った『貫通攻撃』との併用は不能。
ただし、小町の能力ベクトルはギムレーの逆で回避力が高く防御力は並であるため、防御力を無視するポテンシャルをつける意味はなく、確実に当たる攻撃の方が難敵であった。
『心眼』は敵の不意打ちを無効化する悪魔の力で、影薄に敵意があるなら場所を見抜き、アドバンテージを無効化する能力である。
セルベリアはこれらの能力を利用して、小町たちに対して有利に戦いを進めていた。


『セルベリア・ブレス殿!』
「マクギリス……血のスカーレット小隊か!」
『救援が遅れてすまない、このアグニカ・カイエルの遺産であるバエルを手に入れるために時間がかかった』

そこに割り込むように上空からガンダム・バエルを筆頭にしたMSの小隊がビッグサイトに向かってくる。
このスカーレット小隊とやらは今まで東京の外側にいた狂信者の一団であるが、ビッグサイトの一大事(ギムレーのこと)を聞いて遅刻ながらも駆けつけたのだ。

『侵入者に見せてやろう……このクラウザーさんの守護者になりうるMS、バエルの力を……!』

MSの数は12機、いずれもストライクフリーダムとかダブルオーガンダムとか高性能機ばかりである。

「こんなところで死んでたまるかよォ!! 死歌『八重霧の渡し』」

万事休すと思われたその時、小町は咆哮と共にサイファーに霊圧を込めると、一枚のスペルカードを出したのちに、剣を振るう。
するとプラズマと霊圧を合わせた紫のエネルギー刃がセルベリアと後ろから迫ってくるMS軍団に向けて無数に放たれた。

「避けきれん……ぐゥ!!」

その刃の弾幕……否暴風雨は強化されたセルベリアをもってしても避けきれるものではなく、仕方なくドリスを盾にした防御に切り替える。
しかし直撃はせずとも漏れたプラズマや霊圧がセルベリアを炙って軽くないダメージを与え、衣服も粉々にした。

そして、セルベリアよりも小回りが利かず、ドリスよりも硬くはないスカーレット小隊の方々は。

「バエルッ!?」

切り裂かれて爆散して全機、花火になった。
ナノラミネートアーマー? PS装甲? 流石に霊的属性を持った攻撃は防げません。
幸いなのは施設まで爆風が届かなかったことである。


「血のスカーレット小隊、全☆滅!」
「30秒経たずにか!?」

上の二台詞はその様子を見ていたビッグサイトの外側にいたモブ狂信者の言葉である。


【マクギリス・ファリド@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ 死亡】

569死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:21:28 ID:eTGa3rlc0



「く……小町たちは!?」

セルベリアは衣服ボロボロだが、経験と肉体改造の成果によるものか彼女自身は軽傷。ドリスは無傷である。
刃の嵐が過ぎ去った後、彼女がドリスの影から顔を出すと、小町たちが屋上から姿を消していることに気づく。
セルベリアはすぐさま、ビッグサイトに備え付けられた通信機を使ってディーに通信を飛ばす。

「ディー、侵入者が現れた。侵入したのは乳神、例のステルス集団も一緒だ」
『屋上にもか?』
「屋上『にも』?」
『君が乳神が戦っている間にネオ・ジオングアーマーが保管されている格納庫にもステルス集団が現れ、切歌たちが交戦している』
「奴らの狙いはネオ・ジオングアーマーか? ということは小町は囮?」
『もしくはそれを含めたすべて……我々にとっても欠かせぬものが含まれるかもしれんな……』
「……黄泉レ〇プマシン!」

おそらく小町たちはクラウザーさんの蘇生手段を破壊しにきた。
更に都庁への報復手段を絶つためにネオ・ジオングアーマーの破壊にも来たのだろう。
マシンは当然のことながら超兵器だけでもやられれば、狂信者の敗北は確定である。

『クッ、ビッグサイト内部の監視カメラが現在進行形でやられている、格納庫の戦況も気になるが乳神がマシンを破壊する可能性がある。
 申し訳ないがセルベリア、位置を教えるから君が今すぐ彼女をSATUGAIしてくれないか?』
「ああ、そのつもりだ……」
『では、君のためにモブ狂信者の救援を送ろう』
「やめておけ、奴らの実力は切歌クラスのネームド狂信者でないと太刀打ちできない、犠牲が増えるだけだ。
 私なら無駄な損害も出さずに奴を殺せる! 他の狂信者にはビッグサイトの封鎖を徹底させて小町の討伐は私にやらせてくれ!」
『ならば私がそちらの援護に』
「ビッグサイトの狭い通路じゃウィツァルネミテアにもなれないだろ!
仮に貴様が捕まってしまったら装置を停止させられる……そうなれば一貫の終わりだ」
『しかし……』
「いいか、小町のレ〇プは私一人でやる!貴様は指令室を引きこもって身を守るんだ」

セルベリアがディーの救援を渋ったのは、小町を一人で討ちたいから……という私闘のためではない。
ディーが例の裏切り者……カオスロワちゃんねる管理人である可能性が濃厚だからだ。
疑心により背後から撃たれる不安があるためである。

『……君がそういうのならやり遂げたまえ、監視カメラが壊された順番からして北側にいるようだ』
「了解だ」

セルベリアは小町が隠れているらしい北側に向けて全速で駆けていった。




一方その頃、小町はあかりを抱えつつ、監視カメラを銭投げで壊しながらビッグサイトの中を飛んでいた。
ビッグサイトの中に入っていったのは態勢を立て直すためだ。

「考えたね、小町ちゃん。
 ビッグサイトの中ならマシンもあるし、大火力の攻撃は狂信者もできなくなる!」
「いや……条件はこっちも一緒だ。
 さっきやった八重霧の渡しを無暗に使ったら壁を貫通してマシンに直撃、そんで関東がお陀仏になるかもしれねえ。
 どこか、大技を使っても大丈夫そうな場所はないか?」

セルベリアや狂信者は間違いなく追ってくるため、どこかで最適な迎撃ポイントを探さねばならない。
監視カメラ破壊は居場所がバレてしまうが、小町はそれも計算済みであり、自分たちがどんな罠を張るかにさえ気づかなければ十分である。
むしろビッグサイトに潜り込んだことをアピールしないとセルベリアが格納庫の側に向かって日之影たちが危険に晒されてしまう。
格納庫へ向かって日之影たちを合流したところで無数の狂信者に一点集中攻撃を受けてマシン停止&超兵器破壊どころではなくなってしまう。

「それにしても、セルベリアが竜殺剣を持っていたとは……」

小町が気になるのはやはりヴァルキュリアが竜殺剣を手に入れていた事実。
邪竜をもいとも簡単に倒していたため、戦法さえどうにかすれば神々を殺すことも可能だろう。
ただ悪魔だと仮定した場合、最前線に出て身を危険に晒し、そもそも参加者として殺し合いに参加する必要性には疑問が残るが……
少なくとも悪魔本人でなくとも、関連性があるのは確かだろう。
捕まえて聞き出す必要もあるし、件の悪魔だったら殺すことになるかもしれない。

「まさか奴が世界を滅茶苦茶にした悪魔、もしくは手先なのか?」
「……あかりはそうは思わないな」
「なに? どうしてそう思うのさ?」

あかりの言葉に小町は首を傾げる。


「だってさ、あそこまで必死にクラウザーさんに尽くしている狂信者なのに、クラウザーさんも危険に晒す大災害や殺し合いを起こすと思う?」

570死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:22:08 ID:eTGa3rlc0


あかりの理論はクラウザーの信者ならば、彼の安全を第一に考えるから世界を滅茶苦茶にしないというものだ。

「だったら、狂信者というのがそもそもの演技だとしたら?」
「それもありうるかもしれないけど、狂うほど大好きだったのに、演技なんてできるものなの?
 少なくともセルベリアの『大好き』は『本当』にあかりには見えたの」

あかりは小町よりは一歩退いた場所からセルベリアとの戦いを見ていたため、小町よりも冷静に彼女のクラウザーへの熱愛ぶりが見えたのだ。

「狂信者はモモちゃんやまどかちゃんと違って許されないことをいくつもしてるし、狂信者になる前からしょうもない悪党だった人もいるかもしれない。
 でもね、クラウザーさんへの愛だけは共通してると思うの。
 自分が死んじゃっても良いから、大好きなあの人を助けたい……あの愛は本物だと思う」
「確かに……」

狂信者とは散々戦ってきた影薄組だからこそ、クラウザー愛に狂った集団であるのには納得がいく。
セルベリアもその中の一人だ。

「……ひょっとして悪魔が生きて裏から殺し合いを操ってるとしたら、狂信者こそ利用されているのかも。
 セルベリアはそいつから剣を渡されて、いざという時の囮に使われているのかも。
「替え玉……なるほど、そういう可能性もあるっちゃあるわけか」

黒幕の悪魔が生きていて、セルベリアの狂信を利用して悪魔に改造し、竜殺剣を渡すことでスケープゴートに仕立て上げられた可能性もある。
いざ狂信者が潰れても、セルベリアを黒幕と誤解して討った対主催が偽りの勝利に浸っている間にトンズラかまされる危険もあるわけだ。

「だがあくまで推論だ。
 竜殺剣の出どころを聞くにしろ、マシンを止めるにしろ、大前提として捕まえなきゃいけない」
「それもそうだね」
「今のセルベリアは地下で戦った時よりも格段に強い。
 ドラゴンハートで強化されベジータを倒して大幅にレベルアップしたアタイと同じかそれ以上に。
 むしろ首輪も外れてヴァルキュリア化に制限がなくなった分や距離を操る程度の能力が効かない分、アタイの方がたぶん不利だろう」
「何か逆転の秘策はないかな……どんな手を使ってでも彼女を止めないと」

見ていない内に相当な強敵となったセルベリアを倒すのは至難。
しかも捕まえなくてはならないということは殺すよりもずっと難しい。
手立てを探して小町とあかりは探索する。

「ねえ! あれ使えるんじゃない?」
「おお、あれならセルベリアを捕まえられるかもしれん。
 ついでにセルベリアが本当に狂信者か悪魔かを確かめられるな」

少し遠くからセルベリアの気配も感じ、時間もあまり残されていない中。
二人はとある一室を発見すると、ニヤリと悪そうに笑った後に入っていった。



数分後、セルベリアも痕跡を追う形でその部屋に入ろうとする。
部屋の中は電気を消しているためか薄暗く、小さく狭い。
戦略的には大きな価値はない資材置場だったハズだ。
それを思い出した直後、部屋を覗き込んだセルベリアに向けて紫のエネルギー刃が放たれる。

「――八重霧の渡し、とやらか!」

しかし、セルベリアはこれを冷静にドリスで防御する。
攻撃が止んだ後に槍ビームで応戦を考えたが、小町の後ろ側にはマシンがある配置であり、万が一ビームの威力が壁を何枚も貫通しようなら大爆発である。
一方、マシンの特性を相手が知ったか知らずかわからないが、小町の方は方角的に飛び道具を使い放題である。
一見小町の方が有利に見えるが、そうではない。

(ここに逃げ込むとは……墓穴を掘ったな、小野塚小町!)

資材置場は一方通行になっているほど狭く、小町の機動力を生かせない。
入り口はセルベリアが塞いでいるので、能力を使った脱出も不能。
トドメに影薄であるあかりの存在も心眼で見えているため、小町の後ろで奇襲の機会を伺っているのがバレバレである。

「クソッ、来るな来るな!」
「もうだめだぁ、おしまいだぁ」
「私のレ〇プを受けろ小野塚小町」

小町はやけくそ気味にエネルギー刃を飛ばすが、ドリスの防御力の前では効果は薄い。
ならば飛び道具が使えないセルベリアが取る戦法は一つ、ドリスを盾にヴァルキュリアの槍によるランスチャージで小町を討つ!
単純だが、「貫通」「後の先」の力で間合いに入りさえすれば逃げられない小町を確実に死に至らしめられるだろう。
狭い部屋に逃げ込んだのはまたとないチャンスなのだ。

571死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:22:51 ID:eTGa3rlc0

そしてセルベリアはヴァルキュリアの力を最大限に引き出す。
ヴァルキュリア人のみが出せるラグナイトの青白い輝きが、電灯を落とした暗い部屋を明るく染めた。
そして全力のランスチャージを放つ。

「きゃん!」
「小町ちゃ……」

エネルギー刃はドリスに全て塞がれ、セルベリアは小町に肉薄。
小町は剣で槍を防ぐが、衝撃に腕が耐えきれず剣を取り落としてしまう。
背後であかりの動きが見えたが、心眼で見えているセルベリアには脅威ではない。
次に小町ごとドリスによる一撃で諸共ミンチにするつもりだったのだから。
能力で剣を拾うのも間に合わないだろう。

「これで終わりだ!」
「いや、まだだよ、撃てあかり!」
「うん!」

セルベリアがドリスを片手で振りかぶった瞬間、あかりは突如自分の髪についている左側のお団子ヘアー素手ではがしたと思いきや、投擲した。

「お団子ミサイル!!」

なんとあかりのお団子ヘアーは爆弾(ドラゴンハートの影響…か?)になっていたではないか。
だがセルベリアならばその程度の攻撃は避けられる……ハズだった。

セルベリアは回避行動を取らなかった。
いや、正確には取る必要がなかった。

なぜなら、お団子ミサイルが発射されたのはセルベリアにではなく、彼女の上、天井にあるダクト部分。
そこには小町が持ってるハズの光剣サイファーが隠されていた。

(なに!? なぜあの赤い剣があそこに!? ハッ)

今しがた小町から弾いた剣をよく見ると、床に転がってるのはサイファーではなく、あかりが持っていたエンシェントソード。
そして天井に隠されていたサイファーは小町の距離を操る程度の能力で数瞬後にセルベリアを斬るだろう。
セルベリアの回避は間に合わない。
ここは一方通行になるほど資材が敷き詰められた狭い部屋。
小町と同じようにセルベリアが避けるにはスペースが不十分なのだ。

(やられた……!
 あの恐ろしい切れ味の赤い剣を小町が持ったままと思い込み、剣を落とさせただけで油断した。
 部屋を暗くしたのも影が薄い奴の武器と持ち替えたのを悟らせないためか!)
(あんたの目は影が薄い存在は見抜けるようだが、意志も何も持ってない罠や道具には効かない。
 そして防御は竜殺剣に頼ってるところからして、攻撃に関してはアタイの距離を操る程度の能力を無効化できても、防御に関してはできないようだな!)
(あかりのことを見てくれているのは超嬉しいけど、見えてるからこそ利用させてもらったよ!)

読みあい合戦の結果、小町はサイファーでセルベリアを斬ることが可能になった。
しかし、それはあくまで攻撃の話。
セルベリアには勝利のために自分の命すら捨てる覚悟があった。

(もう躱すのは間に合わないか。
 だったら、相討ちになっても構わない!
 自分の命と引き換えに小町に引導を渡す!!)

セルベリアが身を守る術を捨てれば小町たちを殺す可能性がまだ残されていた。
そして、ヴァルキュリアは渾身の一撃を叩き込もうとし。

「なに!? ぐはあああ!!!」




結果としてドリスは小町たちの頭ではなく、資材置場の床に落ちた。
セルベリアの右腕にはサイファーが刺さり、さらに蹴りでヴァルキュリアの槍も落とさせた。
小町は距離を操る程度の能力でサイファーをすぐに引き抜くと自分の手元に戻し、更に床に落ちたドリスや槍を没収し、サイファーと共にそれをセルベリアの喉元に近づける。
背後にはあかりが拾ったエンシェントソードで狙っており、ここでセルベリアが何か抵抗すれば二人により袋叩きにされるだろう。

「アタイの勝ちだな」
「勝ちだと……よくもまあ、そんな卑怯な真似を使って言えるものだな!!」

勝ち誇り笑顔のである小町に丸腰になったセルベリアは怒号を浴びせる。
それもそのはずだ。
小町たちの直接的な勝利に繋がったのはサイファーを隠した隠蔽作戦によるものではない。



小町は豊満な胸の谷間に、一枚のCD……DMCのファーストアルバムを挟んでいた。

572死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:25:53 ID:eTGa3rlc0



「それは、デトロイト・メタル・シティ トリビュートアルバム〜生贄メタルMIX〜!
 クラウザーさんの名曲を詰め込んだ聖典を信望者である私が斬れるわけないだろう!!」
「CD如きにそんなに怒らんでも……」
「CD如き! それは魂がつぎ込まれたクラウザーさんのアルバムだ!
 盾にされたら攻撃などできん!」

小町とあかりはビッグサイトを逃げ回る中で、資材置場と同時にこのCDを発見。
本物の狂信者じゃなきゃ攻撃できないんじゃないか?と思って小町のデカすぎる胸に挟み込んでみたのだ。
半ば期待していなかったが、ラグナイトの光で見えてしまったセルベリアはこれに気づき、踏み絵を前にした某宗教徒と同じでドリスを振り下ろせなかったのだ。
爆乳脇見せおばさんにとっては屈辱極まりない敗北である。

「クッ、殺せ。どうせなら煮るなり焼くなりレイプするなり好きにしろ。
 だが貴様らの思い通りにはならんぞ!」
「あたいとしてもそうしたいところだがね、……ええと強姦以外は。
 あんたら狂信者はあまりにも人を殺しすぎた。
 大好きな奴が死んだだの、殺し合いの恐怖に負けただのは言い訳にもなりゃしない。
 少なくとも誰かの大切な人を一人でも殺した奴は全員地獄に墜ちりゃいいんだ」
「……ッ!」

けらけら笑っていた小町だが、今度はベジータを殺した時に見せた冷徹な表情に変わる。
まとう冷たく黒いオーラはまさに死神のソレであり、一瞬仲間のあかりでさえ圧倒された。

「狂信者は全員地獄に墜ちるべきか……否定はしない。
 だが地獄に落ちてもまだ、クラウザーさんが生き返るなら満足だろう」
「なに?」
「私や他の多くの狂信者が、大災害発生時かそれより前に生きる希望を失っていたものだ。
 貴様らは殺し合いが終わったら帰れる故郷や温かく迎える家族がいるだろうが狂信者にはそれがない。
 切歌は家族は失い、天子は帰るべき天界を失い、狭間はイジメに苦しんでいた。
 かくいう私も大災害で故郷も滅び、敬愛する方も行方不明。
 日本がどうなろうが殺しあいがどうなろうが関係ない抜け殻だ……死んでも生きてても待ってるのは虚無だけ。
 そこを救ってくれたのがクラウザーさんの歌だったのだ。
 ところが、今度は殺し合いの中でクラウザーさんが奪われた
 また絶望を味わった多くのファンが彼を生き返らせるための狂信者と化した」

セルベリアの言葉に、あかりは怒りで眉をひそめながら言葉を浴びせる。
このままセルベリアを刺し殺さんと思わせるかのような怒気をはらんで。

「自分たちが可哀想だから、周囲の連中を巻き込むの?
 クラウザーさんを希望を満たすためだけの道具にしてるじゃない!
 そんな自分勝手が到底許されるわけがないでしょ!!」
「そんなのはわかってるんだ、クラウザーさんの名誉に我々が泥を塗ってることも!
 だが狂信者は皆、心が弱く、彼の歌がないと生きていけないんだ。
 彼を彼の歌を真に愛してるからこそどうしても生き返したいのだ。
 世間に蔑まれても、クラウザーさんに死ねを言われても構わない。
 我々の生き甲斐にして死ぬ意義を作ってくれるクラウザーさん蘇生だけは阻止させない!」

セルベリアはやがて泣きはらしながらも、信念を曲げなかった。
これに対して小町やあかりも少し落ち着いた様子で彼女に言葉をかける。

「……もはやヤンデレの域だね」
「大した信望ぶりだが、その狂信を誰かさんに利用されてるかもしれないのによ」

573死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:26:28 ID:eTGa3rlc0


「なに? 利用だと?」
「ん?」
「貴様らも何か知ってるのか?
 殺し合いの目的、カオスロワちゃんねるの裏や、救済の予言、テラカオスについて」
「「!!?」」

セルベリアの言葉に、小町とあかりは眼を見合わせる。

「小町ちゃん、このセルベリアさんは筋金入りの狂信者……つまりシロ。
 世界を滅茶苦茶にした悪魔でも、その手先でもないと思うよ」
「てめーにゃ色々聞きたいことがあんだけどさ、まずはこの竜殺剣の出どころを教えな」
「おまえたちも私や切歌のように、殺し合いの裏を調査してたのか!?」
「ああ、ひょっとしたら手前に剣を渡した奴を狂信者をぶっ潰す前に斬っておかないといけないかもしれねえ」

まさか三人の女たちは敵同士でありながら、独自に殺し合いを調査していたことを知らなかった。
セルベリアは少し考えた後に提案をする。

「情報交換に応じるが、いくつかの条件がある。
 一つ、武器を返せ。
 二つ、黒幕を殺すまでは休戦協定だ。
    終わるまでお互いを攻撃しないし、クラウザーさんの蘇生手段だけは手を出すな。
 三つ、黒幕を殺したら休戦協定は解除。再び敵同士だ。
    小町! あのずるくて勝ち方だけは絶対認めん、私との決闘をやり直せ!」
「なんか、随分おまえさんに有利な条件じゃないか?」
「飲まないなら別にいいぞ。私も情報を吐かず、狂信者仲間も呼び寄せる。
 私も死ぬかもしれんが、おまえたちも黒幕を取り逃がして酷い目にあうだろうな」

小町はしばし考えた後、あかりに視線を向ける。
あかりも敵であり、潰す予定だった狂信者と手を組みことには悩んだが、最終的には小町の判断を信じるとうなづいた。

「わかった要求を飲もう。もっと取り返しのつかない何かが起こる前の、必要な情報交換と一時休戦だ」






しばらく時間が経ち、23時過ぎ。
ディーは指令室の椅子に座りながら格納庫とセルベリアの戦況が気になっていた。
両方とも監視カメラが細工等で破壊されているため、どうなっているかがわからないのだ。
わかるのは黄泉レ〇プマシンが無事であることだけである。

「セルベリアはああ言っていたが、やはり私も前線に出るべきだろうか……」

ビッグサイトの廊下は無理だが、格納庫の方はウィツァアルネミネア化しても暴れられるスペースがある。
超兵器のアーマーを今、失うのはまずい。
かといってセルベリアがやられればマシンを守る存在が誰もいなくなる。
そうなれば詰みだ。

「アーマーかセルベリア、どちらかがやられれば、いよいよ自決でも考えるか」

上層部が全滅すればマシンは自動的に自爆して、関東を焼き払う爆弾と化す。
最後に残った上層部の人間が死ねば、ほぼ全ての参加者を巻き込んで日本を粛正の炎に巻き込める。
ディーにとってはクラウザーさんが生き返らないことは、世界を滅ぼした方が良いと同義であった。
そう考えていた時に備え付けの通信機ごしにセルベリアからの通信が入った。

『ディー、なんとか小町を仕留めたぞ』
「それは本当か、セルベリア!」
『ああ、真っ二つにSATUGAIした』

画面には赤毛の少女らしい死体の顔が見えた。
本当に真っ二つにされたようで断面はぐちゃぐちゃであり、生気を失った瞳には絶望の色が覗く。

574死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:27:18 ID:eTGa3rlc0

「セルベリア、君自身は大丈夫か?」
『腕に怪我はしたが、軽傷だ。
 このまま格納庫で切歌たちの援護に向かう』
「わかった、私はこのまま侵入者を逃がさぬようビッグサイトの封鎖を続ける。
 必要なら増援もありったけ送る、今後の戦いに欠かせないアーマーとサーフ博士たちを守ってくれ」
『お心遣いは嬉しいが私一人で十分だ』
「そうか、だが無理はしてくれるなよ」

セルベリアの勝利報告に安堵した様子でディーは通信を切った。


なお、通信を行った廊下では。

「よし、これで当座は稼げるだろう」
「魔理沙……悪いね、成仏しなよ」

通信で見せた死体は小町のものではなく、ディパックに眠っていた魔理沙の死体だ。
彼女の亡骸を資材置場の塗料で赤く塗って誤魔化したのだ。
放送が流れれば小町の生存が気づかれてしまうも、一時間程度稼げれば、黒幕討伐の時間には十分であろう。


「しっかし、天魔王軍の件で臭いとは思ってたけど本当にカオスロワちゃんねるが黒幕が殺し合いを操っていたツールになってたなんて」
「必要以上に悪者扱いされてた魔物や聖帝軍のみんなも、黒幕の情報に踊らされてたんだね!」

小町たちは都庁を出発した時間の都合上、カオスロワちゃんねるが危険であることまでは知らなかった。
元々信頼できる情報が少ないと思っていた程度には認識していたが、セルベリアの口から本当に危険な掲示板であったことに驚く。
そして一方のセルベリアも世界に大災害を招いた悪魔が竜殺剣を持っていたなど知らない情報もあったため、黒幕の正体にたどり着くことができた。

「黒幕の名前はサーフ・シェフィールドって奴か」
「なんか聞き覚えがある……モモちゃんも使ってる雀力を発見した科学者だったかな?」
「サーフは私に悪魔の力を植え付け、世界に一つだけだったハズの竜殺剣を渡した。
 サイドバッシャーが言っていたニルヴァーナ出身の科学者であることも合致する。
 おまけにオシリスの肉体から艦むすを作ってもいた……クロ確定だ、少なくとも黒幕の手先程度は確実にある」

討つべき敵を見定めた、三人はサーフがいる格納庫へと足を進める。

「ところでセルベリア。ディーって奴や、他の狂信者には通信でこのことを伝えないのかい?」
「いや、狂信者の中にサーフと結託した仲間が隠れている可能性もある。
 狂信者でも信頼できるのは切歌とレジーナぐらいだ、今はおまえたちの仲間と交戦していて通信どころではあるまい」

サーフの正体はわかったが、サボテンみたいな悪魔と謎の少女の行方は不明。
他にも仲間がいる危険をセルベリアは考慮し、今は仲間内にも秘匿するのだ。

575死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:27:55 ID:eTGa3rlc0

「幸い、格納庫には奴の研究室もある。そこから仲間を炙り出せる手がかりがあるかもしれない。
 上手くいけばサーフの悪行を狂信者や世間に知らしめて奴を追い詰めることもできる」
「一つ質問だが、あたいらはあんたらが邪竜を殺した兵器を破壊しようとしてんだが……もし格納庫につく前に壊されても文句を言うなよ?」
「あれを改造したのもサーフだ、奴に有利に働くように兵器自体が細工されてるかもしれん。
 だったら壊してくれても良い……まあ、壊せればだがな」
「言っとくけど黒子もモモも日之影もめっちゃ強いぞ。舐めてもらっちゃ困るね」
「忘れない内に私からも言っておくが、私たちは本来敵同士……下賤な黒幕を殺したら次は貴様たちと殺し合いだ」
「ま、まあまあ、今はまだダメだよ」

あくまで黒幕を殺すまでの同盟。
それが終われば敵同士として再び殺しあわなければならない。
互いにサイファーとドリスを向けあう程度には、まだお互いを許してはいないし、許す気もないのだ。
緩衝材としてあかりがいないと、再び二人は戦いを始めるだろう。


「というかさっさと乳からクラウザーさんのアルバムを出せ、不届き者!」
「ええ? だっていちおう休戦協定だし、おまえさんには武器を返したんだから保険としてこれくらい良いだろ?
 きゃんッ、こら! 勝手に揉むんじゃない!」

小町は未だに生贄メタルMIXのCDを谷間に挟んだままだった。

「私も一度やりたかったが、畏れ多くてできなかったんだぞ!」
「……泣いて言うほどかい」
「このおばさん、けっこう天然な人なんじゃ……」


そんなこんなで、一時的にだが対主催と狂信者の、有り得ないハズの同盟が生まれた。



【二日目・23時15分/東京都 ビッグサイト内部】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、右腕負傷、人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2(髪を赤く塗った)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いて粛正する
  そのため一時的に影薄組と同盟を組む
1:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない  
2:最悪の場合はディー達を……?
  もしディーがサーフの仲間なら躊躇なく殺す
3:ゼロという男に対しての疑念
4:黒幕を討伐したら休戦を解除し、小町たちと戦う
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました。さらにポテンシャル『貫通攻撃』と重ねて防御力そのものも無効化できます
※スキル『心眼』も装備、不意打ちやステルス攻撃が効きません
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※小町たちとの情報共有により、殺し合いの目的や救済の予言の意味、黒幕の正体全てを知りました


【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】サイファー@ストライダー飛竜、乳の谷間に生贄メタルMIX
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いて裁く
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
  が、今はセルベリアとの休戦協定により後回し
2:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
※予言やテラカオスの真実、カオスロワちゃんねると黒幕の正体を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています

576死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:28:27 ID:eTGa3rlc0


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    頭のお団子左側消失
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ヘルメット消失)
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いてやっつける!
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせたいけど
  今はセルベリアと休戦だから後回し
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
4:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
5:日之影さんたち大丈夫かな…?
※予言やテラカオスの真実、カオスロワちゃんねると黒幕の正体を知りました
※ドラゴンハートの影響(?)でお団子ミサイルが使用可能になりましたが、残弾はあと一発だけです



【ディー@うたわれるもの】
【状態】魂のダメージ(中/回復不可)、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:セルベリアや切歌を信じ、指令室に残る
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:ネオ・ジオングスーツが完成次第、サイコシェードで会場から非信者を一掃する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
4:自分が死んだ場合はセルベリアにまとめ役を引き継がせる
5:ドリスコルたちが死に都庁攻略が失敗した情報が来たが、セルベリアたちの士気をくじかないために今は秘密
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます
※サイコシェードを使うたびに願いを叶える力の代償として魂がダメージを受けてしまいます、これは回復できません
※ネオ・ジオングスーツがサーフにとって都合が良い人物は死なないように細工されていることは気づいてません

577 ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:28:54 ID:eTGa3rlc0
投下終了です

578 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/04(土) 18:19:36 ID:QMxyXi8Y0
投下乙です
予断を許さないけど、爆乳ズが一時的でも同盟組んだのは熱い

そして内心被ってなくてほっとしたけど、
自分も狂信者格納庫組+日之影、モモ、黒子で予約します

579 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:24:22 ID:gjWG0zdY0
予約していたビッグサイト格納庫メンバーで投下します

580 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:25:00 ID:gjWG0zdY0
ネオ・ジオングの眠る格納庫……
そこで行われていた攻防戦は、影の薄い少女の叫びにより待ったがかけられた。

「どういう、こと……?」

まずはレジーナ。
彼女はマナの件もあり、完全に戦闘状態を解除していた。

「何を言ってるんや嬢ちゃん? 悪いが殺害――」
「ま、待って欲しいデス松ちゃん!? 今の話は……」

松本は我関せずに攻撃を再開しようとするが、それを切歌が止める。
彼女もレジーナを同じく、既に戦闘状態を解いていた。
それは失ってしまったサイドバッシャーが遺した話と関係があったからこそだ。

「……」

そしてそんな二人の裏で、深海棲艦達も動きを止めていた。
彼女達の攻撃が無ければ、影薄達の完全な位置は補足できない。

「……しゃあない、ちょっとだけやで?」

こうなってしまえば、渋々ではあるが松本も戦闘を止めざるを得ない。
殺害は容易いが、あくまで自分はまだ狂信者のフリをしなくてはならないのだ。
彼女達が攻撃を止めたのであれば、自分もそれに従わなければ後々面倒になる。

「……少しは、話を聞いてくれるみたいっすね」
「お、おい大丈夫なのか?」
「ごめんなさい。でも、どうしてもこれは伝えなきゃならないことっすから」

そしてモモも戦闘状態を解いた。
敵地の中心で、本来なら自殺行為だ。
日之影も心配するが、モモは構わずに狂信者達へ対話を試みる。

きっと今この場に、都庁に残った仲間達がいれば猛反発を受けたことだろう。
みんな自分を守るために、庇いながら狂信者を倒そうとしてくれたかもしれない。
それでも。それでも彼女は、対話を試みたかったのだ。

「この大災害、クラウザーさんを間接的に殺したも同然の存在は――」
「ま、待って! それも気になるけど、マナを……マナを殺したのが狂信者っていうのは本当なの?」
「本当っすよ。……そっちの大きい人、さっき松ちゃんて呼ばれていましたけど、もしかしてダウンタウンの?」
「そ、そうや。あの松ちゃんやで?」

いざ裏の悪について語られると思っていたが、先にレジーナの大切な人の話が先か。
そう思っていた矢先にまさか自分が呼ばれるとは思っていなかった松本は、思わず正直に答えてしまう。

「……あなたの相方の浜ちゃんさんも、少し関係してくるかもしれません」
「な、なんやて!?」
「少し、長くなるかもしれないっす。それでも、どうか聞いてください。
 私達が、みんなが戦ってきたこれまでを……」

決意の表情で口を開くモモに、狂信者の誰もが耳を貸した。


(くそ、そんな下らない話なんてどうでもいいんだよ! 何処だ、何処から僕の情報が漏れた!?)


ただ一人、物陰でサーフのみが焦らされているのみ。
当然誰も気がつかずに、ステルスモモの独壇場が始まる。

581 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:26:42 ID:gjWG0zdY0
「……思えば全ての始まりは、クラウザーさんのゲリラライブ会場だったのかもしれません」
「どういうことデス?」
「クラウザーさんのライブは、何よりも昂ぶって嫌な気分を吹き飛ばせるっす。
 だから、一人の男性が道中で保護した女の子と、その場で疲れている様子だった女の子の二人を招待した。
 その男性が……浜ちゃんさんでした」
「なっ……!?」
「浜ちゃんさんがライブに招待した女の子二人は、鹿目まどかさんと桃園ラブさんだったっす。
 そして……いつまでも続くかに思われたクラウザーさんのライブは、予期せぬ形で終わりを迎えることになった」

一息をついてから、モモは口を開く。

「ライブハウスが、怪物に襲われた。この時に……クラウザーさんや多くのファンは命を落としてしまいました。
 そんな中で浜田さんはその身を挺して、まどかさんを守り抜いたそうっす……」
「浜田……」

相方の死の真実に、松本は小さく声を震わせる。
まさか相方が隠れクラウザーさんファンだったのにも驚きだが、その最期はさらに驚きだった。
なんの因果だろう。まさかクラウザーさんと同時に命を落としていただなんて。
それも女の子を庇って死んでしまうだなんて。

「この時、ラブさんは運よく別室で仲間のプリキュア、美希さんにマナさんとの合流を喜んで無事だったそうです。
 そして浜ちゃんさんに守られ、唯一生き延びたまどかさんに、怪物はトドメを刺そうとして……
 そんなところを、プリキュアと魔法少女の皆さんが駆けつけて、クラウザーさんを殺した奴に天罰を与えたっす」
「よくやったデスよマナさん達! ……もう少し早くついていれば、浜ちゃんも助けられたかもと思うと、悔しいデスが」
「ええんや。浜田が、自分で選んだんやからな……」

切歌の寂しそうな声に、松本は首を振る。
勿論相方が死んだのは悲しい。もう少し早く駆けつけていればと思ったのは、自分も同じだ。
だがそれでも……浜田の死に様に、何も感じなかったわけがない。
子供を庇って命を落としたということは、逆に言えば子供を盾にすれば浜田は最初の一撃を凌げた可能性が高い。
そして駆けつけたプリキュア達に助けられ、今も元気にしていたかもしれない。
浜田は、自分の命よりも見ず知らずの少女の命を選んだ。
相方の自分と生きて合流するよりも、だ。
それが悔しくもあり、そして誇らしくもあった。
丸くなった、優しくなった……色々言われていたが、確かに浜田は誰かを想って行動できる男だったのだから。


「こうしてまどかさんは、お友達の魔法少女とマナさん達プリキュアに助けて貰えたわけですけど……
 今度はここに、巨大な氷の竜……都庁の魔物がまどかさんを狙って襲撃をかけてくる。
 竜は圧倒的な強さで、誰も敵わずにまどかさんは為す術なく連れ去られるっす」
「おいくそドラゴン、浜田が守った子に何してんねん!?」
「マナ達がいても勝てないだなんて……というか、そのまどかって子狙われすぎじゃない?」

気がつけば、松本もレジーナもモモの語る話につっこみを入れる程度には緊張感を解いていた。
直前までSATUGAIをしようとしていたなど、誰に分かるだろうか?

(この流れだと、もしかしなくても……)

そんな中で、切歌だけは嫌な汗を流していた。
クラウザーさんのライブ会場に集まった面子、そして都庁の竜の襲撃。
これはその場にいた誰かから聞かなければ、この影の薄い少女には絶対に分かりえない情報だ。
それを知っていると言うことは、つまり生き延びた誰かと交流があるということ。
それはつまり……

582 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:27:40 ID:gjWG0zdY0
「彼女達は急いで竜の後を追おうとしました。そしてそんな時……私達は出会ったんすよ。
 たまたま傍にいたオオナズチとも協力することになって、空から竜の帰還場所である都庁を目指したっす。
 そう……マナさん達プリキュアとほむほむさん達魔法少女、彼女達と私達は一緒に動いていたんです」
「マナ……」
「あまり、その先を聞きたくないデス……」
「? どうしてや?」

浜田が守った一人の少女。
そこから生まれた、プリキュアと魔法少女と影薄の縁。
嘘をついている様には、誰にも見えなかった。
モモも恐らく、それを見越して丁寧にこれまでを語っているのだろう。

「そしてついに都庁に辿りついた時。番人には、麒麟さんがいたっす。
 それを……んっ、なんとか退けた後に、怒った本物の番人さんが現れて、私達全員があっという間にのされたっす。
 至近距離からの不意打ち斬鉄剣も効かなくて、正直あそこで死んだと思ったくらいっすよ」
「硬い都庁の番人、こっちでも警戒すべきSATUGAI対象になっていた男の人デスね?」
「そ、そいつ!? そいつがマナを殺したの!?」
「お、落ち着いて欲しいっすレジーナさん」

どうどうとレジーナに待ったをかける。
彼女はじりじりと迫る大切な人の死の真相に、気が気ではなかったのだ。

(やっぱり、この人達はまだ……完全には狂いきれていないんすね)

そんな様子を見て、モモはやはり対話を試みて正解だったと思う。
レジーナは、こんなにもマナを気にかけている。
切歌も武器をおさめ、先程の言葉からしてもうマナがどうして亡くなってしまったかも察しているようだ。
松本は少し怪しいが、相方の死の真相を聞かされた時に漏れた声は、本当に悲しみの混じったものだった。
みんな、誰かを想う気持ちがまだ残っている。
本当にクラウザーさんを想うなら……或いは。

改めて決意を固めて、モモはゆっくりと口を開く。


「……番人さんは、加減をしてくれていました。だから、この時には誰も死んでいないっすよ」
「え? どうして、向かってくる敵には都庁の連中は容赦しないって……」
「ある人にお願いされていたからっすよ。そのある人が……まどかさんっす」
「え? え? だってその子は攫われて、でも都庁の番人はその子のお願いを聞いた……?」
「まどかさんは、グンマ―の血を色濃く継いだ人だったんす。だから、都庁の竜は攫って、安全な世界樹に匿おうとしてたんです」
「!!」

その場の誰もが衝撃を受ける。
都庁の竜は、少女を攫いこそすれ危害を加える気は無く、それどころか保護対象としていた。
そうなると、彼女を奪還しようとしていたプリキュア達とは――少なからず、利害が一致している。

「勿論、私達の誰もが驚いたっす。でもやっぱりあの頃は、お互い完全に信用しきるということも皆さんできなくて……
 とりあえず、時間も時間だったすから。仮眠室で一度休もうということになったんす。
 そして……っ、みんなでこれからどうしようかと考えている矢先に、二つの事件が起きました」
「……っ」
「……当然、知っているっすよね? 狂信者の中には、魔物もいたって。
 潜伏していた狂信者、ラージャンとデスマンティスが、寝込みを襲ってきて……
 ――警護していた都庁の魔物を殺した後、マナさんと美希さんをっ、下半身だけの姿にして殺したんすよ……!!!」


「そん……な……」

583 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:28:28 ID:gjWG0zdY0
ついに告げられたマナの最期を聞いてしまい、レジーナは膝から崩れ落ちる。
切歌はそんな彼女をそっと支えるが、その表情は酷く沈んでいた。
無理もないだろう。こんな世界でも友と呼べる存在と出会えたというのに。
そんな彼女の大切な人を奪ったのは他ならぬ自分達狂信者だったのだから。

切歌もレジーナも、予想だにしていなかった。
聖帝軍が逃げ込んだという現在ならばともかく、この段階から都庁内にそれほどの人間が集まっていただなんて、わかるわけがない。
狂信者にとって都庁は、大量の生贄が内包された極上のクラウザーさんへの供物にすぎなかったのだから。


「マナを、狂信者が殺した……マナを、狂信者が……」


震える声でレジーナは同じ言葉を何度も呟く。
その姿は狂信者では無く、ただただ大切な人の死を嘆く一人の少女でしかなかった。
松本を含めた誰もが、口を噤み黙ってしまう。

「……」

だがやがて、ゆっくりとレジーナは立ち上がる。
涙をボロボロと零し、その全身を震わせながら。


「……狂信者は、許せないっ……!」


ギリッと歯を食いしばる少女。そこには明確に、狂信者への敵意があった。


「でも……それでも、それでも……
 クラウザーさんが、それに切歌が、私を救ってくれたのも確かなの……っ!」


同時に、クラウザーさんや切歌への想いも。
確かに狂信者はマナを殺した。だがそれにより空虚になったレジーナを立ち直らせたのも、クラウザーさんと切歌だ。
相反する感情を抱きながら、レジーナは葛藤する。
もはや狂信者に手は貸したくない。でもクラウザーさんには生き返って欲しい。
どうすればいいのか、わからない。


「……私も、狂信者達は許せないっすよ。マナさん達だけじゃない、他に沢山の人を殺している。
 みんなの大切な人を……それぞれのクラウザーさんのような人を、殺し続けているんすから」
「……」


トーンを落としたモモの声に、レジーナも切歌も松本も、誰も反論ができない。
できるわけがない。クラウザーさんの為に、己の命を含むあらゆるものを犠牲にしているのだから。


「……でも、それは私達も同じことっすけどね」
「え?」
「私達だって、沢山の狂信者……あなた達にとっての大切な人を、殺しているっす。
 クラウザーさんさえ亡くならなければ、こんな殺し合いさえ無ければ、もしかしたら語り合うこともあったかもしれない人達を……」

揺らぎ、表情も霞んで見えにくくなるステルス少女。
しかし狂信者達は、彼女が静かに泣いていることを察せられた。

584 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:29:43 ID:gjWG0zdY0
どうして対話を持ち出したのか、当の本人もわかっていないだろう。
ただ、クラウザーさんのファンの一人として……
切歌達から、クラウザーさんに対する『本当の』想いを感じ取れたからなのかもしれない。


「……レジーナさん」
「な、なに?」
「あなたはマナさんを狂信者に殺された。だけど、横の切歌さんと松ちゃんさんを殺そうとはしていないっす。
 それだけ……クラウザーさんと、二人も大切なんすよね?」
「……うん」
「……やっぱり、話してみようと思って正解だったっすね。
 クラウザーさんを真に思うなら――どうか、私達に手を貸して欲しいっす!」
「!?」

まさかの言葉に、誰もが絶句する。
今、この影の薄い少女は何を口走った?

「……勿論、私も……都庁には、もっと狂信者への殺意が募っている人も大勢いるっす。
 こんな提案をしたなんて後でわかったら、私も一緒にとっちめられるかもしれないっすね」
「と、当然デスよ!?」
「それでも……目前まで迫っている危機を防ぐには、少しでも多くの協力が必要なんです。
 信じられないかもしれないっすけど……次の大災害は、もうそこまで迫っているっす。
 それに、このままではクラウザーさんの身も危ないんすよ……!」
「なっ!?」

そして続け様の爆弾に再度絶句。
根っからクラウザーさんの復活を望む切歌達にとっては、無視できない発言だ。

「クラウザーさんが危ないって……どういうことデス!? 答えやがれデスよ!?」
「……これも、順を追ってちゃんと話すっすよ。
 さっき言った二つの事件……実は、狂信者に襲われる前に別の人からも襲撃を受けていました。
 それが――風鳴翼という女性っす」
「……ふん、そいつのことはよーく知ってるデスよ……」

ここに来て、自分のよく知る名を聞いた切歌は露骨に渋った表情をする。
食人鬼に成り果て、心底失望した女性の名を今になってまた聞くとは。

「私達も、殺されかけました。門番さんが庇ってくれなければ、絶対に食われてたっす。
 とてつもなく恐ろしい食人鬼……でも、そんな彼女も犠牲者だったんすよ」
「ど、どういうことデス?」
「……この殺し合いの目的は、テラカオスを生み出すこと。その為に、日本中にテラカオス化の為のナノマシンが撒かれて……
 風鳴翼さんは、運悪くそのテラカオス候補に選ばれてしまったんすよ」
「!!!」


――テラカオス

ついに出たその言葉。
知りたかった真実が、聞けるのかも知れない。
相も変わらず物陰に潜むサーフを含め、誰もがステルスモモの言葉に耳を傾ける。

585 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:30:54 ID:gjWG0zdY0
「私達は彼女に襲われた後、都庁の中で色々考えていました。
 大元は、私達と一緒に行動していた騎士様が遺した言葉だけだったっすけど……
 色々な理由から、都庁にはどんどんと人が集まって、みんなが断片的にこの殺し合いの情報の断片を持っていたっす。
 そして……聖帝さん達の協力もあって、救済の予言の正体にも辿りつけたんす。
 そんな時でした。まるで自力で予言を解いたみんなを確かめるように、竜の神様が降臨したんすよ」
「りゅ、竜の神様デスか?」
「はい。残念なことに私は直接は会えなかったっすけど――第二真竜・ノーデンスという名前だったそうっす」






(っの……やってくれたな、クソ真竜があああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)



その名前を聞いた瞬間、サーフは心中で激しく叫んだ。
タバサの情報により、サーフは真竜に関する知識も得ていた。
第一真竜・アイオト
第二真竜・ノーデンス
第三真竜・ニアラ
第四真竜・ヒュプノス
第五真竜・フォーマルハウト
第六真竜・ヘイズ
別称グレイトフルセブンスと呼ばれはするが、6体しかいない、馬鹿しかいないと散々な言われようであったのは記憶に新しい。
現に第三はひげのおっさんに殺され、第五は野球チーム所属した後に爆散した。タバサの言葉も、間違ってはいないだろう。
しかし彼女は同時に警告もしていた。第一と第二だけは、他とは次元が違うと。
竜殺剣が無ければ勝つことは絶対に不可能とまで言われた。
だからこそ、多額の研究費と時間を費やして、ついに現代に竜殺剣ドリスを復元したのだ。
なお材料は、オリハルコンに唯一竜殺剣が無くても抹殺可能で専用曲もついぞ貰えなかった哀れな第六真竜だったりする。

そしてタバサの言葉通り、竜殺剣の威力は凄まじかった。
あの計画実行の日、真っ先に現れたのは第一真竜・アイオトだ。
彼は厳かに、計画を止めるようサーフに冷静に言い放った。
そんなアイオトを、ドリスは一撃で狩り殺してみせたのだ。
実に他愛ない。上位神、真竜といえどこの程度かと、サーフはアイオトを嘲った。


『忠告を無視し、私を滅ぼす。それがお前の選択か……
 それも道の一つだ。しかしそれが正しいかは誰にもわからない。正しき道など、元からありはせぬのだから。
 私は既に役目を終えた者。影より、お前とノーデンスの子らがどう動くか、見定めるとしよう……』


だというのに、アイオトは一切その態度を崩さず、余裕さえ感じさせた。
腹が立ち、そのままなます切りにして完全に消し去ってやった頃には、戯言と聞き流していたが……
まさか、片割れのババアが生き延びていたとは。
あの時、ノーデンスは現れなかった。それでいて何故、感づかれたか。

(枯れた老害の分際でやってくれる……! あいつ、自分を囮に僕に竜殺剣を使わせたっていうのか!?)

サーフはすぐに答えに行きついた。
アイオトはサーフの前に姿を現すことで、竜殺剣を使わざるを得ない状況を生み出したのだ。
現役引退したとはいえ真竜。通常手段ではまともな傷も与えられず、もたつけば武道や他の神々に囲まれる。
確実最短の抹殺の為に持ち出した竜殺剣。まさかそれが、遠方の同族に黒幕の情報を伝える鍵とされるとは。

(あの時、唯一討ち損じたミザールを念の為に大和を利用して始末したっていうのに……!)


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板