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変身ロワイアルその6
842
:
80 YEARS AFTER(4)
◆gry038wOvE
:2018/02/20(火) 02:44:23 ID:gooP8PFs0
――ここは、希望ヶ花市植物園だ。
半民営化した植物園で、花咲薫子を理事とする。これが、花咲つぼみの祖母の名前らしく、おれからすればもうずいぶんと古めかしい名前だった。
……と、おれが言ってしまうのも何だが。
「……」
「……」
そこを取り巻く空気は、最悪だった。
謎は解決したが当初行く予定だったのだからせめて最後に花華と立ち寄ってやるか、とここに来てみたは良いのだが、何しろおれには見たいものもない。気分転換のつもりだった。彼女にとってはかなり落ち着く場所らしく、大好きな植物に囲まれる場所でもある。
おれにとっては、園内が静かなのは実に良かった。良いのはそれだけだ。草なんてどれも同じに違いない。
……あのあと花華が泣きだしたのは言うまでもないが、この空気の中で再び泣き出そうとしている。
おれは、流石にその涙ばかりは受け止めるしかなかった。彼女が確実に涙するのを予期したうえでの言葉だった。不思議と、それまでほどの居心地の悪さはなかった。おれもすっかりこの少女の涙に関しては慣れてしまったのかもしれない。
しかし、やはり……対処には、困る。
「……なあ、花華。きみの曾祖母は幸せだったと思うか?」
おれはそれでも、ふと訊いてしまった。
オルゴール箱の所在よりも、おれにとってはそちらの方が大きな疑問であり、心残りにさえなっているのだ。
この依頼の結論を踏まえると、なお納得はできないのだった。
「……え?」
「彼女は――変な力を得て、他人の為に戦って、報われないどころかその力に目を付けられて殺し合いに参加させられて、友人をたくさん失って、挙句に帰ってからもそこでの友人の響良牙の為に研究していた。世の中に認められたは良いが、その響良牙を救うといういちばんの目的は……願いは、果たせなかった事になる」
彼女の方を見つめるが、花華の感情は図れなかった。
どういう感情が返ってきたところで、おれは、覚悟はできている。過度に彼女に干渉するつもりはないし、この話が終わった以上は、最後にどういう心情を抱かれて終わっても構わない。
しかし、謎が残って終わってしまうのは許しがたい。
おれは遂に、花咲つぼみ本人に会う事もなかったのだから。
「勿論、殴られるのを承知で言っているが――それを悪いがおれには良い人生には見えなかった。きみは、あの日記を見てどう思った?」
ここにいる桜井花華が――彼女がプリキュアとしてどう戦っているのかは知らない。
しかし、それが戦うという事だ。あらゆる覚悟と、報われない事への諦めが必要なのかもしれない。
そして、奇跡的に花咲つぼみという人間は、八十年前それが出来ていた。
それでも、それが出来ていたところで幸せとは云えない。
彼女は人間なのだ。規律や人々の生命を守り、おれたちの身を無償で守ってくれる素敵なロボットではない。
その性格は、べつに嫌いじゃない。変だとも思わない。しかし、いつもそういう人間が報われない世の中だ。世の中は、常に間違いを正せないまま回る。そういう風に回り続ける。世界は、変わりはしない。
そんな世界に生きていて、彼女は幸せなのか。
ただ、そこで返ってくる返答次第で、おれは非常に後味の悪い気持ちで花咲家との関わりを絶つ事になるのだろうと思った。
「……それは」
花華が何某かの感情を載せて口を開いた、その時だった。
事件が更に続く事になり――――『死神の花』の事件へと進展する事になるのは。
結果的に、この問いかけの答えは、直後の出来事によって保留されたのだ。
◆
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