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変身ロワイアルその6

84180 YEARS AFTER(4) ◆gry038wOvE:2018/02/20(火) 02:44:00 ID:gooP8PFs0

「彼女は、左翔太郎が死んだ事で、何よりその『信頼』を重く背負いながら生きる事になってしまったのだろう。彼が信じた未来を実現させなければならなかった……それから先、『涼邑零』が、『孤門一輝』が、『蒼乃美希』が、『佐倉杏子』が、『高町ヴィヴィオ』が…………彼女の中で背負われていったんだ。そして、彼女だけが残り、いまも病床で後悔としてそれを告げた……それは、今生、果たせない約束への謝罪として……きっと、胸が張り裂けそうな想いで…………」

 花咲つぼみが既に九十四歳。何度となく医療の恩恵にすがりながらも、遂にその生命は果てようという段階にきている。
 それに対し、響良牙はもう、生きていればの話だが、九十六歳。――何もない場所で、何もない世界で、生きているとは思えない。

 もっと言えば、だ。
 彼女が見つけ出そうとした世界――それさえも消滅していると言い切れない。殺し合いの為にベリアルが用意したステージであるのなら、そこはその役目を終えるとともに消えているだろうし、彼女たちが「送還」されたのもそんな意味があるように思えてならなかった。

 頭の良い彼女は、とうにその結論にだって辿り着いていたはずだ。
 しかし、信頼という呪いにかけられ、研究をやめる事もできず、一人で……ただ一人で……彼らが信じる自分を信じながら、彼女は生きた。孤独になっても、彼女は未来を信じ続け……そして、未来を生きる若い曾孫に言葉を託した。





 彼女の生きる未来なら――オルゴールは、見つかるかもしれない、と。





 ……残念ながら、おれが有給休暇を使ってたどり着いた結末は、この通りだ。
 はじめに察した通りだ。解決はできなかった。
 それは、確かにおれにとっても――とても後味の悪い結末だった。







 ……ここで話が終わるわけではない。
 ここで終えたいならば、読むのをやめてしまっても構わないが、まだ触れていない『死神の花』という事件について気になるならば、これより先の物語に入ってもらいたいし、おれもすっかり忘れていた前提を告げよう。

 そう、おれはこの時点で、あまりにも未熟だった。
 人生というのは、本当に何が起こるのかわからないゲームだという事――そんな立派な前提がある。だからこそ、「結論」というのは変わってしまう場合がある。

 何しろ、終わり、結末、というのはどの段階を以ての話とも言えない。死んだり、世界が滅びたりしても、生き返れば、世界が元に戻れば、ついにそれはバッドエンドではなくなってしまう。継続した「その後」が問題なのだ。
 例えば、敗北していたはずの試合が、相手の不正が発覚して勝利となるとか。
 例えば、有罪が確定した判決が、再審によって何年越しに無罪だと明かされるとか。
 そういう話も聞かないものではないし、つまり、「結末」「結論」というのは、その時点でそう思っているだけに過ぎない事でもあると云えるのだ。
 それが、おれたちの生きている世界のルールだ。

 ……いや、こう言ってしまえば誤解を招くかもしれない。
 これは、悪い方にも話が行くと云える。上のふたつの例だって、見つからなかったはずの不正が発覚して敗北になった奴にとってはバッドエンドだし、犯人が逮捕されていたと思って安堵していた被害者(あるいは遺族の場合もある)にとっては事件が迷宮入りなのだ。

 八十年前に、終わった筈の事がひっくり返される事だってある。
 あの時の事がハッピーエンドなのかどうか、それをどう認識しているかはわからないが――ハッピーエンドだと思っていたとしても、あの後、左翔太郎は不幸な事故に遭ったし、おれは花咲つぼみが一概に幸せになれたと云えない状況だったと感じている。
 だから、話を見届けるにはいつも……覚悟が必要だ。






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