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変身ロワイアルその6

83180 YEARS AFTER(3) ◆gry038wOvE:2018/02/16(金) 18:25:10 ID:wTASm/Rk0

 だから、おれは、答えられない依頼は受けたくないのだった。依頼人たちが希望を受けてしまうのは、おれを信頼しているからに違いない。悪戯な信頼を受けても、それに応える事ができないのなら、受けないに越した事はない。
 今回の場合、私的手伝い、と言い換えて金を受け取らないとしても、おれは桜井花華という少女から信頼されつつあるのが少々嫌ではあった。
 おれならば見つけてくれるのでは、と思われているかもしれない。だが、残念ながらその信頼には答えられない事がわかりつつあった。
 そう、この時――結論まで悟ってしまっていたのだから、なおさらだ。

「信頼は、祝福と呪いの両方を兼ね持っている。信頼される事で人とつながり、心は満たされるが、その代わりにそれを果たさなければならない呪いがかけられ、死ぬまで心を縛る。きみくらいの年頃だ、いくらでも心当たりがある事だろう」
「……」
「勿論悪い事ではないし、それがもし、信頼に応えられるのなら、あるいは応えられなくとも許されて報われるのなら良かったんだが――今回の場合は、ちょっと、な」

 そういうと、彼女はおれの方を向いた。
 驚いているようだった。今回の話の結末を既に読んで、それを踏まえておれが信頼を論じた事を、彼女はすぐに悟ったのだった。

「何かわかったんですか?」

 おれは、答えもせず、ただ花咲つぼみの日記を見やった。
 花咲つぼみの日記には、佐倉杏子がメッセージを送った同日、こんな記述がされてあった。



『2017年8月7日
 以前の依頼の件で、杏子から調査報告書が届きました。あの件について杏子から聞いた推理は、思いがけないものでしたが、報告書の杏子の言葉は励みになりました。
 私は、二人の探偵さんの言葉を信じます。だから、自分を信じて進む事にします。
 それより、杏子も仕事がすっかり板について、以前とは見違えるほどしっかりしたカッコいい探偵さんになっていました。
 美希だって今はモデル業と並行してデザインの勉強に必死です。
 ヴィヴィオはいま、大きな大会を目指して特訓中。
 孤門さんもすっかり威厳のある隊長さんで、それと同時に良いパパみたいです。
 零さんについては詳しく書けませんけど、相変わらず凄い活躍しているようです。今はどこにいるんでしょう。
 みんな良いところはそのまま、それでも立派に変わりました。
 ……でも、私も皆さんに負けられません!
 だって、お二人が私に託したように、私が未来、必ず果たさなければならない事があるんだから!』



 おれの中で、もう謎は謎ではなくなっていった。







 ――そう、彼らだけがわかる共通言語があった。誰かがそれを、他人が読めるような言葉として書き記す事はなかったのだった。
 特に、彼女の日記の中にある――「探偵の言葉を信じ、だから自分を信じて進む」なんていう一行だって、彼らの共通言語の中でしか意味を成しえない。
 だが、因果関係の不明慮なこの文が、彼女たちには強い説得力を伴っているのだ。その行間を見なければ、事実は見えない。

 彼らが何を思っていたのか。
 この意味を解きたいものは――彼らの共通言語から推理しなければならないのだった。
 そして、それは、この時のおれにはある程度推測が立てられていた。


キーワードは次の通りだ。
・響良牙
・左翔太郎と佐倉杏子のメッセージ
・8月15日の日記
・8月7日の日記
・左翔太郎の事故死
・『信頼』


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