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変身ロワイアルその6
830
:
80 YEARS AFTER(3)
◆gry038wOvE
:2018/02/16(金) 18:24:43 ID:wTASm/Rk0
左翔太郎の死、という記述より後は、彼女は思い出に耽るようにして殺し合いに巻き込まれた時の事を回想している。そこでまた、響良牙に関する記述は頻出し、この頃にはすっかりノスタルジックにその話を思い出すようになっていた。
おれにとって、それが幸せな事なのかはやはりわからなかった。
再び花咲家に戻ったおれと花華は、二人で調査報告書を探したのち、日記の先まですべて確認していた。調査報告書の方は、すぐに見つかった。
とにかく、まずは、順を追って振り返ろう。
「――調査報告書は、鳴海探偵事務所に未解決ファイルとして保管されているものと同一の内容だ。ただ、二点を除く」
おれは、こう花華に告げた。
結論から言えば、この事件の調査報告書は、思わぬ収穫だった。
内容は事務所で目の当たりにしたデータとまったく同じながら、そこには日記に書かれていた通りの「但し、未来、君が必ず果たせる」という左翔太郎の肉筆が残されていた。何度か見た彼の肉筆だが、それが強い意味の言葉に感じられたのは初めてだった。
大概は、おれからすればどうでもいい格言やメモ書きだったのだが、その一言には妙に強い感慨が込められていたのである。
――但し、未来、君が必ず果たせる。 左翔太郎より
そして、その下にもう一つある。
佐倉杏子が再調査した際に刻まれた言葉だ。
――この件の調査は、本日再び終了する。
――しかし、私も待っている。花咲つぼみの友達として。
――2017.8.7 佐倉杏子
そんな遠い昔の日付の記録とともに、この依頼は『終了』していた。
妙な納得感を筆に乗せていた佐倉探偵の言葉とともに、探偵たちは自分たちの職務を放棄していったのである。それは敗北や妥協というには、あまりにも小気味の良い言葉であった。
おれは未解決ファイルにこの事件を見た時、この意図のわからない『終了』に、不気味な、そしてネガティヴな意味合いを感じ取っていたが、むしろ事実はその反対なのである。
「この記述は、いずれも花咲つぼみへの個人的なメッセージだ。それも、探偵としてでなく、左翔太郎として、佐倉杏子として書かれたもので――事務所に保管すべき資料には、残っていない」
「こんな言葉を残してたんですね……一体、どういう意味なんでしょう?」
「――つまり、このメッセージは、彼女への『信頼』の意味だよ。彼女こそが最もそれを見つけるに値する人物だと、彼らは結論づけた。そして、佐倉探偵がそれを告げた時に、彼女はそれに納得したんだ」
「……」
何しろ、おれに言わせてもらえば、これは明らかに報告書ではない。――友人二名から宛てられた私信であり、三人だけが理解した暗号かポエムだ。
いまだ鳴海探偵事務所に残されていたあの報告書も同様だ。当人たちしかわからない意味合いが乗っかっている。その時点で――先代やおれがまともに引き継げない時点で、あれはプロの報告書ではないのだ。
しかし、彼らは「プロ」としてでなく、青い感情を伴ったまま、「友人」としてあれをファイルに綴じた。
あの戒めと無念の羅列が綴じ込められたファイルの中で、この一つの報告書だけは、きっと彼らにとっても――読み返す事で、花咲つぼみと繋がれる感傷的な手紙としてしまい込まれていたのである。
「それなら、素敵ですね」
「――いや。信頼というのは、その信頼に応えられなかった時が残酷なんだ」
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