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変身ロワイアルその6
826
:
80 YEARS AFTER(3)
◆gry038wOvE
:2018/02/16(金) 18:20:34 ID:wTASm/Rk0
彼女は面倒になるほど生真面目だ。おそらくそこが曾祖母との決定的な違いだろう。
控えめなタイプに見えたが、その反面で芯があるというか、むしろ、厄介なほどに自分の在り方を曲げない。それとも、世間の情操教育に忠実すぎるのか。
そのうえ、花咲つぼみが運動神経に自信を持たなかったのに対し、彼女はそれと対極的に「家族に心配されない」ほど、男でさえ撃退する自信があるほど、強い。
いずれにせよ、おれに言わせてもらえば、ハードボイルドに近い存在だ。
いや――そうだな、ハードボイルドと云っては失礼かもしれないので、ここは「委員長タイプ」とでも呼ぶのがいいか。
おれは委員長少女に言った。
「――それよりか、聞いてくれよ、花華。きみの曾祖母の日記が見つかったんだ」
「えっ!?」
彼女は、大きく口を開けて驚いていた。
おれが手に持っている日記に目をやり、横に重ねられたおれの日記と、ものが雪崩れ落ちた形跡のある床を軽く見やった。何があったのかは察してくれたらしい。
そんな彼女がおれの顔を向いた時、おれはしゃべり始めた。
「時期もちょうど、プリキュアになった頃のもの、殺し合いに巻き込まれた頃のもの、あとは以後数年のものだ。手がかりがあるとすれば、この辺りで間違いないだろうと思う」
「ああ、良かったです。私ももっと早く見つけて読みたかったのですが……」
「……花華。これだけの事を一人で勝手に見てしまって、済まないな」
「――それは、別に構いませんし、その為に来てくれたのだから全部読んだって全然良いんですけど」
「いや、きみが先に読んでくれた方が良かったのかもしれないな。もし機会があるのなら、きみもぜひ詳しく読んでみてほしい。曾祖母が、どんな風に生きたのかがわかってくるよ」
「えっ」
「……勿論、おれの方は、あまり詳しくきみの家族のプライベートは詮索しないつもりだがね。少なくともきみには、彼女の心境も含め、これを熟読できる資格があるだろう」
こうは云うが、おれはむしろ、彼女はしっかりと読むべきだろう、それは資格というより義務なのだろうと思っていた。
彼女が自分の行きたい道を――プリキュアとして活動する道を選んだうえで、花咲つぼみというひとがそれを阻もうとしたのなら、そのひとが花華を止めた理由をきっちり見つめておかなければならない。
それが、間違いなくこの日記には書いてあった。
生きるうえで不必要なまでの苦難、暴力的なまでの精神的負担、ともすれば自分で命を絶ちかねないほどの絶対の孤独やトラウマ、帰ってきた場所に友のいない寂しさと後悔。あらゆる物が襲ってきたであろう事は、言うまでもない。
それを次代に継がせようとする者がいるだろうか。
「……」
おれにもまた、かつて探偵という道を選ぶにあたっては、周囲からの反対も無数にあったし、それを振り切って、探偵になる覚悟を決めて、一人になった。
それ以来、両親や家族とは、普通の家庭からすると驚かれるほどに、すっかり会ってもいないし、他の手段で近況を話す事さえない。家族も同じ風都という箱庭に住んでいるのだが、すっかり疎遠になっており、お互いの情報も交わされないまま、冷戦が続いているような状態だ。
べつにそんな関係になった事には未練はないのだが、一つだけ言っておくと、おれはかつて、探偵の道を阻まれた時に家族の心情と向き合う覚悟だけは、全くした覚えがなかった。
家族は、おれがおれの意思で決めた生き方を阻もうとするノイズとして、まったく無視していたのだ。――それを思えば、こうして機会が訪れた彼女は、おれとは違う選択肢を持てる状況だと云える。
ただ、それを促すのも年寄り臭いし、おれは説教好きな年寄りは昔からきらいだった。どうあれ、どうするのが正解とも一概には言えないので、おれはただ彼女に「資格がある」と云うだけだった。
「……わかりました。後でちゃんと持ち帰って目を通します。興味も、ありますから。――それより、肝心の内容ですが、左翔太郎さんに依頼を行った際の事とかは書いてありますか?」
「いや、悪いが、そこはまだ読めていないんだ。しかし、逆算すると、間もなくというところに来ている。彼女はその時点で、どう受け止めたのか――それは気にしておきたいところだな」
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