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変身ロワイアルその6
825
:
80 YEARS AFTER(3)
◆gry038wOvE
:2018/02/16(金) 18:18:28 ID:wTASm/Rk0
それこそ、この世界での友人以外では、生還してコンタクトを取っているはずの左翔太郎や佐倉杏子よりも、その名前が頻出しているようにさえ思えた。蒼乃美希や高町ヴィヴィオはメールで度々話す調子のようなので、そのメールデータが残っていないと比較はできないが、彼女を動かしている強い影響力の一つなのだろう。
無理もなかった。
殺し合いのさなかで行動を共にし、あらゆる場面で双方助け合った名コンビと謳われた響良牙と花咲つぼみ。あらゆる場面で花咲つぼみは響良牙に助けられ、響良牙は花咲つぼみに助けられていた。
あるいは、ふたりの間には――良牙に恋人がいた事から考えるに花咲つぼみが一方的に、想いを寄せていたとも邪推できた。実際にはわからない。探偵特有の下卑た考えなのかもしれない。
だが、どうあれ――この日記の八十年後という時間を生きるおれは、彼女が信じ続けている明日が来ないのを知っている。
何故、彼女は「響良牙が生きている」と仮定しているのかさえ、おれにはわからない。論理的に動いたうえでの事なのか、感情的に動いての事なのかさえわからないが、端から見れば明らかに後者を疑う状況だった。
いずれにせよ、それはラスボスを倒せるほどの純粋な想いだった。しかし、彼女がその想いをどれだけ叶えようとしても、彼女にとってのゴールはなかった。
彼女の生きた八十年――その過程で名誉ある賞を受けたとしても、その原動力となった響良牙への何かしらの想いが叶う事が決してないというのなら、それはあまりに残酷な結末であると思える。
……いや、それを除いても、だ。既に彼女を取り巻く環境は、見る限り成功者の幸福と呼べるものには見えなかった。
彼女に付きまとったプリキュア、生還者、ノーベル賞受賞者といった肩書は――こういう生き方を選ばされた事が、はたして彼女の人生にとって歓迎される事象だったのか、おれは当人でないからわからなかった。
しかし、どうしても靄がかかる。
本当に、それは「青春」なのか。
いまベッドの中で病魔と闘う彼女が振り返る人生は、まさしく茨の道――不幸の連続でしかないのではないか。
おれには、あの殺し合いは、彼女の中でいまも続いているように思えた。
彼女の周囲が――確実に、変わってしまった事実。これを見て、おれは、あの殺し合いがない彼女の人生というのを考え、友と笑い合って成長する一人の少女を浮かべた。
そこにある苦難や戦いの数と、殺し合いから生き残って、その先を生きる少女に強いられたそれの数とは、秤にかけるまでもないだろうと思えた。そして、その世界の彼女の方がよっぽど、幸せに生きているような予感があった。そこに名誉の賞はないかもしれないが。
世界は、殺し合いに参加させられた彼女の人生は、あの時定められた運命から変わっていない。
――もし、彼女が殺し合いに巻き込まれなかったとするなら、その方が、ずっと幸せだっただろうと、おれは確信できてしまった。
「――改めて、おはようございます。探偵さん」
ふと、おれは、背後からかかった声に不覚を取られた。
それは、咄嗟にそちらを振り向いた。花咲つぼみの事を考えていたおれは、何だか花咲つぼみの亡霊にでも呼びかけられた気分でいたのだが、そこにいたのは、すっかりパーフェクトな自分を作り出した桜井花華であった。
用件は、単なる朝の挨拶だった。
今日は、頭に花飾りをして、白いワンピースを着ていた。はっきり言って、こんなところよりも森のなかが似合いそうな恰好だった。
おれは、その恰好が全くもって、この埃だらけのゴミ部屋で探し物する恰好ではないのに呆れつつも、再度挨拶を交わした。
「ああ。ほんとうに改める必要があるのなら、おはよう」
「それは――挨拶は、相手の目を向いてするものですから」
「悪かったな。おれとしては、『レディの寝起きの顔を見ないように』という配慮のつもりだったんだが。……いや、すまない。こちらも探し物に気を取られていたんだ」
「いえ、私を待ってくれているのも、何となく察してはいました。……ですから、それを責めてるわけじゃなく――とにかく、個人的にはそれではすまなかったので、もう一度正式な挨拶という事で」
「ああ、わかった、わかった」
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