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変身ロワイアルその6

756変身─ファイナルミッション─(8) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 22:10:23 ID:GU7jrFVA0

「──……なあ、つぼみ。最後に、俺の手に、つぼみの力を分けてくれ」

 花咲つぼみ。
 これまで、長い間、響良牙とともに行動してきたプリキュアの少女。
 あらゆる戦いを共に乗り越え、共に泣いた──ここに来てから良牙が出会った中で、最も親しかった相手だ。
 今、良牙には彼女の力が必要だった。
 ムースに技を受けた時から、花咲つぼみという少女が持ち続けている感情が必要になると思っていたのだ。
 そして、それは、今や確信だったのである。

「私、ですか……?」
「きみの力が必要なんだ……。
 奴を最後に倒すのは──いや、救うのは、つぼみ……きみの力なんだ!!」

 普段の良牙は、こう言い直したりはしなかった。
 いつも、敵を倒す事ばかりを考えていた──それは、格闘家として戦い続けた男であるが故、仕方のない事かもしれない。
 だが、今、彼は、あの強敵を「救う」と言ったのだ。──つぼみと同じに。

「……」

 つぼみは、悩むというより、少し戸惑うように、良牙の目を見つめた。
 その瞳を見ていると、どこかつぼみも切ない気持ちになるが、それでも逸らす事は無かった。

 そして──つぼみは決意する。
 何が、良牙の力になるのかは、つぼみにはわからなかったが、それでも良い。
 良牙の力になれるのなら。

「どういう事かはわからないけど……わかりました」
「ありがとう、つぼみ」

 礼を言うと、良牙はつぼみの手を握ったまま、少しの間目を瞑った。
 その間、つぼみは何も考えなかった。
 ただ、二人の時間が止まり──良牙とつぼみの、これまでの戦いと日常の軌跡が、次々と頭の中に浮かんでくるだけだった。

(──)

 五代雄介の死地で墓を見舞った事。
 一条薫とつぼみと良牙の三人で行動していた間の事。
 仮面ライダーエターナルと戦い、二人のライダーの最後を見届けた時の事。
 冴島鋼牙という男の事。
 ダークプリキュアが仲間になった時の事。
 美樹さやかを救いに行こうとした時の事。
 天道あかねと戦う事になり、そしてその死を見送った時の事。

 共に戦い、共に笑い、共に泣き、成長した。

 大事な友達をなくしていく悲しみに耐えられたのは──お互いに支え合う事が出来たからに違いない。
 長い時間が過ぎ去ったような実感があった……しかし。

「ガイアセイバーズぅ……!!」

 空から、声が聞こえ、その時間は終わりを告げた。
 ウルトラマンベリアルが、次の一撃を放とうとしているのだ。──あの手が振り下ろされれば、巨大な闇が彼らを包み込むと同時に、ベリアルも、ガイアセイバーズも、誰も彼もが最後を迎える事になるだろう。

「あっ……」

 良牙の手は、戦いの為に、つぼみの手を離れた。
 その手が離れた時、不思議と、良牙とはもう会えないような……そんな気持ちがした。
 手に残ったぬくもりが冷めていく前に、良牙が叫んだ。

「──よし……見てろ、ベリアル!!」

 良牙の高らかな叫びと共に、つぼみは今の時間に引き戻される。
 この時に、こんな悪い予感がしているのは──おそらくつぼみだけだっただろう。
 誰もが良牙を信じている。
 つぼみも、良牙を信じている。──だが。



「もう上ッ面だけの変身なんざ必要ねえ……!! 俺は、このまま戦う……!!」


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