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変身ロワイアルその6

730変身─ファイナルミッション─(7) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 21:36:31 ID:GU7jrFVA0

 ……気づけば、ゼロの銀色の掌の上に、小さなシフォンが乗っている。ゼロと同化しているはずの美希が、その事にまったく気づかなかったのだ。シフォンと再会できた喜びに我を忘れていた証であるとも言えた。
 ゼロは、優しくその掌を包み、再び空に向けて飛び上がった。水の抵抗を強く受けながらも、空に向けて抜け出そうと這い上がっていく。その手の中では、シフォンは、突然地上に出る水圧を一切受けなかった。

「ふぅ!」

 空へと戻る。
 まるでプールで遊びきった子供のように、ゼロは空の上でそう言うが、真下は凄惨たる有様だ。──当然である。
 空の上まで高く聳えていた塔が殆ど根元から崩れたのだ。それは、先端や大気圏外の物はほとんど根元の崩壊を知って、それそのものが壊死するように自壊して消えていったようだが、空気に晒されている物は残骸として落ち、FUKOは液体として荒波を立てている。

「……で、美希。どうすんだ、これ」
「私に訊かないでよ!!」

 このままでは、この星そのものが崩壊だというレベルだ。
 後先考えない破壊行為が、やはり後先になって響くのは当然であった。
 殺し合いが行われた星とはいえ、しかし、ここにはまだ戦っている仲間がいるのである。このまま崩壊させてしまうわけにはいかない。

「みき!」
「ん? シフォン、何?」
「きゅあー」

 さて、そんな時、困り果てて空の上に立ちすくむゼロたちに向けて、救いの声が上がった。
 ゼロと美希の様子を察したシフォンが、自らの能力を使ったのだ。

「きゅあきゅあぷりっぷー!!」

 すると、ゼロの前で、ウルトラマンでさえ持ちえない神秘の力が発動した。──美希にとってみれば、これもそう珍しい物ではない。
 だが、ゼロにとっては、それはかなり新鮮な光景である。
 ──シフォンの超能力により、なんと、そのFUKOの洪水は、一斉に空へと飛び上がっていったのだ。それは重力を一切無視して宇宙に向けて放たれ、まるで自ら意思を持つようにして、水のない荒野の星に向けて旅立って行く。
 そうして、この地球に残った支配の残骸たちが、こうして一瞬にして片づいてしまったのである。
 周囲をシフォンのバリアに包まれたゼロは、自らの手の届く場所全体で、FUKOが空へと逆流していく光景を見ることになった。

「マジかよ……こいつ、何でもありじゃねえか!」

 流石のゼロでさえも唖然とする。
 ……だが、考えてみればそれは、人知を超える超能力を持つ「怪獣」たちにも似ているのだ。地球にもかつて、こうした怪獣の赤ん坊や子供が何体か確認されており、宇宙にはウルトラマンでさえ持ちえない超能力を使う怪獣が数えきれないほど生息している。
 そして、これまでゼロたちの宇宙で知られていなかったとはいえ、シフォンもまた「怪獣」に分類する事が出来る生物の一体なのではないかと、ゼロは少し思った。
 勿論、それは、心優しい怪獣たちの一人としてだが──。

「──……まあいっか。一件落着だ、そしたら、さっさと行くぞ、美希!」
「ええ!!」
「ぷいぷー!!」

 自分たちの仕事が一区切りついたとはいえ、これで終わりではない。
 そう、まだ諸悪の根源カイザーベリアルと、美希の仲間との戦いは続いているのだ。
 ゼロは再び、空へと旅立つのだった。



【シフォン@フレッシュプリキュア! 救出】







 ドン──!!

 これは、塔が崩れ堕ちる音ではなかった。──星一つを挟んだ反対側で行われている、巨人と巨人の戦いが齎した音である。


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