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変身ロワイアルその6
729
:
変身─ファイナルミッション─(7)
◆gry038wOvE
:2015/12/31(木) 21:34:01 ID:GU7jrFVA0
まさしく、その通りに──ゼロは、ウルティメイトゼロソードを凪いだ。光が物体をすり抜けるように、ウルティメイトゼロソードは塔を抉り取る。
塔の切断面は、まるで自らが切断した事実に気づかなかったように止まった。崩れるより先に液体が零れ、それからまたそれに引きつけられるようにしてゆっくりと塔が傾いた。
上と下に、真っ二つに分かれた塔は、更に、二度、三度と×印を描くようにウルティメイトソードの刃を受ける事になる。
「もういっちょっ!!」
そして、切断面で、怪獣の爆発のように何かが爆ぜたかと思うと、次の瞬間には、真横に雪崩れ込むようにして欠片が落ちた。
何もなかった荒野を洪水が包んでいく。
宇宙の果てまで届いていたはずの巨大な塔は、そのまま、この星の半分に影──即ち、夜を作り上げる。
『何故だ……この私が──』
膨大なFUKOの海の中に没しながら、コアはまだ自らの一瞬での敗北を信じられないように言った。
しかし、ゼロのあまりの破天荒で派手なやり方に、コアはむしろ諦観したように、一瞬の夜を見上げるばかりだった。
半身が波に飲まれ、顔だけが水の上に浮わついていたコアの目の前で、ゼロが滞空する。
「──聞いとけ、なんとかコア。悲しみや、絶望如きが俺たちの希望に勝とうなんざ、二万年早えぜ!!」
「って言っても、二万年後に挑んでも無駄だけどね!」
ゼロは、次の瞬間、青い光となって、その波の向こうにいるはずのシフォンを探して、飛び込んだ。コアの視界からは、一瞬で消えてしまった。
コアは、そんな彼らの言葉を耳にしながら、最早何の感慨も抱く事なく、FUKOの渦に沈んでいく。彼らの返答が、コアにとって敗北の理由として納得のいくものであったのかはわからない。
ただ、ゆっくりとコアはもはや希望に敗退し、消えゆく定めでしかなかった。
希望の弱点が絶望であり、絶望の弱点もまた希望であるという矛盾した事実に苛まれながら……。
「そうだ! そんな事より……」
その真横で、ゼロたちはより早く、深くへと荒波の向こうへと進んでいた。
「──シフォン!!」
塔の底部のシステムと融合しているシフォンが波に流される事はなかった。
システムの崩壊によって、インフィニティメモリとしての機能が失われたシフォンは、正気を取り戻し、円らな瞳で、ウルトラマンゼロの巨体を真っ直ぐ見つめる。
彼女は自らの持つ特異な能力で身体の周囲にだけ結界を張り、まるで空に浮くシャボン玉に包まれるようにして身を守っていた。
ゼロが邪心のある存在でない事や、ゼロの中にある美希の姿もまた、シフォンはその能力で感じ取ったようである。
「ぷいきゃー!!」
まだ拙い赤子の言葉で、シフォンはそう感嘆する。
彼女がどの程度事情を理解しているかはわからないが、ひとまずゼロは黙って彼女に向かって頷いた。それは、どこか神秘的なノアにも少し近く、ゼロ生来の若さと裏腹な落ち着きさえ感じさせた事だろう。
一方、ゼロの中の美希が、シフォンに向けて、クールな普段とはこれまた裏腹な喜びと安心を叫び出した。本来なら我が子のように抱きしめたいところであったが、事実、ゼロと同化状態にある美希にはそれが出来ない。
「シフォン!!」
「みきー♪」
「良かった……!!」
しかし、まるでその時、美希はゼロの身体の中から心だけ抜け出して、シフォンの身体を包む事に成功したような気分であった。
シフォンもまた、誰かのぬくもりを全身に感じたような気がした。──ずっと待っていた助けが来た安心感が、シフォンの心を灯したのだろう。
その一瞬は、長かった。
「──」
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