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変身ロワイアルその6

719変身─ファイナルミッション─(6) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 21:19:44 ID:GU7jrFVA0










「……」

 あまりの事に、誰もが言葉を忘れ、冷やかな瞳でエターナルを見た。その瞳は、興味のないものを見つめる猫の瞳にも近かった。
 何故か元のサイズに戻ってしまったエターナルは膝をつき、がくっと肩を落としている。
 そして、言った。

「……くそ。今の俺じゃ三秒が限界か」

 ……良牙の力、及ばず。
 良牙はまだ若く、ちょっとやそっとの修行を積んだ所で、巨大化したまま戦う事など出来ようはずもない。
 これは、年長の達人である八宝斎や玄馬ですら、数秒しか保たなかった技なのだから。
 それ故、良牙がこれだけしか巨大化できないのも仕方のない話であったが、実戦の上で全く意味のない時間が過ぎ去り、多くの期待が泡と消えた事は言うまでもない。

「──何の為に大きくなったんですか!!」

 今度のキュアブロッサムのツッコミは、全く、その通りであった。
 少し良牙に期待した者は、過去の自分を呪った事だろう。
 頭を抱える者も出た。幸先が不安である。──よりにもよって、カイザーベリアルとの初戦がこれとは。
 ベリアルも、一瞬唖然としたが、余裕を込めて笑った。

「クックックッ……おもしれえ。随分と余裕があるじゃねえか……!」
「余裕なんじゃないやい! 本当にこれしか出来なかったんだい!」

 負け犬の遠吠えのように、ベリアルを見上げて叫ぶエターナル。
 しかし、誰もがそんな彼を白けた目で見つめている。
 当の良牙が、全く本気であるのが輪をかけて救いようがない話で、彼は背後の者たちの視線にさえ気づかなかった。

「──ボケてる場合じゃありません。……どうしましょう」

 レイジングハートもまた、呆れかえっていたが、それを中断して仲間の方を見た。
 彼女自身、ほとんど無意識の事だが、まさに言葉の通り、両手で頭を抱えている状態であった。決戦を前に、こうして頭を抱えたのは初めてである。
 ダミーメモリの力をもってしても、巨大化は不可能に違いない。
 どうして、ベリアルと同じ土俵に立つ事が出来ようか。

「フィリップ。巨大化する術は……?」
『残念ながら、ない』
「……って事は、やっぱりこのまま戦うしかねえって事か。仕方ねえな……」

 と、ダブルがダークザギ戦のように等身大のままダークベリアルと戦う覚悟を決めようとした時である。
 ──誰かの声が、また、響いた。

「──いや、違うぞ!!」

 誰だろうか。
 そんな、聞くだけでも希望が湧くような言葉を発したのは。
 またくだらないボケか、と心が諦めるよりも前に、誰もが反射的にそんな希望の一声を頼ってしまう。

「──」

 ダブルが振り向くと、それは佐倉杏子であった。
 ──全員が、ほぼ同時に杏子の方に目をやっていた。

 一体、フィリップにさえ何も浮かばないのに、どんな秘策があるのかと思った。
 そして、ダブルは、彼女が今、手に持っている物体に視線を落としたのだった。

「杏子……それは……」


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