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変身ロワイアルその6

717変身─ファイナルミッション─(6) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 21:16:03 ID:GU7jrFVA0
 むしろ、奇妙な共感とさえ言える。──生か、死かの戦いという気がしない。
 何故か、むしろ、最大の敵を前に、安らかで、精神的には抜群のコンディションでさえあった。それは、ずっと追い求め、憎み続けた相手が目の前にいるのだと、その想いがあるからかもしれない。
 これまでと相反する感情が内心に溢れたせいか、こうして目の前に強敵がいる事にも、不思議と現実感が消えていった。
 しかし、そんな頭を切り替える。

「来い……! 俺は、小細工はしない……! お前らに勝つ自信があるからな……!!」

 そんなベリアルの言葉に、ごくり、と唾を飲み込む。
 だが、どう取りかかればいいのか、各々が少し悩みあぐねた。
 相手の身体は50m近くもあり、簡単には倒す事ができない相手なのを実感させる。
 あのフィリップですら、ベリアルの対策は検索しても浮かばないほどだ。

 しかし。

 そんな状況下でも、秘策を持つ男が、この場にただ一人だけ、いた──。

「……」

 ──そして、その男は、ゆっくりと前に出て歩きだした。

「……──」

 通用するかはわからない、と思いながら。
 ただ、目の前の敵にぶつける為に、少しは修行したのだ。
 その男の背中を、誰もが目で追った。
 どこか誇らし気に、ベリアルの前に出て行く男──。

「──仕方ねえ……! あのサイズの敵を倒すにはあれっきゃねえな……!!」

 それは、仮面ライダーエターナル──響良牙であった。
 ばっ、とマントを靡かせる彼の姿は、何らかの秘策を持っている状態のようだ。期待を持っている者もいれば、期待の薄い者もいた。そう簡単に倒せる相手ではないのは誰もが理解している。
 だが、どうやら、良牙には、巨大な敵と戦える術があるらしい。
 エターナルに向けて、ブロッサムが声をかける。

「良牙さん……? 何か秘策が……!?」
「──ああ。実は、俺は、闘気を使えばあれくらい巨大になれるんだ」

 そんな一言に、誰もが少しの間固まった。
 体を巨大にして戦うという事が出来るならば、数日前のダークザギ戦において、何故彼はそれを使わなかったのか……と誰もが思ったのである。
 それは、自然と口から出てしまう疑問だった。──ブロッサムが、誰しもが抱いた疑問を自らが代表して彼に突っ込んでしまう。

「──なんで今までやらなかったんですか!?」
「今ほど力が溢れてる時がなかったんだよ!!」

 だが、エターナルにかなりの剣幕でそう返されて、ブロッサムは今度は少し小さくなった。
 確かに──いくら良牙でも、それほどまでに強大な力があって、ダークザギ戦の時に使わぬわけがない。
 そして、あの時は、今のように黄金の力が自分たちを助けてくれる事もなかった。力でいえば今よりずっと低く、資質もないのだ。加えて、良牙はこの数日で、闘気の使い方をかつて以上によく学んだ。
 そう。彼は「今」だからこそ……彼の力が及ばぬ、歴戦の達人の技を使おうとしていたに違いない──。

「いくぜ!!」

 エターナルが叫ぶ。
 そして、同時に──八宝斎や早乙女玄馬がかつて行った、“闘気による巨大化”を始めたのである。
 全員、半ば半信半疑であったが、そんな怪訝の色は、エターナルの頭が階段を上るように高くなっていくにつれて失われていく。

「──!!」

 歴戦の勇士であった者でさえも、この妖術めいた格闘の曲技には目を凝らし、そして、自分の経験すらも疑っただろう。
 だが、現実に起きている事であるのは言うまでもないので、自らの経験の浅さを一笑して区切りをつけた。
 それと同時に、感嘆もしてしまった。──下手をすると、ベリアルでさえもそうした存在の一人であったかもしれない。


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