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変身ロワイアルその6

710変身─ファイナルミッション─(5) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 21:05:05 ID:GU7jrFVA0



 キュアブロッサムがそこに駆け寄った。
 加頭順とはいえ、彼がこのまま死んでしまう事には彼女も抵抗がある。──勿論、彼女とて加頭への同情は薄いが、それでも、もしこれからやり直そうとする意思があるならば、彼もまた……と思ったのだろう。
 ……が、遅かった。

「ああっ……ああああっ……!!」

 煙が晴れ、白夜の光が覗き始めた時、そこで、透明に消えかかり、地に伏して涙声をあげる加頭の姿があったのだ。
 大道克己の時と同じだが──それにも増して、惨めだった。

「……痛い……死にたくない……誰か……」
「加頭さん!」

 ブロッサムの脚を這うようにして掴みながら、しかし、何もできずに、その腕が粒子となって崩れ落ちる。
 彼は、自分の腕が目の前で消滅した事に強い怯えを示した。

 死ぬ。
 このまま、死んでしまう……。

「誰か……助けてくれ……」
「加頭……」
『……僕らの憎んだ敵も、結局は、“変わり果てた人間”だったんだ……』

 仮面ライダーダブル──彼らもまた、加頭順の終わりを、哀れむように見つめていた。
 かつて、井坂深紅郎の死を、悪魔に相応しい最期と呼んだ事がある。
 あの時とまるで同じ気分だ。同情の余地はないはずである。
 しかし、彼や井坂もまた、同じ街の空気を吸った人間だ。──その最期を見届けてやる義務が、翔太郎とフィリップにはあるはずだった。

「……苦しい……お前たち……私を……たすけ……」
「加頭さん……」

 ヴィヴィオがそれを眺めながら、救う術を考えた。
 しかし、それはどこにもないのだとわかった。
 自分で蒔いた種だと一蹴するのは簡単だが、それでも──和解の道を、ヴィヴィオは求めていたのだから。

 ダークプリキュアが新しく仲間になった時のように……。
 ゴハットが最後にヴィヴィオを助けてくれたように……。
 その夢は、もう見る事が出来ないようだった。

「ああ……」
『……こいつも、これで少しはわかっただろう。死の恐怖も──』
「──愛する人を失う苦しみも、な……」

 銀牙騎士絶狼とザルバは、消えゆく加頭の姿をそっと眺めていた。
 彼らは同情こそしていなかったが、しかし、その惨めさを目の当りにした時、彼が少しでも他者の痛みを知る事が出来ていてほしいと願ったのだろう。
 だから、こんな言葉を物憂げに呟いたのだ。

「加頭……!」

 そして、そんな所に、あの仮面ライダーエターナルが──それは響良牙だったが──歩み寄った。

 それを見た時、加頭は慌てて視線を逸らし、そこから逃げ去って誰かに縋ろうとしていた。
 情けなくも、頬を涙が伝っていく。
 もう地獄が目前にあるようだった。

 腕を、足を、首を──死神たちが掴んで、持って行こうとする。
 どこを見ても……。
 どこを見ても……。
 そこにいるのは、死神だった。


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