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変身ロワイアルその6

709変身─ファイナルミッション─(5) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 21:03:12 ID:GU7jrFVA0

 誰への敵意もない絶叫だけが、虚しく響き渡る。
 ユートピアなどない。理想郷は、崩れていくのみだった。
 たとえ、上面だけ、理想郷を復元していたとしても。
 結局、彼が求めた場所は──一人きりの理想郷にしかならない。


 ──そして、それを悟った瞬間だった。







「──!?」

 ──ふと、世界は切り替わった。
 まるで消失が止まったかのような錯覚に陥り、加頭の耳元で、何かが“囁いた”。
 周囲を見回すと、何もかもが……時間が止まっていた。
 暁美ほむらによる時間停止が原因ではないのは判然としている。
 そして、直後に、何かが「何の為に戦ってきたのか」という加頭の問いに答えた。

『──地獄に堕ちる為さ』

 ──白い腕が、加頭の脚を固く掴んだ。
 驚いて見下ろすと、その腕はまるで地の底から生えているかのように、深い沼に加頭を引きずりこもうとしている。

 見覚えのある腕だった。──いや、今も間近にいる戦士が同じ規格の物を持っているはずの腕である。
 そう、それは。

「死……神……!!」

 仮面ライダーエターナル。
 その声は、大道克己そのものだ。──彼が地獄へと加頭を道連れにしようとしている。

「貴様ら……」

 無数の腕が──ルナドーパントの腕が、メタルドーパントの腕が、ナスカドーパントの腕が、ウェザードーパントの腕が、そして……タブードーパントの腕が、加頭の身体をどこかへ引きずりこもうとしているのだ。
 これまで、その死を見て来たはずの連中の腕──。

「この私を地獄の道連れにする気か……!?」

 エターナルは笑った。ああ、ずっと待ってたんだ、と。お前を地獄に引きずりこむのを楽しみにしていたんだ、と。
 これから加頭が向かう場所──それは、地獄に他ならなかった。
 深く、永久の苦しみを味わう為の場所……。

 加頭もそれを悟った時──ある感情が、脳裏に浮かんだ。
 NEVERになって以来、忘れていた感情。

「嫌だ……」

 そう、嫌だ。
 こんな事の為に──あんな奴らの為に、地獄になど堕ちたくない。
 これから、永久の苦しみが待っているのだと思うと……。

 死にたくない。

 また地獄に行くのか?
 こんな奴らと一緒に……。

『来いよ……地獄に連れて行ってやる……』
「嫌だ……!」
『ずっと待ってたんだぜ……お前が地獄に来るのを……』

 ──そして、時間は、再び正しい流れに帰っていく。






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