したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

変身ロワイアルその6

707変身─ファイナルミッション─(5) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 21:00:02 ID:GU7jrFVA0

「──……」

 やはり、カシャ……カシャ……と、音が聞こえた。
 加頭は、自分とホラーだけしか視界に映らないその場に、他の何者かが現れたという事を理解した。
 そして、次に、誰か、男が呆れたような声を発した。

「おいおい……」

 カシャ……。カシャ……。
 その音は、加頭のもとに近づいてきていた。
 冴子に憑依したホラーも、加頭を襲うのをやめて、その声が近づいて来る方に目をやった。

「まったく……とんでもない奴を甦らせてくれたもんだな」

 そして──そんな彼の前に、煙を背負って現れる一人の男がいた……。
 金色に光る彼の身体はとてもよく目立った。
 金色でありながら──銀色の魂を持ち続けた男である。
 ……そう、いつの時代も、ホラーの相手をするのは、彼らであった。

「お前ほどの男が……知らなかったのか? 加頭──」

 涼邑零。──いや、銀牙騎士絶狼(ゼロ)。
 その鎧が、カシャカシャと音を立てて、加頭の前に現れたのだ。
 煙はだんだんと晴れていき、そこにいる男の姿だけを加頭の目に映した。

「……」

 ホラーもまた、宿敵たる魔戒騎士の姿を敏感に察して、加頭を食らうよりも、まずは己の身を守る事を優先したがったのだろう。
 黄金騎士──と、ホラーも誤解したに違いない。



「──ホラーに喰われた人間は、助からないんだ」



 ゼロが口にするのは、残酷だが、加頭も知っているはずの事だった。
 しかし……しかし。



 ──冴子は……彼女だけは、例外ではないのか?



 ──加頭はそう思い続けていた。
 だから蘇生させたのだ。
 肉体ならば、ホラーも霧散しているはずであると。

 しかし、それは、ある意味で、最も人間らしい現実逃避だったのかもしれない。
 どうしようもない「論理」の穴を、ただ彼は「感情」だけで補完しようとしていたに過ぎないのである。
 尤も、それは歪んだ感情であったかもしれないが。

「残念だけど、あんたのフィアンセは、もうホラーに喰われていたみたいだな」
「そんなはずはない……!! そんなはずが……!!」

 必死に現実を否定する加頭の身体も、半分は消失している。
 そんな姿を少しだけ哀れむように眺めたが、零は非情に徹する事にした。
 彼が行った事の報いが始まったに過ぎないのだ。未だ償う気持ちを微塵も見せない加頭には、怒りも勿論湧いている。

「──だから」

 だが。
 今は──まるで、ホラーから守るべき人間がそこにいるような気持ちに切り替えた。
 たとえ、加頭が敵でも……僅かな命であるとしても……彼のように、ホラーに襲われる人間の事を守らなければならない。ホラーの犠牲者は最小限に食い止める。
 それこそが、彼の使命だった。
 そして。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板