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変身ロワイアルその6
684
:
変身─ファイナルミッション─(3)
◆gry038wOvE
:2015/12/31(木) 20:31:07 ID:GU7jrFVA0
「──……やっぱり、私から行きます……!
この人との勝負、まだ終わっていませんから……ッ!」
それは、強敵を前に、自分だけで攻撃を仕掛けると言う宣言であった。
再び、先ほどの戦いの続きのように、ファイティングポーズを構えるヴィヴィオ。
誰もが彼女を見て、ゆっくりと頷いた。彼女の健闘を信じる瞳が、ヴィヴィオを一斉に見つめた。
「──」
ユートピアには理解不能である。何せ、ユートピアにとって彼らは雑兵なのである。
今の力を見て、尚も同じ土俵で勝負する気だろうか。
戦士たちにとってユートピアが一個の門番に過ぎないのと同じく、ユートピアにとっても彼らは理想郷を掴む為に立ちふさがる矮小な壁に過ぎなかった。
諦める事がないにせよ、てっきり、実力差を理解して全員でかかると思っていたが、こうまで愚かに一人ずつ仕掛けてこようなどとは、ユートピアも思っていなかったのだろう。
片腹痛い、とはまさにこの事だとユートピアも変な笑いが出そうになる。
「……フン。舐めてくれた物だな……一人ずつ来る気とは……!」
「ううん。一人じゃない……!」
「御託を……。すぐに片づけてやる!」
ヴィヴィオは、そんなユートピアに向けて駆けだした。
大勢の仲間が見守る中で、彼女だけが敵に肉薄する。
それは、さながらストライクアーツの大会のような光景だった。
たくさんの人が見ている前で、自分の戦いをする事──それが、彼女の誇りであり、彼女の生き方であり、彼女にとって最も楽しい時間だった……。
その時の気分が、今は少し重なる。
「はぁぁぁぁッ!!!」
ストレートパンチ──!
ぱんっ! ──と手ごたえのありそうな音が鳴った。
だが……。
「ふん」
ユートピアの肉体は、ヴィヴィオの魔力が籠った一撃を胸に受けても悠然としていた。
ヴィヴィオからすれば、これだけ心地よい音が鳴ったというのに、鋼鉄の板を殴ったというよりはむしろ、スポンジの塊でも殴ったかのような不気味なほどの感触の無さが伝わっていた。
やはり、ユートピアは只者ではない。
「能力を使うまでもない……やはり貴様は、子供だ!」
メンバー最年少。全参加者の中でも幼い部類に入る。
それがヴィヴィオの立場であった──この殺し合いにおいても、小学生相当の年齢は彼女だけである。
そこが力の壁を作り出していた。
「子供でも……──小さくても、出来る事があるんだ……!」
ヴィヴィオの拳が、太鼓の連弾のようにユートピアの体に向けて叩きつけられる。
小さいが故の反抗──たとえ、一撃が小さいとしても、子供だとしても、それを蓄積させて巨大な敵を打ち破る力にはなりうる。
ヴィヴィオはその戦いを諦めない。
自分に出来る精一杯を使いきるまでは、ヴィヴィオも何度だってユートピアに想いを、そして拳をぶつける。
ユートピアの足が、土の上を滑るようにして少しずつ下がっていく。彼の体重を動かすには充分な力が叩きつけられているらしい。
「──黙れ」
だが、そんなヴィヴィオの努力もユートピアには無力であった。
たとえ彼の身体を動かしたとしても、彼自身の身体が一切ダメージを通していない。
その上に、そんなヴィヴィオの攻撃を煩わしいとさえ感じ、ここから一撃で勝負を決めて見せようと下準備を始めたのだ。
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