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変身ロワイアルその6

668変身─ファイナルミッション─(1) ◆gry038wOvE:2015/12/31(木) 20:05:29 ID:GU7jrFVA0

『──なんでもないのね。じゃあ、早く孤門さんを探して、ベリアルを倒しましょう!』
「お、おう……!」

 ふと、美希の言葉が聞こえたので、ゼロもベリアル以外の事に意識を向ける事ができた。……そう、今は、彼女がここにいるのだ。
 蒼乃美希。……あの殺し合いの生還者が。

 まあ、確かに──今の孤門は、かつてゼロに力を与えたウルトラマンノアと同化しているのだから、彼がいれば現在の形勢は大きく逆転する事になる。しかし、そのノアを探し出すのにも、これだけ広い宇宙が広がっているようでは心が折れそうなのも事実だ。
 美希もそれは、ここに来た瞬間に察しただろう。地平線すらもない無限の黒には、余程目が悪くない限りは恐怖を覚えるに違いない。──ましてや、彼女のように宇宙に行く機会の少ない地球人の少女となれば尚更だ。
だが、そんな美希が、ゼロに向けて──あるいは、これからの旅路を遠く見据えている自分自身に対して、ある意識を飛ばした。

『──諦めるな! ──』

 美希の胸にあるのは、その言葉だけだった。
 たとえ挫けそうになった時も、それを食い止めるのは、その単純な激励である。その言葉が持つ意味を噛みしめる。
 長い講釈や説教と違い、言葉そのものが奇妙な力を発するのだった。
 強い語調でもなく、かといってそっと支える風でもなく、その声がそもそも他人から向けられているような気がしない──そんな一言。

「──」

 そして、それは、ゼロにとっても、最も好きな地球人の台詞だった。
 孤門が何度となく使っていた口癖のような呪文。そして、ゼロもかつて、ある宇宙で──今思えば孤門に少し似た面影を持った──少年に言われ、ウルトラマンダイナ、ウルトラマンコスモスと共に胸に刻んだはずの言葉である。
 確かに、こんな若い地球人の少女にこれを言われては、ゼロも立つ瀬がない。

「よしっ」

 本来の彼らしい調子を、本格的に取り戻すには充分だった。こうして、無謀に近い状況に立たせられてこそ燃えるのが本当の自分ではないか、と。
 ゼロは、その一言で奮い立つ。

「じゃあ、いくぜ、美希!」
『うん!』

 ゼロは、スピードを上げて宇宙の果てに飛び立っていった。
 願わくは、追い風が彼らに届くように……。
 彼が飛び去った後には、青い残像が光っていた。







 ──別の宇宙。
 時空移動船アースラの壁は、だんだんと消滅を始め、ガイアセイバーズの視界に広大なブラックホールの姿を映していた。
 目の前にある深い闇が、これから自分たちの身体と意思とを飲み込む事になる「宇宙」だという。
 アースラは、無力にも、その直前で消えかかろうともしていた。──だが、これが、正しい歴史におけるアースラのあるべき姿なのだ。とうに消えているはずものが、奇跡的に駆動し、そして志半ばに消えかかっている。
 しかし、最後の任務を終えたアースラを、今、ベリアルの野望が生み出した死者の力で再生し、今、無に帰る為に最後の力を振り絞ろうとしている姿でもあるのだ。
 もしかしたら、それだけでは足りないかもしれない。
 あとほんの少し、風が吹けば──この艦を動かしてくれた者の想いも、この艦を守ってくれた死者たちの想いも、この艦の為に命を亡くした者の想いも、全てが無にならなくなる。
 インキュベーターの言った通りに、「出動」ができる。

 きっと、風は、──届く。
 ──そう、あと、もう少しで。
 あの変身ロワイアルの世界へ──。


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