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変身ロワイアルその6
667
:
変身─ファイナルミッション─(1)
◆gry038wOvE
:2015/12/31(木) 20:03:58 ID:GU7jrFVA0
──広大なる宇宙。
本来、この限りなく広い宇宙というのは、それこそ数えきれないほどの人々が寄り添い合って暮らす場所であり、全ての命の故郷であるはずだった。少なくとも、ゼロが旅した幾つもの宇宙は全てがそうだった。だからこそ彼は宇宙を愛したのだ。
しかし、この青い戦士──ウルトラマンゼロが今、辿り着いた宇宙は、そんな宇宙たちとは全く違うと一目でわかった。
今、目に見えている星は全て模造品で、そこに芽吹く温かい生命までは再現されていない。
緑の息吹や文明のある惑星は恐ろしいほどに少なく、隕石の欠片のような星ばかりが無数に浮いている。そんな、おそろしいほどに音と空気のない深淵だった。
どこを何度見渡しても、やはり、生命の反応は……ない。強いてそこにある物を挙げるならば、「永遠の孤独」とでも呼ぶべき虚無感だけだ。
まるでブラックホールにでも飲み込まれたかのように見渡す限りの全てが無音で、それこそ、ゼロには、直感的にその空気に恐怖感を覚えざるを得ないほどの場所である。
『どうしたの? ゼロ』
「……ああ、いや、なんでもない」
ゼロは自分と同化している少女──蒼乃美希の言葉に、思わずそう空の返事をしてしまった。
辛うじて、ゼロが平静を保って居られるのは、いわばこの「美希」のお陰でもある。もし、彼女がいなければ、ゼロはすぐにでもその宇宙の齎す永遠の孤独に敏感に反応し、正気を失ったかもしれない。
自分と共にそこに誰かがいてくれる事が、ゼロの心を安堵させた。この不気味な宇宙の孤独からゼロを守れるのは彼女の存在だけだ。
ふと思う。
孤門は──この感覚を数日、その身で味わっているのだろうか。
ベリアルは──こんな感覚に身を震わせながら、全世界を手玉に取って満足なのだろうか。
一刻も早く、この宇宙の中でただ一人彷徨う「ウルトラマンノア」のスパークドールズを探さなければならないし、彼の時間を取り戻し、ベリアルも倒さなければならない。
しかし、やはり、この視界に広がる無限を前に、ゼロですら一瞬心が挫けそうになる気がした。
これから行う作業は、言ってみるなら──地球中から、一粒の塩を探し出すよりも困難な事であるという実感が湧いてきたのだ。
(まずいな……この世界に来てから、俺の力も弱まっちまった……)
この世界に飛び込むのが初めてだったゼロは、更なる問題として、このエネルギーの枯渇も挙げられた。体に何トンかの鉛の分銅でも装着されたかのようにゼロの身体が重くなり、これまでのようなパワーも発揮できない状態が続いている。
この分だと、モードチェンジも出来ないどころか、先ほどまでのようにノアイージスを発現して別世界を渡る事さえできない。
たとえば、今すぐにゼロの力で引き返す事などは絶対に不可能な状態である。
(帰る方法は後で考えるか……それより──)
もとより、ゼロに後退の意志はない。勿論、元の世界に帰らなければならないのも一つだが、それに関しては比較的楽観的に考えている部分もあった。この世界にいれば耐性が出来るだろうし、それならば地球時間で一週間ほどでも充分だ。
それはこれまでの美希たちの事を考えれば自ずとわかる事で、ベリアルを倒した後ならば一週間ここにいるというのも一つの手段である。
……だが、問題はその事ではない。
(──これじゃあ、ベリアルと戦う力が無さすぎるぜ……っ!)
そう、パワーの低下による、戦闘力への影響だ。
ベリアルの実力は、元々ゼロと殆ど互角だと言っていい。
どちらかが強い力を得てもう一方を圧倒し、そうなれば今度は負けた方が強くなりもう一方を倒す……という繰り返しが、これまでのゼロとベリアルとの間に生じていた力関係だった。
いわば、それが二人の終生のライバルたる因縁を作り上げていたのだ。
その能力がほとんどリセットされたこの世界では、圧倒的にベリアルの方に分がある。
まず、一対一の決闘でゼロがベリアルを相手に戦うのは不可能と言っていいだろう。
いかにして対策すべきか考え、宇宙空間の一点にとどまっていた時、美希の声がゼロの脳裏に反響した。
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