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変身ロワイアルその6

647BRIGHT STREAM(5) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:39:09 ID:RQpuUNRs0



≪PULL UP!!≫≪PULL UP!!≫≪PULL UP!!≫
≪PULL UP!!≫≪PULL UP!!≫≪PULL UP!!≫
≪PULL UP!!≫≪PULL UP!!≫≪PULL UP!!≫

 艦が警告音を鳴らし続けるブリッジ。
 ニードルの腕はボタンを押す事もなく、吉良沢の遺体が押し続けているボタンだけがただ、艦を進ませていた。
 だが──そんな彼の遺体と血だまりの元に、一匹の小さな獣が寄り添った。

「……君たち人間は、本当にわけがわからないね。変えられるかもわからない運命の為に、自分の命さえ賭けるなんて……。まあ、でも、今度ばかりはお礼を言うよ」

 情報を共有している彼らインキュベーターの端末である。
 彼はこのままアースラに乗っていても肉体が滅びるだけなのだが、その最後の瞬間を記録するのに丁度良い役割を持っている。
 彼の持つデータは、また別のインキュベーターの元に転送されるので、丁度良いのだろう。
 この艦に関するデータを最後まで有する事が出来るのは、彼らのように意識や情報を共有している特殊な生命体だ。──そして、彼だからこそ、ある意味、死を恐れずにここに載っていられる。

「──ただ……このままだと、アースラに残っている彼らも、いつベリアルのいる世界に旅だっていいのかわからなくなってしまうんだよね。……じゃあ、美味しい所を持って行くようで悪いけど──最後に、この言葉だけは僕が言わせてもらおうか」

 そう言うと、キュゥべえは、そっと吉良沢の手を退かした。
 艦は間もなく完全に消滅しようとしている。そして、既に座標は、この艦が人間を転送できる近くまで来ていた。ボタンを押し続けては通りすぎてしまう。
 ──ブリッジから目の前を見れば、キュゥべえの視界に広がっているのは、「イレギュラー」な映像。ブラックホールのような果てのない暗闇がこの艦の視界を覆っている。
 あらゆる世界線の枠から外れた、正真正銘のダークマター──それが、あの世界だ。

 そして、ここまで来たならば、キュゥべえはこれを告げるしかない。
 館内放送のスイッチを押し、キュゥべえは、彼らへの指示を告げた。







「なあ、みんな……一つだけ聞いてくれ」

 ──そう突然に切りだしたのは、超光戦士シャンゼリオンならぬガイアポロンであった。
 彼らしくない湿っぽい語調に、誰もが違和感を持った事だろう。
 しかし、彼の口から出た言葉で、誰もが納得した。

「最初に謝っておく事がある。──ニードルは、俺を追って艦に来てしまったかもしれないっていう事だ」

 彼らしくない──謝罪の言葉だ。
 隠すつもりはなかったのだろうが、確信も持てなかったので、今まで何となく黙っていたのだろう。

「言えなくて……悪い」

 涼村暁の普段の態度が態度なだけに、これには何人かも辟易した。
 しかし、だからこそ却って、その誠意は誰にでも伝わったのかもしれない。普段、謝りそうもない性格なだけに、いざ本当に謝ると、その誠意も人一倍よく伝わる物だ。
 翔太郎とヴィヴィオが、そんな暁に言った。

「……んな事気にするなよ。結果的に、俺たちは新しい力を得られたんだ」
「そうですよ。……むしろ、本当にそうだって言うなら、暁さんに感謝します」

 彼らの総意であろう。
 結果的に、死んだはずの仲間と再び出会え、そしてこうして彼らの助けを得られたのは、他ならぬニードルが闇の欠片をばらまいたお陰である。
 それもニードルの作戦のようだったが、今の放送を聞く限りでは、そんな野望も無駄であったに違いない。
 だが、暁が言いたい事はそれだけではなかった。

「……それからもう一つ」


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