したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

変身ロワイアルその6

646BRIGHT STREAM(5) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:38:39 ID:RQpuUNRs0

 織莉子は、ヤマアラシロイドの右腕を掴んでいた両腕を同時に離した。
 そして、次の瞬間、──

(ここまでは読めたとしても……ここから先は……っ!!)

 ──織莉子は、胸を突き刺す針山の元に、敢えて突き進むように、踏み出したのである。
 勢いを持って、自分の身体をわざわざより太い方へと叩きこむ。
 痛みは広がる。だが──こうしなければどうしようもない。

(──読み通りにはさせないっ!)

 そう──この槍は、一度貫いたが最後、完全に貫かない限り抜く事ができない。
 それならば──「その通り」でいいのだ。
 逆に考えるのだ。この槍は、「完全に突き刺すまで抜く事ができない」のではない。「完全に突き刺してしまえば抜く事ができる」、と。

 織莉子の前には、時空魔法陣がある。
 これが、ヤマアラシロイドの居所へ繋がっている──。
 織莉子は、槍に貫かれたまま、一瞬でその時空魔法陣の中に飛び込んだ。両腕を話してしまった以上、与えられた時間は一瞬だけ。
 そこで片づけなければ、ニードルの右腕が機器に余計な攻撃を仕掛けるだろう。
 まさに、一か八かの賭けであった。

「ぐっ……ぐぉぇっ……!!」

 胸部の痛みは貫かれ、やがれそれは確実に心臓に損傷を来す場所まで広がっていく。
 心臓が大きく破れ──大量の血液が口だけではなく、目からも噴出した。痛みと呼ぶには、あまりに凄絶すぎる物が上半身を支配する。
 そう、たとえ今すぐにここで今すぐ誰かが回復したとしても、彼女の命が助かる事はありえない。
 幸いなのは、彼女が魔法少女であった事だ。そう、たとえ心臓を貫かれたとしても、そこにあるのは痛みだけで済む。──ソウルジェムが砕かれない限り、彼女はまだ生きてはいられる。
 これほどのダメージを受けながら、辛うじて生命があるのは、その性質がゆえだ。
 しかし、それも間もなく終わる。

「オラクルレイ!」

 彼女は、自分の生命活動が終わる前に、ヤマアラシロイドの居場所へ──この艦の外に辿り着き、そう叫んだ。
 ヤマアラシロイドはぎょっとした顔で織莉子を見つめたが、もう遅い。

「何ッ!?」

 彼の身体は、織莉子によってぐっと抱きしめられた。
 それこそ、針の筵とでも言うべきヤマアラシロイドの全身を包み込んだのは、この聖母が初めてであっただろう。
 だが、それも一瞬だった。
 織莉子の身体を飾っていた無数の宝石は、彼女の身体から離れる事もなく、光った。

 ──そして、轟音とともに、爆ぜる。

 彼女の身体も、ニードルの身体も巻き込んで。
 そう、艦ではない、ニードルのいたどこかで。
 しかし、──それがきっと、微かにでも艦の運命を変えた。



 本来、ニードルの手によって押されるはずだったボタンは押される事もなく──。
 そして、ニードルという一人の男の未来と、美国織莉子という一人の少女の未来を巻き込んで、消え去った。


【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ 死亡】
【ニードル@仮面ライダーSPIRITS 死亡】






新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板