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変身ロワイアルその6

645BRIGHT STREAM(5) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:38:03 ID:RQpuUNRs0
 友人、と呼べるほどではないが、同じグループの仲間として──吉良沢には、いくつか共感できたし、思う所が多すぎた。
 そして、共に罪を償うと決め、運命に抗おうとする二人だった。
 そんな彼に言葉をかけた後に、織莉子は構えた。

(──ニードル、どこからでも出てきなさい)

 おそらく──ニードルは、先ほどの騒動で、この艦の要となるこのブリッジの位置を完全に把握し、怪人騒動の中でこの場の魔力結界を解いたのだろう。
 いずれにせよ、殆どの人間が脱出した時点でここは手薄になり、魔力による守護の恩恵もなくなる。
 ゆえに、狙われるのは、ほぼ間違いなくこの場所で、ニードルはまだここを狙っているはずだ──。だが、どこから敵が来るかはわからない。

「……」

 織莉子は息を飲んだ。
 瞬きすらも許されない、切迫した瞬間──。

「……」

 敵が来るのは、どこか。
 織莉子の後ろか。上か。──それとも、機器を狙いに来るのか。
 それがまだわからず、呼吸を落ちつけながら、そこら中を見回す。緊張の糸というのが心の中でぴんと張っているのがわかった。しばらくはほどけそうもないだろう。
 吉良沢は、死して尚、機器の最重要部のスイッチを押している。あれを押している限り、艦は目的地に向かって進行し続ける。
 狙われたのはあそこだろうか……?
 そして──

「──!」

 ──視えた。
 織莉子の今の狙い通り。吉良沢の遺体の近くから──。
 血の池が出来た吉良沢の元に、織莉子が駆け出す。
 ヤマアラシロイドの右腕を掴み、彼が余計なボタンを押す前に──。

「させない……っ!」

 織莉子の腕は、ヤマアラシロイドの腕を掴んだ。
 魔力が込められた両腕は、格闘のプロにも引けを取らないほど強く怪人の腕を握る事が出来る。あとは根競べだ。
 ヤマアラシロイドの腕が勝つか、織莉子の両手が勝つか。

「……っ!」

 力をぐっと込めた。
 絶対にこの艦は目的地に辿り着かせて見せる。──そう心に誓いながら。
 しかし、そんな織莉子の胸が、次の瞬間──目の前から、無情にも、貫かれた。
 織莉子の目の前に突如現れた時空魔法陣。──そこから、手と槍が、現れたのだ。

「え……?」

 織莉子は、思わず真下を見下ろした。
 二つ目の時空魔法陣──そこから、ヤマアラシロイドの左腕が、槍を持って織莉子の胸を貫いていたのだ。
 右腕は確かに織莉子が掴んでいる。
 しかし、左腕は、また別の場所から時空魔法陣を通して織莉子を襲っているのだ。
 織莉子の身体は、吉良沢の遺体の真隣で、胸を貫かれ、血をふきだしていた。彼女の身体から垂れていく朱色は、吉良沢の零した同じ色の液体と混ざっていく。

「……見事に読み通りの行動を取ってくれましたね、美国織莉子」
「わ、罠……?」

 ──最初の右腕は囮。
 その上で、織莉子が来るタイミングと位置に合わせ、攻撃を仕掛けたというわけだ。
 それも、確実に息の根を止める為に、胸部を──。
 しかし、ニードルにとっては残念ながら、織莉子は魔法少女であった。
 彼女を殺すならば、それこそソウルジェムが必要である。

(──読み通り、か……。悔しい……わね……。でも、それが一番、甘いって……っ!!)


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