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変身ロワイアルその6
640
:
BRIGHT STREAM(5)
◆gry038wOvE
:2015/09/02(水) 18:36:04 ID:RQpuUNRs0
それは、空中で八俣に分かれ、レイジングハートを含む八人の身体に結合した。
まるで意思を持っているかのように、ただ正確に生還者にだけ力を託していく。
「まさか……闇の欠片が……俺たちに……風を……!?」
仮面ライダージョーカーのロストドライバーに闇の欠片が遺した力が注ぎ込まれる。
ジョーカーの全身が突如として光り始め、やがて、彼の身体はだんだんと、別の姿に変わり始めていた。
そう、これは八人を支える為に闇の欠片が与える最終決戦の為のエネルギーであった。
黄金の風となった死者の魂である。
全員の身体に、闇の欠片の最後の意思が宿り始めていたのだ。
「鋼牙の金色……そして、キバの魔の力……」
『そうか、キバの奴……お前に最後の魔力を託したんだ! これで今のお前は魔力が切れるまでは、無制限に鎧を装着できるぞ!』
零の双の魔戒剣に、それぞれ、「金」と「黒」の力が注ぎ込まれた。
一方は、光の力──黄金の風、そしてもう一方は、陰我と闇の力──黒い炎。
この二つが絶えず吹き荒れ、騎士とホラーとの戦いが生まれる。そのいずれもが、零に力を与えているという事か。
ならば、この鎧を装着する時が来たようだ。
──零は、頭上に魔戒剣を二つ並べ、それで魔界に繋がる円を描いた。
彼の真上に、天使たちが鎧を運ぶ。銀色のパーツを零の身体に装着し、黄金の力と魔の力とが、彼の鎧に重なった。
──黄金・絶狼!!──
そう呼ぶに相応しい、黄金の光の力を借りた新たな銀牙騎士・絶狼がここに誕生する。
「スーパープリキュア……!」
キュアブロッサムの身体を包んだのは、再びのスーパープリキュアの勇姿であった。デバイスの力を受けてただ一度だけ変身したこの姿であるが、どうやら、本当のプリキュア並の力が彼女に向かっていったらしい。
プリキュアたちの力を借りたがゆえに──そして、杏子にもまた魔力が取り戻っていた。
ガイアポロンにも、レイジングハートにも、同様に注がれる力──。
そして。
「ゴールドエクストリーム……!」
ジョーカーの身体は完全な進化を遂げたのだ。
ジョーカーではなく、仮面ライダーダブルの姿に──その背には金色の羽根が生え、半身が緑色の風の力に包まれている。中央には金色のクリスタルサーバーが出現していた。
かつて、風の力を借りて変身した仮面ライダーダブル最強の姿なのである。
しかし、そこには、「ダブル」を構成する相棒がいない──
『──やあ、翔太郎』
「フィリップ……?」
──はずだった。
それでも、確かに翔太郎の元には、今、フィリップという相棒の声が届いた。
幻聴であろうか? と、周囲をきょろきょろと見回すダブル──杏子が、呆然としたままこちらを見ていた。
いや、しかし、そうではなかった。次の瞬間、確かに、右目が光り、仮面ライダーダブルの口からは、フィリップという少年の声が聞こえた。
『今度の僕は、闇の欠片が作ったデータの結晶だ。──ただ、肉体は無いから、いつかみたいに変身を解除したら僕も消えてしまうけどね』
「フィリップ……本当にお前なのか?」
そう問うと、ダブルの中に存在する少年は答えた。
『ああ。最後だけ、また力を貸すよ。だって、僕達は──』
「……ああ。ああ、お前がフィリップなら──言わなくてもわかるぜ。──そうだよな……! やっぱり、俺たちはこれでこそ……二人で一人の仮面ライダーだ!」
照井、霧彦、克己、京水……四人との別れを終えた後の翔太郎の口調はどこか寂し気でもある。これがまた、最後の仮面ライダーダブルとなる事を知っているからだ。
見下ろせば、やはりそこにあるのは幻のように儚いエクストリームメモリの姿と、ロストドライバーには欠けていた「右側」が再構築されている。
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