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変身ロワイアルその6

629BRIGHT STREAM(4) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:30:42 ID:RQpuUNRs0
 あまりの事に、アースラに元々乗船していた側の人間は、軒並み棒立ちして彼らの奮闘ぶりを黙って見ていたくらいである。

「……兄さん、今、何体倒した?」
「──四十五体だ」
「僕は四十九体。──途中経過は、僕の勝ちだね」

 そして、そんなやり取りは、彼らが確かに「兄弟」であるのを実感させた。
 その瞬間から、意地を張ったのか、急激にテックランサーで四体の敵を引き裂いて泡に引き返したブレード──どうやら、まだ弟には負けたくないらしい。
 いや、むしろ──彼自身が、敗者の自覚があるからこそ、一層負けず嫌いになっているのかもしれない。

「貴様ら、現世に立った時くらい、そのくだらん兄弟喧嘩をやめられんのか……」

 テッカマンランスが呆れるように二人のテッカマンを注意するが、ブレードといいエビルといい聞く耳持たずだ。
 そんなランスも、次々と敵を倒していく。──意外にも、敵以外には牙を剥く様子が一切なかった。

「──まったくもう、お兄ちゃんったら……」

 実の妹にあたるレイピアもやれやれ、と兄たちに呆れた様子である。
 ブリッジの当面の危機は、このテッカマンたちによって回避されつつあったらしい。
 クロノたちも呆然としながらも、そのロストロギアによる嬉しい誤算に、今は安堵するばかりであった。

 この、突如現れたテッカマン軍団によって、ブリッジの人的被害は全て食い止められていた。非戦闘要員が襲われる暇もないほどに、テッカマンたちが残りの敵たちを倒していってしまう。
 ブレードも。エビルも。レイピアも。ランスも。
 それらは、かつての因縁から解放されたかのように活き活きと、敵たちを、彼らがいるべき場所へと返していく。







 ──エターナルたちと、アクマロたちもまだ戦いを続けていた。
 エターナルたちの方が些か優勢であり、既に、ノーザとウェザーが葬られ、残るのはアクマロだけという状況であった。しかし、これでもアクマロがなかなかの強敵であり、四人の戦士が彼を囲んでも尚、アクマロは淡々としている。
 そんな戦地に、少し遅れて現れる者がいた。
 コツコツ、と足音が鳴る。──それに気づいた。

「……お前は」

 だが、それよりも早く──その「闇の欠片」が放つ妖気に惹かれる者が数名いたのだ。
 そして、それは、この戦いの相陣営の主将に違いなかった。
 エターナルとアクマロが、自ずと手を止め、他の者もそれを奇妙に思って手を止めた。
 現れたのは、白いぼろぼろの和服を着た浮浪者のような男性である。──エターナルとアクマロにだけは、その男に見覚えがあった。

「妖怪……」

 腑破十臓。
 仮面ライダーエターナルに敗れ、「天国」でも「地獄」でもない「無」へと旅立った狂気の人斬りである。風貌は、骨格が露出したようなごつごつとした体表に、鮮血を塗したようなマスク──それが死によって齎されたものではない事は、エターナルやアクマロだけが知っていた。そして、その他の者は、彼を「地獄を通り抜けてきた者」だと誤解した。

 だが、やはり、彼やアクマロのような外道は、死後に地獄に行く事さえままならなかった。
 十臓には終着点はない。──ただ、その終着点に至るまでに、より多くの人の身体を斬り裂き続けようと思い立ち、そして、その中で幾人かの宿敵を見定めただけだった。
 今や、その終着点を超えた彼は、無論、今こうしてまた始まった時は、次の終わりに至るまで、人を斬ろうと願ったのだが──それを、ふと、辞めた。

「本当に俺が人を斬る為の刀はもう此処に無い……」

 十臓の手には、刀はなかった。


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