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変身ロワイアルその6

617BRIGHT STREAM(3) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:26:24 ID:RQpuUNRs0
 先に転送システムの下へと彼らを送らねばならず、その為にもこうした強敵との戦いを彼らは飲んだわけだ。それぞれが目の前の相手と戦っておくべき理由は尽きない──ゆえに、逃げる側と、逃がす側はそれぞれが合意した決闘であった。
 レイジングハートが、そんな彼らの姿を見つめながら、──自分に復讐の機会などない事を悟り、告げた。

「──ノーザ、アクマロ……。なのはたちが受けた痛みは、彼らが必ず返します! 無限に後悔しなさい」
「にゃー!」

 アスティオンもまた、アインハルトと一緒にいた以上は彼らの事をよく知っていたのだろう。ヴィヴィオの肩の上で眉を顰め、敵の方を威嚇したティオは、全てを彼らに任せる事を誓うのである。

「行きましょう! ──ヴィヴィオの行ったように、きっと彼らのような者たちが最後に世界を守ろうとしていると信じて……!」

 レイジングハートの言葉は、重たかった。
 そう、出来る事なら、あの時無力であった自分の手で相棒の仇を倒し、彼女に捧げたい。──しかし、それはきっと、仲間がやってくれる。それで良いのだ。
 復讐でも、怒りでもなく、ただ、正しいと思える事と守りたい物があれば良い。

「──うん!」

 ヴィヴィオたちは頷き、その場に背を向けた。激闘の音が耳に聞こえ始めたが、振り向く事はない。彼らは、全てを闇の欠片で再生された風都の戦士たちに任せ、管理システムへと向かっていくのだ。
 いずれまた、──それが『闇の欠片』であったとしても、霧彦たちに必ず出会えるよう祈りながら。
 そして、きっと、まだこの艦では彼らのような者が戦い続け、支え続け、──きっと、自分たちに追い風を送ってくれると信じながら。

「……そうやな。ブリッジにもきっと……ああいう人たちが……」

 はやてたちは走りだす。
 信じるしかない。──そして、信じる根拠は確かにある。
 彼らのように、死した者が時に生者の足を引っ張る事もあれば、助ける事もあるのだから。
 不幸な未来も時にはあるが、同時に幸福な可能性だって残されているのだから──。

「ノーザにアクマロに井坂……。やっぱり闇の欠片で再生されてる奴らの中にも、簡単にはいかない奴がいるって事か」
「……そうだな、また戦いたくはねえような相手とも殺しあわなきゃならないわけだ」

 良牙や翔太郎は、何名かの敵を思い出していた。
 ゴ・ガドル・バ、ン・ダグバ・ゼバ、ダークザギ……おそらくは、この状況でも決して相容れる事のない相手が何人もいる。
 それに、共に戦えるのかわからない者たちも──。
 良牙が、ふと、一人の「友人」の事を思い出し、その名前を物憂げに呟いた。

「あかねさん……」
「……きっと大丈夫ですよ、良牙さん。あかねさんは最後に本当の自分を取り戻してくれたじゃないですか」

 不安そうな良牙を、つぼみが宥めた。
 彼女にも、またきっと、今度こそ敵にならずに会える仲間がいると──そう信じながら。






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