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変身ロワイアルその6

614BRIGHT STREAM(3) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:25:24 ID:RQpuUNRs0

「……俺は三度目らしいがな」
「私も三度目! NEVERの勝ちね! 霧彦ちゃん!」

 エターナルとルナ・ドーパントが横から付け加えた。
 ナスカも、この二人の死人たちの言葉には、返す言葉もなかった。ただ、何となくこの面識もない連中に負けた事が悔しく感じられた。
 そんな様子を察してか、花咲つぼみがナスカをフォローする。

「……あの、霧彦さん、落ち込まないでください。『二度ある事は三度ある』と言うものですから……きっと、霧彦さんももう一回くらい」
「彼らに張り合ったって嬉しくはない!」

 と、ナスカがつぼみの天然さに突っ込んだその時──警告音が、突然、艦内に響くのを止めた。ぶつっ、と「音が切れる音」がした。
 何分も鳴り続けたところで、結局はその場の音声を捕えづらくするだけと判断されたのだろうか。──だとするなら、音声の遮断は、その時は、英断だろう。流石に長く音が鳴りすぎている。
 この音の連鎖と赤色のネオンは、却って人を不安にし、戦闘音を聞き逃させる。意識して、会話のボリュームも上げなければならないので敵に気づかれるリスクも上がる。
 しかし、それはそんな配慮の為に鳴りやんだのではないと──次の瞬間、彼らは悟った。

『ドンッッッ!!!!!!!』

 放送機能を司るオペレーターが待機しているはずのブリッジで爆音が起きたであろう事は、その場の音声を中継する無数のスピーカーによって、艦内に同時に認識される事態となった。

「──ッッ!? な、なんだッ!?」

 今──確かに、予想だにしないハプニングが起きた実感があった。
 ブリッジに攻撃を受けたという事は、敵の侵攻はかなり深く進んでいるはずだ。それを想い、彼らも黙りこくる。
 あの場にいるのはクロノ以下、数名の戦闘要員と残りは魔術戦闘にたけているわけではない者たちだ。その周囲を屈強な者たちが厳重にガードしているとはいえ、奇襲を相手に上手にフォーメーションを組む事は出来ず、結果、こうして艦長の居場所までもが襲撃される事になったという事らしい。

「まずいな……! あそこが狙われたという事は、艦長が危ない!」
「クロノ艦長……!」

 クロノ・ハラオウン艦長は勿論の事、この艦そのものの危機である。
 だが、そんな心配と同時に、近くでもまた轟音が鳴り始めた。敵の魔の手は、着々とこの艦いっぱいに広がってきているらしい。それはもはや充満する煙のようだった。どこを塞いでも抑えがきかず、微かな隙間で余所へとなだれ込んでいく。
 今こうして、警告音が鳴り止んだ時こそ、その実感は強まってくる──彼らの鼓膜を通して聞こえた轟音は、確実に敵襲による物だろう。

「……艦長室が狙われた……? じゃあ……マズイ……」

 そして、誰よりその瞬間に危機感と絶望感に打ちひしがれたのは八神はやてであった。
 彼女の顔色がその瞬間に大分変わったようである。──膝から崩れてもおかしくないような表情だった。それを辛うじて抑えながらも、胸の中に広がった絶望で、実際にはあまり膝を折ったのとあまり変わらないような状態である。

「どうしたんだ……?」
「──……これから向かう場所で転送をするにも、ブリッジの指揮と許可が必要や。それが出来なくなる。つまり、これから転送室に辿り着いても、ベリアルの世界には行けない」

 ブリッジの襲撃。──それは、ベリアルの世界に辿り着く為に重ねて揃わなければならない条件が一つ切り崩されたという事である。生還者、ブリッジ、アカルンの三つの存在が同時に成り立たなければベリアルの世界には行けない。
 並行世界に渡る手段は複数存在するが、たとえば、ディケイドのようにあの世界への耐性のない者は、そもそもオーロラをあの世界に繋ぐ事すらできないからだ。
 敵は、確実にベリアルを倒す為の手段を封殺しにかかっているのだろう。作戦としては、その三つの要を制圧すべきなのは当然であった。

「──じゃあ、ここで終わりなのか?」
「勿論、ブリッジが襲撃を受けていた場合の話や。ただ、限りなく危険な状態になってる」
「襲撃を受けていた場合って……だって、あの音……」
「──まだ、わからん」

 と、はやては言うが、ブリッジ周辺の警護は充分だったはずだ。


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