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変身ロワイアルその6

613BRIGHT STREAM(3) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:25:03 ID:RQpuUNRs0

「左、これからお前たちが去った後のこの艦は、俺たちが守る。……安心してくれ」
「照井……」

 照井竜にこんな言葉をかけられるのが、かなり久しぶりに感じた。
 結局、あの変身ロワイアルでは会えず終いである。──それだけ、あの殺し合いに強敵が多かったという事でもあろう。
 少しでも運命が違えば、死んだのは翔太郎であったかもしれない。

「これが俺の──照井竜の、仮面ライダーとしての最後の仕事になるな。ここで戦う者たちは、全員がその覚悟を持ち、お前たちに託すつもりで戦っているんだ……。きっと、俺たちは、己の持つ最後の使命を果たすつもりでここに呼ばれた」
「……だけど、お前には仮面ライダー以外にも……照井竜としてもあるだろ」
「照井竜、として……か。ならば──所長には、一刻も早く『次の相手』を見つけるように言ってくれ。出なければ、彼女もすぐに『手遅れ』になる」

 アクセルに対して、石堀光彦の変身形態である印象を持つ者がこの場には多かったが、こうして見てみると、石堀に比べればクールながらも穏やかさに満ち溢れたのが照井だった。それというのも、石堀は実質的に、アクセルの力を、人間の能力を強化する兵器程度にしかとどめていなかったからだろう。
 見れば、アクセルという無機質なマスクの中にも奇妙な愛嬌が芽生えてくる。石堀の時には全くなかった感覚だ。
 不意に、暁が、走りながらも、横からアクセルに訊いた。

「──なあ、照井だっけ? あんたたちはさ、この戦いが終わったら、消えちまうんだろ? このまま大人しく消える気なのか?」
「俺に質問するなッ!」
「……いや、それどうすりゃいいんだよ」

 思いの外、辛辣な解答を受け取った暁は、少しばかり心を痛めたようだ。実際のところ、何気ない質問をしたところ、物凄い剣幕でこんな解答が来れば、腹も立つし心も折れる人間が大半だろう。暁も例外ではなかった。
 代わって、別の「闇の欠片」が答えた。

「──みんな、大人しく消えるさ。……それが僕達、死人の宿命だ」

 ナスカ・ドーパント──園咲霧彦である。
 ドーパントでありながら、風都という街を愛した彼は、ひとまずここでベリアルと対立する者たちには善悪問わず、味方をするつもりだ。特に、ヴィヴィオを守る為にも──。
 暁の質問にどんな意図があるのかはわからないが、彼らには堪えられる限りの質問を返す事も施せる。
 ナスカの様子に悔いはなさそうであったが、ヴィヴィオは前向きになり切れなかった。どこか浮かない顔で告げる。

「……そうですね。いずれにせよ、闇の欠片は元々、そんなに長くは再生できません。……だから、霧彦さんたちとももうすぐ……」

 そんなヴィヴィオを見て、ナスカはこうして再生されるという事が、「二度死ぬ」という事であるのを思い出す事になった。
 生きている側からすれば、同じ人間との辛い別れを何度となく経験する事になる。

「すまない。ヴィヴィオちゃん、一度乗り越えた悲しみをもう一度繰り返すような形になってしまって」
「……ううん。私の事はいいんです。確かに悲しいけど、折角、一日でも霧彦さんたちと会えるなら、もっと良い時に会いたかったなって」

 ヴィヴィオらしい言葉だと、ナスカは受け取った。──かつて、彼女の母の死を告げるのを先延ばしにしようとした事があったが、もしかすればそれこそ失策だったかもしれない。
 彼女は大人顔負けの強さを持っている。あらゆる苦難に挫けない鉄の心だ。そんな純粋さは、簡単に歪められる物ではないらしい。
 そんな二人のやり取りに変わってしまったが、元々ナスカにそれを問うたのは暁だ。

「……で、そうは言うけど、あんたもさ、このまま生きてやりたい事とかないわけ?」
「そんな事くらい、山ほどある。心残りな妹もいるんだ。──だが、残念ながら僕は生きていない。死ぬのは、あれで二度……だから、今こうしてここにいる事が充分奇跡のような物さ。償いだけはするつもりだ」

 一度は冴子の裏切りに、もう一度はガドルとの戦いに敗れ死んだ。
 死後、というのは思いの外、居心地が良くもあり、悪くもある果てなのだが、それについて生者に教える事は何もない。
 強いて言えば、ヴィヴィオや杏子は、それぞれ別の形で近い物を感じた事があったが。


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