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変身ロワイアルその6
612
:
BRIGHT STREAM(3)
◆gry038wOvE
:2015/09/02(水) 18:24:39 ID:RQpuUNRs0
──いや……だが、やはり、そんなはずがない。
彼女たちはそれをモニター越しにしか見ていなかったが、彼は少なくとももう、死んでいるのだから。
それでも、それは幻聴と呼ぶには、あまりにもはっきりしすぎていた。言葉は続いていく。
「なら、ヴィヴィオに伝えとけ。……こんなに強くて良い友だちがいれば、お前はまだまだ、どこまでも強くなれるってなっ!」
群れの向こう側からショッカー怪人を格闘技で撃退しながら近づいて来る声は、だんだん姿まで伴ってきた。
見えてくるのは、揺れる黒いおさげ髪──そして、真っ赤なチャイナ服。
それらが微かにでも見え始めた時、確信する。その場にいた者たちの間に呆気に取られたような表情が見え始め、そして、誰もが理解する。
それが一体、誰なのかを──。
「──それに、お前らもだぜ」
男の顔は、はっきりと彼女たちの瞳に映る。
彼には、「ロストロギア」の反応が強く出ていたのだが──誰もそんな事を気にしなかった。それは確かに、味方そのものであったからだ。
「早乙女乱馬、さん……?」
コロナとリオの前に現れた男は、頷いた。
あの殺し合いの場において、ヴィヴィオやアインハルトを保護し、彼女たちに幾つも助言した一人。
そして、参加者たちを苦しめたン・ダグバ・ゼバに、煮え湯を飲ませた強き男であった。
「よしっ、お前ら、まだ元気あるよな? 元気があんなら、まだまだ行くぞ!」
死者の手助けに二人も驚愕したのだが、同じ事がほとんど同時に、艦内のあらゆる場所でも起こり始めていた。
──クルーと怪人たちとの戦いに、死者が割り込んでくる現象だ。
それは、『闇の欠片』によって引きだされた殺し合いの記憶そのものであるのだが、確かにその意志は大道克己の言った通り、艦にいる者たちの援護を始めているのだ。
仇なす者もいるとはいえ──この艦を守ろうとする者の方が多数であった。
それが多くの参加者たちの本質。──如何に多くの邪心の塊が湧き出で続けたとしても、折れる事なく戦い続ける者は必ずどこかにいる。
◆
はやてたち面々が今から向かうのは、時空移動システムを司るアカルンと転送装置のある転送室だ。
今は、アカルンがそのシステムを司っており、サウラーが主にその場を管理している。夜や開いた時間は、ウエスターも共に交代で警護に当たっていたため、今は、二人のいずれか──あるいは二人のいずれもによって守られているのだろう。
敵側も、特に強く結界が張られたあのエリアにはまだ立ち入れていないらしい。……が、敵も同じようにして、全てを制御する部屋を探し彷徨っている。
それより早く転送室に辿り着き、ベリアルの世界の座標まで彼らを一刻も早く転送する準備をせねばならなかった。──戦闘の為の一通りの装備は、その近くに設置されている。
「……あともう少し!」
はやてが言った。
思いの外早くそんな言葉が出てきたので、彼らは少々安心し、それと同時に、それだけ早くベリアルとの決戦の地に向かわなければならないという事実に気づいた。休息は充分に取っており、いずれの身体にも別段調子の悪い所はない。
しかし、問題は、心の準備の話であった。──まだ一日猶予があると思っていたのに。
「もう少し、か……」
そんなやり切れない想いの籠った言葉を翔太郎が呟いた。それが誰の言葉であったのかはどうでもいい事だ。結局のところ、誰しもが憂いを持っていた。
勝利への自信が全くないわけではないが、たとえそれでも──ここをこんな状態で任さねばならない事には少々抵抗もある。
そんな気持ちを察してか、闇の欠片の仮面ライダーアクセルが翔太郎の方を見つめた。
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