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変身ロワイアルその6

608BRIGHT STREAM(3) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:23:27 ID:RQpuUNRs0
 ──翔太郎も、彼を、知っていた。
 それも、尋常ではないレベルで。

「……人とメモリは惹かれあう、か。なるほどな……俺も何となく立ち寄っただけで、懐かしい奴らと……新しいエターナルと会えたわけだ」

 そんな独特の口調で、それぞれが確信を抱いた。
 だからこそ、わけがわからなかったのだろう。──その男は、翔太郎の記憶の中では、三度も死んでいるはずだった。

「大道……」

 一度、非業の交通事故で死に。
 一度、仮面ライダーダブルに倒され。
 一度、仮面ライダーゼクロスと相打った。

「克己……!」

 そんなかつての仮面ライダーエターナルの変身者──大道克己と、殆どが同じだったのだ。それが現実に目の前にいるという事を知って、翔太郎たちは固い息を飲み込んだ。
 良牙たちが、信じがたいといった様子でエターナルに言葉をかけた。

「何故、貴様がここにいる……!?」
「大道……地獄から迷い出たかっ!」
「地獄──? いや、今の俺は死人ですらねえ。ただの記憶のデータの集合さ。どういうわけだか、そいつが俺を再生しているらしい。つまり、お前の相棒と同じさ」

 良牙と翔太郎が、並んで立ち止まり、構える。
 未だ、彼への警戒心は解けないままだ。──エターナルがいるならば、まだ別の戦士がいるのではないかという想いも湧きあがった。かの、怪人軍団に紛れて、想わぬ大物が釣れてしまったらしいと見える。
 それを見ていたはやてが、もしかすると──あるデータとその存在が合致するのではないか、と感じた。

「この反応……まさか──『闇の欠片』かっ!?」

 誰もが、はやてに注目した。
 はやてが口にしたその情報に、ヴィヴィオやレイジングハートまでも当惑した様子だった。──“名前”だけは、確かにどこかで聞き覚えがあるのだ。
 彼女たちも、かつてその名を聞き、それが起こした重大な事件に関わったような心持さえする。

「闇の欠片……?」
「……記憶から形状をコピーして、人格を再生するタイプのロストロギアや。時には、遠い過去の人格が再生されたり、裏の人格が再生されたりする事もある……!」

 はやて自身が、非常に切迫したようにその説明をした。
 確かに、ヴィヴィオやレイジングハートもまた、あるいは──その効果を、どこかで実感していたのかもしれない。何となく想像の通りだった。
 それは遠い記憶の彼方に閉ざされており、決して開かれる事はなかったが、目の前に仮面ライダーエターナルに対しても、──エターナル自身には会っていないというのに──奇妙な懐かしさを覚える。そのロストロギアの反応を覚えているのだろう。
 ヴィヴィオの真上でクリスもまた、戦慄し、構える。

「なるほど。闇の欠片、か……。俺はそんな名前の物体でできているわけだ。──まあ、俺にとってはそんな事はどうでもいい」

 エターナル自身も、自分が何故こうしてここにいるのかわかってはいなかったが、それについてこれといった執着は見せないようだった。
 死者でもあった彼にはそんな気持ちもないのだろう。
 良牙は、より一層身構えた。
 全身の筋肉が硬直し、エターナルメモリを何の気なしに仕舞う懐に注意が向けられる。

「まさか……エターナルを取り返しに来たのか?」
「残念だが、それは違うな。エターナルはもう俺を必要としていない……そいつはお前もわかってるだろ?」

 エターナルは、──いつか見た夢のように、そう告げた。
 仮面ライダーエターナルの姿をしていながら、彼は記憶の結晶でしかない。腰を巻いているロストドライバーやエターナルメモリは偽物でしかなく、克己自身の記憶が「本物」の想いを尊重したのだろう。
 言うならば、大道克己の亡霊の意思は、そういう発想に行きついたのだった。


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