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変身ロワイアルその6
602
:
BRIGHT STREAM(3)
◆gry038wOvE
:2015/09/02(水) 18:20:39 ID:RQpuUNRs0
だが、敵の群れがやって来る場所は一か所ではなかった。
ランダムに九つ作られた時空魔法陣は、ニードルに制御された再生怪人の軍団をアースラに派遣し続け、アースラ内の人員では到底片づけきれないような物量作戦を敷く。──入り口が多数作られてしまったのが問題であるかもしれない。
これまでのアースラの構造には問題はなかった。しかし、今は違う。──ベリアル側がその安全設備を打ち壊す技術を有していたのだ。
あらゆる世界の怪物たちがわらわらと現れ、アースラを埋め尽くし始めた。
◆
果てのないようにさえ感じる長い廊下で、切迫する艦内放送を耳に通しながら、ニードルはまだ危機感の欠片も見せる事なく歩いていた。
廊下の真ん中をのんびりと歩いているニードルの真横を、次々に、血気盛んな仲間の怪人たちが追い抜いて行く。
彼らは軒並み、殺し合いの場を待ち望んで、能動的に敵を討とうと走りだしているようだった。しかも、自分自身の死を全く恐れる事なく進んでいる。
ニードルの支配下にある事だけが原因ではなさそうだ。──彼らは、ヒーローに倒された恨みを体のどこかで捨て去っていないのだろう。こうして蘇っても尚、彼らは悪役としての矜持に満ち溢れ、魂でヒーローへのしみを忘れない。死は最初からリスクに入っていないのだろう。
仮面ライダーたちと戦う、「BADAN」の怪人同様だ。
だが、ニードルはこんなにも使い勝手の良い駒を持ちながらも、それだけで不満足に感じる、渇いた心の持ち主だった。
だからこそ、彼はある準備を怠らなかったのだ。
ある意味、秘密兵器でもあり、彼の新たな実験材料の一つでもあった道具を実験する最後の機会が今であると思っていた。
ここから先は、ベリアルからの命令は足枷にしかならない。
この最後のミッションで、ニードル自身が、自分の意思で『遊んでみる』のも良い。彼もまた、バトルロワイアルの観客の一人として、自分自身の見られなかった残りの因縁を全て、見届けるのを待ち望んでいるのだろう。
不服に終わった試合もあったからこそ──自分よりもまず、他人の手腕を頼ろうとした。
「闇の欠片……さて、効果はいかほどでしょう」
ニードルが手に入れた『闇の欠片』。
それは、「闇の書」から生まれ、一つの事件を起こしたロストロギアだ。「記憶」を再生し、それに形と意思を与える──ゆえに、死者でさえもコピーし、生者の目の前に再現するという恐るべき遺物であった。
これによって発生した『闇の欠片事件』は、高町ヴィヴィオやクロノ・ハラオウンも関わった出来事であったが、タイムパラドックスを回避する為に管理局内で記憶消去が行われ、現在は彼らの記憶上には事件の記憶はない。時空管理局内に記録が残っているのみで、影響のない時代に行きつくまで、殆どの現代人には封印され続けるデータとなろう。
しかして、ニードルはベリアルの力によって、それを複数個得て、「島」の記憶をこのアースラ内部に発動し、生き残った参加者たちに混沌を齎して見せようとしていたのである。──あるいは、それが相手にとって満足に思える結果であるとしても。
主催側であると同時に、エンターティナーでありたいこの男は、──それを実行した。
「──ガドル、ダグバ、ガミオ、ノーザ、アクマロ……。ガイアセイバーズを苦しめた強敵たちの、再来です」
彼ら、BADANの中でも、ニードルの好むやり方だった。
──死者を還らせる、というやり方は。
やがて、あの殺し合いの中で、参加者に敵対し続けた外道の怪物たちの記憶が、ニードルの手にした『闇の欠片』によって、あらゆる場所でばらばらに再生され始めた。
ゼロではなく、既にあった物から誕生していく物体は、再生が素早い。
眩い光を発したそれは、だんだんと人の形状に近づいていき、やがて、その体に色を灯し始めた。それぞれ、全く別の、しかしいずれも見覚えのある姿へと変質していく。
ン・ガドル・ゼバ。
ン・ダグバ・ゼバ。
ン・ガミオ・ゼダ。
ズ・ゴオマ・グ究極体。
ノーザ。
筋殻アクマロ。
腑破十臓。
ダークメフィスト──溝呂木眞也。
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