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変身ロワイアルその6

599BRIGHT STREAM(2) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:18:26 ID:RQpuUNRs0

「結果的に世界は酷い事になってるじゃねえか」
「そう。……だが、それは結果論だ。僕たちはこんな結果は求めていない──だから、寝返ったんだ」

 簡単に言うようだが、吉良沢ではなく、織莉子が俯きだしたのを見て、翔太郎はそれ以上、責めるのをやめた。──考えてみれば、予知能力者という物には、絶望的な未来が見えた場合に何もできないというジレンマがある。絶望を待つしかない彼らの人生は、決して翔太郎のような普通の人間にはわからない物であるのだろう。
 ……ある意味では、同情的に捉えられる部分があるかもしれない。

「こういう冷徹で機械的な言い方しかできないけど……。僕も、君たちのように巻き込まれた人間には申し訳ないと思っている。勿論、左翔太郎……あなたにも」
「……私たちの犯した罪は、いずれ、この艦の辿り着いた先で裁かれる事になるでしょう」

 吉良沢と織莉子は浮かない顔でそう言う。──彼らもまた、言ってしまえば、殺し合いの被害者なのかもしれない。
 サラマンダー男爵が、そうであったように……。

「……」

 翔太郎は、誰よりも犯罪を憎む男だった。しかし、それでいて、誰よりも犯罪者を憎まない男でもあった。──彼らを許す時が、人より早く来てもおかしくはない。
 それゆえ、それ以上は、あくまで質問として彼らに投げかける事になった。

「──だが、あんたたちの予知って奴で、こうなっちまう事は予知できなかったのか? それができるなら、世界の事だって──」
「無理だった。あの殺し合いそのものがイレギュラーだったんだ。……だから、ベリアルや財団Xも僕たちを手元に置いて予知の実験しようとしたんだろう。そして、結局それは、来訪者や僕たちの力をもってしても感知できなかった……。能力が取り戻るまでには大きな時間を費やす事になってしまったんだ」

 そう吉良沢が返答した時、ふと、翔太郎はその言葉の微妙なニュアンスを感じ取る事になった。
 能力が取り戻るまでに大きな時間を費やす事になった……?
 つまり、それは──能力が既に取り戻った、という事ではないか?
 そんな疑問を、翔太郎は次の瞬間、口に出していた。

「……能力が取り戻る……? それって……今は、正常に予知能力が使えるって事なのか? だとすると、ここで何かを予知した……?」
「──ああ。ここにいる織莉子は、ただ一つだけ、ここの機材の力を借りる事で、ある予知を成功させたんだ」

 もしかすると、ここにある部屋そのものが、彼らが再度予知能力を取り戻す為の道具が揃えられている場所だというのだろうか。クロノたちも口にはしなかったが、その為の施設がこうしてここに備えられているという全面的なサポートが行われていたわけだ。
 隠し事の匂いを感じ取り、こうして来てみた翔太郎だが、よもや、主催側の協力者と出会う事になるとは思っていなかったのだろう。

「じゃあ、その“予知”ってのはなんだよ」

 だが、それよりか、彼が気にしたのは、その予知の内容の方である。
 彼女がここで行った予知──それは一体何なのだろう。
 吉良沢は、少し表情を曇らせ、告げた。

「この艦に、敵が侵入する。そして、この艦は──」

 吉良沢の言葉は無情に響く。





「──ベリアルの島に辿り着くまでもなく、沈んでしまう」








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