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変身ロワイアルその6

593BRIGHT STREAM(2) ◆gry038wOvE:2015/09/02(水) 18:15:52 ID:RQpuUNRs0
 あまりにも簡単で雑なやり方に、良牙への不信感が一気に高まってくる。

「……わかった。もうちょっと簡単な所から行こう。──と思ったが、爆砕点穴は難しいな。あれの修行は辛いし、マトモなら死ぬかもしれない。だとすると、俺の技は──」

 爆砕点穴の修行は、突き指になるか、指の骨が折れるかという事が確実に起きる。
 巨大な岩石に叩きつけられて生きていられるくらい元が頑丈でなければ修行自体が不可能だし、それをヴィヴィオやリオやコロナのような少女にやらせるわけにもいくまい。
 だとすると、他にできそうな技はないだろうか。

(な……ないっ!!)

 考えてみると、良牙には技のバリエーションがそこまで多くはなかった。
 武器を扱うくらいの事なら得意だが、デバイスを持ち、それを使いこなす彼女たちに対して武器の取り扱いを教授できるほど良牙は偉くはない。
 しんとした静寂が流れてくる。──だんだんと、周囲が獅子咆哮弾以外にほとんど技がない事を察し始めたのだろう。

「……あの、一応、無差別格闘早乙女流の技のデータをお借りして、それを持ってきたんですけど、使いますか?」

 ヴィヴィオが、良牙の近くに寄り、フォローを入れるようにそう彼に囁いた。
 早乙女流の秘伝書の復元版がヴィヴィオの手に握られている。どこで取り寄せたのかはわからないが、アースラが何度も時空を超える中で玄馬から受け取ったのかもしれない。

「ん? 乱馬たちの……? どれ……ちょっと見てみるか」

 良牙はそれをヴィヴィオから借りて、少々見てみた。
 一応、乱馬が無差別格闘早乙女流を名乗り、乱馬の父がその元祖である事は何となく知ってはいるものの、その全貌は、今のところ良牙にもよくわかっていなかった。
 元々、頼る気もなければ、それを盗む気も対策する気もなかったので、これまで乱馬たちの技を気にした事はほとんどないのだが、乱馬の死によって後継者もいなくなったようなので、とりあえず目を通すくらいはしてやりたいのだろう。
 ムースから技を一つ譲り受けたように、一つくらいは何かベリアルの撃退に役立ててやろうと思ったのかもしれない。

 猛虎落地勢──土下座する。
 敵前大逆走──逃げながら頑張って対策を練る(知ってた)。
 魔犬慟哭破──相手の攻撃が届かないところで相手の悪口を叫ぶ。
 ¥(かねくれ)──金銭を要求する。
 胸囲掌握鷹爪拳──女性の胸を後ろから掴む事で一時的に動きを止めさせる。
 地獄のゆりかご──相手に抱きついて頬ずりする事で不愉快な思いをさせる。

 ざっと見たところ、無差別格闘早乙女流の技としてあるのはそんな物だった。
 その殆どは、攻撃でも防御でもなく、もはや戦闘ですらない技ばかりだ。
 良牙とヴィヴィオは、あまりに酷すぎる早乙女流の技を前にして、唖然として顔が一瞬、「へのへのもへじ」になってしまった。
 ──だが、すぐに正気を取り戻した。

「なんだこのスチャラカな奥義は!!」
「あーっ! 破らないでくださいっ!! まともな物もあるんですから!! ほら!!」

 ヴィヴィオも、それの殆どがまともでない事はわかっていた。それどころか、正当な後継者の乱馬ですら一部の技に対しては呆れてばかりである。
 中には、乱馬も一目を置く海千拳と山千拳も存在しているのだが、それは邪拳として葬り去られており、山千拳の秘伝書が一つだけヴィヴィオの手元に残っているのみだ。
 ヴィヴィオは、慌ててそちらを良牙に手渡した。

「……なんだこれは」
「山千拳の秘伝書だそうです。なんでも、封印された技だとか。私の支給品でした」
「なるほど……」

 良牙はそれを見て、周囲に人がいるのをすっかり忘れ、一人で頷いていた。
 獅子咆哮弾の秘伝書と大きく違うのは、あれに比べて大分丁寧に内容が書かれている事だろうか。
 ──いや、確かにそれが強力な技なのはわかるのだが、もしこの特訓をすれば、ここにいる誰かを殺めかねず、また、このアースラさえも壊してしまいかねないリスクがあるのが、良牙にはわかった。

「……わかった。──だが、これも教えるわけにはいかねーな」

 封印された邪拳をこれほどの相手に教えるわけにもいかず、良牙もそれは諦める。


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