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変身ロワイアルその6

575 ◆gry038wOvE:2015/08/11(火) 00:57:15 ID:yQqdBdkE0

 ──ユートピアはゴールドメモリとはいえ、T2以前のガイアメモリである。
 仮面ライダーエターナルに変身できる響良牙が「エターナルレクイエム」を発動した場合、彼のユートピアメモリも機能を停止してしまう事になる。──この世界の戦闘制限が解除されている現状では、加頭には生身で戦うリスクも生まれるわけだ。
 そもそも、エターナルレクイエムの有無に関わらず、かつては大道克己の変身した仮面ライダーエターナルには一度殺された経験もあった。
 仮にあのマキシマムドライブが発動してしまった場合、ドーパントへの変身能力もなしに彼らと張り合うのは不可能であろう。

「お願いします……必ず、陛下のお役に立ってみせます……ッ!!」

 ならば、もう、恥も外聞もない。
 ──今は、ベリアルにとっても、こうして加頭に力を与えた方が、手間が省けるであろう事は明らかであるし、加頭が懇願すれば、ユートピア以上の力を授けてくれるだろう。
 そこまで頭の中の算段がある上での言葉であるのは、ベリアルも理解しているはずだ。
 要するに、利害が一致し続ける限り、それぞれは裏切りもせずに互いに協力し合える事になる。──今もそうだった。これはあくまでポーズで、互いの目論見や性格は理解しあっている。なのにこれだけ滑稽な劇を見せているのは、どこかおかしくもあった。
 加頭は、少しばかり反応を待つ事になったが、すぐにベリアルはにやりと笑った。

「面白ぇ……。頭を上げろ」

 加頭は言われた通り、頭を上げた。額に土がこびりついているが、別段、彼が気にする事はなかった。もしこの場に誰か人がいれば、誠意のない土下座だというのが誰の目にも明らかだっただろう。
 ベリアルも、その先を告げた。

「そこまで言うなら、くれてやる」
「ありがとうございます……」
「ああ、立てよ」

 ベリアルは、加頭を切るほどの事ではないと判断したのだ。
 それは加頭の目論見通りだった。クオークス、NEVER、ドーパントの力に加えて、──こうして、ベリアル帝国の一員としての新たな力を得られるという事。それは未だ蘇らない冴子に代わり、一時的に加頭の心を満たすだろう。
 彼の中には、微塵も──それに対しての恐れはないし、それがベリアルにとって脅威となる事もない。
 敵を返り討ちに出来、ベリアルに逆らうには至らないほどの力が加頭の手に入れば、両者にとってそれは“得”だ。
 加頭は、立ち上がった。

「俺様の持つ、闇の力だ……少し我慢しなッ!!」

 ベリアルの右腕──その巨大な爪の先から、加頭の頭部に向けて、膨大などす黒い闇の力を雪崩れ込ませた。それは頭部を抜けてつま先まで、身体の芯を侵していく。
 かつてミラーナイトを操ったベリアルウィルスにも似ていたが、その中にはあらゆる怪獣や宇宙人たちの怨念を吸収しており、加頭に加頭としての自我を持たせたまま、力を与える事ができるのだ──ダークザギがやった事の応用である。

「──────ッッッ!!?!??」

 彼らの体長の差のお陰もあって、まさに加頭の全身を包み込む雪崩そのものとなった。飲み込むにはあまりに量が多すぎる──。
 しかし、加頭が頭から被っているその闇は、彼の身体を傷つけたり、痛みを与えたりする事はなかった。ベリアルが粗雑に加頭にぶつけた力の全てが、彼の中に吸収されていく。
 ただ、加頭の中では体の芯から崩れ、裏返るような奇妙な感覚があった。
 苦しいようで、心地よい、ただ不気味な反応。

「この力を授けてやるのは、お前だけだ……感謝してもらうぜッ!!」
「うっ……ウォォォォォォッッ!!!!!!!」

 加頭の頭の中に、それらの力の使い方が浮かび、それに対する感謝の念が湧きでた。
 冴子への愛は消えずそのまま、加頭のこれまでの生の経験や人格にも大きな不調を齎す事もなく──ただ、確かに、彼の中の何かを刺激しながら。
 それくらいの事は、加頭にとってはどうでも良かった。
 NEVERになった時点で、自分自身の人格などに対する執着もそこまで濃くはない。
 力が体の底から湧きあがってくる喜びが──彼の中に、実に久々に生まれてくる。
 加頭の目に笑みの形が形作られる。

「────久々の、感覚だッッ!!!! この喜び……この悲しみ……ッッ!!!!」


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