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変身ロワイアルその6

574 ◆gry038wOvE:2015/08/11(火) 00:56:56 ID:yQqdBdkE0

 この場には既にカイザーベリアルと加頭順の二名しか残っておらず、後は園咲冴子の再誕の瞬間に、それぞれが道を分かつ予定だ。
 ──カイザーベリアルは、今はまだ、ここに残っている。

「陛下!」

 加頭が見上げると、そこにはカイザーベリアルの巨体が映った。彼のこの鋭い目つきに威圧感を覚えないのは、“死”の恐怖と“感情”なきNEVERである加頭くらいの物だろう。
 しかし、それでも加頭はわざわざ命を捨てる性格でもない為、ベリアルに対して明確な反抗を取るつもりはなかった。
 ──いや、捨てたくないのは“命”よりも、“目的”の方だろうか。
 冴子を得ようとする気持ちは未だ変わらない。もしかすると、加頭は常に、命そのものよりも、生の中で偶然芽生える目的だけを追ってきた人間なのかもしれない。

「なんだ? ……“ユートピア”の加頭」

 現状、ベリアルの方が格上であるが、彼もまたベリアルの野望への協力を惜しまなかった加頭に対する感謝の念は、ベリアルにも少なからずあるらしく、用済みだからと加頭を殺したり、彼に非協力的な態度を取ったりするという事はなかった。
 冴子と加頭が敵にならない限りは、絶対にこの関係の両立は崩れないだろう。──ベリアルも、加頭を利用する為には協力を惜しまない。
 そもそも、ベリアルは、悪の権下でありながら、利用できる部下には一定の待遇や見返りを提供する性格ではあった。
 ──それは、ちょっとした反抗や失敗だけでも崩れる脆い関係であったのだが。

 ……とはいえ、こうして明確な上下関係がある以上、その協力を得るには、せめて頭を下げなければならない。
 日本で生きてきた組織の一員の加頭は、こうして目の前の格上に対して、頭を下げる事には躊躇はなかった。

「……遂に、蒼乃美希と血祭ドウコクを除く全員がアースラに乗船しました」
「そうか──」

 ベリアルがここに残り続けているのは、こうして未だ加頭の報告を聞く必要があるからだ。
 ここまでの活躍で、加頭が、絶対に裏切らず、目的の為には協力してくれる格下であるというのは理解しているが、こうして邪魔者となる参加者を全員脱出させ、外の世界で殺す作戦は見事なまでに失敗している。
 ある意味では、こうして残り続ける事も、加頭が本当に使える人間なのか見極める品定めの延長でもあるのかもしれない。
 勿論、ベリアルにも許しがたい結果が出た時、加頭も冴子もこの世からいなくなる。

「──しかし、蒼乃美希は消息不明。血祭ドウコクはこの場への出航を拒否しています。陛下の敵になるようなお相手はいないかと」
「ああ。確かに、俺様にはそんな奴らは敵じゃない」

 加頭はその言葉で、少し眉を動かした。
 そんな加頭の様子を知ってか知らずか、ベリアルは次の一句を告げる。

「──奴らに来られて問題なのは、お前の方じゃねえのか?」
「……」

 ベリアルは、鋭かった。
 ウルトラマンたちがこの世界に侵入できない現状では、当面の敵は、せいぜいウルトラマンノアとダークザギくらいの物だったが、ザギは破られ、ノアも封印した。そうなった以上、もはやデータ上、ここに来られる参加者にはベリアルの障害となるレベルの相手はいないし、来たところで返り討ちにできる。
 ただし、加頭と冴子くらいの実力の場合、そうは行かない。

「加頭。俺の前に現れたのは、ただ報告する為じゃねえな」
「……おっしゃる通りです」

 加頭は、今度は逆に、眉一つ動かす事がなかった。
 元々、それを頼みに来たのだ。──今のユートピアだけでは埋まらない実力差を、ゼロにする為に。
 悟られた以上は、卑屈な態度を取り続けなくても良いだろう。
 彼は、無表情なまま、地面に手をつき、這いつくばって、ベリアルに懇願する。

「──ユートピアは旧世代型のガイアメモリです。制限が解けた今、エターナルと対峙すれば勝機はない……! だから陛下、力を下さい……! 私に、冴子さんと私の二人だけの理想郷を守る力を……ッ!」


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