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変身ロワイアルその6

573 ◆gry038wOvE:2015/08/11(火) 00:56:36 ID:yQqdBdkE0

 この殺し合いの島を開拓し、冴子とただ二人で管理を逃れる夢を──彼ら死にぞこない連中が邪魔しようとする。
 加頭は映像を見て、遂に蒼乃美希と血祭ドウコク以外の全生存者が、時空移動船に回収されたと知る事になった。あるべき世界に留まっていればいいものを、わざわざここに戻ってくるのだ。
 折角、元の世界で死ねる幸福を提供してやったつもりが、奴らはそれを拒んだ。──何故、彼らが揃いも揃って、こんな決断をするのかわからない。

 ──今は、涼邑零が時空移動船に回収された段階だ。あのガルムとコダマも参加者の殺害に失敗したらしい。時間軸の修復や未来の魔戒騎士の参戦など、かなり想定外の出来事が起きたのだ。

「──奴ら、この期に及んで……またこの場所に戻って来る気かッ!!」

 加頭は、モニター越しにその事実を知り、手元の装置を強く殴った。
 その時点では、頑丈なモニター装置には異常がなかったのだが、そこから伝ったコードが突如、音を立てて断裂する。──クオークスとしての彼の超能力が無意識に発動してしまい、そこまで伝播していったのだろう。
 幾つかの映像がぷつりと途切れ、少しばかり肩で息をした加頭は、冷静になって暗いモニターに背を向けた。
 再び、この問題の原因は一体何であったのか考える。

 ドブライ。
 コダマ。
 ガルム。

 主催本部の幹部級が殺害され、キイマ、レム・カンナギ、カタルといった第二ラウンドの主用メンバーも全員死亡した。キイマはカンナギの裏切りによる物であるが、彼のように身に余るような野望を持つ者が冷静に行動しなかった場合の弊害の大きさには打ちひしがれる。
 エターナルの力を身に着けた良牙などには、財団Xの中でも手練れのメンバーに強力な装備を与えて派遣したつもりであったが、その超銀河王やサドンダスも、良牙やムースにあっさりと敗れてしまった。
 ──彼らの野望と間抜けさが足を引っ張ったわけだ。

 あの理解不能な野望が、この細やかな理想郷さえ邪魔をする──。
 彼らがあれほどまで敵を甘く見てかかるとは思いもしなかっただろう。
 ベリアルに授かった未来のコアメダルやコズミックエナジーの力、そしてギンガオードライバーを良牙対策の為に彼らに託したのは全て無駄だったわけだ。

「寄せ集めは……私たちも、同じか……」

 しかし、怒ったところで死者に対しては何もできず、悔やんだところでどうもなりはしなかった。
 血祭ドウコクがガイアセイバーズに対して、「寄せ集め」と言っていたが、この主催本部も同様に寄せ集めでしかなかったのだ。──これが、第二ラウンドというゲームの敗因だろう。
 かつての仲間との連携の失態に苛立ちながら、加頭はモニター室を後にした。

(それならば。私とベリアル様だけの力でこの理想郷を守るのみ……)

 彼の中には、既に他人を頼りにする組織人としての心はなかった。
 ただの一個人として──信頼すべきはカイザーベリアルと己だけだ。そして、時がくれば、ベリアルはこの島を去り、加頭は冴子と二人だけのこの島を獲得できる。

(待っていてください、冴子さん……)

 冴子が目覚めを待つ実験室の前を通りがかった時──彼の決意は一層強くなった。







 加頭は、地下施設に存在するワープ機能を使い、地上に出た。
 やはりというか、少し空気に味があった。暫く地下に閉じこもり続けたせいで全く気づかなかったが、外は夜だった。冷えた空気と星空が目に入る。
 それを美しいと思う気持ちは、勿論、彼にはない。──既に、人間らしい感情など殆ど欠落しているのだから。
 彼の中にある感情といえば、それは冴子への──歪んだ、てごたえのない愛だけだ。


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