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変身ロワイアルその6

572 ◆gry038wOvE:2015/08/11(火) 00:55:20 ID:yQqdBdkE0



 ────変身ロワイアル地下施設。



 加頭順がいたのは、そのうち、高さ四メートルほどの長方形の実験室だった。“悪の組織の暗躍”や“宇宙人の来訪”がなかった世界の地球人類が得るには、あと百年待たねばならない高性能な装置やテクノロジーがまるで散らかされるようにその一室に集められている。
 部屋の中央には、水槽のような透明な入れ物が部屋の形と同じ向きに配置されていた。入れ物の中には、透き通るような綺麗な緑色の培養液がたっぷりと注がれており、見れば、人肌や頭蓋のらしき物が浮かんでいた。

「冴子さん……」

 園咲冴子の肉体の再構成作業は加頭順ただひとりの手でも進んでいた。
 培養液に浸かった冴子の艶めかしい裸体は、四肢と髪を除いてほぼ再生しつつある。──液体の中で揺られる彼女の姿に、生前の面影が戻ってくる度、加頭はただ時間が過ぎゆくのが楽しみになっていた。
 現段階ではまだ完全な人間の姿には見えず、ばらばらの亡骸を眺めているのと大差ないが、先ほど見た時と比べても、再生は着々と進んでいる。
 ここまで状態が酷くなってしまったのは、やはり、冴子の肉体がバラゴにホラー化させられ、タイガーロイドによって完全に破壊されてしまった事が原因だ。──これにより遺体の断片を回収するのには必要以上の時間を要したし、肉親である来人の遺体が残っていなければ時間が更にかかっただろう。
 しかも、冴子の蘇生は、組織と一切関係ない加頭個人の野望であるがゆえ、その為の作業全てを加頭が一人で執り行わなければならなかった。助手がいないのは手間をかける。
 せめて側近の田端などが生きていればもう少し捗っただろうが、そちらも美国織莉子や吉良沢優などの裏切り者一派に殺されてしまった。──やはり、彼の死は加頭にとっても痛手であったといえよう。

 とはいえ、カイザーベリアルから授かった肉体再生技術は確かな物であった。──ベリアルが、BADANなどの諸組織の技術を拝借したお陰でもあり、元々財団Xが有していた『NEVER』の技術の応用が効いたのは助かった。
 現実に、園咲霧彦やゴ・ガドル・バなどは、死者でありながらベリアルの有する技術によって『NEVER』以外の形で再生されていたし、元の世界でも続々と死者が蘇生する想定外の出来事も起きている。

 まあ、結論から言えば、人間を蘇生する事は、複数世界のテクノロジーや法則、魔術などを利用すれば、充分“可能”な事なのだ。
 時間をかければ、この殺し合いで死んだ全員を甦らせる事だって、何ら問題はない──。
 勿論、たとえ殺されるとしても他の参加者にそんな事をしてやる義理はないし、加頭にとっても、冴子が唯一の例外だっただけだ。

 加頭は、あらかじめ、これからここを再び建て直し、ベリアルの管理が行き届かないこの世界で、冴子と共に住まわせてもらおうとベリアルに懇願していた。
 ベリアルもまた、加頭の願いと本心は理解しているのだろう。たかだか二人程度、自分の支配する世界から外れたところで、別に不満足はしない。──そのくらいの度量は彼にもあるし、要となる主催陣営の人間には褒美も滞りなく用意されている。
 そもそも、この場において、『変身ロワイアル』の企画進行を行った加頭に見返りを授けるのは当然であった。
 あくまで、加頭などの主催幹部の特別扱いが悟られないよう、それを他の仲間たちにはひた隠しにしているだけであり、主催者側の願いもベリアルは叶えられる限りは叶えてやるつもりだ。



 しかし──。
 そうして着々と加頭の理想郷を構築する準備が整いつつある中で、外の世界では、加頭にとって、想定外の問題が起こり始めていた。
 外の世界に逃がし、財団Xのキイマ以下に殺害するよう連絡していたはずの生還者たちが、いまだ一人も仕留められる事なく、こちらに向かっているという件だ。──敵を甘く見たつもりはないが、彼らはそれぞれのやり方で第二ラウンドを突破し、この加頭の世界に侵入しようとしているのである。
 これは、大きな失敗だった。正常に殺し合いが進んでいればこうはならなかったのだろうが、やはり初の試みだった事もあってか、主催の思惑通りには話が進まず、結局は外の世界に逃がし、更なる突貫工事として第二ラウンドを行う事になったが──それも、無駄であったのだ。

「おのれ……」


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