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変身ロワイアルその6
567
:
帰ってきた外道衆 特別幕
◆gry038wOvE
:2015/08/09(日) 04:22:17 ID:yTeAA/4M0
「……つまり、何かい? あんたは、あの連中を信じてるってのかい?」
「信じるんじゃねえ。奴らが勝つ──そういう事実を言ったまでだ」
ドウコクの言葉は渇いていた。その否定には感情がほとんど籠っていない。
彼は本当に、確信めいた結論として、ガイアセイバーズの勝利を信じているわけだ。
その面子の中には、佐倉杏子や左翔太郎のように憎んで然るべき相手までいるというのに、どうしてこう彼らの肩を持つような意見が言えたのだろう。
「アンタがそう言うんならそうかもしれないけどサ。今度ばかりは、アタシも半信半疑だよ」
「信じろなんて頼んでねえからな」
ドウコクも、別段、シタリに自分の予想を信じろとは言わなかった。
少し前ならば、ドウコク自身もこんな言葉を信じる事はないだろう。
だが、現実に、彼らはここまで、殆どの脅威を打ち破っている。
犠牲も生みながら──それでも、着実に。
「……だが、それでも、何故奴らが、自分が死ぬかもしれねえのに、俺やベリアルに立ち向かおうと考えるのかはわからねえ」
「なあ、アンタがそう言うならさ、アンタ自身が訊けばいいじゃないか。……あいつらは、ベリアルに勝って来るんだろう?」
「ああ。必ずな」
少なくとも、この管理によってこの世界は延命されている。
ベリアルの管理がなくなれば、今度は外道衆が現れ、それがこの世界を侵攻するわけだ。
それも、現状ではシンケンジャーの数が足りない。
まだこの世界に存在しているシンケンジャーは、志葉薫、谷千明、花織ことは、白石茉子の四名のみ。この四人だけでは、この世界の滅亡はほぼ確定的だと言えるだろう。
それに、ドウコク自身が訊きたい事があった為、翔太郎たちには、後々この世界に来るよう招いている。
──彼らは、その招待を受け、一体、どう思ったのだろう。
「だからこそ俺はここで騒ぎもせず待ってるんだ。……シンケンジャーとも、しばらくは顔を合わせる事はねえだろう」
ドウコクは、だからこうして此処で坐して待つのだ。
そんなドウコクの後ろには、外道シンケンレッドの影があった。彼も、ドウコクの真後ろで、胡坐を掻いて座っている。長年の殿様癖が染みついているのだろうか。
到底、一人の家臣とは思えない態度で、しかも、六門船に平然と居ついている。
「……いや、そんな事言ったってアンタ。後ろに座ってるソイツはシンケンジャーじゃないのかい」
「あれは空っぽの抜け殻みてえなもんだろ」
「そうかい。でも、本当、とんでもないお土産を持って帰って来てくれたよ。まさかシンケンジャーが外道に堕ちて来るとはね。本当の志葉丈瑠は死んじまったから、本当に抜け殻だけって感じだけども」
「だが、蝉の抜け殻とはわけが違う。奴は動く。だから使える。……たとえば、ここにまたうるせえ蠅が来た時とかにもな」
ドウコクのその言葉には、やや含みが感じられた。
彼は、まだ自分に仇なす何かが現れる事を確信している。
それは、おそらく──ガイアセイバーズやシンケンジャーといった類ではない。
だが、それならば、まだドウコクに立てつく者が現れるというのだろうか。それはシタリには少々信じがたい話であった。
「──アンタも怖い事言うネェ、ドウコク。もうアンタの怖さは知れ渡ったから、これ以上、アンタを狙う命知らずはいないよ」
「どうだかな。……まあ、シタリ、おめえだけは裏切らねえだろうが」
「そりゃあ、アタシだって命は惜しいからネェ」
何があっても生きようとするというのがシタリの性格だ。
それこそ、トカゲが尻尾を切るようにドウコクに助け船を出さない選択を取る事はあるかもしれないが、勝率が高い方に着くという意味で、彼は常にドウコクを裏切らない。
そして、仮にシンケンジャーたちの勝率が高いとしても、彼らとの共存は生存条件に合わない為、外道衆で絶対の長になるドウコクにしかつかないのがシタリだ。
余程野望がない限り、外道衆の多くは同じ判断を下すだろう。
「来るのは、シンケンジャーやあいつらみたいな命知らずと、俺の力をまだ見誤っているバカな奴って事だ」
ドウコクが脇目を振った。
六門船の障子紙の向こうで何かが動いたような気がしたが──気のせいだろうか。
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