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変身ロワイアルその6

559永遠のともだち ◆gry038wOvE:2015/08/09(日) 01:11:22 ID:yTeAA/4M0

「えっ……」
「そうかっ! 美希と同化すれば、俺もベリアルを倒しに行ける……!」
「もしかすると、あの赤い靴の少女はこの為に、美希ちゃんをこの世界に引き寄せたのかもしれません。ゼロをあの世界に呼んで、ノアを再臨させる為に!」
「なるほど……グッジョブだぜ! 赤い靴の少女!」

 どこか嬉しそうなゼロの一言だ。──ベリアルとの因縁が最も深いウルトラマンといえば、彼だからだろう。
 彼も、自分の手でベリアルを倒したいという想いは、人一倍強かった。何度とないベリアルとの戦いの果てで、未だ決着がついていないのを少しは歯がゆく思っている身だ。

「……メビウス、ゼロ。それは、彼女が頷いた場合のみだ」

 そんなゼロとは裏腹に、ウルトラ戦士たちは少し、沈んだムードであった。
 何せ、ゼロの手の上にいる美希の様子に、歴戦のウルトラ戦士たちは気づいていたからだ。
 まるで、その提案に乗り気ではないように、俯いて、拳を握って震えている美希の姿に──ゼロは、僅かばかり遅れて気が付いた。

「怖いのか、美希? 確かにベリアルは強敵だが──」
「違うっ……! そうじゃない!」

 心配そうなゼロの言葉を投げ返す美希。
 彼女の胸にあったのは、ベリアルという敵への恐怖などではなかった。──その為に戦う事には躊躇しない。 
 しかし、その手段として、“ウルトラマンと同化”する事が美希には怖かったのだ。

「あの時、ダークザギを復活させたのは、私の憎しみだった……! ウルトラマンの光を奪われてしまえば、その時またどんな事が起こるか──」

 そう、ダークザギを復活させたのは、美希自身が最後に見せた憎しみであった。
 石堀光彦が桃園ラブを殺害した時、遂に美希の中で、愛や希望よりも憎しみや絶望が勝り、ウルトラの光を、敵を“殺す”為に使おうとしたのだ。周囲の静止の言葉さえ、あの時美希の耳を通さなかった。
 あれは、自分自身の心の闇への恐怖と言い換えてもいいかもしれない。
 ──また、ウルトラ戦士と融合する事で、今度はどんな悪を生みだすリスクがあるのか、美希にはわからず、それが恐ろしかった。
 ウルトラマンベリアルが悪に堕ちたのもまた、その時の美希と同じく、力と闇とが溶け合ってしまった結果であるという。だからこそ、ゼロと共にベリアルを倒しに行く事に抵抗が生まれる。
 ゼロやノアという勝利の鍵を得るには、美希は未熟な部分があったのかもしれない。

「……美希、嫌なら無理にとは言わないぜ。だけどな、ウルトラマンの力を恐れちゃ駄目だ!」

 しかし、そんな美希を、ゼロは叱咤するように言った。
 鼓膜を破りかねないような大声が、美希の耳に響く。思わず、美希はゼロを見上げた。妙な実感のこもった言葉であるように思えたのだ。

「……俺も昔は、ベリアルみたいに力を求めて、ベリアルと同じになる直前になった事があるんだ。その時は、親父やみんなが支えてくれた……だから今の俺がいる!」

 美希は、少し意外そうにゼロの顔を見つめていた。
 彼は話さなかったが──かつて、彼も力に惹かれ、ベリアルと同じように闇に魂を売ろうとした事があるらしい。長らく、罪を犯す者がいなかったウルトラ族であるが、彼はその二番目となろうとしていたのである。
 だからこそ、ベリアルには敵対心だけではなく、どこかで完全には憎み切れない共感がある。いわば、分かたれてしまった光と影だ。それが彼にベリアルへの執着を齎す。
 もしかすれば──彼の父・ウルトラセブンもまた、宇宙の犯罪者となる可能性がどこかにあったかもしれない。

「でも、もしまたあの時と同じように──私の中の憎しみが強くなれば、ゼロに迷惑をかけちゃう……」

 ダークザギの復活と同じように、またウルトラマンの光を奪われるような事があれば、こうして人格を持って一喜一憂するゼロもまた、ゼロではなくなってしまうかもしれない。
 彼の身体がベリアルに乗っ取られれば、それこそ脅威となる。──実際、かつてそんな事があったのだが。

「過去の失敗なんて恐れるなよ!」
「でも現に私のせいで沖さんたちが──」
「それでも……美希、お前にはちゃんと支えてくれる人がいて、守るべき物があるだろ! なら、もう一度、それを守る為に戦える! お前なら出来る……俺は、お前を信じる!」


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