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変身ロワイアルその6

553永遠のともだち ◆gry038wOvE:2015/08/09(日) 01:08:26 ID:yTeAA/4M0

「……あの、……助けてくれたのよね?」
「おう、ちゃんと意識があったのか! 返事くらいしてくれよ!」
「あ、ごめんなさい」
「──で、なんだ? なんでこんな所にいるんだ? 美希」
「それはこっちが聞きたいくらいなんだけど……」

 間が悪かったのか、先に投げかけた質問は流されてしまう。
 知り合いでもないのに妙にフランクな口調も気になったが、それよりも美希が気になっているのは、ウルトラマンゼロは味方のつもりか敵のつもりかという一点だ。
 疑り深くもなっているが、あの殺し合いを生き残った所為──特に、土壇場で石堀光彦の酷い裏切りに遭った所為でもあるのだろう。

「つまり、何も知らないって事か。──やっぱり親父たちに聞いてみるのが一番いいのか?」
「そ・れ・よ・り!! あなたは私を助けてくれたの!? ──っていう、さっきの私の質問の答えは!?」

 美希は、どうにも、このゼロに敬語を使う気が起きなかった。
 相手が人間でないのも一つの理由だが、ゼロの馴れ馴れしく、口の悪い男子生徒のような口調にどうも違和感がある。神聖なウルトラ戦士のイメージが一瞬で崩れる姿だ。
 佐倉杏子が変身したウルトラマンですら、まだもう少し素の要素が抑えられていたような気がするが、ゼロは一切それがない。

「──ん? おっと、悪い悪い。えっと……まあ、これも助けたって事になんのかな? ……俺たちこの星の住人──ウルトラマンは、ずっと、そうやって来た種族なんだ」
「誰かを助けながら生きてきたって事……?」
「ああ。特に、お前たち地球人との絆は深く長いもんだぜ! ──っつっても、今回はお前らに物凄い迷惑をかけちまったか……」

 ゼロが、そう言って項垂れた。語調が少し優しく、彼が今のところ、美希に初めて見せた落ち着きを感じさせた。……いや、落ち着きというより、意味深な湿っぽさというべきかもしれない。
 溜息をつくような声を出しながら座するゼロの近くに、美希は眉を顰めて寄った。

「どういう事? 一体、何があったの?」
「美希……さっきまで、お前、殺し合いをさせられてただろ……?」
「え?」

 その美希の言葉には、色々な想いが詰め込まれている。
 特に、「何故、初対面のゼロがそれを知っているのか」──というのが大きな疑問だ。
 しかし、考えてみると、ゼロが開口一番に美希の名前を告げ、「活躍を見ていた」と言っていた事も繋がる話であった。その言葉はずっと美希の中でも違和感として残っていたが、ゼロとガンQの戦いを前に忘れかけていた。
 ウルトラマンゼロは、あの殺し合いについて何かを知っている。

「あの殺し合いを催したのが、かつてこの星で生まれ、この星の仲間を裏切ったウルトラ戦士──カイザーベリアルなんだ。だからな……今、この星中の人間が責任を感じてる」
「ベリアル……。その名前は、知ってるわ。でも、なんであなたが、私が巻き込まれてた戦いを知ってるの!?」
「それは、俺だけじゃない。宇宙中──いや、全世界中の人がもう知ってるんだ。あの戦いは全部、ここしばらく、世界中に中継されてたからな……」
「──っ!?」

 美希は、驚くと同時に──どこかで、それを納得して飲み込んだ。
 確かに、百人にも満たない人間を相手に、あれだけ大がかりな事をするのは何らかの目的がなければおかしい話で、おそらくはあの出来事は映像データ化されている。──実験、と言われていた気がするが、それは世界中に配信されたのだろうか。
 考えてみると、あの殺し合いは「ゲーム」という形式を取っていて、どこか娯楽性を持っていたようにも思う。
 それは世界に公表する為なのではないか──?
 美希の五指は自然と強く握られた。

「……とにかく、美希! ここにいるより、一緒に俺の親父たちがいる場所に行こう! 詳しい話は俺だけで話すより、親父たちに聞いた方がいい!」

 ゼロはそう言うが、美希にはゼロが敵なのか味方なのか、まだ確定していない。
 この場から出て取って食われるかもしれない心配もあったが──それでも、美希はゆっくりと前に出た。
 ここで信頼できる相手が通りすぎるのを待っても仕方がなく、このゼロというウルトラマンを信用する以外にベリアルや殺し合い、この場について知る方法は見つかりそうになかった。
 第一、疑り深く務めようとしても、必ずしもそうなりきれず、時には直感であっさりと人を信じてしまうのも、また人間の性である。


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