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変身ロワイアルその6

552永遠のともだち ◆gry038wOvE:2015/08/09(日) 01:07:57 ID:yTeAA/4M0
 赤と青と銀の三つの色で構成されるウルトラマンゼロの背中は、確かに美希が見てきたウルトラマンたちの共通のカラーと全く同じだった。その意匠を継いでいる彼は、もしかすると、確かにウルトラマンであるかもしれない。
 これまで出会ったウルトラマンよりやや線が細くも見えるが、それだけ絞りこまれた姿であるとも言えるし、悪人のようにさえ見える貌は背に転じると頼もしくも見えた。こうした人間味もウルトラマンの本質なのだろうか。

「キュィィィィ」
「せぇやっ!」

 ガンQの目玉型の頭部を両腕で抱え込んだゼロは、両腕にエネルギーを溜め、ガンQの巨体を放り投げた。ガンQは、背中から向かいの建物に向けて叩きつけられ、垂直の滑り台に投げ込まれたように壁面を伝って落下していく。

 ──華奢に見えて、ゼロは強かった。
 尻から落ちたガンQは怒った様子で、触手のような両腕をただ自らの両脇で振って癇癪を起こしていた。
 直後、ガンQはおもむろに立ち上がる。
 そして、目の前の敵に向けて突進を始める。──迎え撃つゼロは、どんと来いとばかりに胸を張って待ち構えていた。
 自信に満ちたゼロの胸板にガンQの渾身のタックルが叩きこまれる。体重で言えばガンQに分がありそうなのは、両者の体格を見れば一目瞭然だった。実際のところ、ゼロはガンQと比較して2万トンほど体重が劣る。

「ぐっ!」

 ゼロの全身に衝撃が駆け巡り、固く踏み込んでいるはずの両足もゆっくりと滑るようにして何メートルか後ろに退がって行った。
 美希の視界で、だんだんとゼロの巨大な足のビジョンが広がって来る。美希は恐怖のあまり二歩ほど足を下げた。美希は、おそるおそそるゼロの背中を見上げた。
 彼は、土俵際の踏ん張りを見せながら、──それでもまだどこか挑発的にガンQと張り合っているように見えた。

「──そんなに何度も吹き飛ばされたいなら……望み通りにしてやるよっと!」
「キュィィィィィィィ」
「────はあッ!!」

 しかし、両者のせめぎ合いは、ゼロの掛け声と共に終わりを告げた。
 次の瞬間、またも抱え込まれたガンQの身体は、ゼロの両腕に掬われるようにして空高く投げられてしまったのだ。

 確かにゼロは巨人であるが、それは人間と比較した場合の話で──ガンQのようにゼロよりも明らかに体格が大きい怪獣を相手にすれば、そのパワーバランスで勝るとは限らない。それをこうもあっさりと投げ飛ばせたゼロの両腕は、一見すると細く見えても力強いのであった。
 彼は、この程度の怪獣は何度も倒してきた若きウルトラ戦士である。

 美希はそれを見て、足を両側に滑らせてへたり込んだ。
 結局のところ、ゼロが敵か味方かは判然とせず、ガンQの追跡がなくなったとしても、ゼロがそこに立っている限り、美希の心はまだどこか安堵しきれないのだろう。──とはいえ、より強い者がそこに残ってしまった事への畏怖の念としては少々弱すぎるくらいであった。
 ここから先、逃げ出す気力は、もう美希にはない。

「あっ! いっけねぇ、放り投げちまった……捕まえろって言われてたのになぁ」

 当のゼロは、ガンQが星になった空を見上げて、まずかったとばかりに頭を掻いている。──こんな肌の質が違う怪人でも頭がむず痒い時があるのだろうか。
 とはいえ、ゼロとしても、既に捕獲すべき怪獣の事よりも気になる事象があったのか、すぐにそちらに気を向けた。

「……おーい、美希〜」
「……」
「美希ちゃ〜ん。………………お〜い」

 美希が返事を怠ったせいで、途端にゼロの声がだんだん勢いをなくしているのがわかった。美希の目の前で視界に刺激を与えるように腕を振ってみるゼロだが、そんな美希の視界に実際映っているのは、全てを埋め尽くす昏い銀色だけだ。
 しかし、どんな意味を持つ仕草をしているのかは美希にも何となく解する事ができた。どことなく人間臭さも感じる。
 美希は、勇気を振り絞って、目の前の巨大なウルトラマンに訊いてみた。


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