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変身ロワイアルその6

551永遠のともだち ◆gry038wOvE:2015/08/09(日) 01:07:40 ID:yTeAA/4M0

「きゃああああああああああああああああああああああああああーーーーっ!!!!」

 反射的に、美希は大声で叫んだ。
 逃げ切ったと思った瞬間に、金色の瞳と銀色の肌を持つ、仏像のような巨大な顔が迫っていたのである。それがあまりにも大きすぎた為に、ほとんど建物の陰には光が差し込まず、美希はそれに圧迫感を覚えた。
 ここに住んでいる者は、先ほど予感した通り、やはり50メートル大の姿をしているらしい。
 ──ただ、ガンQと比べると、体格だけは人間の形をしていて、何故か流暢な日本語を普通に喋っている。あれを怪獣と呼ぶのはまだしも、彼を怪獣と呼ぶのは何かが違うようだ。
 彼は何者だろう──。

「驚く事ねえだろ。なあ、この辺りで目玉の怪物を見なかったかぁ? ……って、ん? お前、まさか、蒼乃美希かっ!?」

 美希の方は恐る恐るといった表情であるが、どうやら相手が自分の事を知っているという事だけは確認できた。
 しかし、こんな知り合いはいただろうか──と、美希は少し考える。
 もしかすると、こんな相手にもファッションモデルとして名前を知れ渡ってしまっているのだろうか。

「──俺はウルトラマンゼロ! お前たちの活躍、ちゃんと見てたぜ!」
「う、ウルトラマン……?」

 ──どうやら違ったらしい。だが、それでも充分驚きは大きかった。
 彼の名はウルトラマンゼロ。──想像するに、美希があのバトルロワイアルで出会ったウルトラマンネクサスやウルトラマンノアの親戚のような存在だろうと思える。
 言われてみれば、顔立ちはウルトラマンネクサスやウルトラマンノアにも似ていた。──元々、それらの顔をはっきりと眺める機会があったわけでもないが、特徴的なフォルムだったので記憶の片隅には残っている。
 美希の知るウルトラマンはもっと人格を廃された無感情で無口な者だったので、意外な気持ちが大きかった。こんなにも感情的で豊かに喋る物だとは思っていなかったのだ──まるで、神のようにも思っていたが、彼はそこらの普通の若者のような口調である。
 敵対する態度を見せる様子はないが、しかし、このゼロも実際のところはわからない。殺し合いの中で残酷な裏切りを経験した美希には、まず疑る事も必要になってくる。

「ああ.! ここはウルトラマンたちの住む星だ! まっ、あのイカみたいなウルトラマンとは、別に知り合いってわけじゃないんだけどな。……で、美希。巨大な怪獣を見なかったか? 目玉の怪獣が一体、脱走しちまったからこの辺は危険なんだよなぁ」
「め、目玉の怪獣……?」

 美希は、その言葉を聞いた時、ゼロの事を考えるのをふとやめて、やや顔を引きつらせた。
 だんだんと美希の顔色は青ざめ、言葉を失う。彼女の視界に、映ってはいけない物が映り始めたのだ。彼女の身体を伝っていく鳥肌と、言い知れぬ不安。
 ────あざ笑う眼。

「あ、あれ……」

美希はゼロの背後を指さした。
 彼女の視界には、ウルトラマンゼロの真後ろにガンQの巨大な目玉が迫っている姿があったのだ。──ゼロは気づいていないようだが、美希にしてみれば、自分のもとにかなり大きく影が広がっている。
 あのガンQにこの場を気づかれてしまったらしい事が美希にも今、わかった。ゼロの声量に惹かれてきてしまったのだろう。

「おわっ!」

 刹那──、背後を振り返ろうとしたゼロの顔が、美希を挟む二つの建物に向けて、叩きつけられた。ガンQの攻撃による物だ。
 建物が衝撃のあまりに轟音を鳴らし、思わず美希は両腕で顔を覆うが、流石に材質も頑丈なようで、その程度では崩れない。
 問題は、不意打ちを受けたゼロの方だ。
 顔面からこの頑丈な建物に突っ込んだだけあって、衝撃は大きく、ゼロも鼻の先を抑えている。

「いてててててて……何しやがるっ! この目ん玉野郎! 捕まえたのに逃げやがって!」
「キュィィィィィィィ」
「──ったく! 美希! そこで見てろよ、こいつは俺が倒してやる!」

 ゼロは、敵を仕留めたと思いしめしめと両腕を振るガンQの方に、向き直るように立ち上がった。
 思わず、美希はその背中に圧倒される。


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